ペットショップといえば、どんなことを連想しますか?
かわいい子犬や子猫を見ることができる・触ることができる、高い、安い…。
いろいろなことを連想できますね。
ヨーロッパなどのペット先進国では、イギリスやドイツなど動物の生体販売がほぼない国があります。
一方、日本のペットショップでは生体販売が盛んに行われています。
先日飼い猫のおやつを購入するために近所のペットショップへ行くと、たくさんの人で賑わい、また購入意欲を促進するためかスタッフが「抱っこしてみませんか~」などと言いながら子犬や子猫をお客さんのもとへ連れていく光景を目にしました。
命を売り買いすることがどういうことなのか、考えていきたいと思います。
日本のペットショップの現状
ペット業界の現状についてみていきましょう。
法規制について
令和元年6月に動物愛護管理法の改正が行われ
・生後56日(生後8週齢)を経過しない子犬・子猫の販売が原則禁止
・第一種動物取扱業者は生体を販売する前に購入者に生体を直接見せて対面で情報提供することを義務化
・動物種や習性などを考慮した飼育管理基準(ケージの広さなど)の具体化
・販売される動物へのマイクロチップの装着の義務化
・繁殖業者従業員一人当たり犬15頭・猫25匹まで
・ペットショップでは従業員一人当たり犬20頭・猫30匹まで
・犬猫ともに出産は生涯6回まで(参考:環境省 飼養管理基準について)
などの規制が施行されることとなりました。
第一種動物取扱業者とは、営利目的で動物を取り扱う事業者のこと。ペットショップ、ドッグトレーナー、ペットホテル、ペットシッターなどが該当します。(参考:東京都動物愛護相談センター)
劣悪な環境下で展示・販売されたり、度重なる出産によって酷い目にあってしまった動物たちの声がやっと届いたように思える法改正でした。
この法改正により、動物の命と健康がより守られるようになってほしいです。
全国のペットショップ数
全国にペットショップは何店舗あるでしょうか。
実は、9,158店舗もあるんです。(参考:日本ソフト販売株式会社)
2021年の調査なので、現在は変化があるかとは思いますがそんなにたくさんのペットショップがあるということに驚きました。
東京都に740店、福岡県に625店舗と人口の多い大都市に多くのペットショップが存在しており、法規制が強化されるなか次々と新店がオープンしているんです。
ペットショップは繁華街やショッピングモール内、大きな道路沿いにあることが多く気軽に立ち寄ることができるようになっています。
綺麗なショーケースに子犬や子猫を展示し、スタッフはお客さんに声をかけ抱っこを促します。
「抱っこしたら負け」、聞いたことありませんか?
可愛い子犬や子猫を抱っこしてしまったら家に連れ帰りたくなってしまう人が多いために生まれた言葉ですね。
買い物ついでに立ち寄り積極的な営業も相まって、気分の良くなった人が衝動買いするケースも少なくありません。
衝動買いがいけないということではありません。
きっかけは衝動買いでもその後大切に飼育している場合もありますが、虐待や飼育放棄につながる可能性もあります。
どうしたら動物のためになるのか、何をすることが動物の幸せにつながるのかを考えたいと思います。
ペットショップで買うことをお勧めしないワケ
ペットショップ=ダメではないと思っています。
家族に迎え入れる段階でマイクロチップが装着されていたり、購入時にペット保険に加入することができるといったメリットもあります。
ですがそれらはすべて人にとってのメリットでしかありません。
動物にとってはどうなのでしょうか。
ペットショップで買うデメリット
・長時間にわたる展示でストレスがかかる
・ほかの展示動物が病気になった場合に感染しやすい環境にある
・繁殖元となったブリーダーの環境や親犬(猫)の性格、現在の状況が分からない(参考:dogoo.com)
など、動物に対してだけでなく迎え入れる私たちにもデメリットが考えられます。
また繁殖元の環境が劣悪ではないか、動物にとって良い環境かどうかを知ることは大切です。
衛生管理が行き届いていない場合には感染症などの可能性もあります。
親犬(猫)の性格は遺伝することがありますのでなんとなくこんな性格かもしれないという予測がつきます。
親犬(猫)の現状を知ることは先天的に欠陥のある親犬(猫)に繁殖を強いていないかを知ることができます。
ペットショップでは手軽に動物を購入できることで、問題行動が見られた時や成長して大きくなった時に飼育放棄されることが考えられるのではないかと思います。
そのほかにも以下のような相談が独立行政法人 国民生活センターに寄せられています。
数か月前にペットショップで購入した小型犬に手術が必要な先天性疾患が見つかった。手術や治療にかかる費用を店に請求したい。
独立行政法人 国民生活センター
ペットショップで購入した猫に先天性疾患があることがわかった。生体交換可能な期間は過ぎている。猫を手元に置いたままペットショップに補償を求めることは可能か。
独立行政法人 国民生活センター
上記でも触れたように親犬(猫)の性格や状況が分からないまま、さらには子犬・子猫の段階で迎え入れることになるので先天性疾患を患っていたということでペットショップ側とトラブルになるケースが見られるようです。
引き渡し後の決められた期間内に疾患が見つかった場合、無償で生体を交換するというサービスをうたっているペットショップも耳にします。
果たして、命ある動物を商品とし販売し続けることは良いことなのでしょうか。
ペットショップの犬や猫はどこから来るの?
ペットショップで展示・販売されている犬猫は、そのペットショップで生まれているわけではありません。
犬猫の繁殖を専門としているブリーダーのもとで生まれ、その後ペットオークションにかけられペットショップに行く流れとなっています。(参考:公益財団法人動物環境・福祉協会Eva)
環境省 動物取扱業者・届出状況によると令和3年には、13,046件ものブリーダー登録がされており、ペットオークションに携わる競り・あっせん業には34の業者が登録されています。
ブリーダーのもとからオークション会場へ、そしてまた新たな場所へ…。
知らない場所から場所へと輸送されることは動物にとってかなりのストレスがかかることと思います。
動物愛護管理法の改正により動物の輸送に関しても規制が加わりました。(参考:環境省 動物の展示又は輸送の方法に関する事項)
・空調設備を整え、その動物種に適した温度、湿度、明るさで輸送を行う
・適宜給餌、給水を行う
・必要に応じて休息、運動を行う時間を確保する
・適切な衛生管理、脱走防止管理を行う
ペットショップで展示・販売されるためにこんなに大変な思いをしているんですね。
そして恐ろしいことは、すべての業者が規制を守っているとは限らないということです。
令和3年に長野県で目を疑うような事件が摘発されました。
販売用の子犬を繁殖させるために飼育していた多数の犬を虐待したとして、長野県警は4日、同県松本市で繁殖場を営む会社を経営していた男ら2人を動物愛護法違反(虐待)容疑で逮捕した。
朝日新聞デジタル
いわゆるパピーミル(子犬工場)の摘発です。
この事件では2か所にあるパピーミルを摘発、約1,000頭もの犬が劣悪な環境で飼育されていることが確認されたということです。
家宅捜索が入った繁殖場では約450頭が規制を守らない狭いケージ内で飼育され、そのうちの362頭は劣悪な環境で飼育されたことで衰弱したり病気を治療せず放置されたりと虐待が確認されました。
さらにそのうちの58頭は乳腺に腫瘍があったり、子宮に膿がたまっている状態(子宮蓄膿症といって放っておくと死に至る危険性が高い危険な状態)であったり失明していたということです。
ここまで大規模や多頭飼育、パピーミルは稀だということですが、完全に0ではないのです。
動物は意識ある存在で、自我があります。
人の都合で商売に利用し、販売することは命の軽視だと私は考えます。
動物にとって何が幸せなのか、同じ命を持つものとして考えて行動していきたいです。
売れ残った動物はどうなるの?
みなさんも一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
ペットショップの綺麗なショーケースに入っているこの子たちは、売れ残ったらどうなるの…?と。
成長して大きくなって、だんだんと値下げされている動物を見かけることはありませんか。
そもそもなぜペットショップで売れ残りが発生するのでしょうか。
考えられる理由を3つお話します。
①たくさんの頭数を仕入れるから
その時期に人気の高い犬種・猫種をたくさん仕入れ在庫として抱えることで、買いたいという人よりも動物のほうが多くなってしまったときに売れ残りが生じます。
②一瞬で判断されてしまうから
いいなと思っていた犬種・猫種であっても、ショーケースで見たその一瞬の印象で「買わない」という判断を下される場合があります。
例えば同じショーケース内の生体に嚙みついているところを見られると、攻撃的だと判断されることもあります。
それがストレスなどの環境要因がきっかけであり、本来のその子の性格ではなかったとしてもその一瞬を切り取られ判断されてしまうのです。
③見た目が違う
特に犬で多いのですが、理想から外れた見た目をしていると嫌煙されてしまうのです。
人気の犬種であったとしても、毛色が何種類も混ざっているミスカラーであったり鼻の色が黒ではなかったりということで価格も相場より安くなります。
これらの3つの理由からなかなかオーナーが決まらず、生後5か月、6か月と経ってしまうとますます売れにくくなっていきます。
ペットショップで動物を買う人は、小さくてかわいい犬や猫を求めている場合が多いため大きくなってしまうと需要が減っていきます。
また社会化期をペットショップで過ごすことになり、人見知りがあったりと家族に迎え入れることが難しく感じてしまうこともあると思います。
社会化期とはいろいろな音や場所、ほかの犬や人に慣れさせ社会性を身につける時期のことで、生後3週から13週ごろに訪れ遅くとも生後5か月ごろには終わると言われています。(参考:アニコム損保 犬との暮らし大百科)
理想から外れている外見や、成長して大きくなっている姿を良いと思ってくれるオーナーに出会うことができたら良いのですが、そうとは限りません。
売れ残った犬や猫はだんだんと値下げをしていき、それでも売れ残ればペットショップによっては里親募集をかけることとなります。
わたしの親戚はペットショップで売れ残り里親募集となっていた猫を家族として迎え入れています。
また、ペットショップで働いていた友人は売れ残った犬を2頭引き取っていました。
とても運が良い犬と猫だと思いました。
それでも売れ残ってしまった子たちはどこへ行くのか…。
“引き取り屋”という商売をご存じですか。
引き取り屋とは
公益財団法人動物環境・福祉協会Eva
ペットショップなどの流通過程で売れ残った子犬子猫や、繁殖場で繁殖能力が衰えた犬を、1匹あたり数千円~数万円程度の費用を受取り引き取るビジネス。
NHK「クローズアップ現代」で特集を組まれたこともあるんです。
「追跡!ペットビジネスの闇」という回で引き取り屋の摘発に乗り出した動物愛護団体に密着しています。
平成25年に改正された動物愛護管理法により、行政は犬猫等販売業者からは引き取りを求める相当な事由がない場合には引き取りを拒否できることとなりました。
犬猫等販売業者から引取りを求められた場合その他の第7条第4項の規定の趣旨に照らして
船橋市公式ホームページ 動物愛護管理法第35条第3項について
引取りを求める相当の事由がないと認められる場合として環境省令で定める場合には、その引取り
を拒否することができる。
この改正によって売れ残った犬猫は引き取り屋に依頼せざるを得ない状況となってしまったようです。
改正以前は自治体によって引き取られ、多くが殺処分であったとされています。
引き取り屋によって引き取られた犬猫の生活は悲惨そのものです。
狭いケージに入れられ、散歩をすることはできません。
病気になっても治療を受けることはできず死を待つのみです。
ただ息をして過ごすしかない動物たちは幸せなのでしょうか。
いいえ、決して幸せとは言えないと思います。これは動物虐待です。
公益財団法人動物環境・福祉協会Evaでは引き取り屋に引き取られ生活している動物たちの姿を見ることができます。
痛々しい姿なので閲覧される際にはご注意ください。
法が改正されたからと言って動物にとって良い方向に進むということではありませんでした。
行く先が保健所から引き取り屋へと変わっただけです。
ペットショップで展示されている動物たちに、必ずしも幸せが待っているとは限らないということをお分かりいただけましたか?
ペットショップ以外でペットを迎える方法3選
ペットショップ以外でペットを迎える場合どうしたらよいのでしょうか。
代表的な3つの方法をご紹介します。
①知人・友人から譲り受ける
自分の知り合いや友人から譲り受けることができるのであれば、親犬(猫)の現状や生活も把握することができるので安心です。
そして譲る側になった場合ですが、上記でもお話ししたように有償で引き渡す場合にはブリーダーとしての登録が必要となりますので無償での譲渡が基本となります。
ですがわたしの意見としては、引き渡すまでにかかったミルク代、ワクチン代などの費用は何らかの形で受け取るべきだと考えています。
なぜなら無償での譲渡は“簡単に手に入るもの”と軽視され虐待につながるケースが考えられるためです。
そういった虐待を防止するためにもお互いの連絡先を交換し、写真を送るなどのコンタクトを取り続けることべきだと思います。
②ブリーダーから譲り受ける
①と同じように飼育環境や親犬(猫)の現状・性格を知ることができるのがメリットです。
また賞レースで賞を取った犬(猫)の子どもを迎えたい場合などはこちらがおすすめになります。
インターネットで「犬 ブリーダー」などと検索するとたくさんのブリーダーサイトがヒットします。
ネットを見て決めるだけでなく、犬の散歩をしている人や周囲の犬・猫のオーナーに聞いてみても良いと思います。
上記でもお話ししたように、ブリーダーは購入希望者に対し飼育環境とその生体を実際に見せて情報共有しなければなりません。
なので実際に行ける距離のブリーダーを選択する必要があります。
そして残念ながらすべてのブリーダーが動物にとって良いブリーダーとは限らないのが現状です。
インターネットにはいろいろな情報が載っていますので誤った情報に惑わされることのないよう、自分の目で見て疑問点は納得のいくまで質問するなどして自分と動物にとって良いブリーダーを探し出す必要があります。
③保健所・動物愛護センターから引き取る
保健所は各市町村に存在し、主に収容犬(猫)の情報や譲渡募集は出すが、犬(猫)のケアや訓練、譲渡会は行わない施設です。
保健所で保護された動物は一定期間保護したのち、各都道府県にある動物愛護センターへと送られます。
動物愛護センターは、移送されてきた動物を一定期間保護したのちに処分する施設でもあるのです。
動物愛護センターでは、譲渡会やしつけ相談会、しつけ教室などが行われています。(参考:一般社団法人 日本動物保護センター)
子犬・子猫から飼いたい、飼いたい犬種・猫種が決まっているなどの場合おすすめできませんが、保護犬・保護猫を迎えることにはメリットがあります。
・子犬(子猫)期を過ぎた犬(猫)も迎えることができる
特にシニア世代の方が新たにペットを迎える場合、すでに落ち着いた年齢の犬(猫)をおすすめします。
・大体の性格や状態を把握したうえで迎えることができる
子犬(子猫)から迎える場合、想像以上に大きくなった、成長とともに攻撃的になったなど性格に変化がでることがあります。
体も心もある程度成長したうえで引き取ることができるので、予想外な変化が起こる可能性は低いです。
・命を救うことができる
あなたが引き取ることが決まれば、その子の命は救われます。
また、その子の引き取ることで保健所・動物愛護センターに一頭分の空きができ、もう一頭の命を救うことにつながるのです。
保護犬・保護猫を引き取るということは、2頭の命を救うことになります。
まとめ
ここ数年で生体販売を取りやめにする動きを見せるペットショップが出てきました。
ペットショップでの生体販売を減らしていくためには、生体販売を終了した企業を応援し、生体販売がメイン事業でなくとも経営に問題ないということを証明しなければならないと思います。
ペットショップは一見華やかですが、動物たちにとって、果たして本当に良い場所なのでしょうか。
今一度考えなおしてみませんか?