あまり聞きなれない言葉ですよね。
あなたの住む町にいる、たまに見かけるあの子やその子。
どちらかの耳がV字カット(さくら耳)されていませんか。
もしかすると地域猫かもしれません。
耳なじみのない言葉である「地域猫」について、わかりやすく5つのポイントで紹介していきます!
地域猫活動ってなに?

外で暮らしている飼い主のいない猫を、誰しも一度は見たことがあるのではないかと思います。
飼い主のいない猫は多く存在していますが、その猫たちに対しての活動は行政の介入が難しいとされています。
そんな中で注目されているのが「地域猫活動」なんです。
地域猫活動についての説明の際にもうひとつ、よく耳にするワードがあります。
それは「TNR活動」です。
まず、地域猫活動とTNR活動の違いについてお話したいと思います!
地域猫活動とTNR活動
はじめにTNR活動についてのお話をします。
Trap(トラップ):捕獲すること
Neuter(ニューター):避妊去勢手術(をする)のこと
Return(リターン):元いた場所に戻すこと
この3つのことを行う一連の流れのことを指し、TNR活動と呼びます。
そしてお次は地域猫活動についてです。
地域猫活動とは、環境省の住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドラインによると、地域住民と飼い主のいない猫がともに暮らしていける社会を目指し、適切な管理をすることで将来的に飼い主のいない猫をなくすことを目的としている活動です。
具体的には
①ふん尿被害の減少
②新しい家族を探すことで飼い主のいない猫を減らす
③望まれない命が生まれることを防ぐ
といったことを目的としています。
なんだかざっくりとした説明でしたが、こちらも
①捕獲する
②避妊去勢手術をする(手術の際に耳先をV字カットして避妊去勢手術をしているという目印にする)
③元いた場所に戻す
という一連の流れが必要になります。
②で出ましたが、耳先のV字カットはさくらの花びらに見えることからさくら耳と呼ばれています。
飼い主のいない猫は、見た目で避妊去勢手術済みであるかわからないですよね。
そのため、手術と同時に耳先をV字カットして避妊去勢手術済みであることの目印にしているんです。
耳先をカットするなんて痛そう…と思われるかもしれませんが全身麻酔をした状態なので心配いりません。
また耳先のカットはかわいそうだと思われる方もいらっしゃると思います。
ですがV字カットがない避妊去勢手術済の猫は獣医師にとっても判断が難しく再度全身麻酔をしなければならないケースもあります。
猫にとって全身麻酔は体に大きな負担がかかります。
V字カットをしていれば一目で判断することができるので、ひとにとっても猫にとっても良いことですね。
そしてここまでのお話では、TNR活動と地域猫活動の違いがないように思えますよね。
そう、似ているんです。
ですがこの2つの活動には違いがあります。
環境省「野良猫問題に対する行政の関与」によると、TNR活動のみでは飼い主のいない猫による周辺環境や住民への被害などへの解決にはつながらないとされています。
TNR活動は、捕獲をして避妊去勢手術をして元いた場所に戻して終了となります。
その後のえさやりやトイレの管理を怠ることで被害は深刻化することが考えられますね。
また、ただのえさやりになってしまうケースも考えられます。
一方で地域猫活動は、元いた場所に戻したあとのえさやりや排せつの管理・掃除、新たな飼い主を探すなども活動の一環となります。
地域猫活動では、適切な避妊去勢手術を行ったり、新たな家族を探し飼い猫にすることでこれ以上数を増やすことなく一代限りの生を全うすることができるんですね。
地域猫活動の中心となるのが、TNR活動ということがわかりました。
お次は地域猫活動の現状について紹介します!
地域猫活動の現状

みなさんは年間で何匹の猫が殺処分されていると思いますか?
環境省の犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況によると、令和3年度(令和3年4月1日~令和4年3月31日)に全国の保健所などで殺処分された猫は1万1,718匹とされています。
殺処分となった1万1,718匹の猫たちは、家族が見つかれば今も幸せに暮らすことができていたはずの命なんです。
ちいさな命を1匹でも多く救うため、殺処分以外の方法で飼い主のいない猫を減らすことができるのが「地域猫活動」です。
そしてその活動の中で、望まれない命がこれ以上増えることのないよう避妊去勢手術などの適切な管理をしていかなければなりません。
また、地域猫活動には地域住民の理解と協力が必要不可欠となります。
すべての地域猫活動が成功していれば良いのですが、生き物を相手に行う活動ですので予測のつかない事態に陥ったり、周辺住民の理解や協力を得ることができず失敗してしまうこともあります。
ここで、地域猫活動による失敗例を挙げていきたいと思います。
地域猫活動における失敗とは?2つのポイントで紹介
①避妊去勢手術が徹底できない
飼い主のいない猫は警戒心が強い場合が多いため、なかなか捕まえることができません。
なぜかというと…
猫には社会化期という社会とのコミュニケーションを学習する期間があるんです。
生後2週齢~生後9週齢までがおおよその社会化期といわれています。
この期間に人やほかの動物とコミュニケーションを持たなかった猫は、警戒心が強くなったり臆病になりやすいといわれているんです。
近寄っても逃げないなど人に慣れている場合にはそのまま捕獲することができますね。
では、人に慣れていない猫はどう捕獲するのでしょうか。
野生動物を捕獲するための捕獲機(動物を傷つけることなく捕獲することを目的としています)を使用する場合もあります。
捕獲機を使用する場合は、私有地の方に許可を得て私有地に設置するなどなるべく人目につかない場所がおすすめです!虐待や連れ去りから守ることができます。
こういった理由から、すべての猫の避妊去勢手術の実施が難しい場合もあります。
少しくらい避妊去勢手術ができていなくてもそんなに増えないでしょう!と思っている方もいるかもしれません。
環境省「もっと飼いたい?」によると、避妊去勢手術をしていない雄雌の猫が2匹揃うと…
1年後には20匹以上
2年後には80匹以上
3年後には2000匹以上になってしまうといわれているんです。
たった数匹でも避妊去勢手術ができないと、猫はどんどん増えてしまうんですね。
②えさやりにおけるゴミ・悪臭被害
えさを与えた後に清掃を怠ることで被害が出てしまうことが考えられます。
不適切かつ無責任な餌やりは、周辺環境を損なってしまう原因にもなります。
これについて、令和2年6月1日から改正された環境省が定める「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)」によると
・不適切な飼養や餌やりなどによって周辺の生活環境が損なわれている時には、原因者に対して都道府県が指導・勧告・命令ができる(動物愛護管理法第25条)
・上記に対して原因者が命令に違反した場合、50万円以下の罰金が科される(動物愛護管理法46条の2)
と規制が強化されました。
えさを与えるだけではなく周辺環境や周辺住民の方への配慮を忘れずにマナーを守って活動することが、地域猫活動をする人と、活動の対象である飼い主のいない猫にとってとても大切なことなんです。
地域猫活動における失敗例を2つ挙げてみました。
お次は、地域猫活動をするうえで大切な活動の進め方をご紹介します!
地域猫活動にルールがあるの?進め方をご紹介!

活動について環境省ではこのように定義されています。
地域の合意を得ながら、活動地域内におけるえさ場・トイレを設置したり、えさ・排せつの管理や掃除、野良猫の数を減らすための新たな飼い主探しなどを行う。
野良猫問題に関する行政の関与
地域猫活動において周辺住民と猫の共生が重要となってきます。
そのため活動をするにあたって、周辺住民の理解・協力を得ながら、えさ・排せつの管理や掃除などを行うことで周辺環境を損なわないことが大切なんですね。
では、具体的な活動の進め方について鹿児島県くらし保健福祉部生活衛生課の「地域猫」の手引きをもとにご紹介したいと思います!
①活動グループを作る
地域猫活動は周辺住民の理解や協力が必要となりますが、活動自体は地域猫のお世話をしたい人たちが主体となって行います。
何匹の猫がいるのかの頭数管理、えさやり、排べんの管理や掃除、避妊去勢手術などやることがたくさんありますので少人数で活動するよりもできるだけ多くの参加者がいたほうが心強いですね。
参加者が多ければ多いほど、役割分担をして活動することができるので自分のやることに集中することができます。
また、参加者が多いほど猫の体調の変化などがあった場合に気づくことができると思います。
活動グループの人数は、活動地域の猫の数を考慮して参加者を募ると良いですね。
②活動周辺住民の理解を得る
活動をするうえで、周辺住民の理解は欠かせません。
一方的に活動を始めることはトラブルを引き起こす原因になり得ますし、結果として地域猫に対する印象も悪くなってしまうことも考えられます。
自治会などの合意を得ることで活動がしやすくなりますので、話し合いの場を設けてもらいましょう。
話し合いは、活動を行おうとしている人、自治会員、活動に反対な人など様々な立場の人が出席してもらうことが望ましいです。
話し合いがまとまらない場合には行政にアドバイスをもらうようにしましょう。
③活動周辺地域の実態を把握する
地域猫活動を行うために、「猫マップ」を作りましょう。
猫マップには、猫の数や分布、えさやり場所、排せつ場所を書き込んでいきます。
これでようやく活動周辺地域の猫たちがどのような暮らしをしているのかを見ることができます。
また、猫にえさやりをしている人がいたら話を聞いてみましょう。
その地域の猫について詳しい可能性があります。
そのような人が活動に参加してくれると大きな情報源となり心強いですね。
④活動ルールを作成する
周辺住民の迷惑にならないよう、各自治体に適したルールを作るのが良いですね。
また、活動するにあたって無理のないように役割分担や日程を決めましょう。
トラブルが起きた際に対処できるように代表者の連絡先を明確にし、トラブルの内容は記録に残し活動に参加する人全員が確認できるようにするのが望ましいです。
⑤えさやりについて
えさを与える場所は固定しましょう。
また、決まった時間に与え食後は容器を回収し清掃をします。
えさ場を決める際にはトラブルを防ぐため、私有地・公有地どちらであっても所有者の方の了承を得るようにしましょう。
置きえさは絶対にしないようにしましょう。
悪臭や害虫被害のもととなり、周辺住民への迷惑にもなりますし環境への悪影響も考えられます。
⑥排せつの管理・掃除をする
えさと同じく、場所を固定しましょう。
トイレを設置する場所は、私有地・公有地どちらであっても所有者の方の了承を得るようにしましょう。
トイレ以外の場所で排せつをすることもありますので、定期的に見回りを行いトイレやトイレ以外での排せつも清掃し、清潔な状態を保つようにしましょう。
トイレはえさ場から少し離れた場所に設置するのが衛生的に良いです。また、猫は清潔を好む動物なのでトイレは清潔を保ちましょう。猫の排せつ物をトイレに置いておくと、ここがトイレなんだと認識しやすくなります。
活動周辺地域の環境を保全することが、地域猫活動が地域に受け入れてもらうための重要なポイントとなります。
⑦TNR(避妊去勢手術)をする
避妊去勢手術をしていない場合には驚異的なスピードで猫の数が増えていきます。
すべての地域猫に避妊去勢手術の実施をしましょう。
まず猫を捕獲します。
触れる子、触ることが困難な子といますので臨機応変に対応する必要があります。
たとえ普段がおとなしく触らせてくれる子であっても、捕獲の際にパニックを起こすことも考えられますので長袖を着たりグローブを装着するなどしてお互いに怪我をしないよう工夫しておくと安心ですね。
また、触ることが困難な子の場合は捕獲機を設置するなどの対処が必要になります。
捕獲が困難な場合には行政に相談しましょう。
そして、猫はとても賢い動物なので一度捕獲に失敗すると、その後なかなか姿を現さない場合があります。
一度で捕獲することが最善ですが、失敗したとしても焦らず着実に進めていきましょう。
捕獲することができたからといってそのまま動物病院に持ち込んでも当日に手術ができるかどうかわかりません。
事前に動物病院と打ち合わせをしておくとスムーズで良いですね。
避妊去勢手術の際には、耳先をV字カットしてもらうよう動物病院に確認をしておきましょう。
未避妊去勢手術猫との区別のためにとても大切です。
無事に手術が終わったら、元いた場所に戻します。
⑧ずっとの家族を探す
地域猫活動の将来的な目標は、家族のいない猫をなくすことです。
わたしは2匹の猫と一緒に暮らしていますが、1匹は地域猫出身のさくら耳猫です。
地域猫から飼い猫になるケースもたくさんあります!
ずっとの家族に迎えたい…そんな地域猫に出会った際には、ぜひお世話をしてくれている方に声をかけてくださいね。
声をかけずに連れ帰ってしまうのは、お世話をしてくれていた方が心配してしまいます。
地域猫にずっとに家族ができることはとてもうれしいことなので喜んでくれることと思います。
また、活動者さんは家族になろうとしている方にわかる範囲で性格や特性を伝えましょう。
⑨周辺住民への広報活動をする
定期的に活動内容を周辺住民へお知らせしましょう。
どのような活動をしているのかわかることで理解や協力を得る機会につながります。
以上が地域猫活動のルールや進め方についてのご紹介でした!
お次は地域猫との関わり方についてお話します。
守ってほしい約束!地域猫との関わり方とは?

地域猫とはどのように関わっていけば良いのでしょうか。
ここではわたしからひとつお願いをさせてください。
SNSなどに地域猫の写真を投稿しないでもらいたいんです。
おとなしく人懐こい猫は写真が撮りやすいですよね。
みんなとてもかわいいので、写真を撮った後で投稿したいという気持ちもわかります…。
ですが、猫を傷つけるために容易に捕獲することができる猫の居場所を知りたがっている人が存在することも事実です。
地域猫にとって外は大切な家です。
安全が確保され、安心して生きていくための場所です。
どうか、居場所が特定されないようにご配慮ください。
さいごに
ここまで地域猫活動についてお話してきましたが、言葉にするのは簡単でも実際に行動に起こすことはとても難しいことです。
すべてのひとと猫が共生できる未来が近い将来くることを願って、活動を理解するというようなことから歩み寄ってもらえると嬉しいです。