ブラッシングが大好きな猫というのは珍しく、ほとんどの猫がブラッシングを嫌がります。
特に猫にとってお腹は弱点であって、触られることに嫌悪感を持つ猫もいますが、優しく少しずつ慣らしていくことで、ブラッシングを受け入れてくれるようになるでしょう。
猫がブラッシングを嫌がる理由は様々ですが、その理由を理解し、猫との信頼関係を築きながら行うことが大切です。
「ブラッシングをすると、猫が嫌がるから可哀そう」
「猫は毛づくろいするし、ブラッシングは必要ない」
と考え、ブラッシングをしない飼い主さんもいます。
ブラッシングには、猫の健康を守るためにたくさんのメリットがあります。定期的なブラッシングは抜け毛や毛玉症の予防にもつながりますので、猫が快適に過ごすためにも、適切なブラッシングを行いましょう。
猫がブラッシングを嫌がる理由【4つ】
猫は触られることを嫌がる
猫は警戒心が強く神経質な性質をもっています。
特に触られることを好まない猫や慣れていない猫は、ブラッシング以前の問題なので、まずは触れられることから慣らし信頼関係を築きましょう。
猫はプライドが高いと言われますが、自立心が強く自分の考えで行動することを楽しんでいるからです。
毛玉や傷、関節炎の痛みで嫌がる
高齢猫は、関節炎や病気で痩せていることがあり、ブラシの刺激で痛みがでることがあります。
しこりや皮膚炎などがあり、病変にブラシがあたるため嫌がります。
ブラッシングを急に嫌がり怒るようになった場合は、獣医師の診察を受けてください。
ブラッシングがトラウマになっている
飼い主さんが、ブラシを持ち近づくだけで恐怖を感じることがあります。見慣れない物に恐怖を感じたり、何かされると不安になったりする場合です。また、過去にブラッシングが強く当たり、痛い経験があるとトラウマとして覚えてしまいます。
他のトラウマに似ている行動もそうです。例えば、飼い主さんが薬を持ち近づいてきた、と勘違いし逃げてしまう猫もいます。
猫の心理状態や性格によりブラッシングを嫌がる猫は多いです。そこへ、また嫌がるかなと飼い主が不安や緊張をしていると、猫に伝わり不安になります。
猫用ブラシ事体が苦手と感じる猫もいます。飼い主愛用のヘアブラシを使ってみたところ、ブラッシングを嫌がらなくなったという事例がありますので、道具を変えてみるのも一つの手です。
猫の心理や好みに合わせ、痛がっていないか観察しながら行うことが大切です。
長い時間のブラッシングはストレス
猫は自由を愛する生き物です。押さえられることも嫌がりますが、自由が長時間奪われることも嫌がります。このストレスがトラウマとなり、飼い主さんがブラシを持つと猫は嫌がるようになります。
ブラッシングを短時間で行い、猫がストレスを感じる前に終わらせることが重要です。
ブラッシング中は、猫の表情や耳、しっぽの動きなどをよく観察し、イライラしてきたら嫌がる前にブラッシングを終わりにします。
猫の気持ちに寄り添いながら、ブラッシングを行うことを忘れないようにしてください。
嫌がる猫にもブラッシングが必要な理由
ブラッシングは猫の健康をチェックするだけでなく、抜け毛や毛玉症の予防にも役立ちます。さらに、ブラッシングはマッサージ効果もあり、血行を促進しストレスを軽減します。筆者の実体験によれば、ブラッシングを怠ると猫の健康に悪影響があります。ブラッシングは猫との絆を深めるだけでなく、健康面でも重要です。
ブラッシング中に猫の健康をチェック
定期的にブラッシングをすると、猫の体つきや骨格がわかり、ちょっとした異変に気づけます。
- 被毛:ノミやダニがいないか
- 皮膚:赤みやフケ、しこりや傷はないか
- 体系・体重:背骨やあばら骨がですぎていないか
- 口・耳・肛門:口臭や肛門腺臭、耳は汚れていないか
- 体:どこか痛がっていないか・・・etc.
猫が触られることを嫌がると、飼い主さんは無意識的に触ることを避けるため、ケガや病変に気づきにくくなります。
実際、診察中にスタッフが病変を見つけたとき、病変に気づかなかったという声をよく耳にします。
ブラッシングを日課にすることで、病気の早期発見、早期治療につながります。
抜け毛や毛玉症の予防になる
猫は自分で毛づくろいをしますが、長毛種や高齢猫は疲れてしまい、毛づくろいが十分でない場合があります。その際には、飼い主の手助けが必要です。
猫は、春と秋の換毛期にたくさんの毛が抜けますが、室内で快適に過ごしている猫ほど、一年中毛が抜けます。
抜け毛で猫の体がかゆくなり、激しく毛づくろいをするため、抜け毛を飲み込んで毛玉症になるリスクが高まります。
猫の大量の抜け毛は人にも悪影響を与えます。アレルギーやハウスダスト症の原因となることがありますので、抜け毛はすみやかに撤去しましょう。
ブラッシングはマッサージ効果抜群
ブラッシングには、猫の体によい影響をもたらすマッサージ効果があり、ブラシの刺激が皮膚に伝わり血行が良くなります。これにより新陳代謝が活発になるため、皮膚や毛の健康を保ち、ストレスを軽減する効果もあります。
特にシニア期の猫は、代謝が落ちやすいため、ブラッシングを通じて血行を促進し、代謝をあげることが重要です。
【実体験】何年もブラッシングをしなかった結果
筆者の実家の猫は、短毛種で毛づくろいをよくするため、ブラッシングをしていませんでした。
保護したとき猫エイズ(FIV:猫免疫不全ウイルス)に感染しており、10年後には口内炎や歯肉炎による痛みで、毛づくろいができなくなってしまったのです。さらに、食欲や免疫の低下、体の代謝悪化により、皮膚や被毛の状態も劣悪になりました。その結果、フケと脂で毛がベトベトし、毛玉だらけでした。
幸い、子猫の頃からブラッシングに慣れていたので、親にブラッシングの方法を教え、毎日行ってもらいました。治療とブラッシング効果により、きれいな皮膚と被毛に回復しました。
この経験から、ブラッシングは治療の一環としても効果的であることが証明されました。
猫がブラッシングを嫌がるときの対策【4つ】
スキンシップでブラシへの警戒心を解こう
ブラッシングをする前に、ブラシをテーブルなどに置いておき慣れてもらいましょう。猫用のブラシを使い、飼い主さんの髪の毛をとかしているところを見せることも、猫の警戒心を解きます。
ブラシに慣れてきたら、猫の好きな場所を撫でながら、ブラシを使い優しくブラッシングをします。
1日1ヶ所、短い時間で終わらせる
猫は束縛を嫌い、長時間のブラッシングをストレスと感じます。ブラシを持つと警戒心を抱き、ますます嫌がることがあります。
1度に全体をブラッシングするのではなく、1日1ヶ所、短い時間で行いましょう。
最後に、猫が気持よい場所をブラッシングし嬉しい時間で終わらせることが大切です。
ご褒美は必須!win-winの関係を心がける
ブラッシングを嫌がる猫には、試練でしかありません。
ブラッシング中、ご褒美をあげることにより、猫がブラッシングを受けいれてくれるようになります。
ご褒美と言えばおやつですが、猫の健康を考えると過度に与えることはできません。そこで便利な方法が褒め言葉です。猫にとって嬉しい言葉はすぐに覚えてくれます。
日常生活の中でも褒め言葉を使って猫に言葉を覚えさせましょう。ブラッシング中や終了後に褒めて撫でることで、ブラッシングを嫌がらなくなっていきます。
もし、ブラッシング中に猫が嫌がる様子を見せたら、すぐに手を止めて落ち着かせます。再度チャレンジし、必ず褒めて終わらせてあげてください。
猫に「よく頑張ったね」と言葉や態度で喜びを伝えましょう。
プロのブラッシング法を伝授
準備するもの
- スリッカーブラシ
- コーム
- グルーミングスプレーやドライシャンプー
ブラッシングの順番
首・顔回り ➡ 背中 ➡ お腹 ➡ 足 ➡ お尻 ➡ しっぽ
- ブラシを何種類か用意しましょう。場所で変えたり毛玉をほぐしたりするときに使い分けます。猫がブラッシングに慣れるまで、猫が気にいるブラシを使ってください。
グルーミングスプレーは、汚れや匂いをとり、被毛にツヤをだしてくれます。嫌いな猫もいますので、無くてもよいです。 - ブラッシングに慣れるまでは、首回りや顔回りと猫にとって気持ちのよい所だけを手で触り、徐々にブラシを当てます。少しずつブラッシングをしていきます。
- 上から下へと一気にブラシをかけてしまうと、力加減が強くなり皮膚を傷つけてしまいます。毎日短時間を少しずつ行いましょう。
- 毛をかき分け、毛並みにそってブラッシングを行います。毛や皮膚への負担が少なく、これだけでも嫌がらなくなります。
- 顔や足は毛が少ないので、コームやラバーブラシなどでブラッシング。
- 毛玉がある場合、皮膚が引っ張られないよう毛玉の根元をもち、優しくブラッシングをします。ほぐれない場合は、無理をせずハサミで切りましょう。
お腹のブラッシングを嫌がる場合
お腹は猫の弱点!信頼している飼い主さんに対しても、触られることを本能的に嫌がります。
- お腹を嫌がるときは、前足と体を抱えながら立たせ、お腹を伸ばしブラッシングをします。
- 噛みついたり丸まったりして嫌がるときは、無理に行わず、トリマーや動物病院などプロにおまかせしましょう。また、長毛種や毛玉がある場合、お腹の毛を短くカットしてもらうことも一つの方法です。
【長毛種】
毛が細長く絡まりやすい毛質のため、毎日ブラッシングが必要になります。
脇の下内や股の毛は薄いため、毛玉になりやすいです。ブラシが引っ掛かかり痛いため、ブラッシングを嫌いになってしまう猫がいます。また、耳、しっぽ、おしりも絡まりやすいので、猫のしぐさや耳の動きを見て注意深くおこないましょう。
毛玉が出来てほぐせない場合、ブラシの扱いに慣れるまでは無理せずハサミで切ることをおすすめします。
【短毛種】
ブラッシング頻度は、3日に1回または週1回でよいです。換毛期の時期は、いつも以上に抜けるため、気になった部分をこまめに行いましょう。
短毛種は毛玉ができにくいので、嫌がるようならお腹のブラッシングは行わなくてもよいです。
ブラシを強くあてたり、長い時間ブラッシングをおこなうと、皮膚が傷ついてしまうので気をつけましょう。
猫のブラッシングに必要な道具
- スリッカーブラシ:慣れればこのブラシで全てできます。(ゴミ、毛玉、マッサージ、血行促進)
- コーム:顔まわりや足に最適。仕上げに全体をとかすとやわらかい毛が取れる。
長毛種におすすめ
- ピンブラシ:全体をブラッシングし、毛に絡まった大きなごみを取ります。
- コーム:縦にもち毛玉を割くようにとかすとほぐれる。仕上げに細かい毛をとります。
短毛種におすすめ
- ラバーブラシ:皮膚への負担が少ない。ですが、長い時間行うとゴムの摩擦で生えている毛も抜いてしまいます。
- コーム・ノミブラシ:子猫や毛が薄い子のわらかい毛をとってくれます。
- 手袋型ブラシ:撫でるだけで毛が取れる。ラバーブラシと同じで長い時間行わないでください。
ブラシがどうしても嫌いな猫
ブラシを使う前に、猫の舌の感触に似ているザラザラした食器用スポンジを小さく切り慣れさせます。
- 飼い主さんのヘアブラシ:飼い主さんの匂いがついているので安心します。神経質な猫ちゃんにおすすめ。
- 人用のヘアブラシ:猫用にないブラシの形状があるので、気に入るものがあるかもしれません。
- 水を使う:手やタオルに水をつけなでます。浮いた抜け毛が取れます。
変わり種道具
- フェリウェイ:猫に安心感を与えリラックスさせる効果がある、フェロモン製剤です。アロマのようなものです。
- 猫が聴く音楽:猫が喉を鳴らすゴロゴロ音と優しい音色で構成されている、猫の子守歌のような音楽。YouTubeなどにあります。
まとめ
お読みいただきありがとうございました。
猫がブラッシングを嫌がる理由を知ることができましたでしょうか。猫は神経質な性質をもっているため、些細なことでもブラッシングを嫌がるようになります。
そして、猫のブラッシングは抜け毛や皮膚の掃除だけでなく、体の健康を維持するため、重要であることをお分かりいただけたと思います。
嫌がる猫をブラッシングをすることは、飼い主さんにとって難しいかもしれませんが、猫がいつまでも健康でいてくれるためには、飼い主さんの協力が必要不可欠です。
まずは、ごはんを食べ終わった後やトイレをした後など、猫がリラックスしている時に褒めることから始めてください。褒められることは猫も大好きです。
その上で、理由や対策を踏まえ、何日、何ヶ月かかってもよいので、猫と飼い主さんの負担も考えながら、猫のブラッシングを行うよう頑張ってください。