動物を家族に迎え入れよう、そんな話になったときみなさんはどこから迎え入れますか?
ペットショップからではなく動物愛護センターや動物保護団体から迎え入れてみませんか。
こちらの記事では日本の動物保護団体が動物にとってどのような場所なのかをお話しします。
動物愛護センターと動物保護団体って同じ?
動物を保護する場所や団体と聞いて、具体的に何を思い浮かべますか?
動物愛護センターや動物保護団体というワードを耳にしたことがあるのではないでしょうか。
まずはこのふたつの違いをお話しします。
動物愛護センターとは
各都道府県に行政が管理する動物愛護センターがあります。
動物愛護センターは保健所と連携している施設です。
では、保健所と動物愛護センターは何が違うのでしょうか?
保健所とは各市町村に存在していて、飼い主の不明な犬や猫を収容しその収容動物の情報や譲渡募集を出す施設のことです。
収容動物のケアやトレーニング、譲渡会などは行いません。
保健所で保護されている動物は一定期間保護されると、各都道府県にある動物保護施設へと移されます。
それが動物愛護センターです。
動物愛護センターでは、新しい飼い主に出会うための譲渡会や犬のしつけ相談、しつけ教室などが行われています。
また、一定期間保護した動物を処分する施設でもあります。(参考:一般社団法人 日本動物保護センター)
保健所、動物愛護センターともに無期限で動物を保護、収容することは難しいのです。
動物保護団体とは
動物保護団体とは、一般的に保健所や動物愛護センターのような行政施設から処分の対象となっている動物を引き取り保護活動を行っている団体のことです。
行政の関与がない民間の動物保護団体にはさまざまな種類があります。
任意のボランティア団体であったり、法人組織として活動している団体もあります。
一般社団法人 日本動物保護センターによると動物保護団体は5種類に分けることができます。
①非営利型一般社団法人
利益を確保することを主たる目的としない法人団体のことを指します。
法人の社員に利益を配当しない法人のことであって、利益を出してはいけないということではありません。
②NPO(特定非営利活動法人)
利益を目的とせず、ボランティアを使い活動を行う法人のことを指します。
市民の自由意志のもとで行われる社会貢献活動として、利益を目的としない活動の健全な発展が促進することを目的としています。
③認定NPO法人(認定特定非営利活動法人)
公式に認定を受けたNPO団体のことを指します。
公式とは。所轄庁(NPO法人がある都道府県・市町村によって決まる)から一定の要件を満たしていると認定を受けたNPO団体のことです。
寄付金控除が適用されるNPO団体でもあります。
④一般社団法人団体
社員2名以上で設立することができ、事業内容に公益性がなくても設立可能です。
⑤公益法人団体
公益を目的とする事業で行政の認定を受けた団体のことを指します。
社会的に高い信頼度を得ることができ、また税制の優遇措置を受けることができます。
以上が、動物保護団体の5つの種類でした。
活動の形は違えど、不幸な動物が一頭でも減ることを願う共通の気持ちを持っています。
動物愛護センターは
・行政が管理している施設
・期限内に飼い主もしくは里親が見つからなければ処分
動物保護団体
・法人化されている団体もあればボランティア団体もある
・動物を処分から守るために動物愛護センターなどから保護する
と、まったくの別物であることが分かりました。
また、団体ではなく個人でボランティア活動を行っている方もいます。
動物の福祉や権利を守るため、そして動物の幸せを願うことに、団体なのか個人かどうかは関係ありません。
次は動物保護団体について詳しく見ていきましょう。
動物保護団体の活動って?
日本にはいくつもの動物保護団体があります。
各市町村にボランティア団体として存在している動物保護団体や個人で活動をしている方もいるため日々変動している可能性があり、残念ながら正確な数を知ることはできません。
しかし動物保護団体が多くの命を救っていることは間違いないのです。
動物保護団体の重要性
2018年12月発行の朝日新聞に以下の記事が出ました。
朝日新聞が動物愛護に関する事務を所管する全国の都道府県、政令指定都市など計115自治体全てを調査したところ、16年度では90の自治体が、収容した犬猫を動物愛護団体(個人ボランティア含む)に引き取ってもらう、いわゆる「団体譲渡」を行っていることが分かった。
朝日新聞デジタル
この記事によると、団体譲渡を行った犬猫の数を把握している83自治体を合計すると、犬は8,300頭、猫は12,929頭が動物保護団体に引き出されているとのことでした。
一方で、環境省が集計した同年度の全国譲渡数は犬17,868頭、猫29,551頭ということで、犬は譲渡数の46.5パーセント、猫43.8パーセントが動物保護団体により引き出されていることになります。
動物保護団体によって処分を免れ、命を救われた犬猫がこんなにも多くいるのです。
具体的な数を見てより実感がわきますが、収容数が多いため動物愛護センターの職員の方々は譲渡活動には手が回りません。
収容動物の写真や簡単な情報を発信するのみになってしまいます。
こうした中で、動物の命を救うために活動を続けている皆さんには本当に頭が上がりません。
動物保護団体では具体的にどのような活動が行われているのでしょうか。
活動内容の前に、動物愛護の定義・目的を確認しておきましょう。
動物の愛護とは、動物の取扱いに、その生命に対する感謝と畏敬の念を反映させ
環境省 Ⅱ 「動物愛護管理基本指針(仮称)」の基本的考え方(案)
ること。「自然資源の WISE USE(賢明・良識的な利用)」の一概念。
その目的は、国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和
の情操の涵養に資すること。
わたしたちが普段いただいている牛や豚・鶏などすべての動物に対して定義されているものです。
そのため食事としていただくことに関して感謝の気持ちを忘れることのないようこのような文言になっているのだと思われます。
動物はひとと同じように意思や感情のある生き物で、それを尊重することが動物愛護につながるのですね。
では、早速活動内容を見ていきましょう。
活動内容
動物愛護団体は数多く存在しており、その団体によって活動内容は異なります。
そんななかでも多くの団体が行っている活動についてご紹介します。(参考:PET RIBBON)
①動物を保護、飼養
動物愛護センターから処分予定の動物を引き出すほか、近隣住民からの要請を受けて迷子動物や負傷動物の保護を行う団体もあります。
団体の規模によっては、ユニットハウス(軽量鉄骨で組み立てられた箱型の建物)などを設けているところや自宅の一室を動物のために空けるなどしてそれぞれ保護・飼養活動を行っています。
②募金活動
動物を保護・飼養など、動物保護団体で行われる様々な活動はとてもお金がかかります。
動物のフード代、ペットシーツや猫砂などの消耗品に加えて動物病院でかかる医療費など、多くの費用が必要となります。
そのため募金活動を行っている団体もあるのです。
筆者はX(Twitter)で様々な動物保護団体を見守っているのですが、多くの団体が寄付や支援物資を募っています。
多く目にするのが、
・寄付(銀行振込やPayPay支払いなど)
・支援物資(タオルなど支援希望物資を直接郵送もしくはAmazon欲しいものリストから支援など)
の2つのパターンです。
あってはならないことですが、寄付金を自分たちの娯楽のために使ってしまう動物愛護団体も存在しています。
動物のためを思って寄付をしても、動物のために使用されないのであれば何のための寄付だったのかと気分が落ちてしまいますよね。
寄付や支援物資を送り援助する場合には、それをして良い団体なのかどうかを見極めることも大切です。
筆者はⅩ(Twitter)で知り応援している動物保護団体がいくつかあり、定期的にAmazon欲しいものリストから支援物資を送るようにしています。
直接的な保護活動ができなくても、こうして少しでも保護・愛護活動に貢献できることが嬉しいのです。
③譲渡会
動物愛護団体によっては終生飼養を行っていましたが、令和元年6月に改正された動物愛護管理法によって保護可能な動物に頭数制限が課せられることとなりました。(参考:環境省 動物の愛護と適切な管理)
さらに令和3年6月からはパピーミル(子犬工場)などで行われる虐待から動物を守るため、動物の頭数制限と保管(ケージ)の数値基準が導入されました。
その制限は動物保護団体でも適用とされ、活動に制限が出ています。
動物保護団体は、第二種動物取扱業とされています。
第二種動物取扱業とは? 動物に関わる非営利活動の中で飼養施設があり、一定頭数以上の動物の取り扱い(保管、譲渡、訓練など)を行うものをいいます。(参考:環境省 第二種動物取扱業の届け出について)
販売目的で繁殖を行うブリーダーやペットショップ、そして動物保護団体で保管することのできる動物の頭数に制限が課せられました。
(参考:MBS毎日放送 虐待から守るための新制度で…「置いてあげられる場所がない!」)
こちらはMBS毎日放送で、動物愛護管理法改正にあたって動物保護団体にどのような影響があるのか特集を組まれた際の画像です。
2021年6月時点のものなので、現在は2年後にあたり、保護団体はひとりあたり25頭までという制限がかけられています。
来年(2024年)6月からはひとりあたり20頭までしか保管(保護・飼養)できなくなるのです。
終生飼養を行っていた団体の活動に制限が出ることに違いありません。
また、保管の数値基準も動物保護団体に適用となりました。
(参考:MBS毎日放送 虐待から守るための新制度で…「置いてあげられる場所がない!」)
動物保護団体によっては個人宅の一室を動物のために開放し、保護活動を行っている団体・個人ボランティアもあります。
なのでこのようにケージに制限をかけられることで、頭数としては制限以内だけれども保管の数値基準のために動物愛護センターから引き出すことができなくなってしまうケースも考えられます。
動物を守るために改正されたはずの法律で、動物の命を脅かす可能性があるのです。
ピンクゴールドリボン運動
ピンクゴールドリボンバッジというものを見たことがありますか?
筆者は見たことはあるものの、お恥ずかしながらその意味や目的を知りませんでした。
一般社団法人日本動物保護センターでは、保護犬や保護猫への理解や普及を目的として「ピンクゴールドリボン活動」という活動を行っています。
動物保護への理解と普及を目指し活動する一般社団法人日本動物保護センターは、全国動物愛護団体です。
非営利型の一般社団法人であり、活動は法人会員からの賛助会費、また一般の方からの寄付で成り立っているのだそうです。
得られた寄付はピンクゴールドリボン運動助成金を通して全国の動物愛護団体へといく流れになっています。
ピンクゴールドリボンピンバッジは、寄付をすると受け取ることができます。
この活動を知り、また実際にバッジを身につけることで、保護犬や保護猫への理解が進むと嬉しいですね。
動物保護団体から引き取るとどんな良いことがある?
動物保護団体から引き取ることが決まれば、その子の命を救うことができます。
また、その子を引き取ることで動物保護団体に一頭分の空きができ、さらにもう一頭の命を救うことにつながるのです。
保護犬・保護猫を引き取るということは、2頭の命を救うことになります。
保護犬・猫を引き取る条件、どうして厳しいの?
日本犬猫ライフサポートハウス「NINLISH」では全国の保護活動団体一覧を見ることができます。
動物保護団体から譲渡を受けるための条件が厳しいという話は耳にしたことがありますか?
どのような条件をクリアする必要があるのでしょうか?また、どのような質問をされるのでしょうか?
この中からひとつ例を挙げてご紹介したいと思います。
・東京都 NPO法人Tier Heim KOKUA(ティアハイム・コクア)
東京都で動物保護活動をしているNPO法人Tier Heim KOKUA(ティアハイム・コクア)では、サイト上で現在里親募集中の犬猫を見ることができ、気になった子がいれば問い合わせフォームからコンタクトをとることができるようになっています。
問い合わせフォームで個人情報のほかに入力しなければならないことが5つありました。
①飼育経験/同居頭数(犬種・年齢)
保護犬・猫の性格によっては多頭飼育が難しいこともあります。
②住居環境(賃貸・分譲、マンション・戸建て、間取り)
ペット可の物件かどうか、動物と一緒に暮らすことができる間取りかの確認が必要です。
③同居家族のプロフィール(名前・年齢・職業)
保護犬・猫の性格によっては幼い子どもが苦手などがあります。
また、動物を飼育することが可能かどうか経済状況を知るためでもあります。
④一日のお留守番時間
保護犬・猫の性格によってはひとと一緒にいる時間が長いほうが良い場合などが考えられます。
筆者の親戚夫婦が保護犬を動物保護団体から引き取った際、夫婦ともに働いていると長時間のお留守番になるため譲渡はできないという話があったそうで、ひとりが退職し保護犬のお世話に専念していました。
⑤その子を引き取りたいという思い
これはどうしてこの子が気になったのかということですね。
思いのたけを入力すると良いと思います。
以上の項目を入力して、その子の譲渡条件と合致した場合には連絡がくるようになっているそうです。
それだけでなく、実際に会いに行かなくてはなりません。
動物保護団体の方は里親希望者と実際に会って人となりを知ることができますし、里親希望者はどのような環境で動物が保護・飼養されているのか、引き取りたいと思っている動物の性格も知ることができる良い機会なのです。
前述したように筆者の親戚は保護犬を引き取り一緒に暮らしているのですが、約450km離れた動物保護団体から引き取ったので車で6時間ほどかけて何度か面会に行っていました(多頭飼育崩壊の知らせが筆者の親戚に入り、遠方にもかかわらず面会に行ったことが譲渡のきっかけでした)。
どれだけの距離があろうとも実際に会って相性を確かめることは、双方にとって大切なことなのです。
どうしてこのような厳しい条件が課されているのでしょうか。
動物保護団体で保護・飼養されている動物たちは、何かしらの理由で行き場を失った、本来であれば飼い主のもとで幸せに暮らすはずだった子たちである可能性が高いのです。
もう二度と辛く悲しい経験をせずに済むよう、保護犬・猫に配慮した結果なのですね。
厳しい条件ですが、これらはすべて保護犬・猫を引き取った後、最期まで責任をもって飼養することができるかということにつながっています。
保護犬・猫たちは「ずっとの家族」を待っています。
また、NPO法人Tier Heim KOKUA(ティアハイム・コクア)では寄付や物資支援で活動を応援することができます。
何件もの保護団体のサイトにアクセスしましたが、NPO法人Tier Heim KOKUA(ティアハイム・コクア)だけでなくそのほかの多くの保護団体も寄付や物資を援助することで活動を応援できるようになっていました。
動物のために何かしたい、でも直接的な活動に参加することは難しい、そんなときには寄付や物資援助を通じて応援してみるのもおすすめです。
保護犬・猫を引き取ると良いことって?
①成犬・成猫を迎えることができる
子犬や子猫の里親募集ももちろんありますが、日本犬猫サポートハウス「NINLISH」から全国の動物保護団体サイトを閲覧するとわかるように成犬・成猫の里親募集が圧倒的に多いです。
成犬・成猫は性格がある程度わかっているので、自分に合った保護犬・猫を迎えることができます。
また、里親になりたいけれど自分も高齢で心配などという方は寿命やパワーから見て子犬・子猫よりも成犬・成猫のほうが迎えやすいと思います。
しかし高齢者のみの家族の場合にはお迎えできない場合もありますので譲渡条件に合うかどうかの確認が必要です。
②動物の命を救うことができる
あなたが里親となり一頭の動物を引き取ることでその子の命が救われるだけでなく、動物保護団体に一頭分の空きができることでさらにもう一頭の命が救われます。
保護犬・猫を1頭引き取るということは、2つの命を救うことにつながるのです。
まとめ
動物保護団体は動物のことを心から考え、思い活動している団体がほとんどです。
動物たちは愛情をかけてもらいながら「ずっとの家族」を待つことができます。
しかしながら法律の改正により保護・保管可能な頭数に制限があるなど、動物にとって良いことばかりではなくなっています。
そして、実際に活動することが難しいという場合に動物のためになにができるかを考えたときに、必ずしも里親となって動物を引き取ることがすべてではないということをお伝えできたでしょうか。
動物保護団体に寄付をしたり、物資の支援をすることも動物を助ける活動の一端を担うことができるのです。
また、保護犬・猫を一時的に預かる「預かりボランティア」というものもあります。
様々な形で、それぞれがやりやすい形で動物を思い活動ができたら動物にとってより良い国になるのではないでしょうか。