猫がかかりやすい《5大疾病》と予防対策を徹底解説

椅子の上でくつろぐ猫
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猫の寿命は年々伸びており、一般社団法人ペットフード協会(令和4年 全国犬猫飼育実態調査)によると、猫(全猫種)の平均寿命は15.62歳というデータが出ています。そのなかでも、完全室内飼いの猫では16.02歳となっていました。

現在猫を飼っている飼い主さまや、これから飼育を検討している方のなかには、以下のような疑問をお持ちの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

  • 猫がかかりやすい病気って?
  • 病気の予防ってどうしたらいい?
  • できるだけ長く一緒に過ごすには?

この記事では、猫と暮らす飼い主さま向けに猫がかかりやすい病気や予防方法などについて解説していきます。

大切な家族の一員である猫たちに長く健康でいてもらえるように、病気について知ったうえでぜひ予防対策を取り入れてみてください。

目次

猫がかかりやすい5大疾病とは

窓の外を眺める猫

まずは、猫がかかりやすい上位5つの病気について解説します。「猫は亡くなるときに姿をくらます」とよくいわれるように、注意深く観察していなければ病気のサインに気づけないことが多いため、猫を飼っている方は丁寧に健康観察を行うようにしましょう。

なお、この記事で紹介する猫に多い疾患は、アニコム家庭どうぶつ白書2022のデータを参考にしています。

第1位:消化器疾患

全猫種のなかで最も多い病気は「消化器疾患」です。消化器疾患のなかには、次のような病気が含まれています。

  • 急性胃腸炎
  • 大腸炎
  • 便秘
  • 膵炎
  • 過敏性腸症候群

猫の消化器疾患は、急性胃腸炎のように一過性のものから、慢性膵炎のように定期的な通院が必要で予後が悪いといわれているものまでさまざまです。

消化器疾患でよくみられる症状

消化器疾患でよくみられる症状は、次のとおりです。

  • 嘔吐/吐出
  • 便秘
  • 下痢
  • 軟便
  • 食欲不振

猫は健康面に問題がなくても吐きやすい動物ですが、あまりにも回数が多かったり、吐いたものに血が混ざっていたりする場合には、早めに動物病院で受診しましょう。ほかにも、吐いたものの内容によって対応が異なる場合があるため、「【ユニ・チャーム】愛猫が吐いた!吐いたモノ別飼い主がとるべき行動」を参考にしてみてください。

また、猫用のおもちゃの誤飲も消化器疾患に含まれます。誤飲したものが腸管内で詰まってしまうと腸閉塞となり開腹手術が必要になることもあるため、猫のおもちゃはできるだけ誤飲のリスクが少ないものを選び、遊ぶときだけ出してあげるようにすると良いでしょう。

第2位:泌尿器疾患

猫がかかりやすい病気のなかで、2番目に多いものは「泌尿器疾患」です。泌尿器疾患には次のような病気が含まれます。

  • 急性腎不全
  • 慢性腎臓病
  • 尿路結石症(尿石症)
  • 猫下部尿路疾患
  • 細菌性膀胱炎
  • 糸球体腎炎
  • 尿道閉塞
  • 尿道炎
  • 腫瘍(膀胱、腎臓)

猫の死因第1位である慢性腎臓病は、高齢猫の約8割がかかるといわれています。定期的な通院がかかせないほか、食事管理や投薬の必要があるため、飼い主さまの丁寧なケアが大切です。

泌尿器疾患でよくみられる症状

泌尿器疾患でよくみられる症状は、次のとおりです。

  • トイレに行く頻度が増える
  • 尿量の減少
  • 血尿
  • 不自然な体勢での排尿
  • 排尿痛
  • 飲水量の増加/減少
  • 食欲低下

猫の泌尿器疾患では、特におしっこに関係する症状が多くみられます。また、飲んでいる水の量や1回あたりのおしっこの量など、飼い主さまが把握しにくい部分もあるため、日ごろからチェックする習慣をつけておくのがおすすめです。

第3位:皮膚疾患

3番目に多い「皮膚疾患」には次のような病気があります。

  • 皮膚糸状菌症
  • ノミアレルギー
  • ツメダニ症
  • 耳疥癬
  • アトピー性皮膚炎
  • 肥満細胞腫
  • 皮膚腫瘍

皮膚に付着するカビや外部寄生虫が原因のものから、腫瘍を形成する病気までさまざまであり、なかには原因が特定できないものもあります。

皮膚疾患でよくみられる症状

皮膚疾患でよくみられる症状は、次のとおりです。

  • 脱毛
  • かゆみ
  • フケ
  • 発疹
  • 皮膚のべたつき(脂っぽい)
  • 皮膚のしこり

皮膚疾患では、脱毛やフケなど飼い主さまが気づきやすい症状が多くみられます。

皮膚のしこりをともなう皮膚腫瘍の約2割は肥満細胞腫だといわれており、さらにそのうち約90%は良性との報告があります。一方で、悪性黒色腫(メラノーマ)扁平上皮がんなど悪性のものも多くあるため、皮膚や口のなかにしこりを見つけた場合には早めに動物病院で検査を受けましょう。

第4位:全身性の疾患

猫の「全身性の疾患」とは、特定の場所に限らず全身に影響を及ぼす病気のことです。全身性の疾患には次のような病気が含まれます。

  • 中毒性疾患(タマネギ、チョコレート、ユリ、薬剤など)
  • 食物・薬剤アレルギー
  • 熱中症
  • 猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症
  • 猫伝染性腹膜炎(FIP)
  • 外傷/咬傷
  • 全身性の感染性疾患
  • 全身性の腫瘍性疾患

猫の飼育環境においては、タマネギ/ネギ類・チョコレート・ユリなど中毒を起こすリスクが高いものは猫が届くところに置かないように注意しましょう。また、人用の鎮痛剤に含まれるアセトアミノフェンや、飲料・消毒剤などに含まれるアルコールを誤飲すると中毒を起こします。

全身性の疾患でよくみられる症状

全身性の疾患でよくみられる症状は、次のとおりです。

  • 発熱
  • 元気低下
  • 食欲低下
  • 体重減少
  • 嘔吐
  • 下痢
  • けいれん

いつもと違う様子がみられた際には、嘔吐物や排泄物の写真または実物を持参したり、けいれんや異常行動の動画を撮影して動物病院で獣医師に見せると正確な診断につながりやすいでしょう。

第5位:眼の疾患

眼の疾患には、次のような病気があります。

  • 結膜炎
  • ブドウ膜炎
  • 白内障
  • 緑内障
  • 眼瞼炎
  • 流涙症
  • 角膜黒色壊死症

眼の疾患でよくみられる症状

眼の疾患でよくみられる症状は、次のとおりです。

  • 目やに
  • 流涙
  • 目が赤い
  • 眼球が白い
  • 眼球の表面が黒い

正常でも黒っぽい目やには少量出ますが、普段に比べて目やにや涙の量が多い場合には眼の病気のサインかもしれません。また、いつもと見た目が違うなど、違和感を感じた際には動物病院を受診しましょう。

その他:注意すべき疾患

ここまでに紹介した5大疾病以外で、気をつけていただきたい猫の疾患には次のようなものがあります。

  • 毛球症
  • 歯や口腔の疾患(歯周病、歯肉炎、口内炎など)
  • 耳の疾患(中耳炎、マラセチア性外耳炎など)
  • 猫白血病ウイルス(FeLV)感染症
  • 猫伝染性鼻気管炎
  • 心臓病

毛球症・歯や口腔の疾患・耳の疾患では、嘔吐の頻度や口臭、耳の臭い・耳垢など、見た目の症状から判断しやすいケースが多いでしょう。

一方で、ウイルス感染症や心臓病の場合は、症状に気づきにくいこともあります。そのため、日ごろのスキンシップのなかで健康状態を確認しながら、動物病院の定期健診を活用すると良いかもしれません。

猫の健康セルフチェック方法

舌をちょっと出した猫

猫の健康状態のセルフチェック方法は、大きく分けて「観察」「ふれあい」「トイレ掃除」「自主検査」の4つがあります。順番に解説していきますので、重要な観察ポイントを参考にしながら愛猫の健康観察に役立ててください。

観察

最も効果的なセルフチェック方法は、猫をよく観察することです。重要な観察ポイントを下の表にまとめます。

寝ているとき方はいつもどおりか
呼吸はいつもどおりか
起きているとき(安静時)表情
毛づくろいの様子
動くものへの反応
食欲・飲水欲
遊んでいるとき(運動時)歩き方・走り方
動くものへの反応
元気がない様子はないか
排泄しているとき排泄の体勢はいつもどおりか
排泄中に痛がる様子はないか
排泄の頻度・回数

ふれあい

日ごろから猫とスキンシップを取ることによって、飼い主さまと飼い猫の信頼関係が構築されるため、全身を手で触ってセルフチェックできるようになります。ただし、猫の性格には個体差があり、体を触られるのが嫌いな猫もいるため猫に負担のない範囲で行うようにしましょう。

ふれあいのなかで観察できる重要なポイントを下の表にまとめます。

全身の被毛・皮膚並み
毛づ
脱毛やフケなどの異常はないか
イボやしこりはないか
痒がる様子はないか
見た目はいつもどおりか
臭い・汚れなどはないか
肉球、爪はいつもどおりか
お腹・背中イボやしこりはないか
腹部が膨満していないか
体重抱っこしたときの重さ

上記の重要な観察ポイントを参考に、猫の健康観察をしてみてください。

トイレ掃除

猫のトイレ掃除はただの後始末ではなく、大切なセルフチェックのひとつです。トイレ掃除の際には、尿や便の量、色、臭いを必ずチェックしましょう。

おしっこに関しては、回数が多すぎても少なすぎてもどちらも病気のサインの場合があります。健康な猫の排尿回数は1日に2~4回といわれているため、トイレ掃除の際には排尿回数も気にしてみてください。

自主検査

飼い主さまが自主的に依頼できる検査には、次のようなものがあります。

「おしっこチェック」とは、自宅で採取した尿を動物病院に持参して尿検査を依頼する方法です。尿検査では泌尿器疾患に関連する項目も調べてもらえるため、定期的にチェックしておくと安心でしょう。

「腸内フローラ測定」とは、猫の便を採取して腸内細菌のバランスを調べる方法です。この腸内フローラが崩れてしまうと、さまざまな疾患を発症しやすくなるといわれています。目には見えない腸内フローラを定期的に調べておくと、病気のリスクに備えながら生活習慣を改善できるかもしれません。

病気の早期発見のポイント

ソファーで眠る猫

病気の早期発見の第一歩は、まず飼い主さまが猫の病気について知っておくことです。病気特有の症状やいつもと違う猫の状態にいち早く気づくことが、病気の早期発見・早期治療につながります。また、ちょっとでも違和感を感じたときにすぐに相談できる動物病院を見つけておくことも大切です。

日常的にセルフチェックを行うことで、病気を早期発見するメリットは次のとおりです。

病気の早期発見のメリット
  • 早い段階で治療開始できるため、治癒率が高い
  • 猫が感じる痛みや不快感が少なく済む
  • 医療費を節約できる
  • 二次的な病気の予防につながる
  • 健康寿命が延長する

病気の発見が遅れれば、治癒率が下がるだけでなく長期的な通院や投薬が必要になったり、寿命が短くなったりといった影響が出てきます。

猫ができるだけ長く健康で過ごせるように、できる予防対策から始めていきましょう。

猫の病気の予防対策

子猫3匹

ここでは、猫の病気の予防対策について解説していきます。先ほどご紹介したセルフチェックと合わせて行うとより効果的です。さっそく今日から始められる対策もありますので、ぜひ参考にしてみてください。

ワクチン接種で感染症を予防

猫のワクチン接種は、さまざまな感染症から猫を守るために必要です。完全室内飼いでほかの猫と接触する機会がない場合でも、地震・火事などの災害時や脱走してしまった際には、感染症のリスクがともないます。万が一のときに備えて、ワクチン接種をしておくと安心でしょう。

動物病院での定期健診を活用

動物病院での定期健診も、予防対策のひとつとして有効です。成猫では1年に1回、11歳以降のシニア猫では半年に1回を目安に受診すると良いでしょう。

動物病院に慣れていない猫の場合は、連れていくことがかえってストレスになってしまうのではないかと心配される飼い主さまが多いようですが、病気のサインに気づいたときにはすでに病気が進行しているケースもあるため、定期的に受診して記録を残しておくと安心です。

適切な食餌・飲水管理

猫に与えるフードは、成長段階や年齢に合わせた「猫用の総合栄養食」を選びましょう。総合栄養食とは、水と一緒に与えるだけで必要な栄養をすべて摂取できるフードのことで、商品パッケージに必ず記載されています。

また、猫の飲水管理も重要です。猫に必要な1日の水分量は、体重1kgあたり50mlといわれています。飲水量が把握しやすい器や、猫が好んで水を飲んでくれる器もしくは給水器を使用すると良いでしょう。

運動でストレス解消と肥満予防

完全室内飼いの猫の場合には、家のなかで運動できる環境を整えてあげることも健康面では大切です。高い所にのぼったりおもちゃで遊んであげたりすることで、ストレス解消や肥満防止といった効果があります。

特に7歳以降の中高年期では、食事やトイレなど必要なときしか動かずに運動不足になりがちなため、意識的に運動させてあげると良いでしょう。

まとめ

猫がかかりやすい5大疾病と病気の予防対策について、この記事で解説したことをまとめます。

《猫の5大疾病》

  • 消化器疾患
  • 泌尿器疾患
  • 皮膚疾患
  • 全身性の疾患
  • 眼の疾患

《猫の病気の予防対策》

  • ワクチン接種で感染症を予防する
  • 動物病院での定期健診を活用する
  • 食餌・飲水の適切な管理をする
  • 運動でストレス解消と肥満予防を意識する

適切な飼育管理と同じく、病気の早期発見・早期治療も非常に大切です。愛猫の様子がいつもと違うかも…と感じたら、早めに動物病院を受診して必要な検査を受けるようにしましょう。

愛猫にできるだけ長く健康でいてもらえるように、できることから始めてみませんか?

【免責事項】Animal Compassionではできるだけ正確な情報提供を心がけていますがご利用者様による正当性の確認をお願いいたします。また医療に関する助言を提供することはございませんので、最終的な判断は適切な医療従事者に個別の状況を確認してもらった上で行うようにお願いいたします。

椅子の上でくつろぐ猫

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この記事を書いた人

【獣医師/Webライター/1児の母】
麻布大学卒。大学時代は介在動物学研究室にてアニマルセラピーを専門に研究。
大動物獣医師としてNOSAI北海道で7年間勤務した後、31歳でWebライターに転身。ライティングを中心に、ホームページ制作、名刺・チラシデザイン等、幅広く活躍中。

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