もし明日災害が起きたら、あなたは大切なペットを守れますか?
災害大国といわれる日本では、これまでに起きた大規模災害でたくさんのペットの命が失われてきました。所有者がわからなかったために、飼い主様と再会できなかったペットが多く存在することも事実です。
この記事では、災害からペットを守るために必要な防災対策と避難準備、同行避難(ペットと一緒に避難する方法)において気をつけたいことなどについて解説していきます。
いつ発生するかわからない災害に備えて、ぜひ参考にしてみてください。
ペットの防災対策が必要な理由

災害はいつ起こるか予測できません。近年、動物愛護の観点からペットと一緒に避難できる避難所が増えてきていますが、ペットの受け入れが可能な避難所はごく一部に限られているのが現状です。また、基本的に自治体ではペット用の避難物資を備蓄しておらず、ペットの支援物資が届くまでには時間がかかります。実際に日本で発生した過去の災害では、行方が分からなくなり飼い主が特定できなかったペットが多く存在しました。
突然の災害によって迅速な避難が必要になったときのために、大切な家族であるペットを守るための防災対策が必要です。
日本における過去30年間の大規模災害
2023年10月現在、過去30年間に起こった大規模災害には次のようなものがあります。
1995年1月 | 阪神淡路大震災 |
2000年3月 | 有珠山噴火 |
2000年6月 | 三宅島噴火 |
2004年10月 | 新潟県中越地震 |
2011年3月 | 東日本大震災 |
2016年4月 | 熊本地震 |
2018年9月 | 北海道胆振東部地震 |
地震や噴火といった災害は規模が広がりやすく、二次災害として津波・火災・土砂崩れ・家屋の倒壊などが起こります。災害の種類や季節にかかわらず、ペットと一緒に身を守る方法を前もって考えておく必要があるでしょう。
用意しておくべきペットの避難グッズ

災害によって避難が必要になったときのために、普段からペット用の避難グッズを用意しておくことをおすすめします。
《ペット用》避難準備リスト
- ケージ
- トイレシート
- 排泄物の処理に使うビニール袋など
- ペットフード・水(最低でも5日分)
- 療法食や薬
- ワクチン接種状況などがわかるもの
- ウェットシート
- ブラシなどのケア用品
避難グッズはすぐ持ち出せる場所に用意し、避難が必要な場合に慌てずに行動できるようにしましょう。
事前に確認しておきたい防災情報

災害が起こる前に、ペットの飼い主さまにぜひ確認しておいていただきたい防災情報についてご紹介します。
環境省のガイドライン
環境省では「人とペットの災害対策ガイドライン」を定めており、一般の飼い主様向けに公開しています。過去の災害から学んだ教訓や、ペットと同行避難するためのフロー図を掲載していますので、いざというときに備えて確認しておきましょう。
このガイドラインに記載されている、ペットを守るための重要なポイントは以下のとおりです。
1. 飼い主が自らの安全を確保することが、災害時にもペットを適切に飼養することにつながる
2. 健康面やしつけを含めたペットの平常時からの適正な飼養が、最も有効な災害対策になる
3. 災害時にはペットを落ち着かせるとともに、逸走やケガなどに注意して、ペットとともに避難する
人とペットの災害対策ガイドライン
飼い主様自身の安全を確保しながら、ペットと一緒に安全な場所に避難しましょう。
ハザードマップ
お住まいの地域もしくは勤務地のハザードマップを確認して、避難ルートを確認しましょう。地震や津波など災害ごとの避難ルートをすべて確認しておくことが大切です。
ハザードマップポータルサイトでは、住所からハザードマップを検索できるほか、洪水・土砂災害・津波など複数のリスク情報を重ねた地図を閲覧できます。
また、国土地理院のサイトでも指定緊急避難場所の地図を閲覧可能です。
最寄りのペット可の避難所
自治体が開設する避難所情報については、各自治体のホームページをご覧ください。
また、うちトコ動物避難所マップでは、災害時にペットを預かってもらえる施設や、ペットと一緒に宿泊できる施設を掲載しています。自宅の近くにある施設を前もって調べておくと安心でしょう。
避難訓練情報
自治体が主催している避難訓練では、住民への避難の呼びかけのほか、避難所の開設や運営まで行うこともあります。避難訓練に参加することによって事前に避難所の情報を知れるなどのメリットがあるため、積極的に参加すると良いでしょう。また、自治体によってはペット同行避難訓練を実施しているところもあります。
災害が起きたら確認すべきこと

災害発生時には、まず身の回りの安全を確認することが大切です。災害情報の確認には、停電時でも使えるポータブルラジオがあると便利です。また、飼い主様の動揺はペットにも伝わってしまうため、ペットに不安を感じさせないように落ち着いて行動しましょう。
ここでは、自宅で被災した場合と外出先で被災した場合に分けて解説していきます。
自宅で被災した場合
自宅で被災した場合には、地域や建物の被災状況などを把握したうえで、ペットと一緒に同行避難するか在宅避難するかの判断をします。ペットを置き去りにして飼い主様だけで避難することは避けましょう。
なお、二次災害を防ぐため、自宅から避難所へ避難する際には可能であれば電気ブレーカーを切り、ガスの元栓を閉めてから避難してください。
外出先で被災した場合
外出先で被災した場合には、ペットと一緒にいるケースと別々にいるケースが考えられます。それぞれ対応が異なるため、慌てずに行動してください。それぞれのケースについて解説します。
ペットと一緒に被災
外出先でペットと一緒に被災した場合には、ペットと一緒に最寄りの避難所へ同行避難しましょう。外出時にはペット用の避難グッズを持ち合わせていないケースがほとんどかもしれませんが、普段から移動する車などに積んでおくことをおすすめします。
ペットと別々に被災
外出先でペットと別々に被災した場合には、まずは飼い主様の身の回りの安全を確保しつつ、最寄りの避難所に避難しましょう。ペットの安否がわからず不安だと思いますが、飼い主様の安全が第一です。避難後に自宅に戻れる場合にはペットを自力で探し、自宅に戻れない場合には家族や知人に保護を依頼してください。
避難所での過ごし方

ペットの同伴が可能な避難所での過ごし方には、以下の4つのパターンがあります。
- 室内同居
- 室内別居(専用の飼育スペースなど)
- 屋外飼養
- 車中やテントで過ごす
もし緊急避難先がペットの同伴ができない避難所だった場合には、ペットの受け入れが可能な避難所へ移動することになります。また、どうしても避難先へのペットの同伴が難しい場合には、家族や知人に預けるか、保護施設に預けることも考えておきましょう。
ペットを災害から守るための迷子対策

災害発生時にはペットもパニックになっていたり不安を感じていたりするため、自宅や避難先から脱走してしまうこともあります。万が一の脱走に備えて、マイクロチップや鑑札を装着して所有者がわかるようにしておくことが大切です。
環境省の東日本大震災における被災動物対応記録集によると、10県市において保護された犬や猫のうち、首輪やマイクロチップなどの所有者明示物を装着していたのは犬689頭、猫39頭でした。そのうち、首輪のみ装着していたケースでの飼い主様への返還率は犬が14%、猫が0%であり、鑑札や迷子札を装着していたケースの返還率は100%だったというデータがありました。
この災害の経験から犬や猫へのマイクロチップの装着義務化が推進されてきた背景があり、現在のように動物愛護管理法の改正につながっています。

なお、首輪に迷子札を装着しておくのも有効ですが、首輪は外れてしまうリスクがあるため注意が必要です。そのため、マイクロチップを体内に挿入しておくことをおすすめします。
ペットを災害から守るための健康管理

ペットを災害から守るためには、しつけや予防接種などの健康管理が大切です。避難所ではケージのなかで過ごす時間が長いため、普段からケージ内が安全な場所であることを覚えてもらい、安心して過ごせる環境にしてあげると良いでしょう。猫の場合には、ケージから外が見えると落ち着かないため、大きめのバスタオルなどをケージにかけて目隠しのようにしてあげるのがおすすめです。
また、避難所にはたくさんのペットが避難するため、あらかじめ予防接種を済ませておき、感染症対策に努めましょう。保護施設によっては狂犬病や混合ワクチンなどの予防接種の記録がなければ預かってもらえないこともあります。避難の際にはペットの予防接種記録も携帯しておくと安心です。
日ごろから燃料と充電は満タンに!

車のガソリンや灯油タンク、スマホの充電などは常に満タンにしておくことをおすすめします。また、冬季の災害時には暖房設備が使えないことも考えられるため、車に毛布や上着などを積んでおくと良いでしょう。
私自身、北海道に住んでいて胆振東部地震と大規模停電(ブラックアウト)を経験しましたが、車のラジオやスマートフォンが重要な情報源でした。9月だったため暖房がなくても過ごせるのが救いでしたが、電気が復旧するまでの間は電波状況も悪く、車のガソリンやスマートフォンの充電が切れてしまわないか不安だったことをよく覚えています。夜は非常用のランタンとスマートフォンの明かりが頼りで、それがあるだけで精神的にも落ち着いていられたので、日ごろから燃料と充電は満タンにしておくのがおすすめです。
まとめ
今回は、ペットの防災対策について解説しました。ペット向けの避難準備リストを活用して普段から災害に備えながら、マイクロチップの装着や予防接種なども済ませておくと安心でしょう。また、ケージのなかで過ごす練習や、飼い主様が呼んだら来るように覚えさせるなどの基本的なしつけも大切です。災害からペットを守るために、ぜひ参考にしてみてください。