犬が嘔吐を繰り返すけど見たところ元気…何に気を付けるべき?

かぼちゃをかじる犬
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犬を飼った経験のある方はご存じかと思いますが、犬はよく嘔吐する生き物です。

犬にとって嘔吐は重要な身体を守るシステムで、食べ過ぎたとき胃腸の調子が悪いときは嘔吐して、改善を図ります。

しかし、何も知らない飼い主は、突然の嘔吐にびっくりさせられるものです。

犬が嘔吐するときは、どんなときなのでしょうか。

病気の心配はないのか、気を付けるべきことはないのか、今回は犬の嘔吐について詳しくみていきましょう。

目次

犬が嘔吐を繰り返すけど元気なときは?

元気に走る犬

「犬が突然嘔吐したが、そのあとの調子が悪いこともなく、ピンピンしている」

これは、犬を飼っていると、誰しも経験することです。

犬は嘔吐したあと、気にせず元気に遊んだり、再び食べ始めたりすることがよくあります。

犬が嘔吐を繰り返すのは、どんなときなのでしょうか。

嘔吐の原因を探り、注意が必要な場合はどのようなときなのか、確認していきましょう。

犬は嘔吐しやすい身体の構造をしている

まずは、犬の身体の構造に注目しましょう。

犬をはじめ、四本足で身体を支える動物は、口から続く消化管が地面とほぼ平行に位置します。

そのため、胃に入った食べ物を水平移動によって嘔吐することが可能です。

四本足の動物に対して、人間は二本足で身体を支えており、消化管の中でスタート地点である口が一番高い位置にあります。

人間が嘔吐する場合は、消化のために下に降りていった食べ物を上部に移動させなければなりません。

四本足の動物と比較して、人間の消化管は、重力に逆らわなければ嘔吐できない構造です。

犬の消化にかかる時間

犬の消化は、胃でおよそ2時間、小腸で1時間とされています。

食べ物を食べてから排泄するまでは、ライフステージによりますが、成犬の場合で12~24時間です。

ちなみに、犬は骨を食べるのが大好きですが、骨も消化できる酵素を犬は持っています。

ただし、砕けると縦に裂ける鳥の骨や細かい骨は丸飲みしてうまく消化されないことがあるため、注意が必要です。

犬が嘔吐する原因

犬が嘔吐する原因は多岐にわたります。

病気に限らず、生理的な反応で嘔吐することも原因の一つです。

食べ過ぎ

これは生理反応の一種の嘔吐です。

食べ過ぎ・水の飲み過ぎでお腹がいっぱいになってしまったとき、体を休めるために嘔吐することがあります。

胸焼け

散歩中に、細長い雑草を食べ、かと思えば嘔吐しているときがありませんか。

これは、胸焼けや消化不良のときに見られる行動です。

しつこく繰り返していなければ、あまり心配する必要はありません。

気をつけるべきは、食べてしまう雑草です。

庭以外の雑草は、除草剤がまかれていたり、ほかの犬の排泄物がかかっていたりします。

除草剤がまかれていた場合は中毒になる可能性が、ほかの犬の排泄物からは寄生虫症にかかる可能性があるため、外でむやみに草を食べさせるのはやめましょう。

誤飲による嘔吐

誤飲による嘔吐も、生理反応の一つです。

誤飲して嘔吐した場合には、悪いものが体の外へ排出されるため、一旦は安心できます。

もし、誤飲したものが吐き戻されずお腹の中に入ってしまったときは、すみやかに動物病院で診察してもらいましょう。

場合によっては手術で取り除く必要があります。

また、犬にとって中毒になる食べ物を食べてしまったときも、急いで動物病院に連れて行きましょう。

少量でも命にかかわる場合があります。

消化不良による嘔吐

犬が消化不良になる原因は、傷んだ食べ物を食べた、アレルギー、ドッグフードの形状が合っていない、食べ過ぎ、胃の炎症、車酔いなどがあります。

犬は野生で生きていたころの名残から、一度の食事で食べられるだけ食べてしまう生き物です。

胃も大きく、一度の食事で一日分の食事量を入れることができます。

しかし、一度にたくさん食べさせると消化不良の原因になるため、注意が必要です。

アレルギーによる嘔吐

アレルギーによる嘔吐は、一度で終わらず慢性的に繰り返され、嘔吐のほかにも下痢を繰り返すことがあります。

アレルギーとなっている原因を取り除かない限り、症状は続きます。

日常的に嘔吐や下痢が続くときには、アレルギーを疑い、動物病院で診察を受けましょう。

病気による嘔吐

消化器系の病気寄生虫症にかかると、見られやすいのが嘔吐の症状です。

ほかにも、泌尿器系の病気にかかっていると、嘔吐することがあります。

病気や寄生虫症による嘔吐は、嘔吐以外にも症状が現れることが多いため、犬の様子をよく観察して、いつもと違うことはないかチェックしましょう。

元気がなかったり、下痢をしていたり、血尿をしている場合は病気の可能性があります。

いつもと様子が違い嘔吐している場合は、動物病院で診察してもらいましょう。

ストレスによる嘔吐

犬はストレスを感じると自律神経のバランスが崩れてしまい、結果として嘔吐につながります。

犬のストレスになる原因は、体罰や飲食の制限による肉体的苦痛、しつけを繰り返すといった精神的苦痛、犬らしい行動の制限、不快・不潔な生活環境、生活環境の急激な変化、長時間の留守番などがあります。

いずれも、長く続くと犬にとってよくありません。

犬のストレスサインが見られたら、苦痛を取り除くこと、飼育環境をよいものに変えてあげることが必要です。

ワクチン接種や投薬の副作用による嘔吐

ワクチンを接種したあと、ワクチンの成分に対するアレルギーで嘔吐することがあります。

ワクチンのアレルギーによる副作用は接種後30分~1日の間に発症することが多いため、ワクチン接種後は安静にして様子をみましょう。

薬による副作用はさまざまですが、副作用のない薬はないといわれています。

薬を飲ませて30分以内に嘔吐した場合は、薬の副作用ではなく飲ませ方の問題により、生理的な反射の嘔吐が起こったと考えましょう。

薬は、飲んだあと30分程度経過してから、徐々に効果が現れ始めます。

副作用が起こるのも、このあとからです。

まれではありますが、フィラリア予防薬で副作用が見られることもあります。

フィラリア予防薬の副作用の一つが、嘔吐や下痢です。

ヒートによる嘔吐

メスのヒート(生理)中は、ホルモンの影響で体調を崩しやすくなります。

食欲不振や嘔吐、下痢の症状が見られますが、病気ではありません。

ヒートと間違いやすいのが、子宮蓄膿症です。

子宮蓄膿症は細菌感染によって茶色い膿のようなおりものが見られ、ほかにも嘔吐や水をたくさん飲む、おしっこをたくさんするなどの症状が現れます。

子宮蓄膿症は、発症するとすぐに処置が必要な病気です。

普段のヒートと比較して様子がおかしいと感じたら、すぐに動物病院で診察してもらいましょう。

食べ過ぎや水の飲み過ぎによる嘔吐や、胃液だけを吐く嘔吐、草を食べて嘔吐など、嘔吐したあとに元気であれば心配する必要はほとんどありません。

しかし、嘔吐を繰り返すようであれば、病院で診察を受けましょう。

こんな嘔吐は要注意

犬の嘔吐はよく見られることですが、その中でも注意が必要なのは、どのような場合でしょうか。

動物病院での診察が必要な嘔吐は、以下のとおりです。

  • 何度も繰り返し嘔吐する
  • 食欲がなく、元気がない
  • 嘔吐したものに血が混じっている
  • 嘔吐以外にも下痢や腹痛の症状が見られる

このような場合は、生理的な嘔吐ではなく、病気や中毒の可能性があります。

また、異物を飲み込んでしまった場合も、動物病院で診察を受けましょう。(参考:アニコムみんなのどうぶつ病気大百科

嘔吐を繰り返すのに食欲はある

食事する犬

ここまで、病気の疑いがある・注意すべき嘔吐を見てきましたが、嘔吐を繰り返すのに食欲がある場合は、放っておいても大丈夫なのでしょうか。

考えられる原因と対処法を探っていきましょう。

ドッグフードの未消化

ドッグフードの未消化は、犬が餌を食べた直後の嘔吐に見られます。

ドッグフードが未消化で出てきた場合に考えられるのは、以下の原因です。

  • 早食いで生理的に吐き戻した
  • ドッグフードの形状が犬に合っていなかった

この2つが原因であれば、心配する必要はほとんどありません。

しかし、再び嘔吐を繰り返す可能性があるため、早食い防止のエサ入れに変える、ドッグフードを細かな粒に変更するなどして、嘔吐しない環境を作ってあげましょう。

  • アレルギー

アレルギーによって嘔吐している場合は、アレルゲン物質を取り除かない限り嘔吐を繰り返します。

動物病院でアレルギー検査をしてもらい、アレルゲン物質が含まれていないドッグフードに切り替えることが必要です。(参考:アニコムみんなのどうぶつ病気大百科

白いネバネバの泡がある場合

嘔吐した物に白いネバネバの泡が見られるときは、だ液に胃液・胃酸が混じった状態です。

体のより上部からの嘔吐で、ストレスを感じたときや車酔いの際に見られます。

白い泡が見られるときは一過性の嘔吐が多く、その後の心配はほとんどいりません。

しかし、短期間で嘔吐を繰り返すようであれば、病院に連れて行きましょう。

黄色い液体が出た場合

強い空腹が原因の嘔吐で、胃液・胃酸の逆流により、黄色い液体が吐き出されます。

上述の白い泡が混じった状態よりも下部の方からの嘔吐です。

黄色い液体が出た場合は、一度の食事の量を小分けにして複数に分け、空腹状態を減らすことで対応できます。

また、犬が自ら餌を食べず空腹で吐いてしまう場合は、体調不良が疑われるため、動物病院での診察が必要です。

老犬による嘔吐

気持ちよさそうな老犬

老犬の嘔吐は、成犬が嘔吐するよりも病気の可能性が高く、また症状が重い場合が多くあり、注意してみてあげる必要があります。

老犬の嘔吐(吐き戻し)は2種類です。

吐出(としゅつ)

吐出は、食べ物が胃の中に入る前に吐き出されることを指します。

吐出自体は若い頃にも見られますが、老犬の吐出は、食べ物を飲み込む力が弱いために起こります。

シニア期に入った犬が吐出を繰り返す場合は、餌を柔らかくする、食べやすいように高さを調整するなどの工夫をしてあげましょう。

嘔吐

嘔吐は、胃に入った食べものが嘔吐中枢を刺激されることにより吐き戻されることを指します。

老犬の嘔吐は、病気が原因で起こることがあり、注意が必要です。

嘔吐が起こりやすい代表的な病気には、以下のものがあります。

慢性腎臓病

腎臓病は初期にはわかりにくい病気です。

慢性腎臓病は徐々に身体をむしばみ、気づいたときには症状がかなり進行していることがあります。

そして、慢性腎臓病は重度になると命に危険が及ぶ恐ろしい病気です。

嘔吐に加えて、おしっこの回数や量に異変が見られたら、すぐに動物病院で診察してもらいましょう。

肝機能障害

沈黙の臓器といわれる肝臓は、異常があってもなかなか気づきにくい臓器です。

そのため、病気や機能不全に気づいたときには、症状が進行している可能性があります。

嘔吐や下痢を繰り返す原因の一つが、肝臓がうまく働かないことです。

肝臓が正常に働いているかどうかは、血液検査を実施することで判断できます。

犬が高齢になったら、血液検査をはじめとした定期的な健康診断を受け、身体機能の状態を確認してあげましょう。

膵炎

膵臓は消化液の分泌と、ホルモンの分泌を行う大切な臓器です。

膵臓がうまく機能しないと、消化不良や栄養をうまく吸収できない原因になります。

また、インスリンの分泌をする臓器であり、膵臓がうまく機能しないと血糖値が上昇します。

血糖値が上昇したままだと、糖尿病のリスクが高まるため危険です。

膵炎は慢性膵炎急性膵炎の2種類があります。

慢性膵炎は緩やかに進行が進み、見られる症状は、消化されなかった脂肪を含んだ便をしたり、下痢を繰り返したりすることです。

急性膵炎は一気に症状が悪化し、高い死亡率を示します。

嘔吐や下痢、発熱が症状として見られ、重症の場合は腸炎を引き起こし、腸閉塞につながる病気です。

脂肪分が多い食事は膵炎につながりやすいとされています。

餌やおやつは、良質なたんぱく質を中心としたものにし、バランスの良い食事を心がけてあげることが大切です。

これら3つの病気は、いずれも症状が悪化するまで気づきにくい病気です。

重症化すると命にかかわる病気であるため、日頃から健康を気にかけてあげましょう。

元気に見えても病気を疑うべき?

首を傾げた子犬

嘔吐が一時的なもので、嘔吐以外の症状が見られないときは、緊急性は少ないと考えられます。

しかし、以下の場合は注意が必要です。

成犬の場合

吐しゃ物の中に血が混じっている場合は胃がんや胃炎が疑われます。

すぐに動物病院で診察を受けましょう。

また、数時間前に食べた物がそのまま残っているようならば、胃腸での消化が思うように行われていないことになります。

更に嘔吐を繰り返したり、下痢をしたりする場合は、動物病院で診察してもらうことをおすすめします。

老犬の場合

老犬が嘔吐したときは、若いときよりも病気の可能性が高くなります。

嘔吐したときに震えやけいれんはないか、食欲不振、元気がないなどの症状がないかしっかり確認し、気になることがあればすぐに動物病院で見てもらいましょう。

また、急にお腹が張ったと感じるときは、胃拡張や胃捻転が疑われます。

これは、胃が膨らみ、お腹の中でよくない方向にねじれてしまう症状で、緊急の対応が必要です。

お腹が膨らんでいて呼吸が荒い、ゲップや嘔吐、大量のよだれを繰り返しているときには、すぐに動物病院に連れて行きましょう。

犬が嘔吐したときには、しばらく様子を観察し、異常がないかどうかを見極める必要があります。

さいごに

犬の嘔吐は、異物の誤飲を除き、嘔吐単体ではあまり心配する必要はありません。

しかし、嘔吐のほかにも症状がみられる場合や、嘔吐を繰り返す場合には病気の可能性があります。

犬が嘔吐したときには、吐しゃ物の中身の確認と犬の状態の確認両方をおこたらず、病院に連れて行くべきかどうかを総合的に判断しましょう。

病院に連れて行くときは、嘔吐した物を持参すると診断に役立ちます。

ビニール袋に入れるか、ラップでくるんで持っていきましょう。

犬は嘔吐しやすい動物とはいっても、嘔吐を繰り返すことは犬の身体にとって良いことではありません。

餌入れの種類や高さ、餌の形状を変えるなどの工夫をし、嘔吐しにくい環境を整えてあげましょう。

【免責事項】Animal Compassionではできるだけ正確な情報提供を心がけていますがご利用者様による正当性の確認をお願いいたします。また医療に関する助言を提供することはございませんので、最終的な判断は適切な医療従事者に個別の状況を確認してもらった上で行うようにお願いいたします。

かぼちゃをかじる犬

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この記事を書いた人

子どもの頃から動物がそばにいるのが当たり前の環境で育ちました。
大学では家畜の機能形態学・病理学を専攻し、また馬術部に入部し、長年夢だった乗馬を始めることができました。
社会人になった現在も乗馬は継続中です。
大型犬と小鳥と一緒に生活しています。

ペット医療を中心としたジャンルでライティング活動をしています。
こちらのWEBサイトでの活動を通じ、動物と人間がよりよい関係を築くためのお手伝いができれば幸いです。

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