残念ながら、動物が大好きでもペットを飼わないという選択をすべき時があります。
ペットを迎えるにあたってどのようなことを知っておくべきなのか?
どのような人がペットを飼うのに向いているのか?
5つのポイントでお話していきます!
ペットを迎えるとき、オーナーに必要な条件って?
ペットを飼うにあたって事前に知っておくべきことがあります。
まず、ペットを飼う理由として多いものを見てみましょう。
ペットを飼いたい理由は?
どのような理由があってペットを飼おうと決める人が多いのでしょうか?
一般社団法人ペットフード協会によって行われた令和4年 全国犬猫飼育実態調査の結果を見ていきます。
この調査は令和4年に新しく犬猫を飼育し始めたオーナーを対象にしたものです。
飼育理由_犬
2022年(令和4年)全国犬猫飼育実態調査 結果
1.生活に癒し・安らぎが欲しかったから 32.1%
2.過去に飼育経験があり、また飼いたくなったから 25.5%
3.生活を充実させたいから 15.5%
コロナ禍で在宅が増えたこともあり、未だペット需要は増加傾向にあります。
猫の飼育理由も見ていきましょう。
飼育理由_猫
2022年(令和4年)全国犬猫飼育実態調査 結果
1.生活に癒し・安らぎが欲しかったから 31.6%
2.過去に飼育経験があり、また飼いたくなったから 26.3%
3.生活を充実させたいから 11.8%
パーセンテージは異なるものの、犬と猫共に飼育理由は同じでした。
犬猫を家族に迎えることで生活を充実させ、また癒しや安らぎを求めて飼う人が多いということが分かりました。
実際に動物と暮らすことは私たちに様々な良いことをもたらしてくれます。
癒される、安らぐことができるなどの精神的な効果はもちろんのこと、家族との会話が増えたり散歩などのお世話のために健康的な生活が身につくことも考えられます。
私は動物が大好きで、現在は猫2匹と生活を共にしております。
個人的にはひとりでも多くの人に動物と暮らすことの楽しさを知ってもらいたいと思っています。
しかし、ただ「癒されたいから」「生活を充実させたいから」という理由だけでペットを迎えることはおすすめできません。
ペットを迎えるということは、そのペットの命をあなたが一生涯預かるということを意味します。
人と動物が共に幸せになるためにはオーナーの意識がとても重要なのです。
オーナーに必要な10の条件
「公益財団法人 日本動物愛護協会」がまとめている「飼い主に必要な10の条件」というものがあります。
これだけは守っておきたい!という基本の10項目を見ていきましょう。
①住宅がペットを飼える状況にあること
ペットを迎えるためにはペット可の物件に居住していることが絶対条件となります。
また、ペット可物件であっても集合住宅などでは定められたルールを守り周辺に配慮をする必要があります。
②ペットを迎えることに家族全員の合意があること
ペットを迎えるということは家族が増えるということです。
ひとりでも反対している場合は迎えるべきではありません。
③動物アレルギーの心配がないこと
家族内にアレルギーの疑いのある人がいる場合には事前にアレルギー検査を受けるなどすることをおすすめします。
実際にアレルギーが発症した場合にどのように対策をしていくのか相談しておくと良いでしょう。
また、アレルギーのために飼育を断念せざるを得ないケースも耳にしたことがあります。
ペットを迎えないということも視野に入れて家族で話し合いをしましょう。
④そのペットの寿命まで飼育する覚悟があること(終生飼育)
ペットを迎えるということは、ペットの命をあなたが預かるということです。
寿命を全うするまでフード・お水を与え、快適な生活環境を提供し健康管理もしていかなければなりません。
疲れたから今日はさぼっちゃおうかな、なんてことはできません。
⑤世話をする体力があり、その時間を割けること
ペットを迎えるうえでやらなければならないことがたくさんあります。
フード・お水を適切に与え、トイレの掃除をし快適な生活環境の維持をする必要があります。
また犬の場合には散歩も欠かせません。
筆者は猫と一緒に生活をしていますが、毛玉予防のために毎晩ブラッシングをしています。
これらのことをこなせるだけの体力と時間が必要になります。
⑥高齢になったペットの介護をする心構えがあること
医療が日々進歩していること、オーナーの意識も向上していることからペットの寿命も延びています。
それに伴ってペットも認知症になるケースや老齢期の病気などで介護が必要となることもあります。
命を家族に迎えるということは高齢になった動物の介護をする心構えが必要です。
⑦経済的負担を考慮すること
ペットにかかる費用はフード代だけでなく、ペットシーツや猫だとトイレ砂などの生活用品の費用がかかります。
それだけでなくノミ・マダニの予防やワクチン注射など、健康であっても定期的に必要な医療費があります。
特に医療費は病気やけがの程度によっては高額になる場合も考えられます。
民間会社によるペット保険はありますが、人のように公的な保険制度はありません。
経済的に負担がかかるということも承知しておきましょう。
⑧必要なしつけと周囲への配慮ができること
集合住宅では、エレベーターなどの共有部分は抱っこやキャリーで移動することなどのルールが課されている場合があります。
また、集合住宅でなくともリードをつけて散歩する、排せつはきちんと処理するなどのマナーが必要になります。
ペットと楽しく生活をするために、周辺へ迷惑をかけないことを心がけましょう。
⑨引っ越しや転勤の際にも継続飼育する覚悟があること
家族構成の変化や仕事の都合などで転居しなくてはならないことがあります。
ペットを家族として迎え入れたのならば、転居先にペット飼育可物件を探すなど、終生飼育を心がけなければなりません。
ペットはあなた以外頼ることができません。
大切な家族ですから、どこまでもいっしょにいることが望ましいのです。
⑩飼えなくなった場合の受け皿を考えておくこと
①から⑨までペットを家族に迎え入れるための心構えを考えてきましたが、いざというときのことも考えておく必要があります。
不慮の事故など、さまざまな事情でどうしても手放さざるを得ない場合がでてくるかもしれません。
万が一の際に、代わりに家族になってくれる人を見つけておくことも重要です。
ペットを迎えると大変なことって?
ペットを迎えるうえで知っておいてもらいたいことはまだあります。
それは、想像以上に大変だということです。
ペットを迎えると、外出や旅行にも制限が出てきます。
例えば子犬や子猫、病気で看護が必要な動物の場合など、動物のみでのお留守番が不安な場合は長時間家を空けることができません。
ペットウェルカムな旅館やペンションもありますが、その子の性格次第では一緒に旅行に行くことがストレスになり得るのでよく考えたほうが良いでしょう。
ペットホテルに預けるという手もありますが、慣れていない場合は食餌を摂ってくれないことなどがありストレスがかかることが容易に考えられます。
ペットを迎えることで、気軽に長時間家を空けたり旅行をしたりすることが難しくなります。
また、前述のとおりお世話にかかる時間や費用も必要になります。
具体的にどの程度の費用がかかるのでしょうか。
ペット保険会社が契約者を対象に行った、2022年ペットにかかる年間支出調査の結果を見てみましょう。
(参考:anicom you【2022年最新版】ペットにかける年間支出を発表!)
年間でかかる費用は犬で約36万、猫で約16万という結果でした。
犬・猫共に支出が大きかった項目は「ケガや病気の治療費」「フード・おやつ」で、犬では全体の約4割、猫では約5割を占めています。
どちらもペットの健康を維持し楽しく生活をしていく上では欠かせない項目です。
また、近年日本の夏は猛暑が続いています。
ペットと暮らすうえで室内の温度や湿度の管理も必要になりますので光熱費への影響も見て取れます。
上記以外にも犬では犬種によってはトリミングの費用がかかるなど、美容関連での支出も伴います。
上記の調査結果はあくまでも平均なので、これ以上に支出が必要になる場合も考えられます。
ペットを迎えるうえで、どの程度の費用をかけられるのか、ペットの健康を維持することができるのか考えなくてはなりません。
ペットを迎えるオーナーの責任って?
ペットを迎えたとして、オーナーが負わなければならない責任とは何でしょうか。
令和元年に改正された動物愛護管理法では、オーナーに対する責任が明記されています。
6つのポイントでまとめてみました。
①ペットが命を終えるまで適切に飼養する「終生飼養」をすること
ペットを迎えるということは命を預かるということであり、その命を終えるまで責任を持つ必要があります。
②動物種や習性などに応じた飼養をしペットの安全と健康を守ること
ペットがその動物種らしい生活を送ることができるよう、種類や習性、性格などに応じた環境を整え健康や安全に気を配らなければなりません。
③鳴き声やふん尿などの悪臭で近隣に迷惑を及ぼすことのないように努めること
ペットが人に噛みつくなどの危害を加えたり、鳴き声などで近隣に迷惑をかけることのないよう、適切なしつけや訓練をする必要があります。
また、道路などの公共の場に動物の排せつ物が放置されていると、不快なだけでなく衛生的にも問題があります。
排せつ物の処理は必ず行いましょう。
④避妊・去勢手術などを行いむやみな繁殖を避けること
無計画な繁殖は、不幸な命を増やすことにつながります。
望まれない命が誕生することを防ぐために、避妊・去勢手術を行いましょう。
また、避妊・去勢手術には生殖器関連の疾患リスクを減らすメリットもあります。
⑤動物同士または動物からひとに感染する感染症の知識を持ち予防に努めること
犬ですと年に1度、狂犬病予防接種を受けることが狂犬病予防法によって義務付けられています。
そのほかにもさまざまな病気や感染症を予防するための混合ワクチンの接種があります。
⑥マイクロチップの装着や迷子札などの標識を装着し、所有者を明らかにすること
万が一逃げてしまったり迷子になってしまったりした場合、どこで保護されても所有者が分かるように身元を示すものを装着しておく必要があります。
迷子札や鑑札(登録された犬または狂犬病予防接種を受けた犬であるということを証明するための標識)などを首輪につけるとともにマイクロチップの装着に努めましょう。
犬を迎えたら居住している市町村に飼い犬を登録し、年に1度狂犬病予防接種を受けさせる義務があります。犬の登録や狂犬病予防接種の手続きは各市町村で行っており、手続きをすると犬の登録をした際に「鑑札」、狂犬病予防接種を受けた際には「注射済票」が交付されます。この鑑札と注射済票は、登録された犬であるということまたは狂犬病予防接種を受けた犬であることを証明する標識となり、犬の首輪などにつけておく必要があります。どちらにもその犬の番号が記載されているので、迷子になっても装着されている標識から確実にオーナーのもとに戻ることができます。(参考:厚生労働省 犬の鑑札、注射済票について)
マイクロチップは15桁の識別番号が記録されており、専用注射器で動物の首の皮下に埋め込みます。専用のリーダーで読み取ることでオーナーの情報が分かります。令和4年6月からペットショップやブリーダーなどの販売される犬猫にマイクロチップの装着・情報登録が義務化されました。保護動物や譲渡を受けた動物に関しては義務化されてはいませんが、万が一のために装着することをおすすめします。なお、マイクロチップは犬や猫だけでなくほとんどの動物に安全に装着することができます。(参考:環境省 犬と猫のマイクロチップ情報登録について、環境省 マイクロチップとは)
これらはすべて、ひとと動物が共に暮らし幸せになるために必要なものです。
ペットはオーナー無しで生きていくことができません。
ペットの命に責任を持つ必要があります。
命を家族として迎えるということは簡単なものではありません。
「飼うんじゃなかった…」をなくすために家族で徹底的に話し合ってみましょう。
こんなひとはペットを飼わないで
ペットを飼ってはいけないひと、飼うのに向いていないひとは以下に当てはまるような方です。(参考:わんちゃんホンポ 『犬を飼わないほうがいい人』の特徴5選)
①金銭的な余裕がない
先ほどもお話ししたように、ペットには生涯で高額な費用が掛かることが予想されます。
金銭的に余裕がない中でペットを迎えることは、オーナー、ペット共に辛い思いをする恐れがあります。
②何事にも飽きっぽい
一度ペットを迎えたら、最期の瞬間まで看取る責任があります。
毎日ペットのためのお世話をし、愛情を注がなければなりません。
何事にも飽きっぽいひとは、ペットという命を前にしても途中で手放してしまう恐れがあります。
動物は意思や感情を持つ尊い生き物です。
ひとの勝手な都合で動物に辛い思いをさせることはあってはなりません。
③生活スタイルやペースを崩されたくない
ペットを迎えることは、生活が大きく変化するということです。
ペットのために毎朝早起きしてフードを与え散歩をし、ペットに体調不良やケガの恐れがあれば急いで病院へ連れて行かなければなりません。
忙しい時間に「構って」「撫でて」とアピールをしてくることもあるでしょう。
自分の生活ペースを乱されたくないというひとは、ペットを迎えるのを控えたほうが良いです。
④出張や旅行が多い
ペットホテルに預けることもできますが、その子の性格によっては強いストレスを感じてしまい体調に異変をきたしたり、問題行動に発展してしまうケースもあります。
⑤過度に綺麗好きな人
綺麗好きなひとのなかには絶対に自分の生活環境を汚されたくないという強い気持ちを持ったひともいると思います。
しかし、ペットを迎えたらそれは難しいと思ってください。
犬や猫は抜け毛が発生しますし、粗相をしてしまうこともあります。
また、動物種によっては特有の臭いも発生します。
生活環境が汚れることが耐えられないという場合にはペットを迎えることは考え直しましょう。
このほかにも筆者が思うペットを迎えるのに向かない人を2つ、以下にまとめます。
①動物アレルギーを持つひとと又はその家族
例えその動物種が好きであっても、アレルギーを持つひとは要注意です。
また、自分はアレルギーでなくとも家族にアレルギーを持つひとがいる場合も同じです。
体に負担がかかってしまい、手放さざるを得ない状況になる可能性もあります。
疑いのあるひとは一度病院で検査しておきましょう。
②高齢または体に不安があるひと
獣医療は日々進歩しており、ペットの寿命はのびています。
毎日のお世話や散歩に行く体力も必要になります。
思い当たる場合にはペットを迎えることを慎重に検討すべきです。
まとめ
ペットとの生活は喜びだけではなく、大変なこともたくさんあります。
不都合なこともすべて認識したうえで尚迎えたいと思える状況が望ましいです。
「飼うんじゃなかった」と後悔しお互いが辛い思いをすることを防ぐために、勇気を持って迎えないという選択をすることも大切です。
動物を大切に思うからこそ、飼わないという選択をしても良いのではないでしょうか。