ペット先進国から学ぶ法律~3か国の比較~(イギリス・ドイツ・日本)という記事では、ペット先進国であるイギリス・ドイツの法律と、先進国ではない日本の法律とを比較してみました。
こちらの記事ではペット先進国であるイギリス・ドイツではどのようにしてペットを迎えることができるのか、ペットショップやアニマルシェルターについてお話していきたいと思います。
動物と人とが共に生きることのできる国にするためのヒントを得ることができたらうれしいです。
ペット先進国って何?
ペット先進国とは「動物の権利が尊重され、動物愛護の精神が高い国」のことを指します。
詳しくはペット先進国から学ぶ法律~3か国の比較~(イギリス・ドイツ・日本)をご覧ください。
ペットを迎える方法とは?~イギリス・ドイツの場合~
ペット先進国の中には、動物に関する法律が50以上もありペットショップでの生体販売規制を実施している国もあります。
イギリス・ドイツのペットショップはそれぞれどのような役割をしているのでしょうか。
また、ペットを迎えたい場合にはどこから迎えるのでしょうか。
早速見ていきましょう!
イギリス編
イギリスは最も動物愛護・福祉が進んでいる国と言っても過言ではありません。
日本よりも約100年ほど進んでいるとも言われています。
日本との最も大きな違いは、イギリスのペットショップでは実質、ほとんど生体を販売していないということです。
ルーシー法により、生後6か月未満の犬猫をブリーダー以外の第三者販売業者が販売することが禁じられています。(参考:BBC NEWS JAPAN)
第三者販売業者とは、自らは繁殖に携わらず他者によって繁殖された犬猫を販売する業者のことで、代表的な例がペットショップです。(参考:UKペットライフ・獣医ライフ)
生後6か月未満の犬猫を迎えたい場合には、認定を受けたブリーダーまたはアニマルシェルターを介さなければならないんですね。
ペットショップで生体販売が規制されている理由は、環境省「諸外国における動物取扱業規制の概要」で知ることができます。
生体販売について1951年ペット動物法で規制されており、ライセンスを取得すれば販売可能とのことですが非常に厳しいためにライセンス取得業者はイギリス全体でも2%ほどと言われているんです。(参考:環境省 平成29年度訪英調査結果)
動物種により異なりますが、その動物が動物らしく生活することのできるスペースが必要であったり、温度や湿度管理にも厳しく規制がかけられています。
莫大な維持費がかかることが予想されるため、事実上の運営が困難なのだと思われます。
そのため、ほとんどのペットショップでは生体の販売がありません。
ではイギリスのペットショップには何が置いてあるのでしょうか?
いくつかのペットショップを覗いてみましょう。
イングランド地方のある「The Pet Shop Guys」というペットショップではペットフードやアクセサリー(フードボウルなど)が販売されているとのことです。
投稿されている写真を見ても生体は写っておらず、代わりに様々なペット関連商品が陳列されていることが分かります。
豊富な種類のペットフードが数多く陳列されており、これだけの種類がそろっていれば大切なペットの健康や好みに合うフードを見つけることも難しくなさそうです。
中には日本でも馴染みのあるパッケージの商品もありますね。
さらに日本ではあまり主流ではない大きな規格のフードもたくさん店頭に出ていて、大型犬をペットとして迎える人が多いだろうということも伺うことができます。
フードのほかには種類豊富なおもちゃやフードボウルやペットベッドなどの関連商品、犬猫以外のものと思われる小動物用のハウスなども取り扱っている様子が見て取れます。
犬猫だけでなく、ウサギやハムスターなどの小動物の生体販売も控えているようです。
また店頭に展示されているキャットタワーには犬や猫のぬいぐるみが置かれており、まるで商品の魅力をアピールしてくれているかのようです。
生体を用いらず、素敵なお店になっています。
もうひとつ「Pets at Home」というペットショップも覗いてみましょう。
Pets at Homeはオンラインショップと約451の店舗を展開する大手のペットショップです。
フードやおもちゃ、ペットベッドなどの関連商品を販売、またトリミングサービスもしているとのことです。(参考:REUTERS)
フードは日本でも有名なメーカーのものから耳にしたことのないメーカーのものまで、さまざまな種類のフードを数多く取り扱っていることが分かります。
ペットショップによってはフードの試食もすることができるようです。
またこちらのペットショップも小動物用のハウスなども販売しているようです。
例え生体を販売しなくとも、約451店舗の運営を続けていけることがすごいですね。
イギリスでは動物が人と対等に生活する権利を与えられているということが伝わってきました。
では、実際にペットを迎えるとしたらどこにいけば良いのでしょうか。
イギリスで犬や猫を迎える場合は、認定を受けたブリーダーまたはアニマルシェルターを介すことになります。
イギリスは動物が動物らしく生きることができるようにと、ブリーダーにも数多くの規制を設けています。
・営利目的として行っていること
・税申告義務が発生する程度の利益が出ていること(年間おおよそ1,000ポンド以上)
・広告を出すなど宣伝活動を行っていること
上記3項目を満たすか、または
・年間で3胎以上の仔犬を繁殖させること(販売していることを証明すること)
などの厳しい規制がされています。
認定を受けたブリーダーは、自治体による年に1回の査察を受け規制を守り運営がなされているかなどの評価をされます。(参考:環境省 平成29年度訪英調査結果)
実際にブリーダーからペットを迎えることを考えた際には、どのようにコンタクトを取ればいいのでしょうか。
「THE KENNEL CLUB」というサイトを用いて仔犬、またはレスキューされた犬を検索し、気になった子がいた場合にはメッセージを送るなどコンタクトをとることができます。
THE KENNEL CLUBとは1873年にドッグショーなどのルール策定のために設立された世界最古のケネルクラブ(畜犬団体)です。犬の血統書の登録・管理、繁殖に関しての母犬と仔犬の福祉を保護するための基準策定、トレーニングプログラムの運営などをしています。(参考:環境省 平成29年度訪英調査結果)
一方でアニマルシェルターからペットを迎えるという方法もあります。
今回は英国王立動物虐待防止協会RSPCA(以下RSPCA)が運営するアニマルシェルターについて調べました。
RSPCAには訓練を受けた約400名の検査官が所属しており、通報をもとに現場で指導に入るのか保護をするのかを判断します。
判断の基準となるのは「動物の5つの自由」チェックリストです。
動物の5つの自由:①飢えと渇きからの自由 ②不快からの自由 ③痛み・傷害・病気からの自由 ④恐怖や抑圧からの自由 ⑤正常な行動を表現する自由(参考:公益社団法人日本動物福祉協会)
RSPCAのアニマルシェルターでは犬猫だけではなく、アナグマやキツネ、カワウソ、ハヤブサやコンドルなどの猛禽類に加え鹿、ヤギ、さらにはワニも保護することがあるそうです。
動物種に関わらず動物福祉の観点から保護を決めているのですね。
また指導のみの場合には、後日再訪問を実施し改善されていない場合や虐待がある場合には動物は保護され、オーナーは罰金(時には拘留・収監)などの処罰を受けます。
イギリスの半分以上を占めるイングランドとウェールズ全域にRSPCA組織にはコールセンターには25秒に一回の頻度で電話が入るそうです。
すべてが虐待の通報ではなくアドバイスや救助を求めるものもあるそうです。
イギリスに住む人たちの動物に対する関心の高さやオーナー意識の高さを伺うことができます。
通報により保護されたり、元オーナーが亡くなったことで保護されるなどさまざまな流れでアニマルシェルターにやってくるんですね。
ブリーダーから迎えることとの大きな違いは、条件の厳しさです。
アニマルシェルターでは、オーナーになるにあたっていくつかの条件をクリアする必要があります。(参考:FIGARO.jp)
その条件は動物の性格やこれまでの暮らしぶりを参考にされるそうで
・常に家に人がいること
・小さな子どもがいないこと(何歳以上ならOKと具体的な年齢が示される)
・飼育経験があること
・ほかの動物がいないこと
など具体的な条件がいくつか提示されます。
その動物によって条件が異なるとはいえ、クリアできない場合には迎えることができません。
厳しい条件ですがすべてはその動物の幸せを願ってのことです。
イギリスのアニマルシェルターは、動物を守るため、生かすために機能している施設だということが分かりました。
ドイツ編
ドイツも実質、ほとんどのペットショップで生体販売がありません。
というのも法律で生体販売が禁止されているということではなく、動物福祉の観点から自主規制しているショップが多いとされています。
ペット天国とも言われるドイツのペットショップは、一体何が販売されているのでしょうか。
「FRESSNAPF」というチェーンストアのペットショップを見てみましょう。
ドッグフードやキャットフードをはじめ、ウサギや爬虫類、魚などに与えるフードまで幅広く販売されています。
またフードボウルやペットベッド、シャンプーなどの関連商品も取り揃えているようです。
生活に必要なものは揃うようになっているんですね。
「KOELLE ZOO」というペットショップもチェーンストアで、大きな店舗を構えているようです。
こちらのペットショップも同様にフードやアクセサリーなどの関連商品を幅広く取り扱っていることが分かります。
KOLLE ZOOではウサギやモルモット、鳥、魚などの小動物は生体販売が行われているようです。(参考:POTTERY GINNY)
広いケージや水槽が用意されているということです。
また、イギリス同様にショップによっては試食もあるんですね。
ドイツも動物の持つ権利を認め社会の一員として迎えている雰囲気が伝わってきました。
では、どのようなルートでペットを迎えることができるのでしょうか。
SIMPLE GERMANYというドイツでの暮らしをより良くするためのガイドを掲載しているサイトより、3つの方法をご紹介します。
1. With A Registered Breeder
You can look for breeders (Züchter) in your area via the official German dog breeder association (VDH). Only breeders who are official members of the VDH can legally sell dogs.
2. From A Pet Shelter
There are various animal shelters (Tierheim or Tierschutzverein) in Germany, who rescue animals in need and look for responsible and matching new homes.
3. Privately From Friends
The easiest and cheapest way is to adopt a pet from friends with a pregnant dog at home. So it never hurts to let your colleagues and friends know about your wishes to get a dog.
SIMPLE GERMANY
まず「1.With A Registered Breeder」から見ていきましょう。
ここでは、VDHに登録しているブリーダーのみが合法的に犬を販売することができるということが明記されています。
VDHとは、血統書の登録・管理を行いドッグショーなどを主催する全ドイツケネルクラブ(ドイツ犬連盟)のことを言います。(参考:VDH)
VDHで定められた繁殖規則にのっとって、動物福祉を守り繁殖することが求められます。
またVDHで定められた規則以外にも、ドイツ動物保護法によって登録が必要な商業ブリーダーの定義に「妊娠可能な犬を3頭以上飼育していること」と記載があるため未避妊の雌犬を3頭以上飼育しているオーナーも登録対象となるんです。(参考:環境省 平成29年度訪独調査結果)
さらにはブリーダー繁殖規則を守っているかを第三者によってチェックされ、産まれてきた仔犬の健康状態、精神状態を確認されるので引き取るほうも安心して迎えることができますね。
引き取る際には、産まれる前からブリーダーとコンタクトを取り予約をしておく必要があるということです。
ブリーダーによっては飼育環境を知るための家庭訪問も実施され、引き取り後もコンタクトを取り合うことがあるようです。(参考:ドイツで犬を飼う – トランスユーロアカデミー (trans-euro.jp))
ペットショップで購入すると、ショップスタッフはその後のことを知るすべがありません。
ですがこのように引き取り後もコンタクトを取り合い付き合いが続くことで飼育放棄など虐待の抑止力にもなります。
では2.From A Petshelterについてみていきましょう。
ティアハイムという言葉を聞いたことがありますか?
ティアハイムとはドイツ語で「保護施設」を意味し、約1,400か所ものティアハイムがあります。
ドイツ動物保護法で定められているティアハイムの定義は
①10頭以上の動物を飼育していること
②動物、飼育方法の専門知識を持っていてその知識を行政の獣医師に認められていること
州の獣医師によって十分な知識と適切な飼育環境を有しているかをチェックされ、これらを満たさなければ運営はできません。(参考:環境省 平成29年度訪独調査結果)
ティアハイムで保護される動物は
①迷子で保護された動物
②オーナーによって持ち込まれた動物
③押収された動物
押収された動物とは、例えば刑務所に入ることになった人が飼っていた動物のことを指します。
こうした経緯でさまざまな動物が保護され、新たな家族を探します。
1,418 カ所のティアハイムは、規模にかなりの差があるほか、この中には、もらい手のない犬猫を預かる慈恵園のような施設も入っている。こうした施設では、亡くなるまで生涯面倒をみている。
環境省 平成29年度訪独調査結果
また疾患などさまざまな理由で譲渡が難しい動物もいます。
そういった動物たちも殺処分の対象になるのではなく、天寿を全うできるようになっているんです。
ドイツはイギリス同様、動物の命を守るため、生かすことを目的としていることが伝わってきましたね。
数多くあるティアハイムの中でヨーロッパ最大級と言われる「ティアハイム・ベルリン」をご存じでしょうか。
ベルリンとそれに隣接する隣町との境にティアハイム・ベルリンはあります。
16ヘクタール(約サッカーグラウンド22面分)もの広大な敷地に、保護された動物たちが暮らしているんです。
ティアハイム・ベルリンで生活しているのは犬猫だけではありません。
ウサギをはじめとする小動物や鳥類、爬虫類、実験動物だった猿など、さまざまな経緯で保護された数多くの動物たちがいるのです。
そうして保護された動物たちが動物福祉にのっとって生活していけるよう、敷地内には建物が複数あります。
・犬を保護する建物
・家猫を保護する建物
・野良猫を保護する建物
・爬虫類を保護する建物
・動物病院
・動物のお墓
などがあり、里親希望者が見学することができるよう一般公開されています。
また譲渡希望時にはその動物の個性によって定められる条件をクリアする必要があります。
・小さな子どものいない家庭であること
・猫が出入り自由な小さなドアがあること
など、再びティアハイムに戻ることなく幸せに暮らしていけるよう慎重なマッチングが行われているのです。(参考:Berlin Easy Stay)
そしてティアハイムはたくさんのボランティアに支えられています。
敷地内ではボランティアが犬の散歩をしている姿を見ることができ、また保護されている動物の写真にはそれぞれフード代を寄付している個人スポンサーの名前を知ることができます。
ドイツで暮らす人々が動物愛護・福祉に関心を持ち、一頭でも多くの動物の幸せを願っていることが分かります。
そして、「3.Privately From Friends」は個人的な友人から仔犬を引き取ることです。
最も安価で簡単な方法だということですが、個人的には、こういったやりとりこそ誓約書と多少なりの費用(分娩費用、譲渡までにかかった飼育費用など)を支払うべきだと思っています。
なぜなら、動物に限らず安価で簡単に手に入ったものを大切にすることのできない人が一定数存在からです。
またブリーダーからの譲渡の話の際にもありましたが、引き渡し後も交流が続くと双方とも、より安心を得られますね。
これは国に関係なく日本でもできることだと思います。
イギリス・ドイツどちらも動物の幸せを願っていることが伝わってきました。
動物が生活しやすく、また幸せにすることができるヒントを得ることができていたらうれしいです。
さいごに
イギリス・ドイツは発展した愛護と福祉によって動物を尊重した社会になっているだけではなく、国をあげての活動に精力的に取り組んでいることが分かりました。
日本のペットショップは生体販売がメインです。
ですが、展示・販売を行わないショップも少しずつ増えてきています。
これもペット先進国の動物を尊重する文化や活動からヒントを得てのことだと思います。
動物の命は我々人と同じです。
イギリス・ドイツの動物を幸せにするため、生かすための活動を、日本も学んで取り入れていくことができたら人と動物とが共に生きる社会が実現するのではないでしょうか。