様々な動物に関する問題が山積している現代ですが、ロードキルというものに焦点を当てて考えたことがあるでしょうか?
皆さんも、動物が路上で横たわっているのを見かけたことが少なからずあるのではと思います。
たまたまであってもそのような光景には出くわしたくないものですが、このロードキルと呼ばれる動物の路上での事故死は、1年の間にどれほど発生しているかご存知でしょうか。
ほとんどの方は全く想像がつかないと思いますが、それは至極真っ当なことなのです。
というのも、ロードキルに関しての全国的な調査を行った例はほとんどなく、したがって我々がロードキルという言葉やその総数を知る機会はほとんどありませんでした。
しかし、NPO法人である人と動物の共生センターが発表した調査結果によると、2019年時点では年間推計で29万頭弱、2023年時点では年間推計で22万頭強の猫が路上で死亡していることが明らかとなりました。
これは、2023年に殺処分された猫の約24倍に当たります。
更に言うと、上記の数は市町村などの自治体が回収した数の全国推計であって、高速道路や国道で回収された動物の遺体回収数は含まれていません。
近年は動物の殺処分数減少がとても良いニュースとなっていますが、公になっていない動物の死がこんなにもあったのです。
また、ロードキル発生件数の多さもさることながら、この問題が解決に至らない根本的な問題に関しても浮き彫りになってきました。
今回は、日本で発生している猫や野生動物のロードキルについて考えていきたいと思います。
ロードキルとは

ロードキルは、「road=道」における「kill=殺害」なので、道路上で起こる動物の死亡事故のことを指します。
英語ではRunover deathとも呼ばれるようです。
また、動物病院においては、自動車事故によって運び込まれた際にはHit By a Car(HBC)とも呼称されていました。
日本語では、轢死(れきし)と呼ばれます。
厳密な呼び方の統一はなされていないようなので、今回はロードキルと呼ぶこととします。
このロードキルは動物の命を奪ってしまうことはもちろんのこと、車両走行の安全上の問題になるばかりでなく、希少な野生動物の保全上の問題ともなっています。
ロードキルとは、道路上で起こる動物の死亡事故のことである。
いくつかの調査で得られた結果

では、ロードキルの発生件数について詳細に見てみたいと思います。
今回、以下の3種類の報告を見つけることができました。
①人と動物の共生センターにおける調査結果
まずは、全国の自治体でのロードキルによる遺体回収数をアンケートにて聞き取り調査を行った人と動物の共生センターでの調査結果です。
年 | 猫の遺体回収数合計 | 猫のロードキル全国推計 |
2015年 | 68,553頭 | ‐ |
2016年 | 63,028頭 | ‐ |
2017年 | 59,296頭 | ‐ |
2018年 | 56,584頭 | ‐ |
2019年(2020年調査) | 53,736頭 | 289,572頭 |
2019年(2024年調査) | 79,178頭 | ‐ |
2020年 | 69,376頭 | ‐ |
2021年 | 60,239頭 | ‐ |
2022年 | 53,824頭 | ‐ |
2023年 | 48,459頭 | 223,366頭 |
参考:全国猫のロードキル調査(2021)『28万9,572頭』が路上で死亡(推計)
参考:調査データ訂正【全国ロードキル調査】殺処分の24倍、223,366頭(推計)の猫が路上で死亡
2015年〜2019年の結果は2020年の調査で明らかになったもので、すべての年度を把握していた41都市を有効回答数としています。
アンケートの回答を依頼したものの未回答だった自治体や、一部の年で遺体回収数の合計を把握していなかった場合は回答数に含めていないようです。
また、2019年〜2023年の結果は2024年の調査によるもので、有効回答数は猫の遺体回収数を把握していた自治体の54都市となっています。
なお、2020年時調査のようにすべての年度を把握していたのかは不明です。
2019年は2度調査対象となっていますが、2024年調査において回答のあった自治体数が増えているので、遺体回収数も多くなっています。
全国推計はあくまでも推計値であり、人口10万人あたりの遺体回収数を総人口にかけて割り出しています。
日本全国の自治体が回収したロードキルによる猫の遺体数は、2019年には289,572頭、2023年には223,366頭にも及ぶ可能性があるということが判明した。
②高速道路会社における落とし物処理件数
次に、各高速道路会社が集計している高速道路における落とし物処理件数の発表結果です。
年 | 令和4年 | 令和3年 | 令和2年 |
合計件数 | 5.1万件 (阪神高速300件) | 5.1万件 (阪神高速500件) | 5.3万件 (阪神高速300件) |
大型(動物) | 2,400頭(5%) | 2,000頭(4%) | 2,300頭(4%) |
中型(動物) | 26,674頭(52%) | 25,900頭(51%) | 27,200頭(51%) |
小型(動物) | 21,706頭(43%) | 22,100頭(43%) | 23,100頭(44%) |
※大型…シカ、クマ、イノシシ、その他大型動物/中型…タヌキ、キツネ、イヌ、ネコ/小型…鳥類、その他小型動物
この集計で対象となっているのは東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社、本州四国連絡高速道路株式会社、首都高速道路株式会社、阪神高速道路株式会社の6社です。
各高速道路会社ではロードキルによる動物の遺体は落とし物としてカウントされており、こまかな動物種ごとの統計は取られていませんが、大型/中型/小型/その他小型動物に分類されています。
ただし阪神高速では内訳分類はされておらず、動物の遺体回収数が他の高速道路会社と比べて少ないことから、実際には記録に残っていないものもあるのではと考えられます。
表の全体を見てみると、令和2年に比べ令和3、4年では合計の遺体回収数が減少していることが分かります。
また、どの年もタヌキ、キツネ、イヌ、ネコが含まれる中型動物の処理件数が最も多くなっています。
③国土交通省道路局における落下物処理の実施状況
最後に、国土交通省の道路局が調べている直轄国道のロードキル処理件数の発表結果です。
令和4年 | 令和3年 | 令和2年 | |
総件数 | 7.0万件 | 7.1万件 | 7.4万件 |
タヌキ | 19,600頭(28%) | 19,880頭(28%) | 20,720頭(28%) |
犬・猫 | 20,300頭(29%) | 21,300頭(30%) | 22,940頭(31%) |
鳥類 | 7,700頭(11%) | 7,810頭(11%) | 8,140頭(11%) |
シカ | 5,600頭(8%) | 5,680頭(8%) | 5,920頭(7%) |
キツネ | 2,100頭(3%) | 2,130頭(3%) | 2,220頭(3%) |
イノシシ | 700頭(1%) | 710頭(1%) | 1,480頭(2%) |
その他 | 14,000頭(20%) | 13,490頭(19%) | 13,320頭(18%) |
参考:落下物処理の実施状況
国土交通省の道路局では、細かな動物種ごとの集計が行われています。
各高速会社と同様に、ロードキルによる動物の遺体は落下物としてカウントされているようです。
国道で発生したロードキルの合計件数は、近年になるにつれ減少傾向にあることが分かります。
また、こちらもタヌキやイヌ、ネコの処理件数が飛び抜けて多いことが見て取れます。
3つの報告を比較すると…

人と動物の共生センター、各高速道路会社、国土交通省直轄国道のそれぞれにおいて調査方法が異なるため結果の表現には差異がありますが、ロードキルの動物種による発生件数の差や経時的な変化に関してはある程度の相関が見られます。
ただし、ロードキルによる動物の遺体は各自治体か道路管理者が回収するようですので、本当の総数は上記の結果①~③を合計したものになるはずです。
直轄国道では犬・猫とタヌキ、キツネの遺体回収数はちょうど同じくらいの数になっています。
そのため、ざっくりとした分類になっている高速道路でのロードキルも、犬・猫とタヌキ、キツネのロードキル件数は同じ程度の数になるのではと想像ができます。
また、犬に関しては野良犬の個体数が少ない(令和3年日本の野良犬は24,900匹であるとの調査結果がある)ため、ロードキルの発生件数は極めて少ないであろうと考えることができます。
参考:日本で飼い主のいない犬や猫は約228万匹 世界規模の調査で明らかに
高速道路や国道での犬・猫のロードキルはすべて猫だったと仮定とすると、年のずれはありますが、猫のロードキル発生件数は以下のようになると考えることができます。
猫のロードキル数 | |
各自治体 | 223,366頭(2023年) |
高速道路 | 13,337頭(2022年) |
直轄国道 | 20,300頭(2022年) |
合計 | 257,003頭 |
なんと、年間で25万7千頭もの猫がロードキルによって犠牲になってい可能性があるのです。
更には、道路には高速道路、一般国道、都道府県道、市町村道と様々なものがあり、それに加え私道などもありますから、各調査結果で発表されているよりも多く、毎年膨大な数のロードキルが起こっていると考えられます。
動物と出くわす前に。ドライバーができる対策とは?

ドライバー側が日ごろ注意を怠らず運転することによって、多くのロードキルを回避できます。
車の速度を出しすぎず、安全運転をしているといざという時のハンドル操作が可能で、停止もしやすいでしょう。
また夜間はハイビームを使うことも有効的です。
ライトの光が動物の目に反射し、動物を発見しやすくなるのです。
また、車に装着できる動物避け警笛というものもあります。
車が風を受けることによって、動物が嫌がる音を発生させることができます。
- 適切な速度での運転
- 夜間のハイビーム使用
- 動物避け警笛
ドライバーがロードキルを回避するためにできる対策は猫、野生動物ともに同じです。
しかし、根本的な原因へのアプローチ方法は、猫と野生動物では全く違います。
具体的にどんなことを行っていけば良いのかを考えてみたいと思います。
猫におけるロードキルの発生原因

野良猫の個体数は、人口と強い相関があることが分かっています。
人がいるところは猫にとっても隠れ家や食べ物が豊富にあり、野良猫が繁殖しやすいのです。
人口が多い場所には野良猫が多く、また車などの交通量が多いために人と猫が出会う可能性が高くなり、ロードキルがより発生しやすいという状況になっています。
野良猫は過酷な環境で生きているため、平均寿命は3~5歳と言われていますが、その平均寿命の短さを補うほどに猫の繁殖能力は強いのです。
猫のメスは交尾をきっかけに排卵するためほぼ100%の確率で妊娠すること、また複数の雄の子を同時に妊娠することができることなどから、多様な遺伝子を効率的に生み出すことができます。
善意の行動ではありますが、避妊・去勢手術を施していない猫への餌やりは個体数の増加を招いている可能性もあります。
野良猫の対策

人と動物の共生センターで行った調査によると、2019年時点で推計289,572頭、また2023年には推計223,366頭の猫が路上で死亡していることが明らかとなりました。
この調査結果から分かるように、ロードキルによって犠牲になっている猫の頭数は徐々に減ってきています。
道路局と人と動物の共生センターの調査結果では、猫のロードキル数が近年になるにつれ減少している点で共通しています。
ロードキル数の減少は野良猫の減少と相関し、TNR活動や保護活動の結果と考えられました。
また、個体数の減少のみならず、避妊・去勢を施すおかげで発情がなくなり、むやみに徘徊することがなくなるということも関連していると考えられます。
人と動物の共生センターによると、TNR活動に対して助成金制度を設けている自治体は、猫のロードキル減少率が高いとの結果も出ています。
野良猫のロードキルを減少させようと思うと、野良猫の個体数を減少させることで達成されます。
そのためにもロードキルの現状を公開し、野良猫の個体数と相関があると世間へ印象づける必要があるのではないでしょうか。
1.野良猫の存在はロードキルという道路上の事故死を招くという事実を調査結果とともに公表し一般の方の理解を得る
2.行政に働きかけ、補助金の獲得に向け動くとともに募金活動を行う
3.得た金銭を用いて素早い保護活動を実施
4.その年の結果を公表する(1に戻る)
これは難しく考えられるかもしれませんが、正しい結果の集計と公表さえ行えば、徐々に好循環へと発展するのではないかと思います。
またTNR活動も、その猫が飼い主に引き取られる訳ではありませんが、今以上に野良猫を増やさないために行っていくべき大切な活動です。
人口をコントロールすることは難しいため、外で暮らす野良猫をこれ以上増やさないことが、猫のロードキルを減少させる一番の近道なのではないでしょうか。
外で生きる猫と室内で生きる猫はどちらが幸せなのかという議論はありますが、室内でどのように満足して暮らしてもらえるのかを考えないといけないのだと思います。
野生動物におけるロードキルの発生原因

猫以外のロードキル数の推移は、人と動物の共生センターでは増加傾向であることがわかっています。
しかし、高速道路会社や道路局の調査によると、野生動物のロードキルの推移は減少傾向にあるようです。
二つの管理者が同時に動物の遺体を収容することはありませんので、平均すると野生動物のロードキルは横ばいであるといえるのかもしれません。
これらの結果を考察するのは難しいですが、全体的にあまり良くなっていないことが伺えます。
猫と野生動物のロードキルは、出くわしてしまう状況にある、ということが第一の原因として共通しています。
しかし、そこで思考を止めることなく、なぜ出くわしてしまう状況になっているのかを考えなければなりません。
イノシシやシカの個体数は増加傾向であり獣害問題にもなっていると以前の記事で言及しましたが、タヌキも大都市圏とその周辺地域では生息数が増えているとの調査結果があります。
耕作放棄地や放任果樹の増加などにより、野生動物が住みやすい環境が整うことによって、その総数が増えているものと考えられます。
また、地球温暖化の進行によって、動物の生息域の北限が上昇していることも個体数の増加に拍車をかけているでしょう。
他にも野生動物の生息地域へ人間が侵入し、開発を行っていることもロードキルの原因として挙げられるでしょう。
人間と野生動物の生活域が重なることで、野生動物と接触しやすくなっているのです。
- 耕作放棄地や放任果樹の増加
- 地球温暖化の進行による野生動物が生息する地域の拡大化
- 本来野生動物が暮らしている場所への人間の侵入
ただ、野生動物のロードキル数は横ばいか減少傾向にあると言及しましたが、この事実には、日本の人口が急速に減少しているということを考慮すべきだろうと思います。
実際のところ、野生動物の個体数が増えている反面、人口が減っているために野生動物と人間が接触する機会はそんなに変わっていないのかもしれません。
野生動物の対策

野生動物は、人間と住む環境が近いと人間に依存して生きていくようになります。
人間が食べているご飯の味は一度味わうと忘れることができず、何度も里山に降りてきてしまうのだそうです。
ごみを漁られたり、または餌付けによって人が食べているご飯の味を覚えてしまうこともあるでしょう。
また、先述したように放任果樹は豊富な食料源になりますし、耕作放棄地は安全な住処となります。
放任果樹の撤去や耕作放棄地の整地、餌付けの禁止、ごみの放置禁止などが、蛇口を占める活動として必要なのではと思います。
野生動物とはまず「会わない」ということが大切で、根本の改革として生息域の明確な区別が必要ではありますが、現状でも可能な対策は沢山あります。
動物の暮らしとの境界線を分けるという目的において、野生動物の生息域に接する高速道路では動物侵入防止柵の設置、動物の移動道路「けもの道」の確保などの対策が取られています。
「動物が飛び出すおそれあり」の警戒標識の設置も効果的です。
野生動物との接触を避けるための工夫を以下に列挙します。
- 警戒指標
- 減速ロードハンプ(減速帯)
- ゼブラ舗装
- 侵入防止柵
- アウトジャンプ
- アンダーパス
- アニマルブリッジ
- 動物反射板
外国では、以下のような取り組みも行われているようです。
- 動物警戒区域を標識に記載(カナダ)
…何キロ先にどのような動物に警戒が必要かを実際のデータを活用してデータベース化 - 韓国ロードキル観測システム(韓国)
…データ収集しロードキル発生のホットスポットを選定し、フェンスの設置や警告標識を設置 - センサー感知による事故防止(EU)
…センサー感知の後ドライバーに減速の警告。減速しなければ警戒音にて動物を逃がす
参考:国土交通省道路局 道路分野のネイチャーポジティブ 今後の方向性
日本でも上記のような対応は検討されているようですが、正直なところまだまだ不十分と言わざるを得ないでしょう。
そもそもロードキル発生件数の集計が行われていないため、データベース化できておらず今後の対策を練ることが難しいのです。
動物と接触事故を起こしてしまったら

動物と接触してしまったら、まずは最寄りの警察署へ報告措置をとりましょう。
一般道であれば市役所や保健所、高速道路であれば管理団体や道路緊急ダイヤル#9910に問い合わせて、指示を仰ぎます。
道路上で死亡した動物を発見した場合にも二次被害を防ぐために#9910に連絡をしてください。
無料で24時間受け付けているようです。
動物がまだ生きている場合、動物病院や動物愛護センター、保健所などに問い合わせると命を助けられるかもしれません。
道路で横たわっている動物を発見した際にきちんと報告すれば、まだ助かるかもしれないのです。
また、しかるべき管理者に報告をすることで、正しい調査結果が得られるかもしれません。
二次被害を抑えるために動物の移動をしたほうが好ましい場合がありますが、安易に触ると感染症などの恐れがあります。
特にノミやマダニなどの感染、また人獣共通感染症のレプトスピラ症やエキノコックスなどに注意が必要です。
必ず手袋やビニール袋などを介して接触するようにし、触ったあとは流水で手を洗うか消毒を行いましょう。
飼い犬や飼い猫の場合は、飼い主の連絡先が分かるのであれば必ず連絡をしてください。
動物病院や保健所等へ搬入したらマイクロチップで所有者が分かる場合もあります。
1.市役所や保険所、道路緊急ダイヤル#9910へ連絡
2.動物が生きていれば動物病院や動物愛護センター、保健所等に問い合わせる
3.可能であれば動物を路肩に移動させる
4.飼い犬や飼い猫は飼い主の連絡先が分かるのであれば連絡をする
もしも逸走した飼い猫や飼い犬と衝突事故を起こした場合は飼い主と話し合いになると思いますが、逸走させた飼い主の管理責任にも問題があります。
これは動物の愛護及び管理に関する法律に記載されていることです。
第三章 動物の適正な取扱い
第一節 総則
(動物の所有者又は占有者の責務等)
3 動物の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する動物の逸走を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
車に損害があった場合は保証を受けられますが、野生動物や野良猫との衝突事故は自損扱いとなります。
そのため、自損事故による保証が含まれる車両保険を受けることになります。
調査で浮き彫りになった問題点とは

このロードキルについてネットで検索してみると、動物関連の媒体よりも、車などの道路を走る乗り物に関連する媒体が多く掲載していることに驚きました。
このことから、動物が好きな人々であってもあまり頻繁に議論されない話題なのだと言うことが分かります。
どうしてなのでしょうか?
それは、全国的な調査が行われていないためにロードキルの総数が分からず、その実態がつかめていなかったために世間的に公表されていなかったからだと考えられます。
私達の話題にのぼる機会すら与えられていなかったのです。
そのため、そのことに気付いた人と動物の共生センターでは、全国の市町村へ聞き取り調査を行えば、ある程度データは収集できるはずだと思ったのではと思ったに違いありません。
しかし、このロードキルに関しては、そんなに簡単な問題ではありませんでした。
遺体回収を行っている各自治体が、その数をきちんと把握していなかったのです。
人と動物の共生センターにおける2020年の調査では、聞き取りをおこなった70市町村の中で、未回答であった自治体数は19にものぼりました。
また、その遺体回収数が極端に少ない市町村もありました。
これは、遺体回収をしている方々が記録に残す必要がないと判断している可能性が高いと思われます。
また、今回のアンケートでは、それを裏付けるような自治体からの回答も出ています。
それによると、遺体回収数は記録を取る必要がないと思うというものや、公表する必要がないと思うというものが多く見受けられました。
たしかに回収に赴いた方にとっては、遺体回収をすれば道路の安全は保たれ、役割は果たしたと思うかもしれません。
しかし、それは表面的な問題解決であって、ロードキル自体を減らす行為にはならないのです。
また、遺体回収をする管理者が複数あり、一元管理されていないことも総数を掴み切れていない原因として考えられます。
高速道路会社や道路局も、該当の自治体へ定期的に報告を行い、自治体がその総数をきちんと帳簿付けすればよいのではないでしょうか。
1.ロードキルが発生したら必ず日時や場所、動物種を記録
2.該当の自治体へ報告し、遺体回収数は自治体が一元管理する
3.その結果を毎年メディアなどに発表し、民間人への意識付けを行う
現状では、日本で起こっているロードキルの実態を正確に分かっている人は誰一人いないでしょう。
このような状況では民間人が話題にすることが少ないのも無理はありません。
このことが、このロードキルに関する問題が解決に至らない最も根本的な原因だと思います。
まとめ

ロードキルについて深掘りすることによって、現状の問題がこんなにも明確に浮き彫りになるとは思いもよりませんでした。
野良猫の問題や野生動物の問題、また管理者の意識が低いという問題…。
それらの理由が重なり、ロードキルの膨大な総数として表面化したのです。
とはいえ、今まで明らかになっていなかった喜ばしい結果も判明しました。
それは、動物保護団体による猫の保護活動が、ロードキルの減少に貢献していたということです。
しかし、ロードキルによって亡くなる猫や野生動物の数は依然として多く、今までその数が知られていなかったために、解決に至っていない重要な社会問題として認識されていなかったのは残念でなりません。
これから、ロードキル数の把握とともにその推移を経時的に注視していく必要があるでしょう。
犬や猫の殺処分数減少は、さまざまな方の活動によって達成されました。
それらの活動がどうして続けてこられたかというと、活動の結果となる殺処分数を毎年公表し、活動者が評価し次の行動に繋げることができていたからでしょう。
活動の成果を報告することによって、社会的な変化をもたらし評価することを社会的インパクト評価というのだそうです。
今回のロードキルも正しく調査し、その集計結果を報告することで、ロードキルの減少に向けた社会的な動きを作り出すことができるのではないでしょうか。