愛犬がドッグフードを食べないのは、飼い主にとって心配です。
ドッグフードを食べないのに、おやつをおねだりしてくるときあげるべきか悩む方は多いのではないでしょうか。
愛犬がおやつを欲しがるのには、原因があります。ドライフードの味が好きではないのか、体調が悪いのかなど、原因を追及することが大切です。
本記事では、ペット栄養管理士がおやつを欲しがる犬の理由について解説します。
ドッグフードを食べさせる工夫や、ドライフードと併用した手作りフードの作り方について紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
犬がドッグフードを食べない理由
愛犬がドッグフードを食べないとき、次の理由が考えられます。
- わがままや甘え
- 嗜好に合っていない
- 体調不良で食欲が低下している
- ストレスをかかえている
それぞれ解説するので、愛犬の様子を観察して原因を追及してみてください。
わがままや甘え
犬は、わがままや甘えにより、ドッグフードを食べない場合があります。
犬は、人との共生の中で学習をし、自分の欲求を満たす行動を取る場合があります。ドッグフードを食べないとおやつがもらえる、トッピングをしてもらえると認識をし、ドッグフードを食べない行動を起こすことが原因です。
おやつをねだる行為が可愛いから、ご飯を食べないのは心配だからと、甘やかしてしまう飼い主の行動が問題でしょう。
しつけと愛情のバランスを考え、愛犬がご飯を食べるまで待つこと、見守ることなどの、愛犬との接し方を見直すことをおすすめします。
嗜好に合っていない
味が嗜好に合わず、ドッグフードを食べていない可能性もあります。
ドッグフードは主原材料やメーカーにより、味や香りが異なります。犬は人よりも3,000∼10,000倍の優れた嗅覚を持つため、匂いの好みにより、嗜好に合わず好き嫌いをすることが原因です。
ドッグフードの主原材料は、主に動物性たんぱく質を利用していますが、チキンやターキー、ビーフなどの肉類や、サーモンや白身魚などの魚類があります。
同じ主原材料の場合でも、使用部位や使用量がメーカーにより異なるため、愛犬の好みを知ることが重要です。
ドッグフードを変更し、愛犬の食いつき具合の様子を観察してください。長時間食べない場合は、匂いが落ち、腐敗の原因にもなるため、時間を決めて片づけるとよいでしょう。
体調不良の可能性がある
普段は食べていたのに、急にドッグフードを食べなくなった場合は、食欲が減退し、体調不良の可能性があるため、注意が必要です。
食欲不振の場合、嘔吐や下痢の症状があります。また、症状に現れない細菌やウイルスの影響による腹痛や消化不良、血液成分の異常による食欲不振が原因です。
下痢や嘔吐などの非生理的症状がある場合は、自分で判断せず必ず獣医師へ相談し、診察を行ってください。血液検査や腹部内のエコー検査により、原因解明につながる場合があります。
年齢やライフステージの変化でも、健康な犬が急にご飯を食べなくなる場合があるため、原因がわからない場合は、獣医師に相談しましょう。
成長や老衰のために変化する、正しい食事量を理解することが大切です。
ストレスをかかえている
犬がドッグフードを食べない理由のひとつに、ストレスをかかえている可能性があります。
急なドッグフードの変更や季節、環境の変化に敏感な小型犬に多く、緊張やストレスで食欲が減退しているケースです。
軽度のストレスの場合あくびや足をなめる、身体をかくなどの行為が頻繁にあるため、愛犬の様子を観察しましょう。
ストレスをかかえている犬のドッグフードを変更する場合、以前から食べていたものに混ぜ合わせ、1週間程度かけて移行します。
ペットホテルに預ける、旅行に連れていくなどの環境の変化は、ストレスを感じにくいように、普段の食器の使用や、愛犬の匂いのついたタオルを一緒に持っていくなどの工夫が必要です。
普段より長めの散歩やスキンシップを増やす遊びを行い、愛犬のストレス解消につなげるとよいでしょう。愛犬の不安を取り除くために、飼い主とのコミュニケーションが大切です。
ドッグフードを食べないけどおやつは食べるときは?
ドッグフードを食べないけどおやつは食べるとき、おやつの正しい与え方を理解し、必要な栄養が補給できるように工夫しましょう。
おやつの正しい与え方
おやつの正しい与え方は、必要な栄養素が補給できるような考慮が大切です。
パッケージに間食、補助食などの明記があるおやつは、総合栄養食の補助的な要素の栄養しか含まれないため、おやつのみで犬に必要な栄養量を補うことはできません。
おやつのみを与えてしまうと、栄養が偏る原因になります。おやつの量は、ドッグフードで必要なカロリーのうち、10∼20%程度に抑えるようにしましょう。
犬は一度にもらう量が多いよりも、回数を多くもらう方が幸福度が増します。
空腹な時間が確保できるように、ドッグフードを食べてほしい、ご飯の時間の前は、おやつを与えることを避け、しつけや散歩でコミュニケーションを取りながら与えましょう。
人や猫などの他の動物は、お腹がいっぱいになる量を食べると満足しますが、犬は人と違い満腹中枢が鈍く、満腹感を感じにくいとされています。一度にたくさんの量を食べても満足する回数は1回分なため、複数回少量ずつ与えることによって満足する回数を増やすことが効果的です。
ドッグフードを「おやつ」にする方法
ドッグフードをおやつとして利用する方法がおすすめです。
飼い主との生活の中で学習しわがままな行動をする場合、飼い主との関係性が良く、甘えれば褒めてもらえる、ご褒美を貰えると認識している場合が多くあります。
遊びの中や、しつけを守り、褒める際におやつとして1粒ずつドッグフードを与えるとよいでしょう。
おやつしか食べない犬は、食に興味がないわけではなく、与えられる環境や、好き嫌いのわがままな可能性があります。
筆者の経験では、信頼している飼い主の手から食べさせると、皿で与えるときよりも食いつきがよく、食べる確率が高くなります。
皿の種類を変えることや、食器を置く位置や高さを調整することなど、与え方の工夫で食いつきが変わる場合があるので、愛犬の好みの与え方を試してみてください。
わがままはトッピングでなおせる!
愛犬がわがままや甘えでドッグフードを食べない場合、トッピングを活用すると改善につながるでしょう。
詳しく解説するので、ふやかけや、犬用ミルクを使用してみてください。
ふりかけを活用する
トッピングにふりかけを活用する方法があります。
犬は嗅覚が優れているため、トッピングでドッグフードの香りを良くし、嗜好を高める方法です。嗅覚に刺激を与え、食への興味を持たせ、食いつきをよくします。
市販で購入できる、肉類や野菜、チーズなどを乾燥、粉砕したふりかけの活用や、野菜や肉を茹で、小さくカットして載せるとよいでしょう。かつお節や無糖ヨーグルト、味付けをしていない納豆もおすすめです。
トッピングだけ食べないように十分に混ぜてから与えてください。
総合栄養食のドッグフードを与える場合、適当な規定量にトッピングを加えると、栄養過多になり、肥満の原因になります。
トッピングの栄養量を考慮したうえで、ドッグフードの割合を減らしたり、トッピングをする回数を減らしたりと工夫が必要です。
犬用ミルクを活用する
トッピングに犬用ミルクを活用し、ふやかして形状を変化させる方法があります。
犬の嗜好は、食べた時の食感や温度が影響します。噛み応えのあるドライフードを好む犬もいれば、舐めるように食べることを好む犬もいて、食感の嗜好もさまざまです。
また、体温に近い35∼40℃程度の温かいご飯は、匂いが強くなり、嗜好性を向上させます。
犬用ミルクは、粉状で販売されているものと、パックに入った液状のものがあります。粉状のミルクの場合は、ふりかけと同様に、ドッグフードに混ぜ合わせて使用が可能です。液状ミルクの場合は、ドッグフードをふやかして与えます。
ふやかす際は、50℃以下で行い、高温になりすぎないように注意してください。高温でふやかすと栄養素が破壊され、冷ますまでに時間を要するため、細菌の繁殖にもつながります。
ドッグフードを食べない犬のための手作りフード
ここからは、ドッグフードを食べない犬のための手作りフードを紹介します。
手作りフードのみで栄養を計算するのはハードルが高く、緊急時に対応できなくなる可能性もあるため、総合栄養食のドッグフードと併用しての利用がおすすめです。
手作りフードについて解説するので、内容を確認し参考にしてみてください。
ドッグフードと手作りフードを併用する
手作りフードを与える際は、ドッグフードと手作りフードの併用がおすすめです。
十分な栄養価計算をした手作りフードが作れる場合でも、食材の調達や調理に、毎日の手間や時間を要し、飼い主の負担になることがあります。
ドライフードに比べ、手作りフードは柔らかく、歯や顎の弱い犬には適していますが、歯垢除去ができなくなり、顎の筋肉を鍛える妨げになります。
また、手作りフードだけに慣れさせると、災害時の避難生活やペットホテルに預けるときに、食事の問題になりやすいこともデメリットです。
犬にとって必要な栄養は基本的に総合栄養食のドッグフードで摂取し、ドッグフードを食べない場合や食いつきを良くしたい場合に手作りフードを活用するとよいでしょう。
愛犬に合った必要エネルギー量を計算する
手作りフードを与える場合には、必ず愛犬に合った必要エネルギー量を計算しましょう。
愛犬の体格やライフステージにあわせ、必要なエネルギー量を知ることで、手作りフードの与える量や、ドッグフードとの併用が可能になります。
1日に必要なエネルギー量とは、安静時エネルギー要求量にライフステージに応じた係数をかけ合わせることで算出できます。
安静時エネルギー要求量の計算式(RER)=70 × 体重(㎏)×0.75
または =30 × 体重(㎏)+70
ライフステージに応じた係数
生後4か月までの子犬期 | 3.0 |
生後4か月から1年までの成長期 | 2.0 |
避妊去勢済み | 1.6 |
避妊去勢を行っていない | 1.8 |
7歳以上の高齢期 | 1.2∼1.4 |
肥満傾向 | 1.0∼1.2 |
ライフステージ以外にも、日中の活動量や疾患の有無により係数は変動するため、目安として参考にしてください。
例えば、5歳の避妊済み3㎏の犬の場合 =70 × 3㎏ × 0.75=157.5㎉(RER)×1.6
=30 × 3㎏ + 70=160㎉(RER)×1.6
1日に必要なエネルギー量はおよそ250㎉です。
動物性たんぱく質が十分に摂取できる工夫をする
手作りフードを作る際は、動物性たんぱく質が十分に摂取できる工夫をしましょう。
炭水化物、たんぱく質、脂質のPFCバランスで構成される人の食事と異なり、犬の栄養バランスは、環境省が「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」で次のとおり定めています。
- タンパク質 最低18.0%
- 脂質 最低5.5%
これは成犬の場合の基準です。
実際に手作りフードを作る際、カロリーや栄養素の計算をするのは難しいでしょう。
食材の重さではなく、あくまで見た目のかさでの目安ですが、肉や魚:野菜:炭水化物の量を、1:1∼1.5:0.5にするのがおすすめです。
肉や魚などの動物性たんぱく質を基準に、野菜やイモ、米などの炭水化物の量を決めましょう。
使用する動物性たんぱく質は、鶏のむね肉、ささみ肉、豚肩肉、サケ、カツオ、卵などが代表的です。
さまざまな種類の食材を使用する
複数の食材を使用して、さまざまな栄養素を摂取できる工夫をしましょう。
食材には、栄養素の含有量に特徴があり、同じ食材でも季節や産地により、栄養成分が異なります。栄養が偏らないためにも、複数の食材の利用や、栄養価の高い旬な食材を使用するのがおすすめです。
とくに使用する肉類や野菜は、ビタミンやミネラルの種類や量のバランスが異なります。ビタミンやミネラルは、たんぱく質のエネルギー代謝を行ううえで重要な栄養素です。
また、必須脂肪酸であるDHA、EPAなどのオメガ3脂肪酸の添加も行うとよいでしょう。青魚に多く含まれる栄養素ですが、魚の摂取のみでは不足しがちな栄養素です。
オメガ3脂肪酸は、抗血栓作用や抗炎症作用があるため、血液の流れを良くし、老廃物を体外へ排出する効果が期待されます。
危険な食材を避ける
手作りフードを作る際、犬にとって有害になる危険な食材には注意しましょう。
人が食べられる食材の中で、犬が消化できず中毒の原因になり、体調不良を起こす可能性がある食材があります。
主な危険な食材は、次のとおりです。
また、危険な食材でなくても生のまま与えた場合には、消化不良を起こす食材もあります。
初めてあげる食材の場合は、犬にとって危険な食材でないか調べたうえで、少量ずつ与えるようにしましょう。
愛犬に適した手作りフードかを判断する指標は、尿や便の色や形、頻度を観察することです。健康状態の判断で、普段との違いが現れる場合は、手作りフードを中止し、獣医師へ相談しましょう。
まとめ
本記事では、おやつは食べるのに、ドッグフードは食べないお悩みについて解説しました。犬がドッグフードを食べない理由を見極め、正しくおやつや手作りフードを併用し、栄養補給をすることが大切です。
わがままや甘えを覚え学習している犬は、飼い主との関係性が良好な場合が多いです。飼い主として愛犬に適切な距離感を見極め、接することも必要でしょう。
嗜好や体調は愛犬によってさまざまなので、愛犬とコミュニケーションをとり、食べることの楽しさを学ばせることをおすすめします。