ふと気づくとキャットフードの賞味期限が切れている(または切れそう)という経験はお持ちでしょうか?
未開封であれば「健康面に問題はないかな」と、取り扱いに迷うはずです。
未開封であっても、キャットフードの賞味期限切れは危険です。香りや味が劣化するのみならず、猫の体調を崩す原因になりかねません。
今回の記事では、ペット栄養管理士がキャットフードの賞味期限について解説します。
どのような基準で判断すべきか、どんな危険に注意すべきか、どうやって大きな失敗を回避できるか等、わかりやすくご紹介しますので最後までご覧ください。
キャットフードの「賞味」期限とは?
キャットフードの「賞味」期限とは、ペットフード安全法で表示義務された項目です。
安全に食べられる期間であり、期限を守って使うことが求められます。
キャットフードに表示される賞味期限について解説します。
賞味期限と消費期限の違い
賞味期限と消費期限の違いは、食品衛生法で定められた期限表示方法で、食品の品質劣化速度による区別です。
ヒトの食品では、肉や魚、おにぎりや弁当などの加工調理済み食品で消費期限、スナック菓子や缶詰、即席めんなどで賞味期限が表示されます。
賞味期限と消費期限の違いの詳細は、次の表のとおりです。
賞味期限 | |
消費期限 |
キャットフードでは、ペットフード安全法で、賞味期限の表示が義務付けられています。
一般的なキャットフードは調理済み食品や生鮮食品の区分でなく、比較的劣化しにくいドライフードや、缶詰、レトルト加工されたウエットフードが多いため、表示方法は賞味期限が採用されています。
ペットフードには、消費期限や製造年月日の明記が義務付けられておらず、必ずしも安全性が高く、健康被害が起こらない期間は、飼い主の判断が重要です。
保管方法を正しく守り、開封後の取り扱いにも気を配りましょう。
タイプごとのキャットフードの賞味期限
キャットフードには、ドライフードとウエットフードがありますが、製造工程や水分含有量の違いにより、取り扱い方が異なります。
国内で製造、販売されるキャットフードは、「年/月/日」で明記されるため一目でわかりやすいです。
しかし、海外の製品は英語表記であり、誤解を与えやすい商品もあります。
海外で製造される商品でも、販売元が国内のメーカーの場合は、わかりやすい表記が明記されますが…
- アメリカでは「月/日/年」
- イギリスでは「日/月/年」
といった表記が一般的です。
「賞味期限」の意味の英語で、BEST BYやBest Beforeなど、日本人には馴染みのない表記もあります。
また、賞味期限はあくまで未開封であり、正しい保管方法で保管した場合の期限です。
開封後の使用期限は明記されていないため、飼い主の判断が求められます。
ドライフード、ウエットフードの場合で解説します。
ドライフード
ドライフードの場合、未開封であれば約1年から1年半の賞味期限で製造されるキャットフードが大半です。
使われる原材料や、保存料や酸化防止剤などの添加により、メーカーにより定められた賞味期限が異なります。
開封後は1か月程度で食べきるとよいです。密閉容器を利用し、常温での保管がおすすめです。
冷暗所で保管するようパッケージに記載されていますが、冷蔵庫での保管は出し入れで温度変化が大きくなるためカビが生えやすい原因になります。
未開封 | 約1年~1年半 |
開封後 | 約1か月 |
ドライフードは香りや風味が落ちて劣化していても、見た目の変化が少ないため、気が付きにくい特徴があります。
開封日を記録し、劣化を防ぐ保管方法を守りましょう。
ウエットフード
ウエットウエットの場合、未開封であれば2~3年の保存期間が設けられています。
ドライフードよりも長期間保管できるため、災害時用の備蓄品として活用できます。
ウエットフードは、缶詰、レトルトパウチ、アルミトレーなどの容器が使用されますが、缶詰はとくに密閉されるため、保存性が高く、賞味期限が長い傾向にあります。
匂い移りしやすいため、ほかの食品や薬品と一緒に保管しないよう注意してください。
未開封 | 約2~3年 |
開封後 | 1~2日 |
ウエットフードは水分含有量が多く、劣化しやすいため、開封後は冷蔵庫で保管し、できる限り素早く食べきりましょう。
コーティング加工している缶詰もありますが、缶自体も酸化しやすく、保管する場合は、密閉できる容器に移し替えることをおすすめします。
キャットフードの賞味期限切れは危険!
キャットフードの賞味期限切れは「危険」です。
もったいないと感じる気持ちはわかりますが、猫の健康のために与えず破棄してください。
賞味期限切れのキャットフードは、食いつきが悪くなるだけでなく、適切な栄養素の摂取ができず、細菌やカビによる健康被害も考えられます。
それぞれについて以下で詳しく解説します。危険である理由や対策を理解しましょう。
香りや風味の劣化で食いつきが悪くなる
賞味期限切れのキャットフードは、香りや風味が劣化します。
猫は嗅覚に優れているため、香りが落ちたフードを好まず食いつきが悪くなる可能性が高いです。
猫の嗅覚は、犬ほどではないもののヒトの数万倍といわれています。
そもそもの生態として、ネズミや虫などその場で食べきれる小さい獲物を狩りし、毎食新鮮な肉を食べる野生の名残で、家猫でも新鮮な食事を好みます。
一度劣化したキャットフードを与えてしまい「美味しくないもの」と判断した場合、新たに新鮮なキャットフードを与えても、食べなくなるケースもあります。
細菌やカビの繁殖で体調を崩す
賞味期限が切れると、香りや風味が悪くなるだけではなく、細菌やカビが繁殖する可能性があります。
賞味期限切れは、表示方法でうたわれるとおり、「期限を過ぎても必ずしも安全性に問題が発生するとは限らない」ため、飼い主の適切な判断が必要です。
ドライフードでは、変色しにくいため、腐敗していても気が付きにくいものです。ウエットフードでは、色が変わったり、水分が減ったりと変化しているケースもあります。
細菌やカビが最も繁殖する条件下は、水分含有量や栄養源となる脂質が多く、適度な温度や酸素がある場所です。繁殖条件がそろわない場合には、腐敗しにくいこともあり、賞味期限切れが必ずしも腐るわけではありません。
しかし、万が一腐敗した状態のキャットフードを食べた場合、嘔吐や下痢、軟便、元気消失、水分不足、発熱などの「食中毒」の症状が起こります。
胃腸に負担を与え、免疫力が低下し、最悪の場合、長期間の治療が必要な消化器官の疾患の危険性も高まります。
成分のバランスが崩れ栄養不足に陥る
賞味期限が切れ劣化したキャットフードは、含有する成分のバランスが崩れ、栄養不足に陥る可能性があります。
賞味期限切れのキャットフードでは一般的に、脂質の酸化や、ビタミンやミネラルが失われます。
とくにビタミンやミネラルは、熱や湿気に弱い成分が多く、酸化した脂質から身体を守る抗酸化作用も機能しなくなります。
キャットフードに含まれる脂質が酸化すると、過酸化脂質を生成します。過酸化脂質は、老化を早めるといわれる物質です。
酸化したキャットフードを食べ続けた場合、過酸化脂質が体内で蓄積、血管内に付着し血流を滞らせ、血管のつまりや心筋梗塞を引き起こす可能性があります。
皮膚炎や認知機能の低下、発がんのリスクもあるので注意が必要です。
これからキャットフードの賞味期限を切らさない工夫
キャットフードの賞味期限を切らさない工夫を心がけることで、賞味期限切れの悩みを解消できます。
それぞれ解説するので、キャットフード購入の際のポイントとして参考にしてみてください。
使用量を把握する
キャットフードの賞味期限を切らさないためには、使用量の把握が重要です。
使用できる分を定期的に購入すれば、賞味期限が切れる心配もなくなります。
キャットフードの購入は1か月分が理想です。
正しい保管方法を守っても、気温や湿度など環境が影響し、製造から日数が経過すれば、劣化の原因になります。
安いからといってまとめ買いは禁物です。災害時用でストックする場合はローリングストックがおすすめです。
ローリングストックとは、使った分を買い足す備蓄方法で、災害時に備えた食品ストックの方法としてヒト用の備蓄でも活用されています。
普段から少し多めに保管し、古いものから日常で使用します。
使った分を買い足すことで、常に一定量ストックできるため、いざというときに困ることもなく、賞味期限が切れる可能性も少ないです。
賞味期限を確認する
キャットフードにはペットフード安全法に従い、必ず賞味期限が明記されています。
購入時は賞味期限を確認し、期限内に使用できるかチェックしてください。
ドライフードの場合、多くの商品が1年から1年半程度の期限が設定されますが、商品に使用される添加物や食材により、賞味期限の差があります。
ヒューマングレードの食材が使われ、無添加にこだわった高品質な商品は、栄養面で優れているものの、保存料が添加されていないため、賞味期限が短い傾向にあります。
天然由来の酸化防止剤を活用し、賞味期限を延ばす配慮がされた場合もあるため、原材料も一緒に確認するとよいでしょう。
公式サイトから購入する
キャットフードの購入は公式サイトを利用するのが便利です。
というのも、店頭で購入する際は、賞味期限を確認してから購入できますが、インターネットでの購入では賞味期限を確認できないケースもあります。
大半の通販サイトでは、大量仕入れで倉庫に保管された商品を購入者に郵送するため、購入時期により、商品が手元に届くときには、賞味期限が近すぎることもあります。
一方、公式サイトでの購入は、基本的に製造から日数が経過していない商品を販売しています。毎月の使用量が把握できている場合は、定期便の利用もおすすめです。
まとめ買いでお得になるサービスや、セールス品として通常よりも安価に購入できる場合は、賞味期限が近い可能性があります。
賞味期限が確認できないインターネットでの購入時は特に注意しましょう。
キャットフードの賞味期限でよくある質問
キャットフードの賞味期限に関するよくある質問に回答します。
賞味期限が切れない工夫が求められますが、正しい保管方法でキャットフードの劣化を抑えることも必須です。
また使い切れない量が残っている場合に、無駄にしない方法を知っておくのもよいでしょう。
それぞれ解説するので、参考にしてみてください。
キャットフードの保管方法は?
キャットフードの保管は、湿度や温度に気を付けおこないましょう。
未開封の場合は、保管に適した温度35℃以下、湿気70%以下の空気がこもらない風通しのよい空間を選択してください。
直射日光の当たらない暗所であれば、キャットフードの酸化を防げます。
開封後の保管は、ドライフードの場合、空気に触れないよう密閉できる容器に移し替えたり、ジッパー付きの袋を活用したりしましょう。
酸素を吸着し、劣化変質を防ぐ脱酸素剤を、一緒に入れておくのもおすすめです。
ウエットフードの場合は、開封後すぐに食べきることを推奨しますが、残る場合は必ず冷蔵庫で保管し1~2日以内に使いましょう。
缶詰用のふたの使用やタッパーに移し替え、酸化して味の劣化や香りが飛ばないように気を付けてください。
また、筆者の経験ですが、猫はどこでも手が届きます。高い場所や蓋つきの容器でも、「気が付いたらイタズラしている」ことも。
猫は嗅覚に優れ、保管場所を把握できるため、猫が入れない空間や鍵付きの棚に保管しましょう。
キャットフードの賞味期限が近いのに使い切れない場合は?
キャットフードの賞味期限が近いのに使い切れない場合は、寄付する手段もあります。
保護団体やブリーダー、ペットショップ、ペットホテルなどで受け付けていることがあります。
しかし、猫の体調を最優先するため、購入経路がわからない商品や、寄付先でも賞味期限内に使い切れない期間のフードなど、さまざまな理由で受け付けられないケースも考えられます。
もちろんですが、賞味期限切れのキャットフードは寄付の対象ではありません。寄付する場合でも、大事な猫の食事であることに変わりないため、責任を持つことが大切です。
使い切れないキャットフードがある場合は、できる限り早めに寄付を相談し、受け付けているか確認しましょう。
まとめ
本記事では、キャットフードの賞味期限切れの危険性を解説しました。
香りや風味が劣化し、嗜好性が低下するのみならず、栄養不足や嘔吐、下痢などの健康被害のリスクもあるため、賞味期限が切れたキャットフードを与えてはいけません。
賞味期限切れのキャットフードを破棄するのは、もったいないと感じますが、愛猫の健康が最優先です。
キャットフードを購入する際は、期限切れにならないよう使い切れる量を的確に把握してください。
温度や湿度に気を付けた保管方法で未開封状態での劣化を防ぎ、新鮮で美味しい食事を与えられるよう心掛けましょう。