子どもがいる家庭で動物を飼うことを考えている保護者もいるのではないでしょうか。
「子どもとペットが一緒に暮らせるのか」「どんな影響があるのだろう」と不安や疑問を抱く方もいますよね。
この記事では実際にペットを迎えた場合に子どもに与える影響について、7つの視点から解説していきます。
動物を飼うか迷っている方は、メリットやリスクをしっかり理解した上で決めることが大切です。
保育士として10年間動物が関わる情操教育を行い、現在はトリミング業に携わっている筆者が実際に経験したことも踏まえてお話していきます。
ペットが子どもに与える7つの影響
ペットが子どもに与える影響とは、どのようなものがあるのでしょうか?
「いい影響を与えそうだけど、具体的にはあまりわかっていない…」と感じる方もいますよね。
7つの視点から、メリットとして考えられる部分を紹介していきます。
1. 命の大切さを学べる
一番大きな影響と考えられるのは、命の大切さを学べることです。
身近な存在であるペットとして動物と関わることで、生き物の命を体感できます。
目に見えない、言葉で説明することが難しいものだからこそ、子どもが経験として得られるものは大きいはずです。
我が子が動物に初めて触れた時の感想は「あったかい」でした。
大人が当たり前に思う部分も、子どもにとっては「命」を実感する瞬間なのだと感じます。
また、ペットとの死別を経験することで、動物の命が永遠ではないことを知る機会となります。
我が家で以前ハムスターを飼っていた際、亡くなってしまったことを理解するのに少し時間がかかりましたが、丁寧に伝えたり時間が経ってから写真を見返したりすることで大切な思い出に変えられた様子です。
2. 思いやりや動物を慈しむ心が芽生える
自分より小さい命を前にすると、自然と大切に扱おうとする思いやりが芽生えます。
優しく触れたりお世話をしたりする中で、動物に親しみを持ち慈しむ心が育まれるものです。
人と動物が共に生きる中で、この思いやりは欠かせない部分ですよね。
初めはどう扱っていいかわからず戸惑う様子が見られますが、毎日動物を観察し触れ合う中で子どもなりに試行錯誤して学んでいきます。
例えば、触る時は動物が痛くないようにそっとなでたり、大きな声や音は驚かせてしまうことがわかると意識して優しく声をかけたりしていました。
3. コミュニケーション能力が養われる
言葉が通じない動物だからこそ、表情や仕草から思いを汲み取ることが必要です。
子どもなりに自分で考えたり試したりしながら、動物とどうしたらコミュニケーションがうまく取れるのか模索します。
その中で、相手の立場に立つというコミュニケーションの基本となる力が養われていきます。
我が家では犬を飼っていますが、今では犬の目線や仕草だけで何をしてほしいのか子どもが察するようになりました。
近くに来たら「なでてほしい」、一定の方向を見ながら何か訴えていたら「お気に入りのおもちゃを取ってほしい」などがわかり、何も言わずとも応えてあげています。
4. 好奇心が刺激され観察力が身につく
動物は、子どもにとって不思議がたくさん詰まっている生き物です。
「どうして?」「なんで?」と好奇心が次々に刺激され、新たな発見もたくさんあります。
自然と動きや習性を観察する力や集中力が身につく機会となるでしょう。
例えば…
・虫を見て「なんで飛べるの?」→「羽があるから」と気づく
・ハムスターが床材を掘り続けているのを見て「どうして何もないのにホリホリしてるの?」→ハムスターは地面に穴を掘って身を隠すという野生の習性があることを知る
・犬が急に吠えるのを見て「なんですぐ吠えるの?」→チャイムや人の声、人間には聞こえないほどの小さな音も聞こえていて警戒心から吠えていることがわかる
5. 責任感が生まれる
ペットを迎えると、ただかわいがるだけでなく日々のお世話が必須ですよね。
自分が水や食べ物を与えないと動物は生きられないことを学び、責任感が生まれるきっかけとなります。
一時的ではなく継続して何かをやり続けることは子どもにとって簡単ではないからこそ、大きな影響となるはずです。
子どもは好奇心旺盛なので初めはなんでもやりたがりますが、慣れてくると飽きたり他のことに関心が向いたりしがちです。
しかし、大切なペットの命がかかっているとわかれば意識が変わることもあります。
我が子も外で遊ぶのが楽しくてなかなか帰りたがらない時でも、「〇〇(ペットの名前)にご飯あげないとだよ。お腹空いちゃうよ」などの声をかけると「あ、そうだった」と納得して帰り、急いでご飯をあげてくれます。
6. 情緒が安定する
動物と関わることで、幸せホルモンと呼ばれる「オキシトシン」が分泌されると言われています。
イヌの飼い主にむけた視線はアタッチメント行動として機能し,飼い主のオキシトシン分泌を促進するとともに,それによって促進した相互のやりとりはイヌのオキシトシン分泌も促進することが示された。
参照:オキシトシンによるヒトとイヌの関係性
その影響で、ペットを飼うと子どものストレスが軽減され情緒が安定することが期待できます。
子どもながらに外で頑張って疲れた心を、動物と触れ合うことで癒せたら幸せなことですよね。
動物と目を合わせるアイコンタクトだけでも私たちの心を癒してくれますが、子どもは触って「ふわふわ」「あったかい」などの感触でも癒しを感じていることが多いです。
学校や友達関係では、頑張らなければならないことが多かったり、楽しい反面うまくいかないストレスも感じたりしますが、ペットとの関係はそんなことを忘れさせてくれる効果もあるようです。
動物もコミュニケーションが取れて喜んでいるので、お互いにとって大切な時間になっています。
7. 健康的な生活リズムになる
ペットを迎えると、お世話をするために朝はしっかり早起きして健康的な生活リズムになります。
何も張り合いがない日々ではだらしなくなってしまいがちですが、自分がやるべきことがあればいきいきと自主性を持って生活できます。
ペットと一緒に散歩することが習慣づけば、適度な運動にもなり健康に過ごせますね。
我が家は特に夏休みの間、日中は暑すぎて犬の散歩に行けないので朝早く起きて一緒に散歩に行っていました。
休みでもだらだらせずしっかり外に出て運動ができ、ペットも気分転換ができるのでとてもいい習慣です。
散歩が必要ないペットでも、ご飯をあげる、遊ぶ、ケージの掃除をするなど時間を有意義に使えるかと思います。
子どもがいる家庭でペットを飼う注意点
ペットを飼うメリットはたくさんありますが、大切な命を軽い気持ちで迎えることのないよう事前準備が必要です。
子どもがいる家庭でペットを飼うリスクや注意点も把握しておきましょう。
7つの要点をご紹介します。
1. 家族でしっかり話し合う
ペットを迎えるためには、家族全員の合意が必要です。
決して衝動的に迎えたり、誰か一人でも反対している中で無理に決めたりすることのないようにしましょう。
合意が得られていない状態では、家族にとっても動物にとっても100%幸せとは言えません。
子どもにも事前に迎えた場合のイメージができるよう話をしておくことが大切です。
例えば、毎日ご飯をあげたり散歩に行ったりする必要がある、旅行にはなかなか行けないなど制限があることも理解できるようにしましょう。
2. アレルギーがないか確認する
動物アレルギーがある家族がいる場合、飼うことが難しくなってしまうリスクがあります。
実際にペットを手放してしまう人の中には、アレルギーが判明して飼えなくなったというケースも少なくありません。
抜け毛が少なくアレルギー反応が出にくい犬種を選ぶ、掃除をこまめにするなどで対策が可能な場合もありますが、服薬が必要になったり重度では命に関わったりする危険性もあります。
迎えてから判明することのないよう、事前に検査をしたり実際に飼おうと思っている動物と触れ合ったりして、アレルギーがないかの確認をしておきましょう。
3. ライフプランを計画しておく
引っ越しや転勤など今後のライフプランを計画しておくことも、ペットを迎えるためには大切なことです。
引っ越し先にペットを連れて行ける場合ならいいのですが、先のことを考えずに飼うことが難しくなって手放す…というケースが多いのも事実です。
家族構成が変わる可能性があるか、仕事や収入の変化なども含め、ライフプランをしっかり考えておきましょう。
もちろん考えていた通りにならない場合や予測できなかった状況になる可能性もあるかと思いますが、そうなった時にどうするのか対処法を考えておくことも飼い主の責任になります。
4. 安全な環境を整える
子どもと動物が一緒に暮らすためには、安全な環境づくりが大切です。
子どもの年齢や迎える動物の種類、大きさ、動きなどを考えて事前に家の中を整えておきましょう。
特に年齢の低い子どもがいる場合、ペットとの暮らしに慣れるまではお互いにストレスがかからない配慮が必要になります。
必要に応じてサークルや柵の設置など、人間も動物も怪我をしないような環境が必須です。
動物のお世話は大変なことが多いので、子どもの身辺自立がある程度進み手がかからなくなる3歳以降にペットを迎えるのが望ましいと言われています。
また、動物の死の概念を理解できるのも3~6歳頃という研究があるように、ペットの命を大切にする意識が生まれる年齢での飼育がベストと考えます。
死の不動性(生命機能の停止)は 4 歳 7 ヶ月,死の不可逆性は 3 歳 9 ヶ月から理解し始め,6 歳前後でほとんどの幼児が理解するとし,死の普遍性は 4 歳 3 ヶ月から理解し始め 6 歳 2 ヶ月以上でほとんどの幼児が理解するとしている。
参照:幼児の動物の死の概念と,ペットロス経験後の生命観の変化に関する研究
5. 子どもに役割を与える
ペットを迎えて終わり、かわいがるだけ、などプレゼント感覚にならないよう保護者が導くことも大切です。
水換えや食事を与えるなど、子どもにできる範囲で役割を与えましょう。
ただし一度に与える食事量や散歩など、動物の健康や安全に関わることは決して任せきりにはせずきちんと見届けが必要です。
我が子も自分にできることが見つかると、自発的に動いたり達成感を味わったりして喜んで世話を続けています。
決めた役割をこなしたらシールを貼ったりスタンプを押したりするなどの習慣づけも効果的ですが、それが目的となってしまわないよう、できたことを褒めたり動物が喜んでいることを伝えたりしましょう。
6. 保護者がペットを大切にする姿を見せる
子どもが自分で考えて自然に身につく部分もありますが、保護者の動物に対する姿勢が大きな影響を与えることも多いです。
私が教えるつもりもなく自然にやっていたことや声のかけ方を、子どもも同じように真似していたことには驚きました。
逆に考えれば保護者がペットを大切に扱わなかったり、世話を十分にしなかったりする姿を見れば、子どももそれでいいという認識になってしまいます。
せっかくの命の大切さを学べる機会が逆効果になってしまわないよう、まずは保護者がペットを大切にする姿を見せていきましょう。
7. ペットの死に対する子どもの心のケア
命ある生き物だからこそ、ペットの死は避けては通れません。
毎日一緒に過ごし、家族であり友だちであり相棒でもあったペットがいなくなることは、子どもの心に大きな穴が開いてしまうでしょう。
しかし、決してネガティブな経験として終わるのではなく、命の重みや動物に対する敬意、感謝を深める機会となってほしいです。
その悲しみにしっかりと寄り添い、思いを受け止めながら一緒に乗り越えることで思い出として大切にしていく心のケアが重要になります。
まとめ
ペットを迎えることで子どもに与える影響は大きく、情操教育として命の大切さや思いやりを育む機会となります。
しかし、適切な環境や大人の見守りなしではその機会が逆効果になってしまう危険性も忘れてはなりません。
様々な注意点を理解した上で、しっかりと家族で話し合って決めてほしいです。
あたたかな触れ合いの中で、幸せに過ごす子どもと動物が増えることを願っています。
そして、その思いを学んだ子どもたちが未来で動物たちとよりよい関係性を作ってくれることを信じています。
最後までお読みいただきありがとうございました。