うさぎ・鳥・ハムスターなどの動物の地震/震災時の備えと避難のしかた(エキゾチックアニマル)

うさぎとカゴ
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日本は様々な災害が起こる災害大国です。

災害の代表例である地震は今年の元旦にも発生し、甚大な被害をもたらしました。

令和6年能登半島地震と呼ばれるようになったこの地震を受けて、改めて災害時の対策を考える気運ともなりました。

犬や猫の災害対策、避難方法については論じられる機会が多いものですが、エキゾチックアニマルを飼育している方は、その災害対策について考えたことはあるでしょうか。

以前のエキゾチックアニマルについての記事で触れたように、エキゾチックアニマルは特殊な飼育環境を必要とします。

さらにエキゾチックアニマルの被災時には、犬や猫とは違った対応が求められます

今回はエキゾチックアニマルが被災した場合に、どういう対応を取らなければならないかを考えてみましょう。

目次

エキゾチックアニマルの震災の備えとは

仮設住宅


エキゾチックアニマルは環境の変化に敏感です。

一歩自宅の外に持ち出すだけで、その環境の変化によるストレスによって体調が悪くなり、食餌を取ってもらえずそのまま衰弱してしまうことも良くあります。

そんなエキゾチックアニマルだからこそ、災害時であっても極力環境の変化を起こさないように事前に準備しておく必要があるのです。

震災の備え①自宅の環境を整える

ケージの中に入っていることが多いエキゾチックアニマルは、家具が倒れてきたとしてもその場所から逃げることができません

そのため、ケージを置く場所ケージの回りの環境にも配慮する必要があります。

耐久性のあるものでケージを囲ったり、落下しないような場所に置く、回りに倒れそうな家具を置かないなどの工夫をしましょう。

総務省消防庁による、「地震による家具の転倒を防ぐには」というウェブサイトを参考にしてみると良いと思います。

・家具の耐震補強を施す
・安全な場所にケージを置く
・ケージを補強する

震災の備え②食餌やキャリーケースなどの備蓄を準備する

避難所生活を余儀なくされた場合に備えて、支援の手が届き始めるまでに必要な物品を最低1週間分は整えておきましょう。

支援が開始されても手に入りにくいエキゾチックアニマル専用の食餌は多めに用意しておくべきです。

また温度管理もしなくてはならないので、保温の際にはゆたんぽカイロコードレスのヒーターなどを用意しておくと良いでしょう。

湯たんぽはお湯を入れるものや、電子レンジでチンをして温められるものが便利です。

暑い時にはクールマットや空気を循環させるための小型扇風機が活躍するでしょう。

ポータブル電源があると避難時の電気問題が解決され、様々なシーンで活躍します。

ハーネスやリードが付けられる動物種(フェレットなど)では、それらも必ず用意しておきましょう。

現在様々な動物種のハーネスが販売されていますが、ハーネスを付けることのストレスも加味して、着用シーンを選ぶ必要があります。

・最低1週間分の消耗品を用意(特に餌は多めに用意)
・キャリーケース
・保温、保冷剤
・ハーネス etc
(犬や猫の防災対策で用意すべきものを参考の上、上記を用意)

震災の備え③動物自身に関しての用意

マイクロチップは哺乳類や鳥類、爬虫類などほとんどの動物種に挿入することができます。

現在、ペットとして飼養されているエキゾチックアニマルにマイクロチップの挿入を行う動物病院はほとんどありませんが、近い将来には頻繁に行われるようになっているかも知れませんね。

犬や猫のようにマイクロチップを挿入しない場合は、身元を証明する写真つきのデータ(迷子犬・猫などのチラシのようなもの)や、鳥の足輪を必要に応じて準備しましょう。

また、犬や猫にはしつけが必要なように、エキゾチックアニマルにも事前に行うべきことがあります。

それは、その動物の食の好みを把握することです。

生まれてから同一のものを食べ続けていると、緊急時に目新しいものを与えても全く食べてくれないということが考えられます。

そのため、日頃から様々な食餌に慣れさせたり、好みを把握しておくと良いでしょう。

・身元を証明するデータや鳥の足輪など、飼い主を特定することができるものを用意する
・色んな餌に慣れさせておく
・食の好みを把握する

震災の備え④移動時の注意点を理解する

エキゾチックアニマルの避難は、移動の際にも細やかな注意が必要です。

ケージの種類移動時の温度管理はもちろんのこと、特に脱走には気をつけましょう。

下記で述べる代表的なエキゾチックアニマルの震災対策の項目で、避難時の注意点も記載していますので、具体的にどのようなことに気をつけるべきなのかを確認してみてください。

・その動物に合ったケージ選び
・移動時の温度管理にも気をつける
・脱走に注意

震災の備え⑤避難所でのエキゾチックアニマルの受け入れ態勢を確認する

近年は自治体によるペットの避難所での受け入れ態勢も議論されるようになりましたが、その多くは犬や猫に限定された話です。

うさぎやハムスター、鳥などは避難所の受け入れ予定に無いことも多く、更に爬虫類や両生類は明確に避難所への受け入れを拒否している自治体もあります。(例:神奈川県小田原市

市のホームページに明記されていない場合、担当の部署に電話やメールで問い合わせてみましょう。

・住んでいる市町村のホームページを確認する
・記載がない場合は問い合わせる

震災の備え⑥避難中の飼育が難しい場合の預け先の確認

震災時におけるペットホテルや動物病院での預かりキャパシティはごく限られたものですし、エキゾチックアニマルの受け入れとなるとその数は更に少なくなります。

避難所へ同行避難したとしても自宅で飼っていたときのような飼育環境を整えられず、命の危険があるのであれば家族や親戚、友人などに一時預かりをお願いできるかどうかを考えましょう。

預けている間のお世話や、体調の変化でトラブルにならないように、事前に話をしておくことも大切です。

・最寄りのペットホテルや動物病院などでの受け入れ可否の確認をする
・万が一の際、家族や親戚、友人に預けられるか確認をする

うさぎの震災対策

原っぱとウサギ

これから具体的な動物種をあげて、震災対策について考えてみたいと思います。

最初に、日本国内における代表的なエキゾチックアニマルであるうさぎを例にしてみましょう。

うさぎのための震災対策

まず自宅の環境を整えるために、ケージの位置や回りの耐震補強に加え、パニックになって飛び回った際に当たって危険なものがないかを確認しましょう。

また、用意しておく食餌はペレットだけではなく、必ず牧草も用意しておきましょう。

ペレットだけでは食物繊維が足りておらず、胃腸うっ滞を起こしてしまいます。

ウサギにとって、食物繊維はなくてはならない栄養素なのです。

かといって、周囲に生えているからと雑草ばかり与えてもよくありません。

大量に準備するのは至難の技ですし、葉っぱであればなんでも良いわけではありません。

ハーブ系の雑草が混じっていたり、除草剤が撒かれている可能性もありますので、牧草を用意しましょう。

また、うさぎは汗腺がなく汗をかかないので、暑さに大変弱いということも覚えておきましょう。

汗をかかない代わりに大きな耳から身体の熱を逃します。

また、多湿の状況も苦手なので、風通しにも注意が必要です。

ケージの中に保温材や保冷剤を入れる時には、噛まれても大丈夫な素材なのかを必ず確認しましょう。

うさぎのための震災時の避難のしかた

ウサギは骨が脆く簡単に骨折してしまう生き物です。

うさぎは野生界では食べられる側(被食者)であるため、捕食者から逃げる必要があります。

身体を軽くするために骨も軽量化されているので折れやすく、逃げ足を早くするために足の筋力が発達しています。

そのことから、狭い室内やケージ内でパニックになり暴れると、骨折してしまう可能性が非常に高いのです。

飼育ケージ内には、すのこなど糞尿が下に落ちるシステムを設けるべきですが、足を引っ掛けてしまわないようなものを用意することが大切です。

避難は同行避難を基本としますが、避難所での過ごし方は避難所を管理している場所へ事前に問い合わせるなどしなければなりません。

キャリーやケージについて

うさぎのキャリーケースについては、側面が開き、上からも開くプラスチック製のキャリーケースを推奨します。

これは、キャリーケースからウサギを取り出す際には上部の扉を開いて抱き上げ、キャリーケースに入れる時には横の扉部分から入れるという動作が大変容易であるためです。

ウサギは抱きかかえたり、手で持つという行為自体に慎重にならなければいけません。

普段から用意しておくキャリーケースも、非常時に手間を取らずスムーズに取り扱えるものを用意しておくことをおすすめします。

うさぎは地震を予知できるのか

うさぎが地震を予知できるのでは?という声をたまに聞くことがあります。

確かに、動物によってはかすかな振動や音を感じているのかも知れません。

しかし、本当のところは分かっていないのが現状です。

動物が地震の発生を教えてくれたらとても助かるのですが、それよりも事前の準備を整えたり、避難時の理解を深めることを優先しましょう。

うさぎと地震─足ダンやパニックについて

うさぎの足ダンは、その名の通り後ろ足でダンっと大きな音を立てる行動を言います。

この足ダンは、警戒しているときや怒った時、周囲のウサギに危険を知らせるために行う事があります。

うさぎを飼っている方ならその行動を見たことがあるのではないでしょうか。

地震による異変を感じると足ダンをしたり、パニック状態になって飛び回ることがあります。

無理に押さえつけると骨折の原因となってしまいますので、注意しましょう。

ハムスターの震災対策

ケージの中のハムスター

可愛らしい容貌で昔からペットとしての人気が高いハムスター

小さい生き物なので、用意すべきものの量はそんなに多くはありませんが、気をつけるべき点はどのようなものがあるのでしょうか。

ハムスターのための地震や震災対策

ハムスターの飼育の適温は22度前後だと言われています。

気温が10度を下回ると疑似冬眠に入ってしまい、そのまま亡くなってしまうこともありますので、温度管理には注意しましょう。

また、どの動物にも当てはまることですが、暑いと熱中症になってしまうので注意が必要です。

ハムスターは飼育する際に床材が必要なので、避難する際にも床材は持っていくべきです。

床材もきちんと掃除をしていないと汚れが溜まっていき大変不衛生になってしまいます。

トイレの場所を覚えているハムスターは掃除が楽なので、決まった場所にトイレをしてもらうよう日頃から慣らしておきましょう。

上記に加えて、ハムスター用のキャリーケースも必須の用品。

自宅で使用している飼育ケージが持ち運びできる大きさであればいいですが、据え置きするタイプのケージであればキャリーケースを用意しておきましょう。

保温材や保冷剤は、ウサギの際と同様に噛まれても問題ない素材であるかを必ず確認しましょう。

ハムスターのための震災時の避難のしかた

避難所生活では、小さな動物だから大丈夫だろう、と思われるかもしれませんが、ハムスターは薄明暮性(はくめいぼせい)と呼ばれる明け方や夕方に活発になる生き物です。

ハムスターは活発な生き物なので、本来回し車を用意してたくさん走らせてあげる必要があります。

しかし同室で避難生活を行う同伴避難だと、他の方が寝静まっている場所での物音はトラブルの原因となりますので、注意しましょう。

また、ペットが集まる部屋では犬や猫も集まっていますので、ハムスターにとって天敵となる動物と同居すると恐怖を感じるでしょう。

室温が適切であっても、匂いや物音によるストレスも大きいということを覚えておきましょう。

ハムスターと震災によるストレス

ハムスターも元来の野生界では被食者側であるため、常に身の危険に晒されながら暮らしています。

日常生活のストレスは回し車を走ったりかじり木をかじったりすることで発散できますが、地震やそれによる避難生活でそれらの行動さえできないほど強いストレスを感じてしまうこともあります。

抗えない環境の変化は受け入れるしかありませんが、それらの変化を最小限に抑えるためにできる限りの対策を考えないといけませんね。

鳥の震災対策

窓辺の鳥かご

インコや文鳥などの鳥類もペットとして人気が高いので、飼育している方は多いのではないでしょうか。

鳥類に関しても気をつけなければならない点は多々あります。

鳥のための地震や震災対策

鳥は地震が起きた際にびっくりして家の外へ逃げ出してしまわないように気をつけることが第一に大切です。

もしもケージから出しているときに震災に遭った、ケージが落ちて鳥が室内に逃げ出してしまった等があれば、追い込みたい場所以外の部屋の電気を消すなどして暗くすると、明るい方へ飛んで来ることがあります。

捕まえるのが難しいと感じる時は、虫取り網を用意しておくとスムーズに捕まえることができます。

また、鳥は通常時でも体温が40度以上もあり寒さに弱いため、きちんとした防寒対策を施さなければなりません。

寒い時期に避難生活を強いられる場合はプラスチック製の風が通らないものを使用したり、金網製のものであれば、ケージの大きさに合ったカバーやタオル、毛布などをかけて寒くならないようにしましょう。

湯たんぽなどの保温材を使用するのもおすすめです。

鳥は寒いと羽毛を立たせて身体を膨らませるので、鳥が寒がっているサインが出ていないかこまめに確認しましょう。

鳥のための震災時の避難のしかた

上記のようにキャリーケースは防寒・防風対策を施すこと、脱走に注意することを心がけましょう。

キャリーケースの扉が不意に開いてしまわないように、鍵などでロックを掛けることができれば安心です。

ケージからキャリーケースなどへ移動する際は、窓の開いていない狭い室内で行うようにしましょう。

もし手から離れてしまったとしても、比較的容易に捕まえることができます。

鳥は地震を感知できるのか

先述のうさぎと同じように、鳥にも地震が起こる前に異常行動を示したという話を耳にすることがあります。

この話題はうさぎや鳥に限った話ではありませんが、何かを感知していることは確かだろうという見解が大半です。

しかし、その真偽はまだはっきりと分かっていません。

しかし、日本国内においてはキジが鳴くと地震が起きる、という言い伝えがあります。

総務省消防庁によるとりまとめ、防災に関わる「言い伝え」によると、岩手県の奥州市でキジが鳴くと地震が起きる、という言い伝えがあり、

「科学的な根拠はないが、実際の経験則による。雉は、地面に生息することが多く、地面の揺れを敏感に感じ取る。」とされます。

他にも、茨城県、山梨県、愛知県、宮崎県にも同様の言い伝えがあるようです。

さいごに

今回挙げた動物種は一例ですが、この3種の動物だけであっても適した災害時の対応が違うということがお分かりいただけたと思います。

しかし、これらはその動物の正しい生活環境や身体の構造、食餌の知識があればある程度対応策を考えることができるものです。

そして、ペットの避難についての案内は各市町村によって様々です。

必ず自身が住んでいる市町村ではどういった構えなのかということを事前に確認しておきましょう。

特にエキゾチックアニマルについては言及されていないことが多いため、事前に問い合わせてみることをおすすめします。

市民からの要望が多いと、自治体も要望に合わせて案内を増やしてくれたり、避難所での対応も変わってくるかもしれません。

私が住んでいる場所近くの避難所に実際に問い合わせてみると、

「受け入れるペットの種類のに関しては何の決まりもないため、現時点では全ての動物種を受け入れることができるだろう。

しかし、現在までに当避難所での受け入れ事例がないため、実際に災害が発生し避難所へエキゾチックアニマルを持ち込まれた際に何らかのトラブルが起きると、規制の対象になる可能性は考えられる。

なお、全てのペットは同伴避難はできず、屋外に動物の保管スペースを確保する」

との回答でした。

今回の聞き取りをするにあたって、市役所やいくつかの避難所に問い合わせをしたものの、エキゾチックアニマルの受け入れに関しては分からないので違う担当部署に聞いてほしい、と回答されることが多々ありました。

このことからも、行政や避難所ではエキゾチックアニマルの受け入れに関する議論はほとんどされておらず、むしろエキゾチックアニマルの飼い主の方が自主的に問い合わせや働きかけを行っていくべきであると強く思いました。

災害に対する意識が高まっている今、ペットの災害対策も一緒に考え備えておくべき良い機会なのではないでしょうか。

【免責事項】Animal Compassionではできるだけ正確な情報提供を心がけていますがご利用者様による正当性の確認をお願いいたします。また医療に関する助言を提供することはございませんので、最終的な判断は適切な医療従事者に個別の状況を確認してもらった上で行うようにお願いいたします。

うさぎとカゴ

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この記事を書いた人

【愛玩動物看護師/アウトドアライター】
かわいいや便利、美味しいなどといった言葉で片付けられてしまう現代の動物問題。Animal Compassionを通して動物に関する様々な気づきを皆様と共有し、一緒に考えていくことができたらこの上ない喜びです。

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