ドッグフードの半生はよくないという話を聞いたことはありますか?
そもそも半生は避けるべきなのかと悩むこともあるでしょう。
半生のドッグフードは使用される添加物が多く、保存方法が難しいため懸念されるケースがあります。しかし、ドライフードよりも食材に近い食感や水分含有があるため、犬の嗜好性が高く、食が細い犬や歯、あごが弱い犬には有益です。
今回の記事では、ペット栄養管理士がドッグフードの半生を解説します。
正しい保管方法や注意点を理解し、愛犬の好みにより必要に応じて取り入れられるよう、おすすめの半生のドッグフードも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
ドッグフードの半生はよくない?
結論からいうと「よくない」わけではありません。
香りや旨味が強く嗜好性が高い傾向があり、幼犬や高齢犬が食べやすい特徴があります。
しかしドライフードに比べ水分量も多く、保管方法や与え方など扱いには注意が必要です。表記される栄養成分の見方もドライフードとは異なります。また、半生の状態を維持するために使用される添加物にも着目する必要があります。
ドッグフードの半生の保管の仕方、選ぶ際の注意点もご紹介しますので、最後までご覧ください。
ドッグフードの半生とは?ドッグフードの種類
ドッグフードは、水分含有量により次の4種に分類されます。
本記事で紹介する半生フードは、発泡という粒の密度の差により分類されるセミモイストフード、ソフトドライフードを指します。砕けやすさが異なり、硬さによる食感の違いがあります。
ドッグフードの選び方についてはこちらの記事で紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
ドッグフードの半生の保管方法
ドッグフードの半生の保管は未開封と開封後で異なります。
賞味期限以内に食べきることが重要ですが、間違った保管では品質を劣化させるだけでなく、犬の体調に影響する可能性もあります。
ここからはドッグフードの半生の保管方法を解説します。
未開封の場合は直射日光の当たらない暗所で
未開封の場合は、直射日光の当たらない暗所で保管しましょう。
人の生活空間であるリビングやキッチンは、冷暖房や火を使う調理による温度変化が大きく、湿気がこもりやすいためおすすめしません。
ガスコンロや冷蔵庫などの家電製品の放熱がある場所は避けましょう。
半生のドッグフードは、カビが生えやすい水分含有量であるため、ドライフードの保管よりも温度や湿度変化に注意が必要です。
家の中では、高温多湿になりにくい暗所や、床下収納、風通しのよい収納空間がおすすめです。乾燥食材や常温の水などを保管する食材庫がある場合は、一部を愛犬用のフード保管庫にするとよいでしょう。
具体的には温度15~25℃、湿度70%以下が保てる場所が適切です。季節や気候により自然な温度変化は避けられませんが、できる限り変化がない空間を選んでください。
開封後は密閉できる容器で
開封後は空気に触れる時間を短くし、密閉できる容器で保管しましょう。
基本的に開封後すぐに食べきることをおすすめしますが、商品により内容量が多く、トッピングやおやつでの少量のみの利用では、一度で食べきれない場合もあります。
開封後は冷蔵庫で保管し、2~3日で食べきりましょう。
保管の際は、密閉できるタッパーやジッパー付きの袋の利用がおすすめです。できる限り空気を抜き、真空状態で保管してください。
あらかじめ密閉できる袋を採用しているフードや、脱酸素剤が同封されている商品もあります。
商品により開封後の保管方法がパッケージに明記されていることも多いため、適切な保管方法を守り、早めに消費しましょう。
ドッグフードの半生を選ぶ際の注意点
ドッグフードの半生は次の3項目に注意して選びましょう。
- ①危険性の高い添加物を使用していないこと
- ②主原材料が動物性たんぱく質であること
- ③個包装で使い切れること
それぞれ解説するので、内容を確認してみてください。
①危険性の高い添加物を使用していないこと
半生のドッグフードは、長期間品質を維持して保管できる商品にするため、さまざまな添加物が使用されることが多い傾向にあります。
半生フードが懸念される原因も、多くの添加物が使用されているというイメージが広まったことが要因でしょう。
ドライフードでは水分含有が少ないため細菌が繁殖しにくく、ウエットフードでは缶詰やレトルトパウチに包装され加熱殺菌するため、半生フードよりも添加物の使用が少ないためです。
安価なドッグフードの半生では、危険性が高い添加物が使用されるケースもあります。
注意すべき危険性が高い添加物は次の3つが代表的です。
- 湿潤調整剤
- 防腐剤
- 酸化防止剤
それぞれ代表的な成分名や使用される目的を解説するので、愛犬に半生のドッグフードを与える際はこれらの添加物が使用されていないフードを選択しましょう。
湿潤調整剤
湿潤調整剤とは、保湿作用があり、柔らかさを維持するために添加されます。
湿潤調整剤の水分活性を下げる効果により、微生物の活性を妨げます。
果物を砂糖漬けにするジャムや、肉や魚の塩漬けなどの貯蔵方法と同様の、腐りにくくする科学的な原理です。
ドッグフードの半生に使用される代表的な湿潤調整剤は、ソルビトール、グリセリン、プロビレングリコールです。
とくにプロビレングリコールは危険性が高い添加物であり、ペット安全法で製造基準が定められ、適量以上の使用は認められていません。
プロビレングリコールの過剰摂取は、肝臓、腎臓への負担があり、貧血、湿疹、乾燥肌、アレルギーを引き起こすとされています。
プロビレングリコールは、キャットフードでは使用禁止の添加物です。
赤血球数の減少やハインツ小体と呼ばれるヘモグロビンが変性した赤血球が増えることによる貧血のリスクがあります。
犬と猫を飼育している場合、猫が誤ってプロビレングリコールが含まれるドッグフードを食べないよう注意してください。
防腐剤・保存料
防腐剤や保存料は、細菌やカビの繁殖を抑え、食中毒を防止する効果を期待し添加されます。
ドッグフードの半生で使用される代表的な防腐剤や保存料は、ソルビン酸カリウムです。
ソルビン酸カリウムは、pH調整し、ドッグフードを酸性に傾けるため、pH調整剤としても効果のあるクエン酸や炭酸ナトリウムと併用して使用されます。
また、肉の色を表現する際に使用される、発色剤の亜硝酸ナトリウムと併用される場合がありますが、ソルビン酸カリウムと亜硝酸ナトリウムの摂取により発がん性物質が生成されるため危険です。
半生フードは、飼い主目線の購入意欲を高めるために、肉や魚の色を表現しているケースが多くあります。
犬にとって不必要な「見た目の美味しさ」にこだわる発色剤が使用されていない商品を選択してください。
酸化防止剤
酸化防止剤は、空気中の酸素や光、熱、酵素などさまざまな要因で油脂が酸化する「酸敗(さんぱい)」を防止する目的で添加されます。
酸化は臭いや味を劣化させるため、食欲低下につながります。
ドッグフードの半生で使用される代表的な酸化防止剤は、BHA、BHT、エトキシキン、ミックストコフェロール、ローズマリー抽出物です。
化学構造の異なるビタミンEの混合物であるミックストコフェロール(複数トコフェロールのミックス)やローズマリーから抽出される成分は、天然由来であるため、安全性が高く、ヒトが摂取する食品でも多く使用されます。
一方で、BHA、BHT、エトキシキンは、ペットフード安全法で使用基準が定められた危険性の高い添加物です。
過剰摂取は、大腸や膀胱、腎臓、甲状腺などの発がん性があり、皮膚炎、アレルギー発症のリスクがあります。
②主原材料が動物性たんぱく質であること
主原材料に動物性たんぱく質を使用しているドッグフードを選びましょう。
犬が主なエネルギー源として必要とする栄養素は、たんぱく質であり、主原材料が動物性たんぱく質のドッグフードは、消化性や嗜好性に優れた商品が多い特徴があります。
また、ドッグフードと水のみを与えれば問題のない「総合栄養食」の記載のある商品を選んでください。
AAFCOの基準では、ドライフードの場合、たんぱく質の含有量が18%以上、脂質量5.5%以上であることを推奨しています。
半生のドッグフードのたんぱく質含有量は、平均15%程度です。
数値を見ると、たんぱく質量が少ないのではないかと感じますが、表記方法が水分量を0(ゼロ)としたときに算出する乾物換算でない場合があります。栄養素の含有量は、フード中に含まれる比率で表示されるため、水分量の違いにより変動します。
半生のドックフードでは、水分含有量が多いため、たんぱく質含有量がドライフードに比べ少なく感じますが、総合栄養食であれば、基準に準じているため問題ありません。
注意すべきは、主原材料が穀物のドッグフードです。穀物を使用しないグレインフリーを選択する方法もあります。詳細はこちらの記事を参照してください。
また、嗜好性を向上させるための犬が好みやすいショ糖やソルビトールなどの甘味、強い香り付けする香料が添加されたドッグフードは、健康被害をともなう可能性もあります。
ヒューマングレードの原材料を使用している商品であれば安全性も高く、嗜好性を高める添加が必要ないため、安心して与えられるでしょう。
③個包装で使い切れること
ドッグフードの半生は、ドライフードに比べ、開封後素早く使用する必要があります。
開封してから数日で使い切れる個包装の商品を選択してください。
基本的に開封後は冷蔵庫保存の場合2~3日以内に食べきることがおすすめです。
食事量が少ない幼犬期や、トッピングに使用する場合は食べきれないケースもあるでしょう。
開封時に密閉できるジッパー付きの袋に小分けし、冷凍保存すると保管期間を延ばせます。冷凍保存の場合は1~2か月以内に使用してください。
冷凍保存の場合、自然解凍で食べられますが、温めて解凍する際は、加熱し過ぎに注意しましょう。
熱に弱い栄養素が破壊され、本来の成分が変わる恐れがあります。
ドッグフードの半生がおすすめの犬
ドッグフードの半生の利用は、幼犬や高齢犬、嗜好性を高めたいときにおすすめです。半生は柔らかく食べやすい、香りが強い特徴があります。
食に興味が薄い犬
食に興味がなく、食べムラがある犬におすすめです。
半生のドッグフードは、香りが強い商品が多く、嗜好性が高い特徴があります。
ドライフードを試しても、なかなか好みが見つからない、すぐに食べ飽きてしまう悩みがある場合は、半生を活用してみてください。
含有する水分が多く、ドライフードに比べ温めやすいため、体温程度の温かさを維持すると香りが強くなり嗜好性を向上させます。
歯やあごの筋肉が弱い幼犬や高齢犬
半生のドッグフードは、歯やあごの筋肉が弱い幼犬や高齢犬におすすめです。
柔らかい仕上がりのため、噛むことが苦手な犬は食べやすいでしょう。
また、水分が含まれるため胃腸内で崩れやすく、消化吸収も効率よくおこなえる特徴があります。
筆者の経験としては、離乳食を与える子犬に対して、時間のない朝、ドライフードをふやかす代替に活用していました。
手作りフードが好きな犬
手作りフードが好きな犬は、肉や魚、野菜など素材そのものの味を好み、やわらかい食感で美味しいと感じることが多いでしょう。
毎日の食事を手作りするのは、バランスを考慮した栄養価計算も難しく、手間になる場合もあります。
総合栄養食のドッグフードの半生を選択すれば、愛犬の好みの食感の食事を手軽に与えられます。
主原材料に好きな素材を使用しているドッグフードを見つけ活用するのもよいでしょう。
ドッグフードの半生でおすすめな商品3選
「ドッグフードの半生を選ぶ際の注意点」で紹介した3つの項目をクリアした、ペット栄養管理士の筆者おすすめの商品を紹介します。
筆者のペットであるチワワも美味しく食べてくれる嗜好性も高い商品です。
半生のドッグフードを試してみたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
やわか
原材料(注意点①②) | 鶏肉、玄米、大麦、かつお節、大豆、ビール酵母、チキンエキス、米油、卵黄粉末、発酵調味液、フラクトオリゴ糖、りんご、にんじん、かぼちゃ、昆布、しいたけ、コンドロイチン、セレン酵母、しょうが、ビフィズス菌、グルコサミン、L-トレオニン、ミネラル類(牛骨カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、グルコン酸亜鉛、ピロリン酸第二鉄、グルコン酸銅)、ビタミン類(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB2、ビタミンB12、パントテン酸カルシウム) |
栄養成分 | たんぱく質:17.3%以上 脂質:7.6%以上 カロリー:287(100g/kcal) |
種類 | 総合栄養食 |
内容量(注意点③) | 1.2㎏/袋(80g×15袋) |
対象年齢 | 全年齢 |
公式サイト | https://hana.inuneko-sukoyaka.jp/regular_courses/71 |
やわかは、生肉を加工した商品であるため、形が不揃いな特徴があります。
人工添加物を使用しておらず、着色やオイル加工もありません。ビフィズス菌やオリゴ糖を配合しているため、腸内環境を整える効果も期待でき、消化能力が低い幼犬や高齢犬にも適しているでしょう。
やわかを与える際は、5㎏の成犬で130g程度です。
80gの個包装になっているため、毎食新鮮な状態で与えられ、嗜好性や安全面が考慮されています。
Perro
原材料(注意点①②) | 鶏肉(国産若鶏)、鶏卵、ラード、鰹節(焼津産)、豚骨コラーゲンエキス、ヨーグルト、鶏軟骨(グルコサミン&コンドロイチン源)※全て国産/小麦粉※国産/米※国産/野菜:トマトジュース(食塩無添加)、にんじん(無農薬無化学肥料栽培)、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、アスパラガス ※全て国産/その他:りんごジュース(無添加ストレート:青森産)、酵母エキス、イースト、干し椎茸、海藻(昆布、ワカメ、ヒジキ、焼き海苔)※全て国産/ビタミン・ミネラル類:骨粉、塩化カリウム、グルコン酸亜鉛、ピロリン酸第二鉄、ビタミンE、ビタミンB12、グルコン酸銅、ビタミンA、ビタミンD、パントテン酸カルシウム、ヨウ素酸カルシウム |
栄養成分 | たんぱく質:15%以上 脂質:8%以上 カロリー:310kcal(100g/kcal) |
種類 | 総合栄養食 |
内容量(注意点③) | 600g |
対象年齢 | 全年齢 |
公式サイト | https://www.cutiashop.jp/shopdetail/002001000001/ |
Perroは、イースト菌で発酵しオーブンで焼き上げる製造方法であるため、柔らかく水分が含まれた半生のドッグフードです。
鶏肉を主原材料に使用しており、たんぱく質は乾物換算21%以上です。
アミノ酸バランスがよい卵や、関節や骨を強化するコラーゲン、グルコサミンを配合しているため、高齢犬にも適した栄養が豊富に含まれています。
Perroを与える際は、5㎏の成犬で1日100g程度です。すぐに食べきれない場合は、開封時に小分けし冷凍保存するとよいでしょう。
自然解凍で食べられますが、電子レンジで数秒温めると香りや旨味が増し、食いつきがよくなります。
YumYumYum!やわらかドライタイプ
「チキンの場合」
原材料(注意点①②) | 鶏肉、大麦、玄米、カツオ節、ビール酵母、大麦ぬか、えんどう豆タンパク、鶏がらスープ、酵母エキス、米油、卵黄パウダー、にんじん、かぼちゃ、ブロッコリー、フラクトオリゴ糖、発酵調味液、昆布、しいたけ、セレン酵母、L-トレオニン、ミネラル類(リン酸三カルシウム、卵殻カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グルコン酸亜鉛、ピロリン酸第二鉄、グルコン酸銅)、ビタミン類(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB2、ビタミンB12、パントテン酸カルシウム)、酸化防止剤(ローズマリー抽出物、ミックストコフェロール) |
栄養成分 | たんぱく質:18.7%以上 脂質:6.5%以上 カロリー:277kcal(100g/kcal) |
種類 | 総合栄養食 |
内容量(注意点③) | 800g |
対象年齢 | 全年齢 |
公式サイト | https://yumyumyum.jp/lineup/chiken-softdry/ |
YumYumYum!やわらかドライタイプは、鶏肉やマグロなどヒューマングレードの食材にこだわり、野菜も多く配合しているため、たんぱく質に加え、ビタミンやミネラルの摂取もできます。
レトルト加工を施した包装で、保湿剤や保存料を使用せずに長期間保管が可能です。
YumYumYum!やわらかドライタイプを与える目安量は、5㎏の成犬の場合1日300gであるため、2~3日分程度で使い切れるサイズです。
袋を開けた時に感じる素材の香りで嗜好性も高く、粒が小さいのも幼犬や小型犬におすすめな特徴です。
まとめ
本記事では、ドッグフードの半生を解説しました。
よくないと耳にする機会が多い半生フードですが、必ずしも与えてはいけないドッグフードではありません。
ドッグフードの半生を与える際は、保存方法や選び方に着目し、衛生的、健康的に安全なものを選択してください。
保管方法や保管期間、開封後の扱い方がドライフードとは異なる部分も多くあります。
嗜好性や消化のしやすさから、半生のドッグフードが適した愛犬に活用できるよう正しい理解を深めましょう。