私たちの日常生活には、いい香りやさまざまなにおいがあふれています。
例えば、洗剤やシャンプー、ボディーソープなどには当たり前に香料が含まれています。
芳香剤を置いたり、香水をつけたりされる方も多いでしょう。
料理には風味付けにスパイスを使用し、夏場にはミントやハッカといった清涼感のあるエッセンスを取り入れることもあるでしょう。
ご自分で調合したアロマを使用されている方もいるかもしれません。
よい香りやにおいは、生活の質をあげてくれます。
しかし、それは人間にとっての話で、人間以外の動物にとっては必ずしもよいものではありません。
むしろ、香りやにおいの元となっている成分が、毒になることもあるのです。
特に、猫は日常生活であふれるにおいに注意しなければなりません。
場合によっては、命の危険となる可能性もあるのです。
今回は、猫にとって有害な香りやにおいはどのようなものがあるのか、また、日常生活で何か対策をすることは可能なのかをお伝えします。
猫の健康を考えた「猫にやさしい暮らし」に、ぜひお役立てください。
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【注意】猫が危険な物や人間の食べ物を食べてしまったときの対処法
なぜ猫は「香り」で中毒を起こすのか

近年は、ペットにもアロマを利用して癒しを与えるといったビジネスが出てきました。
しかし、特に猫にとっては、気軽に使用すべきではありません。
含まれる成分によって重篤な症状が現れることがあるのです。
なぜ、犬は大丈夫なのに、猫にとっては毒となる香りがあるのでしょうか。
それは、猫の身体の構造や生態など、おもに3つの理由があります。
その理由をご説明しましょう。
① 猫の肝臓がもつ致命的な弱点
香りの成分は、肝臓の酵素によって化学的に分解され、体外へと排出されます。
この働きを「異物代謝系」と呼びます。
異物代謝系で働く酵素の種類は動物によって異なり、特定の物質を分解する酵素を遺伝的に持っていない動物もいるのです。
猫は、「グルクロン酸抱合」の遺伝子(UGT1A6 )が欠如しており、特定の植物由来の香り成分を分解することができません。
その結果、香り成分が体内に蓄積して、重篤な症状をもたらすことがあるのです。
この遺伝子の欠損は、猫だけでなくフェレットやトド、北オットセイといった動物にもみられます。
香りだけでなく特定の薬物についても代謝機能が働かないため、使用に注意が必要な薬があることも覚えておきましょう。
具体的には、タイムやシナモンなどに含まれる「フェノール類」や、ローズマリーやミントに含まれる「ケトン類」の香り、薬では「アセトアミノフェン」や「アスピリン」などです。
犬の場合は「アセチル抱合」、豚の場合は「硫酸抱合」遺伝子が欠損していることがわかっており、同じように特定の薬物を使用する場合に注意が必要です。
参考:J-STAGE|Phase II酵素の欠損動物と非欠損動物 ー新たな動物種マッピングー
J-STAGE|非実験動物における化学物質代謝能の特徴と種差
② 人間の数十倍!「嗅覚」の鋭さ
においの成分は空気中を漂っており、鼻の中で感知されます。
においは、鼻の中にある臭上皮という器官で感知され、そこにある嗅覚細胞が脳まで伝えます。
犬はもちろんですが、猫も嗅覚が発達している動物です。
犬は、犬種によって嗅覚細胞の数が少ないものがおり、そのような犬種と同じくらいの嗅覚が猫にもあります。
ともに人間の何十倍も嗅覚が優れていることから、においを感知しやすく、においによる被害も受けやすくなるのです。
以下は、人間と犬・猫の臭上皮と嗅覚細胞の比較です。
これをみると、猫に嗅覚がいかに優れているかわかりますね。
| 臭上皮の面積 | 嗅覚細胞の数 | |
| 人間 | 約4㎠ | 約500万~1000万個 |
| 犬 | 約200㎠ | 6000万~2億以上(犬種による) |
| 猫 | 約40㎠ | 6000万~7000万個 |
③ 「毛づくろい」による経口・経皮吸収

猫をはじめ、動物は毛づくろいをして身体をきれいにしますね。
におい成分は、空気中に目に見えない粒子となって漂っています。
その粒子が猫の毛に付着し、猫が毛繕いすることで体内に侵入してしまうのです。
また、口から侵入するだけでなく、皮膚から直接吸収されることもあります。
そのほかにも、呼吸によって体内に侵入することもあるため、猫にとって有害となる香りやにおいとなるものは猫がいる空間に漂わせないことが、有効な予防手段となるのです。
日常生活でよく使用する柔軟剤やアロマの成分は猫に大丈夫?

私たちの日常生活では、柔軟剤や洗剤、アロマなど、においや香りが当たり前のように含まれています。
猫にとって健康リスクとなるものをご紹介します。
柔軟剤の香料リスク
洗濯後の衣服からフワッといいにおいがする柔軟剤の香りには、合成(人工)香料や天然香料などが使用されていて、猫にとってはよくありません。
「天然香料ならば問題ないのでは?」と思われるかもしれませんが、猫の肝臓では、分解できない香り成分が多いのです。
柔軟剤は、無香料のものやペットに無害なものを選びましょう。
アロマのリスク
ラベンダーやティーツリー、ローズマリーなど、アロマオイルの香りは、人間にとって心地よいものです。
しかし、猫にとっては有害で、アロマオイルによって実際に起きた健康被害も報告されています。
猫にとって害のないアロマオイルについては、現時点では報告がありません。
猫がいる環境では使用しないことをおすすめします。
虫除けで人気の「ハッカ油」
スーッとする清涼感が魅力で、夏場にお風呂で使用したり、自然派の虫除けとして利用されたりするハッカ油ですが、こちらもアロマオイルの一種であり、猫にとって大変危険です。
そのほかにも、ユーカリや、ミントをはじめとするメントール系の香りは、猫に呼吸器症状や痙攣を引き起こす可能性があります。
柑橘系の香りもやはり危険ですので、猫がいる場合は使用しないようにしましょう。
食材や薬にも注意!身近に潜む香りのリスク

猫にとって健康リスクとなる香りは、柔軟剤やアロマだけではありません。
料理のスパイスや薬など、無意識で利用している身近なものにも含まれます。
どのようなものにリスクがあるのか、あらかじめ把握しておくことで、被害を免れることができます。
料理に使用するスパイス
スパイスは料理にアクセントを加えてくれる、私たち人間にとっては欠かせない調味料です。
しかし、以下のようなスパイスは猫にとって危険となります。
- シナモン
- 胡椒
- カレー粉
- 唐辛子
- ニンニク
- ナツメグ など
猫が誤って成分を吸い込んだり飲み込んだりすると、神経症状や呼吸器症状、痙攣などを引き起こす恐れがあります。
これらのスパイスを使用する際は、猫を近づけないようにして、換気扇を回すようにしましょう。
スーっとする薬
先ほど、ハッカやメントール系の香りについてリスクをご紹介しましたが、これらは虫刺されの薬にも含まれることがあります。
同じく清涼感のあるにおいがする湿布は、非ステロイド系抗炎症薬が含まれており、これが原因で海外では猫の死亡例が報告されているのです。
ただし、原因はにおいではなく誤飲とされています。
しかし、猫にとって危険な成分であることは変わりないため、使用には注意が必要です。
不快な症状を抑えるために何気なく使用する薬も、一度立ち止まり、猫が触れたりにおいを嗅いだりしない状態で使用しましょう。
もしくは、猫に無害な成分で構成されている薬を選びましょう。
参考:FDA Consumer Advice on Pet Exposure to Prescription Topical Pain Medications Containing Flurbiprofen
殺虫剤や蚊取り線香
身の回りにハエやゴキブリなどが現れた場合に、殺虫スプレーで退治される方も多いと思われます。
定期的に燻煙剤をたいて、予防される方もいます。
また、蚊から身を守るために蚊取り線香や電池式・電源式の虫除けなどを使用する方もいるでしょう。
これらも、商品によっては猫に危険なものがあります。
以下のような成分が含まれている場合は、使用を控えることが望ましいです。
- ピレスロイド系の薬剤(おもにスプレーに含まれる)
- 有機リン系の薬剤(おもに園芸用の殺虫剤に含まれることが多い)
これらは急激な中毒症状を引き起こす可能性があります。
殺虫剤は冷却タイプのものを、蚊取り線香はペット用のものを選ぶとよいでしょう。
ただし、蚊取り線香や電池式・電源式の虫除けに使用される成分は、魚や鳥などにとって有毒になる可能性があります。
複数の種類のペットを飼育されている場合は、特に注意が必要です。
また、ペット用でも、過剰使用は健康リスクとなる場合があります。
適切な使用を心がけましょう。
猫が「香り中毒」を起こしたときの症状

猫が万が一香りによって中毒症状になってしまった場合、どのような症状が起こるのでしょうか。
症状を知っておくことで、早めかつ適切な対応をとれる場合があります。
急性および慢性の中毒症状についてご説明します。
急性中毒の症状
病気やケガなどの思い当たる原因がないのに以下のような症状がみられた場合、香りによって中毒を引き起こされているかもしれません。
- 嘔吐
- よだれが止まらない
- ふらつき
- 痙攣、震えが止まらない
- ぐったりしている、動こうとしない
- 呼吸困難 など
これらの症状がみられたら、早急に動物病院で処置をしてもらう必要があります。
また、皮膚ににおい成分が付着することで、赤みやかゆみといった炎症を引き起こすケースもあるのです。
慢性中毒の症状
急性中毒のように激しい症状は起きないものの、香り成分によってくしゃみや咳がいつまでも続くことがあります。
これらの症状の原因がなくならないことで、喘息を引き起こす可能性もあるのです。
また、症状がでなくても、特定の場所に近寄らなかったり、逃げたり、隠れたりする場合も、香りをいやがっているからかもしれません。
毛に付着したにおいを落とそうとして、頻繁に毛づくろいをすることもあります。
もしも猫が柔軟剤や芳香剤を舐めたら?中毒が出た場合の対応

日常生活のなかで、猫が誤ってにおい成分を舐めたり触ってしまったりすることは十分考えられるリスクです。
そのような場合、どう対応すべきでしょうか。
初期対応やできることをご説明します。
舐めてしまった場合の初期対応
におい成分を舐めてしまった場合、すぐに動物病院に連れていきます。
「舐めた量が少なかったら大丈夫だろう」と思わず、なるべく早く診察してもらうことが大切です。
先述したように、猫はにおい成分を分解する能力がありません。
わずかな量でも、放置すると重篤な健康被害につながるリスクがあるのです。
猫が柔軟剤や洗剤などを飲み込んでしまったからといって、水を飲ませると体内で泡立つ可能性があり危険です。
また、飼い主側で吐かせようとするのもやめましょう。
身体に液体がかかった・浴びた場合の洗い方
猫の身体ににおい成分を含む液体がかかってしまった、踏んでしまったという場合には、素早く洗い流します。
猫がグルーミングをする前にきれいに落とすのです。
洗う際は水ではなくぬるま湯が望ましく、すぐに洗えない場合は濡れタオルやペット用のウェットシートなどでしっかり拭き取りましょう。
その後、肉球に異変がないかも確認します。
赤くなって炎症が起きている場合は、動物病院での診察が必要です。
猫がいても安心!消臭・無香生活のアイデア

猫にとって多くの香りは健康リスクを高めてしまうものの、洗剤や臭い対策は私たちの生活で欠かせないものです。
猫に配慮しながら、これまでとなるべく変わらない生活を送るための工夫をご紹介します。
洗濯は「無香料・無添加」の洗剤・柔軟剤を
香りの強い洗濯洗剤や柔軟剤は、人間にとっても香害となることがあります。
においに敏感な猫ならばなおさら危険です。
洗濯洗剤は、無香料かつ無添加のものを選ぶようにしましょう。
また、柔軟剤は、香り成分だけでなく、含まれる界面活性剤が猫の健康リスクとなるため使用を控えます。
人間にとっても、柔軟剤を使わないことで肌への負担が減ったり、タオルの吸水性がよくなったりといったメリットがあります。
無添加の洗剤や植物由来の洗剤であれば、柔軟剤を使用せずともふんわりと洗い上がるでしょう。
ごわつきが気になる方は、柔軟剤の代わりにクエン酸を使用してみてください。
部屋のニオイ対策には「空気清浄機」
衣類や部屋の中のにおいが気になって、つい消臭スプレーを振り撒いていませんか?
中には、置き型の消臭剤を使用されている方もいるかもしれません。
消臭スプレーや消臭剤には、アルコールや香料としてラベンダーやティーツリー、ユーカリなどのアロマ成分が使われていることがあり、猫にとって危険です。
また、強い香りが猫のストレスになることもあります。
ペット可と記載があっても、なるべく使わないようにしましょう。
においが気になるときは、空気清浄機を使ったり、猫を別室に移動させて使用したりします。
消臭スプレーは、無香料かつアルコールが使用されていないものを選びましょう。
どうしても香りを楽しみたいときは「完全隔離」!
「アロマやお香などが好きで、どうしても楽しみたい」という場合は、猫が部屋に入らないようしっかりと扉を閉めたうえで焚きましょう。
そして、使用後は部屋を換気したり空気清浄機を稼働させて空気を入れ替えるとともに、衣類も着替えて香りが残らないようにすると、猫への刺激がより少なくなります。
もし、アロマオイルが手についた場合や、お香の香りの部分を触った場合は、猫に触れる前にしっかり洗い流しましょう。
まとめ
快活な見た目とは裏腹に、猫はデリケートな動物です。
私たちの身の回りに当たり前にある香りも、猫には健康リスクとなるものが多いため、十分に注意してあげましょう。
「少しくらいなら大丈夫」と思われても、猫はその香り成分を分解する能力がありません。
少しでも対処できる能力があるのと全くないのでは、身体に与えられるダメージが大きく変わってきます。
そのことを理解して、猫にとってストレスにならない、健康的な生活が送れる環境を整えてあげましょう。


