【鶏のアニマルウェルフェア】平飼いとケージ飼いの違いや卵の特徴を解説

平飼いの鶏たち
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鶏の卵や肉は、人間にとって高い栄養素を含む重要な食べ物です。

現在私たちは、鶏卵や鶏肉を安定した品質で、安価に入手することができています。

これは、長年にわたる品種改良だけでなく、ケージ飼いによって効率的な生産ができるようになった結果でもあります。

近年、鶏の飼育方法の見直しが盛んです。

鶏肉を生産する養鶏場においては、鶏に傷がつくのを防ぐため、平飼いや放し飼い(放牧)が主流となっています。

しかし、卵を生産する採卵鶏においては、まだまだケージ飼いが主流です。

欧米をはじめとする諸外国では、アニマルウェルフェアの観点からケージ飼いの禁止が推奨され、平飼いをはじめとする飼育方法がどんどん普及しています。

平飼いは、鶏のアニマルウェルフェア(一生の間、できる限りストレスの少ない、健康的な状態で飼育すること)につながります。

日本では、平飼いを取り入れる養鶏場が少しずつ増えてきました。

今回は、平飼いとケージ飼いの違いや、平飼い卵の特徴をご紹介します。

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【日本は遅い?】鶏のケージ飼い禁止が進む“今”を解説

目次

日本の主流「ケージ飼い」の現状と世界の変化

元気な鶏たち

アニマルウェルフェアを考える上で、本来の生育環境に近い状態で飼育することは欠かせない取り組みです。

鶏は、以下のような条件を満たす環境が飼育に望ましいと考えられています。

  • 広々とした砂地
  • 快適な温度や湿度が保たれている
  • 天敵に襲われるリスクが少ない落ち着いた場所

日本では、現在もおよそ7~8割の養鶏場がケージ飼いです。

農林水産省の2025年の調査(麻布大学の報告書による) では、ケージ飼いのみの養鶏場の割合は74.5%、平飼いをはじめとするケージフリー飼育(放し飼い、放牧)またはその併用を行っている養鶏場は24.5%でした。

ケージ飼いは、鶏のアニマルウェルフェアを満たすための上記の条件をほとんど満たしていません。

それに対して、世界で推進されている平飼い、ケージフリー飼育は、養鶏のアニマルウェルフェアにとって土台のようなものです。

ケージ飼いは、少ないスペースで生産性を上げる、人間にとってのメリットを重視した飼育方法です。

平飼いは、広いスペースの中を鶏が自由に歩き回ることができます。

ケージ飼いでは鶏は思うように動きまわることができず、ストレスが溜まりがちです。

しかし、平飼いでは鶏は羽ばたいたり砂浴びをしたり、自由に行動することができます。

行動制限がないことでストレスが溜まりにくく、のびのびと生活できるのです。

アニマルウェルフェアは、人間のメリットではなく、動物の感受性を尊重して、健康で快適な暮らしを送ることを大切にしています。

平飼いは、ケージ飼いの何倍も、アニマルウェルフェアの考えに適った飼育方法といえるでしょう。

参照:麻布大学|「ケージフリー採卵養鶏調査」報告書

アニマルウェルフェアの土台となる「平飼い」の特徴

農場を悠々と歩く鶏

まず、平飼いの飼育方法についてご説明しましょう。

鶏が広々とした平地でのびのびと生活できるのが平飼いです。

鶏舎の敷地内や、場合によっては屋外を行動できる場合もあります。

屋外飼育を含める場合は放牧や放し飼いといいます。

平飼いの具体的なメリット・デメリットをご紹介します。

平飼いのメリット

止まり木で休んでいる鶏

鶏舎はただ平坦なだけでなく、砂場や止まり木、巣箱などがあったりするのが特徴です。

これによって、砂浴びをしたり、ジャンプして遊んだりすることができます。

砂場

鶏は、日に何度も砂浴びをします。

砂浴びは、鶏にとってお風呂のようなものです。

ごろごろと砂の上に転がることで、羽根についた汚れや皮脂、ダニなどを落とす役割があります。

人間にとってのお風呂と同様に、鶏をリラックス・リフレッシュさせる効果もあるといわれています。

止まり木

鶏は眠ったり身体を休めるときは、止まり木を使用する習性があるのです。

止まり木は地面よりも少し高い場所にあるため、天敵に襲われるリスクが下がります

鶏が身体を休めるときの安心感につながるのです。

また、ジャンプして止まり木に飛び乗ることで足腰の健康維持や、休息中に足回りの羽根が汚れるのを防ぐこともできます。

巣箱

鶏は、巣箱があることで安心して卵を産みます

また、卵を産むと総排出腔(鶏のおしりの部分)が赤くなることから、鶏自身がほかの鶏につつかれるリスクがあるのです。

薄暗い巣箱の中で落ち着いて卵を産み、抱卵することでそれも防ぐことができます。

巣箱の中には藁やもみ殻などの敷材を用意するのが一般的です。

巣箱がなければ土の上に卵を産むことになるため汚れてしまいますが、敷材を敷いた巣箱があれば産んだ卵が汚れるのを防げます

その他

平飼いは、鶏が飼育場の中を自由に歩き回ることができ、必然的に運動量が確保されます。

その結果、健康的で病気になりにくい身体へと成長するのです。

抗生物質をはじめとする薬に頼りすぎない飼育につながります。

また、地面をつついたり、砂浴びや止まり木で眠るといった鶏本来の行動が行われることで、ストレスが減り、快活で、異常行動の少ない飼育が可能です。

平飼いのデメリット

平飼いは、鶏たちに自由な行動を与えられる半面、安全面や衛生管理のリスクが、ケージ飼いよりも上がってしまうデメリットがあります。

日本において平飼いがなかなか普及しないのは、以下のようなデメリットがあるためです。

  • 大量生産には広大な土地が必要
  • 衛生管理や卵を集める作業にコストがかかる
  • ケージ飼いに比べて人手が必要

ケージ飼いは、限られたスペースを有効活用して、卵の大量生産を図ることができます。

敷地の横の広さだけでなく、高さも利用して生産できるためです。

しかし、平飼いではそれが難しいのです。

大量生産できなくなることで、どうしてもケージ飼いに比べてコストがかかりがちになります。

また、平飼いでは鶏が自由に敷地内を移動するため、地面に糞が直接落ちてしまうため、鶏の足元や卵が汚れるリスクがあります。

地面に落ちている虫をつついて食べてしまうこともあり、病原菌が紛れ込まないとも言い切れません。

この点は、ケージ飼いに大きく利があります。

ケージ飼いであれば、ケージから落ちた糞はベルトコンベアやトレーなどで回収することが可能です。

落ちている虫を食べることも可能性として極めて低いでしょう。

ケージ飼いでは、鶏が産んだ卵は回収用のベルトに乗って自動で回収されます。

しかし、平飼いでは鶏がそれぞれ好きな場所に卵を産むため、人間が歩きながら卵を回収するコストがかかります。

そして、鶏が自由に歩き回るということは、ケージ飼いと比べて個体管理がしにくくなります

けがや病気になっていた場合にすぐに気づけない可能性もあるのです。

平飼いとケージ飼いは卵の安全性や栄養価に違いはある?

産みたての白い卵

我々消費者にとって、卵の安全性や栄養価の違いはとても気になる部分ですよね。

平飼いとケージ飼いでは、卵の安全性や栄養価に違いはあるのでしょうか。

まずは安全性です。

平飼い卵の方が、ケージ飼いと比べてごくわずかにサルモネラ菌の感染リスクが高いとされる場合もありますが、そうでないとする報告もあります。

これは、平飼いの場合、鶏が地面を自由に歩き回ることで土や地面に落ちた糞などに接触することから、感染リスクが上がると考えられています。

しかし、はっきりとリスクが高くなるとは明言されていません。

菌の感染以外では、寄生虫感染リスクがあげられます。

実際に海外では、平飼いをしている鶏から寄生虫が発見された例があります。

しかし、日本では現在までにそのような報告はありません。

徹底した飼育管理のもとで、卵の安全性は守られているのです。

これらのことから、ケージ飼いの卵と同様に、安心して食べられると思ってよいでしょう。

ただし、購入後は適切な保存が必要です。

次に栄養価ですが、なんとなく「平飼い卵の方が栄養価が高いのでは?」と思いますよね。

実際は、劇的な変化は認められていません

これは、平飼いもケージ飼いも、鶏の基本的なエサの成分は変わらないためです。

しかし、平飼い卵の場合、ビタミンやオメガ3脂肪酸、カロテノイドなどの成分が、ケージ飼いと比べてやや高くなる傾向にあります。

また、タンパク質の構成にも違いが現れます。

これは、通常のエサのほかに草や虫を食べたり、飼育下でストレスが少なかったり、運動量が確保できていたりすることなどが要因として考えられています。

栄養価 働き ケージ飼い卵との比較
オメガ3脂肪酸  免疫機能向上、心疾患リスク軽減など 約21%多い
カロテノイド 抗酸化作用、ビタミンAへの転換  3倍以上

参考:従来のケージ飼育施設と放し飼い施設で飼育された鶏の卵における脂肪酸、コレステロール、ビタミンAおよびEの組成の比較

従来の方法と超微弱発光法を用いた、ケージ飼育および放し飼い飼育の鶏の卵の品質評価

平飼い卵とケージ飼い卵の味の違い

キッチンで準備された卵

平飼い卵とケージ飼い卵の、味の違いも気になるところです。

卵の味の違い

平飼い卵の味は、ケージ飼い卵に比べて

  • 生臭さが少ない
  • コクがある
  • 卵白部分が濃厚

といった評価が多いです。

これは、平飼いでしっかり運動できていることで内臓が健康的に機能していることや、平飼いの場合、エサにもこだわっていることが多いことなどが要因として考えられています。

2つの卵は、別々に食べると「味の違いがわからない」という方も中にはいます。

これらの卵の味の違いを見抜くには、並べて食べてみるとよいでしょう。

卵の見た目の違い

平飼い卵は、薄茶色に近い殻のもの(いわゆる赤玉)が多く販売されています。

これは、ボリスブラウンという羽根の色が茶色い鶏が産む卵です。

一般的によく目にする白い卵(ケージ飼いで多い卵)は、白色レグホーンと呼ばれる白い羽根の鶏の卵です。

ボリスブラウンの卵は、殻が白色レグホーンのものと比べて分厚くしっかりしています

平飼い卵は、中身に違いが見受けられます。

白身は粘度が高くプルプルしており、黄身も弾力性が高いのが特徴です。

箸で摘まんで持ち上げられるくらい、破れにくいといわれます。

ケージ飼いの卵は、割って器に落としたときに平べったく広がっていくので、2つを並べてみると違いがわかりやすいでしょう。

黄身の色は飼育方法とは無関係

黄身の色は濃いオレンジのものや薄い黄色のものがありますが、これは飼料の違いによるものです。

鶏の飼料にトウモロコシやパプリカといった色の濃い素材が使われていれば、濃いオレンジのような色の黄身になり、お米をはじめとする白い素材が多ければ、薄い色の黄身になります。

ケージ飼いと違う?平飼い卵の安全性と賞味期限

卵をのぞき込む鶏

ケージ飼い卵は、機械化によって効率化されているだけでなく、衛生的にも高品質なイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか。

では、平飼い卵はどうでしょう?

平飼い卵は巣箱の中で産み落とされ、人が回収するまでに時間がかかることや、土をはじめとする汚れが付着している場合があることから、「ケージ飼い卵ほどの安全性はないのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

平飼い卵の安全性や賞味期限、適切な保存方法についてご説明します。

平飼い卵に多い無洗卵の安全性

平飼い卵を購入すると、パッケージに「無洗卵」と記載されているものが多くあります。

一般的なケージ飼い卵は、パック詰めされる前に薬剤を使用して表面を洗い、消毒することで、細菌感染のリスクを低減しているのが特徴です。

しかし、この作業によって、卵の表面を覆う「クチクラ層」が剥がれてしまいます。

クチクラ層は、ごく薄い保護膜で、この層があることによって菌や細菌が侵入するのを防いでいます

無洗卵は、文字通り殻を洗浄していないため、このクチクラ層によって卵の内部の安全が保たれているのです。

しかし、殻の表面にはサルモネラ菌をはじめとする菌や細菌が付着している可能性があります。

そのため、無洗卵と記載のある平飼い卵は、生食する場合には注意が必要です。

生食する場合にはその期限を守り、使用する前に軽く水で洗ってから食べましょう

洗って冷蔵庫に保存すると、菌が繁殖する原因となってしまうため、洗ったあとはすぐに食べることが食中毒予防に大切です。

平飼い卵の賞味期限や適切な保存方法は?

スーパーで販売されている一般的な卵は、パック詰めされてから2週間が賞味期限となっている場合がほとんどです。

しかし、平飼い卵の賞味期限は、一律ではありません。

生産する農場によって、14日(2週間)程度ともうけているところがあれば、3週間のものや、長いと4週間に設定しているものもあります

ただしこれは冷蔵保存をした場合で、常温だと3日~1週間程度です。

平飼い卵の賞味期限が一般的な卵よりも長いのは、以下のような理由があります。

  • 鶏が健康的で、卵の中の膜が丈夫
  • 産みたて卵が素早く販売される

そして、卵を保存するときは尖った方を下にしておくこと、冷蔵庫ではポケットではなく棚で保冷することで、より長く安全に保存できます。

卵は、尖った方の反対側の丸い方に気室という空洞があり、気室が上になることで、中身の卵黄がより中央に配置され、長持ちするといわれているのです。

一般的には、パックのまま保存することで問題ありません。

冷蔵庫のドアポケットは開け閉めのたびに温度変化が生じやすい場所です。

より安定した温度で冷やせる棚の方が、品質保持機能が高くなります。

役目が終わった採卵鶏に新しい生活を!新しいアプローチ

広い土地を歩く鶏たち

鶏は本来、飼育下であれば10年程度生きる動物です。

しかし、養鶏場の鶏は、採卵鶏であれば1~2年で役目を終えます

役目を終えた採卵鶏は、「親鳥」として食肉用に回されたり、ペットフードの原料にされたりするのです。

採卵鶏は、生後5ヶ月ごろから卵を産みはじめ、年間で約300個の卵を産みます。

年齢を重ねるごとに年間の産卵数や、殻が薄くなるといった卵の質の低下がみられるため、短いサイクルで世代交代をせまられるのです。

里親(ペット)としての終生飼育 

そのような中で、新しい取り組みも生まれています。

役目を終えた鶏を、ペットとして終生飼育してくれる方を募る農家があらわれたのです。

これには多くの方が賛同しています。

しかし、中には「伝染病が発生したときに責任を持てるのか」「役目を終えた鶏の押し付けだ」などといった意見も、少数ながら見受けられます。

これらの意見に対して養鶏場は、そう捉える方がいるのは承知の上で、それでも命を繋ぎたいと、これまで複数回に渡って無償譲渡を実施したとのことです。

循環型農業への貢献や終生飼育プロジェクトの発足

また、採卵鶏を廃鶏にせず、糞を農作物の肥料として提供してくれる存在として飼育する、循環型の養鶏を始めた農家もあらわれてきました。

それだけでなく、廃鶏の終生飼育プロジェクトも、まだ数は少ないものの各地で発足しています。

アニマルウェルフェアの広がりとともに、これまで当たり前だった廃鶏の道が変化しつつあるのです。

このように立ち上がった農家を見習い、私たちも、採卵鶏に対する在り方をもう一度考えて、ブラッシュアップすべきではないでしょうか。

まとめ

日本において、私たちの食生活に欠かせない卵は、多くの鶏の不自由によって絶え間なく提供されている事実があります。

日々の買い物で、平飼い卵や放し飼い卵を選ぶことが、養鶏場のアニマルウェルフェアの向上に役立ちます。

ぜひ、スーパーで卵を購入するときは、値段だけでなく飼育方法にも目を向けてください。

平飼い卵や放し飼い卵は、ケージ飼い卵に比べると少し割高です。

しかし、人間の都合重視でない飼育方法によって、鶏たちの健康の維持やストレス軽減になり、さらには良質な卵の生産へとつながるのです。

鶏のアニマルウェルフェアの向上のために、今一度、できることを考えてみましょう。

【免責事項】Animal Compassionではできるだけ正確な情報提供を心がけていますがご利用者様による正当性の確認をお願いいたします。また医療に関する助言を提供することはございませんので、最終的な判断は適切な医療従事者に個別の状況を確認してもらった上で行うようにお願いいたします。

平飼いの鶏たち

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この記事を書いた人

子どもの頃から動物がそばにいるのが当たり前の環境で育ちました。
大学では家畜の機能形態学・病理学を専攻し、また馬術部に入部し、長年夢だった乗馬を始めることができました。
社会人になった現在も乗馬は継続中です。
大型犬と小鳥と一緒に生活しています。

ペット医療を中心としたジャンルでライティング活動をしています。
こちらのWEBサイトでの活動を通じ、動物と人間がよりよい関係を築くためのお手伝いができれば幸いです。

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