ドッグフードの袋を開けた際、袋の内部やドッグフードがべたつくと感じたことがある方もいるのではないでしょうか。
べたつきの原因は、ドッグフードのオイルコーティングです。
ドッグフードのオイルコーティングは、嗜好性や栄養面の向上を促す役割がありますが、脂質であるため酸化しやすい点が懸念されます。
酸化したドッグフードは、犬の身体に悪影響があり、使用される酸化防止剤も健康にリスクを及ぼします。
本記事では、ペット栄養管理士が、オイルコーティングなし(ノンオイルコーティング)のドッグフードを推奨する理由を解説します。
ノンオイルコーティングのドッグフードを選ぶ際の確認ポイントや、おすすめの商品も紹介します。
ドッグフードのオイルコーティングとは?
オイルコーティングとは、ドライフードの製造工程で、フードの表面に油を吹き付けることです。
空気に触れて酸化しないよう、真空状態でリキッド(液体)タイプや粉末タイプの油を粒に覆わせるコーティングの方法で加工されます。
オイルコーティングの目的は、
- 犬の食欲増進:香りが増す
- 脂質の摂取を促す:ドライフードの製造で使用されるミートミールや乾燥粉末の肉、魚は、高温加熱、加圧により、脂質が減少するため人工的にプラスする
であり、犬の嗜好性や栄養面でメリットがあります。
オイルコーティングされたドッグフードの問題点
オイルコーティングにメリットはあるものの、懸念される点もあります。
酸化防止剤の添加や、犬の身体への影響があるため、オイルコーティングされたドッグフードは避けた方がよいでしょう。
オイルコーティングのドッグフードのデメリットを解説します。
酸化しやすいため酸化防止剤が添加される
オイルコーティングされたドライフードは、酸化防止剤の使用が必須です。
オイルコーティングは、表面に脂質を添加させるため、空気に触れると酸化しやすく、ドッグフードの風味の劣化や栄養価を低下させます。
脂質の酸化を抑制するため、酸化防止剤の添加が必須になりますが、使用する酸化防止剤の種類には、犬の身体に悪影響を及ぼすものもあります。
危険度が高い酸化防止剤は使用量が定められ、過剰摂取をするとガンや皮膚炎などのリスクが伴います。
安全面が懸念される酸化防止剤は、エトキシキン、BHT、BHA、没食子酸プロピル(もっしょくしさんプロピル)です。
酸化防止剤の中には、天然由来の成分であるアスコルビン酸、ミックストコフェロール、ローズマリー抽出物が使用される場合もあります。
化学的な成分ではないため、健康被害はなく、摂取しても問題ない酸化防止剤です。
没食子酸プロピルについて
十分なエビデンスのあるデータがなく、ペットフード安全法で使用上限量が定められていない酸化防止剤です。BHT、BHAよりも強力な酸化防止剤の効果があります。
人の食品では、1日の許容量が定められているため、今後は使用上限量が設定されると考えられます。
涙焼けや皮膚トラブルの原因の可能性がある
酸化したドッグフードや、酸化防止剤の影響で、涙焼けや皮膚トラブルの原因の可能性があります。
酸化した脂質を摂取すると、動脈硬化やガン、消化器障害、皮膚炎、アレルギー、心臓疾患などの疾患リスクが高まります。
また、酸化防止剤が原因でアレルギー反応が起こることもあり、赤みやかゆみ、脱毛などの皮膚トラブルの症状もあるでしょう。
オイルコーティングされた脂質は、ドッグフード中に含まれる脂質と異なる成分である場合が多く、上手く代謝できない犬もいます。
エネルギー代謝できない脂質は、老廃物として排出されるため、涙に脂質が混ざる涙焼けの要因になり兼ねません。
また、犬がドッグフードを食べる際、丸呑みして嚙み砕かない子もいます。
丸呑みするとオイルコーティングのドッグフードは、消化されにくく、必要な栄養素が吸収できない可能性も示唆されます。
オイルコーティングなしのドッグフードのメリット
ここからは、ノンオイルコーティングのドッグフードのメリットを解説します。
- 犬の身体への負担を軽減できる
- 犬の身体への負担を軽減できる
- 過剰なカロリー摂取を避けられる
ノンオイルコーティングのドッグフードであれば、安全性が高く、犬の健康被害も少ないとされます。
犬の身体への負担を軽減できる
ノンオイルコーティングのドッグフードは、犬の身体への負担を軽減できます。
表面に脂質が添加されていないため、オイルコーティングのドッグフードに比べ、酸化しづらく、酸化防止剤の添加をおこなわないドッグフードが多いです。
また、無添加にこだわるドッグフードは、高品質な原材料を使用し、ドッグフードに含まれる肉や魚の脂質も消化しやすい特徴があります。
消化性に優れたドッグフードは、栄養素の吸収や利用効率が高く、健康的な被毛や皮膚を維持するのに効果的です。
アレルギーが発症しにくく、食物アレルギーのある犬や涙焼けで悩む犬には適しています。
本来の原材料の味が楽しめる
ノンオイルコーティングのドッグフードは、人工的な油がコーティングされていないので、本来の肉や魚の匂いや風味を楽しめます。
動物性の原材料の匂いは、犬の嗜好性が高く、野性的な本能で食いつきをよくします。
また、ノンオイルコーティングのドッグフードの酸化しにくい性質で、開封後も香りや風味の劣化が緩やかです。
もちろん、ノンオイルコーティングのドッグフードでも、賞味期限を守り、正しく保管しなければ劣化します。
保存料や酸化防止剤などの賞味期限を長く保つ加工がされていない、無添加にこだわるドッグフードは、賞味期限が短いことには注意しましょう。
過剰なカロリー摂取を避けられる
ノンオイルコーティングのドッグフードは、過剰なカロリー摂取を避けられます。
脂質の栄養価を向上させるためにオイルコーティングされますが、脂質量が増すためカロリーが高くなります。
エネルギー摂取の必要がある場合には適していると思われがちですが、オイルコーティングの脂質は代謝しにくい成分です。
脂質量があるのにもかかわらず、エネルギー代謝されないため、脂肪として体内に蓄積し、肥満の原因になります。
熱湯にドッグフードを浸し、油抜きすれば、カロリーカットにはなりますが、手間や時間もかかります。
ダイエットしたい犬や、太りやすい去勢避妊手術後の犬には、ノンオイルコーティングのドッグフードが適しています。
ノンオイルコーティングのドッグフードを選ぶには?
ノンオイルコーティングのドッグフードは、その旨がパッケージに記載されていることが多く、比較的簡単に見分けることができます。
しかし、オイルコーティングしている旨は、記載されず、一目ではわかりにくい場合もあります。
成分表の脂質含有パーセントが高いことが、オイルコーティングされていることを意味するわけではないため、注意しましょう。
ここからは、オイルコーティングの有無を確認するポイントを紹介します。
原材料を確認する
オイルコーティングの有無は、原材料を確認します。
ノンオイルコーティングのドッグフードの場合、無添加や自然由来の原材料と記載されることが多く、ノンオイルコーティングを謳う商品もあります。
一方、オイルコーティングされたドッグフードには明記がなく、使用される原材料から推測する必要があります。
オイルコーティングされたドッグフードの原材料の一覧には、
- 植物性油脂
- 動物性油脂
- ~オイル
の表記がある場合が多いです。
また、先述した安全性が懸念される酸化防止剤が含まれる場合も、オイルコーティングを疑うべきです。
オイルコーティングに使用される原材料は、あいまいな表記も多いためより注意が必要です。
匂いを確認する
オイルコーティングされたフードは、強い匂いが特徴です。
袋を開けた際、鼻に付く強力な匂いは、オイルコーティングの可能性が高いです。
人によっては、臭いと感じるレベルの商品もあります。
犬は嗅覚が人よりも敏感なため、ノンオイルコーティングでも十分に美味しさを感じます。
質の高い原材料を使用すれば、自然由来の香りで食いつきもよく、オイルコーティングの必要性がありません。
むしろ、粗悪な原材料を使用している場合に、強い匂いでごまかす目的もあります。ヒューマングレードの原材料や産地の表記が明確なドッグフードを選択しましょう。
パッケージ内部のべたつきを確認する
パッケージ内部のべたつきで、オイルコーティングの有無を確認できます。
オイルコーティングされたドッグフードは、袋の内部に油が付着しているため、油分がべたつきます。手で触ると表面の油が手に付き、ドッグフードの器も油っぽくなります。
また、水に浮かべるとすぐに油が浮遊する、1日以上経過してもドッグフードが沈まない場合は、オイルコーティングされている可能性があります。表面がコーティングされ、水が吸収されないためです。
【ペット栄養管理士推奨】ノンオイルコーティングのドッグフード5選
ペット栄養管理士の筆者がおすすめする、ノンオイルコーティングのドッグフードを5つ紹介します。
愛用者の声や、実際にペットのチワワが食べたドッグフードの感想も紹介するので、参考にしてみてください。
PERORI
PERORIは、株式会社RESTAが販売する、新鮮で安全な食材を厳選して作った国産、無添加のドッグフードです。
無添加にこだわり、不要な酸化防止剤を添加しなくてもよいよう、オイルコーティングをおこなわず製造されています。
鶏肉や馬肉を主原材料に使用したドッグフードがあり、小型犬も食べやすい小粒タイプです。
栄養豊富なヤギミルクや、いちごやきなこなどを使用したクッキー、馬肉や鹿肉のジャーキーなどおやつのラインナップも豊富です。
【口コミ評価】
愛用者の口コミは、嗜好性も高く、ウンチの匂いが軽減したと高評価されています。しかし、中には自然な匂いに食いつきが良くないとの声も。
安心な国産、無添加のドッグフードであるため、愛犬の好みにあえばおすすめです。
このこのごはん
このこのごはんは、株式会社オモヤが販売する、小型犬に特化して開発したドッグフードです。
小型犬の悩みに寄り添い、涙焼けや便の匂い、アレルギーや消化性に配慮されています。ヒューマングレードの原材料を使用し、オイルコーティングなし、小麦のグルテンを使用しない、人工添加物フリーのドッグフードです。
このこのごはん、シニア用の総合栄養食のほか、おやつのジュレや口腔ケアのふりかけもあります。
【口コミ評価】
愛用者の口コミで多いのが、涙焼けの改善です。目の周りの色に変化が見られ、目やにや涙が減ったとの声もありました。
しかし、筆者の白いチワワにも涙焼けがありますが、獣医師に相談したところ先天的な鼻涙管閉塞が原因なため、食事での改善は難しい現状です。
涙焼けの原因は、犬によりさまざまですが、食品中のアレルギーが関与する場合もあるため、グレインフリーや添加物不使用のこのこのごはんで改善の効果がある子もいるようです。
食いつきに関しては、嗜好性は比較的高評価が多く、筆者のチワワもすぐに完食してくれました。
UMAKA -美味華- (うまか)
UMAKAは、トリゼンダイニング株式会社の華ちゃん犬猫すこやか本舗が販売する、博多水炊きの名店「博多華味鳥」が安心安全にこだわり開発したドッグフードです。
主原材料の鶏肉は、100%九州産の華味鳥を使用しており、無着色、小麦グルテンフリー、ノンオイルコーティングで製造されています。
うまかのほか、やわかいうセミドライ使用の商品もあるため、硬さが苦手な犬にはおすすめです。
【口コミ評価】
愛用者の口コミは、美味しい匂いが食欲をそそるため食いつきがよい、食べムラがあるうちの子も好んで食べてくれるという、嗜好性の高さが高い評価を得ています。
しかし、価格が高めなため、コストパフォーマンスが悪いとの声もありました。
また、チキン味の展開しかないため、鶏肉のアレルギーがある、チキン味を好まない場合は、使用できないでしょう。
筆者のチワワも美味しく食べてくれたものの、コスト面で常用するのには難しいことが懸念点です。
PHELTHIA(ペルシア)
PHELTHIAは、ペルシア株式会社が販売する、国産、無添加にこだわるドッグフードです。国際薬膳調理師が推奨する、犬の健康的な食事を目指し、ヒューマングレード、ノンオイルコーティング、グルテンフリーで製造しています。
牛や鶏、魚などさまざまな肉類を使用し栄養バランスに優れたオールミックスや、栄養はそのままにカロリーを抑えたライト、アレルギーに配慮できるビーフ、チキンの商品ラインナップがあります。
【口コミ評価】
健康サポートに役立つクコの実など、薬膳の考えでレシピを配合したドッグフードであり、犬の健康によいと選択する方も多いようです。小型犬も食べやすい小粒も高い評価を得ています。
一方で、一般的なドライフードより、賞味期限がやや短め、価格が高いとの意見もあります。
公式サイトからは、定期購入で袋数や回数により安くなるサービスもあるので、活用するとよいでしょう。
犬猫生活ドッグフード
犬猫生活ドッグフードは、犬猫生活株式会社が販売する、獣医師と共同開発した国産無添加、グレインフリー、ノンオイルコーティングのプレミアムドッグフードです。
チキンと鹿肉の2種類の味があり、使用される原材料には産地の明記もあるため、安心度が高いでしょう。鮮度が保たれる少量パックなのも嬉しいポイントです。
オールステージ対応やシニア用、高エネルギーのピューレタイプ、口腔ケアができる商品などのラインナップがあります。
【口コミ評価】
愛用者は食いつきの良さや、使用される原材料に高評価があり、ノンオイルコーティングでべたつかない点も優れているとの声もありました。
お湯を注ぐとすぐに柔らかくなることが特徴で、スープを注ぎ介護犬や老犬のドッグフードにも活用しているようです。
しかし、価格を懸念する声もあり、食事量が多い中~大型犬には向かないことも。
ドッグフードなどの利益の20%が動物の保護活動に寄付される仕組みもあるため、理念に共感できる方は試してみるものよいでしょう。
まとめ
本記事では、ドッグフードのオイルコーティングについて解説しました。
嗜好性の向上や栄養価の添加が目的で、ドライフードにオイルコーティング加工するドッグフードもありますが、犬の健康上、ノンオイルコーティングのドッグフードの方がおすすめです。
ノンオイルコーティングのドッグフードは、本来の原材料の風味や香りが楽しめ、身体への負担が少ないことが特徴です。
ノンオイルコーティングで製造されるドッグフードは、パッケージに明記されるものの、オイルコーティングされたドッグフードは明記されずわかりにくいでしょう。
オイルコーティングの有無は、パッケージの情報や袋を開けた時の匂いやべたつきから判断できます。
愛犬に健康的な食事を与えたい方は、ノンオイルコーティングのドッグフードを検討してみてはいかがでしょうか。