猫は腎臓病にかかりやすく、15歳以上の猫のおよそ8割が罹患するといわれています。
腎臓病が慢性化してしまうと完治することはなく、一生付き合っていかなければなりません。
猫を飼っている飼い主さまのなかには「愛猫が腎臓病にならないための対策がしたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。
今回は、猫の腎臓病の治療薬として期待され、近年研究が進んでいる「AIM(エーアイエム)」という血中タンパク質について解説します。
AIMの機能や猫の腎臓病との関係について解説しながら、すでに市販されているAIM入りの猫用おやつについてもご紹介していきますので、ぜひご覧ください。
※本記事は2024年1月現在で公表されている情報に基づいたものです。
最新情報については、一般社団法人AIM医学研究所のサイトでご確認いただけます。
AIMに期待される効果とは
AIMは血液中に含まれるタンパク質の一種で、一般社団法人AIM医学研究所の宮﨑徹医師が発見し1999年に発表された新しい物質です。
人間をはじめ多くの動物に存在していると考えられていますが、猫ではこのAIMが体内でうまく機能せず、腎臓病の原因となっていることが分かっています。
ここでは、AIMがどんな成分なのかについてご紹介しながら、猫の腎臓病との関係や期待される効果について解説します。
そもそもAIMとはどんな成分なのか
AIMとは、Apoptosis Inhibitor of Macrophage(マクロファージの細胞死抑制因子)の略で、人間をはじめ多くの動物の血液中に含まれるタンパク質の一種です。AIMには、マクロファージと呼ばれる貪食細胞を活性化させ、老廃物の排泄を促す機能があります。
体内に存在するほとんどのAIMは、IgM(免疫グロブリンの一種)と結合することによって不活性状態になっています。体のなかに排除すべき老廃物(死んだ細胞の残骸や炎症性物質など)がたまってくると、AIMはIgMから分離されて老廃物と結合し、マクロファージによって排除される仕組みです。
つまり、AIMが体内で正常に働いてくれるおかげで私たちの体は病気から守られているのです。
その一方で、AIMの量が少ない・AIMが働かないといった状況下では、老廃物が体内で蓄積してしまい、病気が発生することが分かっています。
猫の腎臓病との関係と期待される効果
猫の腎臓病の罹患率は非常に高く、多くの猫が腎臓病(腎不全)で亡くなっています。
これまで猫の腎臓病の詳しい原因は不明で、根本的な治療法もなく、腎臓への負担を減らすことによる対症療法によって治療が行われてきました。
人間と猫のAIMの形態は微妙に異なり、猫では人間の約1000倍も強固にIgMに結合していることが分かっています。AIM発見者の宮﨑徹医師は、老廃物が溜まってもAIMが離れず機能できないことが猫の腎臓病の原因であることを解明し2016年に発表しました。
AIMは猫の腎臓病の治療薬としてだけでなく、予防としても使用できる可能性があります。
若いうちから定期的にAIMを摂取して老廃物排泄のサポートをすれば、腎臓病を予防できるかもしれません。また、将来的には慢性化してしまった腎臓病でも、AIM投与によって進行を遅らせ、腎機能を回復できる可能性も秘めています。
AIMの登場によって猫の寿命が2倍になるともいわれており、今後の開発に期待したい成分です。
現在できる猫の腎臓病対策に加えて、AIMで治療できる日も近いかもしれません。
AIMの実用化はいつ?
2024年1月現在、猫用のAIM薬はまだ製品化されていません。
しかし、実際に猫にAIM薬を投与する治験段階まで進んでいるため、順調に開発研究が進行しているようです。
AIMの研究に取り組んでいる一般社団法人AIM医学研究所では、2027年までに次の4項目の達成を目指しています。
引用:一般社団法人AIM医学研究所「IAMについて」
- 動物用AIM医薬品(ネコ用AIM薬)の承認・上市
- ヒト用AIM医薬品の臨床試験の開始
- ヒト用サプリ・ペットフードの承認・上市
- AIMに基づく診断技術の実用化
猫用のAIM薬の承認と上市が実現されれば、動物病院でAIM治療が受けられるようになるでしょう。
AIMの研究を支援する方法
一般社団法人AIM医学研究所では、AIM製剤の開発研究を支援するための寄付金を受け付けています。
猫用のAIM薬の開発の支援は、寄付受付のページから行うことができます。
また、株式会社フェリシモが運営する猫部では「AIM for Happiness」と題し、AIM医学研究支援チャリティー企画を実施しています。
チャリティーグッズ購入費用の一部がAIM医学研究支援支援基金として活用されるため、グッズが欲しい方はチャリティーという形での支援も可能です。
気になるAIMのお値段は?
猫用のAIM薬はまだ製品化されていないため、現在のところ薬剤としての販売価格は不明です。
なお、AIMを活性化させる成分が含まれる猫用のおやつが販売されているため、そちらは安価で手に入れることができます。
AIMを含むフードやおやつはある?
AIMそのものを含む猫用のフードやおやつは現在のところありませんが、AIMを活性化させる「A-30」や「S18」というアミノ酸(L-シスチン)が含まれるフードやおやつが販売されています。
ここでは、2024年1月現在で販売されている猫用フードやおやつをご紹介します。
AIMを活性化する成分入りの猫用おやつ一覧
AIMを活性化する成分入りの猫用おやつを取り扱っている会社は、株式会社マルカンといなばペットフード株式会社の2社です。
いずれの商品もAIMそのものが含まれているわけではなく、体内にあるAIMを活性化して機能をサポートするアミノ酸が含まれています。体内にあるAIMを増やしたり、猫の腎臓病を治療できたりするものではないため注意しましょう。
また、記事の最後で適切なおやつの与え方についてもご紹介しますので、参考にしてみてください。
ドライフード(総合栄養食)
- 「AIM30シリーズ」 株式会社マルカン(サンライズ事業部)
- 「for AIM クランキー」 いなばペットフード株式会社
おやつ
- 「AIM30 カリッとトリーツ」 株式会社マルカン(サンライズ事業部)
- 「for AIM アミノ酸S18ちゅ〜るタイプ」 いなばペットフード株式会社
サプリメント
- 「AIM30 サプリメント」 株式会社マルカン(サンライズ事業部)
猫の適切なおやつの与え方
基本的に、総合栄養食を食べている猫はそれだけで栄養バランスが整っているため、必ずしもおやつは与えなければいけないものではありません。
ただし、ごほうびやコミュニケーションを兼ねておやつを与えたい場合には、1日に必要な総摂取カロリーの10~20%以下にとどめてください。おやつの分だけメインの食事量を減らすようにして、与えすぎないように注意しましょう。愛猫に必要なカロリーの計算は、こちらのページが参考になるかもしれません。
なお、1日に必要な摂取カロリーの計算方法は、猫のライフステージによって異なります。
まとめ
今回は、近い将来猫の腎臓病の治療薬になる可能性がある「AIM」について解説しました。
AIMを治療薬として使える日を心待ちにしている飼い主さまが多くいることと思います。私もそのひとりです。
現段階では実用化される時期は不明ですが、数年以内には猫の腎臓病治療の常識が大きく変化するかもしれません。
AIMそのものが含まれる商品はまだないものの、AIMを活性化する成分入りの猫用フードやおやつが販売されているため、猫の腎臓病対策に活用したい飼い主さまは手に取ってみてはいかがでしょうか。