鶏肉のために改良されたブロイラーの開発の背景とアニマルウェルフェア

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現代の食卓に欠かせない鶏肉は、安価でもしっかりとタンパク質が摂れる優秀な食材です。

鶏肉は、おもにブロイラーという品種の鶏が使用されています。

ブロイラーは、卵からかえって2ヶ月を待たずに出荷することができる、とてもコストパフォーマンスのよい品種です。

これは、品種改良の結果のたまものではありますが、ブロイラーにかかる身体への負担もとても大きく、アニマルウェルフェアの観点から大きな問題となっています。

今回は、鶏肉として出荷されるブロイラーの特徴や問題点をご説明します。

生産現場の実態を知ることで、日々の食卓にあがる鶏肉への見方が変化するかもしれません。

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目次

約50日で出荷!驚異的に成長するブロイラーとは?

養鶏場のたくさんのヒナ鳥

日本における鶏肉の、じつに9割以上を占めるのが「ブロイラー」という品種です。

また、世界全体の流通量をみても、やはり9割以上をブロイラーが占めています。

もともとは、生後3ヶ月未満の、食肉用の若鶏を指していました。

ブロイラーは、食肉用に改良された雑種の鶏です。

急速に成長し、大量生産可能な商業用の鶏として、品種改良が重ねられてきました。

ブロイラーは一つの血統ではなく、雑種です。

ブロイラーに分類される品種はいくつかありますが、ホワイトコーニッシュのオスとホワイトプリマスロックのメスとの品種を掛け合わせて作られるものが、ほとんどを占めています。

ブロイラーの成長速度はすさまじく、40~50日で成鶏になります。

これは、一般的な鶏が成鶏になるまで4~5ヶ月かかるのに対して、その半分以下の期間です。

成長のピークには1日あたり60~70gずつ体重が増えていき、成長速度は品種改良前と比べておよそ4倍となっています。

ホワイトコーニッシュとは

アメリカ原産の白色の肉用鶏です。

身体を大きくする改良がもっとも進んだ品種で、おもに、ブロイラーを作り出す際のオスに使用されます。

胸の肉付きがよいのが特徴です。

ホワイトプリマスロックとは

こちらもアメリカ原産の鶏で、1940年代後半から肉用鶏として注目されるようになりました。

ホワイトコーニッシュには劣りますが、ほかの品種よりも増体がすぐれているといわれます。

産卵鶏としても活躍しています。

ホワイトコーニッシュとは見た目がよく似ており、区別するのが難しい品種です。

ブロイラーを作り出す際、メスとして使用されます。

品種改良と効率的な飼育の歴史 

肉用鶏の品種改良が活発になったのは、1940年代ごろといわれています。

このころ、第二次世界大戦下において、世界各地で食糧不足が問題となっていました。

そこで、より効率的に鶏肉を入手できるように品種改良が進められたのです。

日本では、少し遅れて1957年に最初のブロイラー飼育がはじまり、1960年代には海外からブロイラーが導入されるようになり、ここから肉用鶏の飼育が盛んになりました。

国内における鶏の生産から流通までを一貫して管理するようになったのもこのころからです。

品種改良はさらに進められ、当時から比べると飼育期間と1羽から得られる肉量は、次のように変化しています。

飼育期間(出荷までの期間)肉量
1960年70日約1,100g
1970年60日約1,960g
1990年55日約2,550g
2005年50日約2,800g

参照:j-stage ブロイラーの普及が鶏肉の消費量と料理法に与えた影響

ブロイラー以外の肉用鶏とは

日本で飼育されている地鶏

鶏肉には、ブロイラー以外にも地鶏と銘柄鶏があります。

地鶏

地鶏は、地鶏肉のJAS規格に適合した鶏肉で、日本における流通量は約1%です。

名古屋コーチンや比内地鶏などが有名で、必ず在来種が血液百分率50%以上を占める血統条件が必要となります。

飼育期間や飼育環境も厳しく定められていて、飼育期間は孵化後75日以上、28齢以降は、1㎡あたり10羽以下の条件下での平飼いが必須です。

銘柄鶏

銘柄鶏はベースとなる肉用鶏の品種について、特に決まりはありません。

飼育期間や飼育方法などにも定めはありませんが、生産者が飼料や飼育方法にこだわることで、味や品質を高めた品種のことを指します。

代表的な銘柄鶏には、赤どりやハーブ鶏、つくば鶏などがあります。

大量生産を可能にした鶏舎の仕組み 

ブロイラーは、効率的に生産されることを追求した品種です。

鶏が短期間で大きくなるだけでなく、鶏舎も効率を求めたつくりとなっています。

ブロイラーの鶏舎は大規模で飼育密度が高い環境なのが特徴です。

施設内の多くが自動化されており、給餌や給水だけでなく、温度や湿度の管理も行われます。

給餌や給水を人間からではなく自動化することで、菌やウイルスと接触するリスクが減少します。

消毒をはじめとする衛生管理も徹底されており、病気のリスクを持ち込まない安全な環境のもとで飼育されるのです。

アニマルウェルフェアの観点から考えるブロイラーの課題 

広大な養鶏場

ブロイラーの登場によって、鶏肉の生産性は格段に向上しました。

しかし、効率を求めた結果、鶏たちに身心ともにストレスを与えているのも事実です。

このストレスが、アニマルウェルフェアが盛んとなった近年、大きな問題になっています。

まずは、鶏に与えている身体への障害について説明します。

急速な成長による身体的負担 

ブロイラーは急激に身体が大きくなる品種ですが、そのせいで身体に悪影響が出ていることが報告されているのです。

おもに問題とされるのは、以下の3つです。

  • 足や骨格の障害
  • 筋肉や代謝における障害
  • 循環器系の障害

足や骨格の障害

身体の成長スピードに身体を支える足や骨格がついていけず、身体を支えきれなくなってしまいます。

増えすぎた体重のせいで、自由に歩き回ることができないだけでなく、一度転んでしまうと自力で起き上がることができません。

誰かが起こしてくれるまでひっくり返ったままになってしまうのです。

なかには、そのまま起き上がれずに亡くなってしまう鶏もいます。

また、足の裏に炎症が起きる「趾蹠(しせき)皮膚炎」も問題となっています。

趾蹠皮膚炎では、以下のような症状がみられます。 

軽度

足の裏の表面に軽いただれが起きる

重度

炎症が悪化して潰瘍ができたり、痛みや発熱を引き起こす

趾蹠皮膚炎になることでうまく歩き回ることができなくなり、エサや水をうまく摂取できなくなることもあるのです。

趾蹠皮膚炎はブロイラーの急激な体重増加以外にも、不衛生な床の環境によっても引き起こされやすくなります。

そのほかにも、以下のような病気があります。

脛骨軟骨異形成症

軟骨の特定の部位が正常に骨化せず、異常な軟骨塊として残ることで、脚の変形や跛行(歩行困難)を招く症状です。

痛風(尿酸塩沈着症)

人間でも多くみられる痛風は、たんぱく質やカルシウム、リンなどの過剰摂取・代謝異常、または脱水によって腎機能に障害がおきます。

その結果、内臓や関節に白い尿酸塩の結晶が沈着します。

そのほか、関節痛や変形、骨端軟骨腫症、腱鞘炎などもブロイラーがかかりやすい足の病気です。

骨端軟骨腫症とは、骨の表面にコブのような隆起が起きます。

痛みや変形などが起こる可能性もある病気です。

筋肉や代謝における障害

成長に耐えきれないのは、足や骨格だけではありません。

同じく身体を支える筋肉や代謝機能においても障害が発生しやすいことがわかっています。

浅胸筋変性症(緑胸肉症)

胸肉(浅胸筋)の変色や平坦化、壊死を引き起こす障害です。

原因は、強く羽ばたいた際に胸筋周囲の筋膜や骨に圧迫されて局所的な血流障害(酸素不足)が起きることとされています。

白色の線条病変や硬化が見られます。

異常硬化胸肉(ウッディブレスト)

胸肉全体が硬くなってしまい、ゴムのような弾力や木のような固い質感になる現象です。

異常硬化胸肉は、木目肉とも呼ばれます。

筋線維の変性やコラーゲンが異常に増える、加齢マーカー(リポフスチン)の蓄積などが関連していると考えられています。

腹水症

急激な筋肉の増体に対して、心肺機能が追いつかないために発生する症状です。

肺高血圧症から右心不全(拡張)を引き起こし、やがて腹腔内に多量の体液(腹水)が溜まって死亡してしまいます。

発症の引き金は、冬期の寒冷ストレス(代謝・酸素要求量が増すため)や、鶏舎内の換気不足などです。

突然死症候群

「フリップオーバー」とも呼ばれます。

元気に育っていた若齢〜中齢のブロイラー(特にオスの肥満鶏)が、突然羽ばたいてひっくり返り、そのまま死亡してしまう現象です。

致死的な心室細動などの心疾患が原因とされています。

過密飼育とストレス 

日本では、肉用鶏の飼育において、アニマルウェルフェアに基づいたルールはまだありません。

そのため、量産される多くのブロイラーが過密でストレスが高い環境で飼育されています。

ブロイラーは基本的にケージではなく平坦な床(地べた)で飼育される平飼いが採用されています。

そして、日本では、1㎡あたり約16羽のブロイラーが飼育されているとのデータがあります。

EUでは1㎡あたりおよそ10〜11羽分(重量ベースで33kg/㎡以下)と制限されており、日本よりもかなり広々としたスペースで飼育されているのです。

過密飼育は、床をはじめとする飼育環境の衛生状態に悪影響をおよぼします。

それだけでなく、日本では24時間薄暗い照明がつけられたままの鶏舎もあります。

ずっと明るいままの環境では、人間がそうであるように、鶏たちも眠ることができず、身心ともにうまく休息することができません。

多くの養鶏場では、休息するための止まり木もありません。

日本では、生産性を追求しすぎた結果、ブロイラーたちの健康的な生活を奪ってしまったのです。

世界におけるブロイラーのアニマルウェルフェアの進化

エサを食べる鶏

近年、人間に携わるさまざまな動物のアニマルウェルフェアが、欧米を中心に見直されています。

ブロイラーも例外ではありません。

EUでは、2007年にブロイラーの飼育に関する指令が施行されました。

飼育環境の見直しによって飼育スペースに余裕をもたせることや、 成長速度の緩やかな品種(スロー・グローイング)への切り替えを推奨しています。

また、2018年には、すべての農用動物のケージフリー化を進める欧州市民イニシアチブが採択されました。

これは、2027年までに実行される予定です。

ブロイラーをはじめとする肉用鶏については、2007年に欧州委員会から出された指令に基づき、改善が進められています。

その内容は、

  • 鶏舎の過密化を抑えるため最大飼養密度を 33 kg/㎡に設定する
  • 照明、排泄物、給餌、換気などの要件を規定

といったものです。

また、政府機関だけでなく、スーパーマーケットも協力していることも、日本との大きな違いでしょう。

フランスやオランダ、イギリス、ドイツなどのさまざまな国のスーパーマーケットで、独自の取り組みがなされています。

たとえば、推奨される飼育方法に則ったブロイラーを、通常のブロイラーよりは高価ではあるものの買い求めやすい価格で提供したり、認証鶏として販売したり、ロゴマークをつけたりするといった動きです。

参照:J-STAGE  欧州におけるアニマルウェルフェアの新展開

ブロイラーの日本の現状とアニマルウェルフェア

鶏の顔アップ

欧州では2007年に肉用鶏のアニマルウェルフェア向上の取り組みが本格的にスタートしました。

それに対して日本は、いまだに具体的な法律や規定はありません。

農林水産省がアニマルウェルフェアに関する新たな国の指針を策定しましたが、法的な拘束力はないため、なかなか普及していないと考えられます。

ブロイラーに関するアニマルウェルフェアについては、欧米諸国と比べて、単純に考えてもおよそ20年の遅れがあると考えることができるのです。

欧州で進められているスロー・グローイングに対して、日本では成長速度の速いブロイラーの飼育(ファスト・グローイング)が主流です。

スロー・グローイングやアニマルウェルフェアに配慮したブロイラーの飼育については、日本ではごく一部の企業が取り組んでいるに過ぎません。

しかし、これからますますアニマルウェルフェアが求められる時代がやってきます。

日本でも、法的な拘束力をもたせたることや、さらなる企業ごとの努力が必要となる可能性は十分にあります。

私たち消費者も、一人一人が意識して購買活動を行うことで、日本におけるブロイラーの飼育環境の改善につながるでしょう。

購入する際は、ラベルに記載されている飼育方法を確認したり、銘柄鶏を選んだりすることが、購入者の意思として少しずつ反映されていくのです。

まとめ

私たちの命を支えてくれる、鶏をはじめとする農用動物のアニマルウェルフェアの観点における飼育環境の向上は、特に日本においては、戦後から長らく後回しにされてきました。

しかし近年ようやく、少しずつ改善に向けて動き出したのです。

特に、肉用となる牛や豚、鶏には、効率化を追求するあまり、身心に過大な負担をかけ続けてきたことを、私たちは忘れてはなりません。

先に取り組み出した欧米を手本に、生産者だけでなく消費者である私たちも、できることに取り組む必要があります。

「いただきます」の根源にある、動植物の命を私たち人間が取り込んでいるという気持ちを忘れず、生産の現場から大切にしたいものです。

【免責事項】Animal Compassionではできるだけ正確な情報提供を心がけていますがご利用者様による正当性の確認をお願いいたします。また医療に関する助言を提供することはございませんので、最終的な判断は適切な医療従事者に個別の状況を確認してもらった上で行うようにお願いいたします。

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この記事を書いた人

子どもの頃から動物がそばにいるのが当たり前の環境で育ちました。
大学では家畜の機能形態学・病理学を専攻し、また馬術部に入部し、長年夢だった乗馬を始めることができました。
社会人になった現在も乗馬は継続中です。
大型犬と小鳥と一緒に生活しています。

ペット医療を中心としたジャンルでライティング活動をしています。
こちらのWEBサイトでの活動を通じ、動物と人間がよりよい関係を築くためのお手伝いができれば幸いです。

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