アフリカの動物でも危険な暑さ!動物園の熱中症対策の実際

メスライオンの横顔
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2026年8月、ショックなニュースが日本を駆け巡りました。

東京の多摩動物公園において、ライオン3頭が熱中症で亡くなってしまったのです。

日本では近年、夏の暑さが話題となっています。

天気予報では、連日「危険な暑さ」「なるべく屋外での活動を控えるように」と、アナウンスが流れています。

日本の夏の暑さは、私たち人間はもちろん、自然界で暮らす動物たちにとっても、命に関わる危険な暑さです。

なぜ、日本の夏はこれほどまでに暑いのでしょうか?

また、動物園では、暑さへの対策はなされていなかったのでしょうか?

今回は、動物たちにとっての日本の夏の過酷さと、動物園の動物たちへの暑さ対策についてご説明します。

目次

日本の高温多湿の夏は動物たちにとって危険

暑そうな雄ライオン

日本の夏の特徴は、気温が上がるだけでなく、湿度も高いことです。

気温は、近年は5月ごろから上がり始め、6月の梅雨の季節には東京での最高気温が26~27℃になります。

湿度は75~80%程度で、雨の日は100%になる日もあります。

湿度が10%上がると体感気温は1℃上昇するといわれており、多くの方が蒸し暑いと感じるようになるでしょう。

梅雨が明けても、ジメジメした暑い日が続きます。

近年は、最高気温が40℃を超えるすさまじい暑さも珍しくありません。

気温に加えて日本では高湿度も加わるため、人間だけでなく多くの生き物にとって厳しい季節となるのです。

自然界で暮らす動物たちは、日中はなるべく涼しい木陰で過ごしたり、動かないようにしたりして、夏を乗りきっています。

それでも、中には脱水をはじめとする熱中症の症状を引き起こす動物もいます。

呼吸が荒くなったり、動けなくなったりしている鳥や動物、昆虫をみたことがある方もいるかもしれません。

日本の夏は、過ごし方を間違えれば命まで脅かされてしまう危険な季節なのです。

アフリカの動物でも日本の夏は危険

日本の多くの動物園には、ライオンやキリン、ゾウ、サイ、カバなど、アフリカのサバンナで暮らす動物たちがいます。

また、同じアフリカでも、サハラ砂漠で暮らすラクダやフェネック、タテガミヤマアラシなども、日本の多くの動物園でみることが可能です。

サバンナは、雨季と乾季がある気候です。

年間を通じて気温が高く、乾季には30~40℃になります。

雨季は、夜中や明け方には気温が下がり、10℃くらいまで冷え込むことも珍しくありません。

サハラ砂漠をはじめとするアフリカの砂漠地帯では、最高気温が40℃を超えることが日常的にあります。

雨はほとんど降りません。

このように、アフリカは気温が高くても湿度は低い気候なのです。

そのため、日差しの強さはあるものの、ジメジメしていません。

湿度によって、知らず知らずのうちに体力が奪われる・疲労が蓄積するということがほとんどないのです。

日本サバンナサハラ砂漠
夏の最高気温30〜38℃(時に40℃超)30〜40℃(乾季)40〜50℃
湿度70〜90%以上低い(乾季はカラッとしている)10%以下になることも
一日の気温の変化小さい(夜間も熱帯夜が続く)大きい(夜間は10〜15℃)非常に大きい(夜間は10℃以下〜氷点下)
降水量多い雨季にスコール(乾季はほとんど降らない)年間を通して極めて少ない

アフリカの動物たちは、進化の過程から高温による暑さに耐えられる身体の構造をしていますが、多湿による暑さには耐えられるようにできていません

日本のジメジメとした高温多湿の夏は、アフリカの動物たちにとっても危険な暑さなのです。

ライオンやラクダの死亡例も

動物園のヒトコブラクダ

日本の動物園では実際に、アフリカの動物であるライオンやラクダの死亡例が出ています。

ラクダの死亡例

2022年8月、愛知県の動物園でヒトコブラクダ1頭が熱中症の疑いで死亡しました。

2022年は、35℃を超える猛暑日が続いていた年です。

ヒトコブラクダは、中東のアラビア半島に生息する、本来は暑さに強い生き物です。

しかし、砂漠のからっとした暑さとは違う日本の高湿度の暑さは、適応しかねるのでしょう。

亡くなった個体は人間でいうと60歳を超えていて、身体への負担が大きかったに違いありません。

ライオンの死亡例

冒頭でお話したように、2026年7月~8月にかけて、東京都の動物園でメスのライオン3頭が熱中症の疑いで死亡しました。

それぞれの年齢は、3歳、11歳、15歳です。

3歳は人間でいえば20~30代、11歳だと60歳を超え、15歳はかなりの長寿と考えられています。

死亡事故が起きた動物園では、当時合計16頭のライオンを飼育していました。

熱中症の症状は、7月18日ごろから確認されました。

はじめは2頭が体調を崩し、食欲不振や活動低下といった症状が確認され、治療を開始しています。

その後、ほかの個体にも同様の症状が確認され、中には意識を失うものもいたと、報道に記載されています。

最終的に10頭が熱中症と診断されました。

そして、7月28日~8月2日にかけて3頭のライオンが死亡し、脱水や多臓器不全を引き起こしていたと記録されています。

動物園では、風を送ったり、散水したり、補液や体温管理などで治療や対策を進めていたようです。

死亡報告時、ほかの体調を崩した個体については、何頭かは回復の兆しがみられたとのことですが、治療を継続する必要のある個体もいました。

昼間だけでなく夜も注意!暑さが続く熱帯夜

近年の日本の夏で注意しなければならないことは、昼間だけでなく、夜間も暑さが続くことです。

アフリカのサバンナや砂漠は、日中の気温が50℃やそれ以上になることがありますが、夜はぐっと冷え込み、特に砂漠では氷点下になることも珍しくありません。

これは、以下のような理由からです。

  • 空気中の水分が少ない
  • 日中砂に蓄えられた赤外線が宇宙へ放出される

空気中の水分は、熱を蓄えるのに役立っています。

しかし、サバンナや砂漠地帯は、湿度がほとんどなく、ゼロになることもあります。

そうすると、日中太陽に照らされて大地や砂が熱を蓄えても、日が落ちるとともに熱が空気中(宇宙)に向けて放出され、どんどん気温が下がっていくのです。

このメカニズムがわかると、日本の夏が、なぜ夜も気温が高いままなのか理解できるでしょう。

日本は湿度が高いため、夜間に地面から放出される熱の逃げ場がないのです。

そのほかにも、

  • ヒートアイランド現象
  • 夜間の風が弱いことで熱がこもりやすい

といった理由も挙げられます。

また、湿度が高いことで汗が出ても蒸発せず、身体に熱を蓄えたままになります。

気温が高いことに加えて体感温度も高いままになってしまい、余計に暑苦しさを感じてしまうのです。

動物園の熱中症対策

水につかって涼むトラ

世界中からさまざまな地域の動物が集う動物園では、今や暑さ対策は欠かせない要素となりました。

特に、毎年猛暑が記録される日本においては、早急に対応が迫られています。

しかし、日本の動物園では、暑さ対策がそこまで充実しているとはいえません

海外に目を向けると、率先して動物福祉に取り組んでいることもあり、日本とは比較にならないほど充実している園もあります。

海外の動物園の対策

日本以外にも、世界各地で最高気温が40℃になるような地域に動物園があります。

海外の動物園では、どのような暑さ対策が施されているのでしょうか。

いくつか実例をご紹介します。

冷房の効いた屋内に戻す

海外では、それぞれの動物の飼育スペースでエアコンが完備されていることも珍しくありません。

暑さに弱いパンダやコアラ、ホッキョクグマなども快適に過ごすことができます。

大きな屋内施設をしっかりと冷やし、その中で動物たちを展示するのです。

室内での展示が難しい場合にも、冷却ミストや大型の扇風機などが活用されています。

日陰を積極的に作り、動物たちが自由に避難できるようにしているのです。

24時間体制で気温を管理している動物園も少なくありません。

氷のプレゼント

屋外で活動する動物に、大きな氷の塊をプレゼントすることで、暑さを和らげる工夫がされています。

氷は触れることで体温を冷やしてくれるだけでなく、舐めたりかじったりすることでおもちゃになり、また、水分補給にも役立つのです。

プールの設置

水浴びをして体温を冷やす動物たちには、大きなプールを用意していることもあります。

ゾウやカピバラといった動物に特に有効です。

日本の動物園は対策が遅れている?

横になって休むサイ

日本の猛暑が問題となっている今、動物園でも熱中症対策は必須となっています。

しかし、日本の動物園の熱中症対策は、海外に比べて遅れているといわれているのです。

その理由は、以下のようなものが挙げられます。

  • 急激に猛暑が進み対策が追いついていない
  • 予算に限界がある
  • 屋外展示の限界 など

日本で猛暑が話題となり始めたのは、2007年ごろです。

じつは、気温35度以上の日を気象庁が正式に「猛暑日」を予報用語として登録し、使い始めたのが2007年なのです。

この年は、埼玉県と岐阜県で、観測史上初の40℃を超えた年でもありました。

2010年ごろからは、毎年40℃超えの日が観測されるようになります。

日本にある動物園は、ほとんどがそれ以前に開園したところばかりです。

そのため、夏がここまで猛暑になることを予期していませんでした。

元々あった設備では、近年の猛暑を乗り越えられなくなっているのです。

日本の動物園は、経営状況が厳しい園も多く、餌代の高騰も影響して、設備投資が思うように進まない現状もあります。

なかには、寄付やクラウドファンディングを募るなどして、冷房設備のための費用を捻出する園もあるのです。

本来であれば、海外の動物園のようにすべてのコーナーで、空調管理された屋内展示をするのが望ましいでしょう。

しかし、敷地や既存の設備に限りがある日本の動物園では、なかなか難しいのが現状です。

現在、それぞれの動物園ごとにできる範囲で少しずつ冷房設備の設置が進められています。

また、屋内展示を進めると、動物がよくみえないといった理由から、来園者が減少してしまう可能性があります。

しかし、日中の暑さは動物だけでなく、来園者にとっても危険です。

そのため、気温が下がっている早朝や夕方以降の屋外展示を進める動物園も増えてきています。

あまり費用をかけずに実施できる対策として、遮光ネットの設置やグリーンカーテンの設置なども、すでに行われている実例としてあげられます。

参考:池田動物園|動物たちの暑さ対策

動物たちの熱を逃す仕組み

パンティングする犬

人間の場合、汗をかいてその気化熱を利用して体温を下げることができますが、多くの動物はそうではありません。

この方法で体温を下げることができるのは、ほかには霊長類の一部や馬、ウサギなどが知られています。

カバも汗をかきますが、これは皮膚の乾燥を防ぐためです。

多くの動物は、どうやって熱を逃がし、体温を下げているのでしょうか。

パンティング

よく知られているのが、犬によくみられるパンティング(あえぎ呼吸)です。

口呼吸をすることで体温を下げます。

これは、犬だけでなくライオンや鳥など、多くの動物でみられる体温を下げる行動で、やはり気化熱を利用した体温調節の機能です。

しかし、高温多湿な日本においては、気化熱を利用した体温調節は、それ以外の地域と比べて効果が少なくなってしまいます

気化熱は、汗や口の中の水分が水蒸気になって蒸発する際、熱が逃げることを利用して体温を下げます

しかし、多湿な日本においては、身体から出る水分が水蒸気となって逃げにくいため、アフリカや砂漠地帯などに比べるとその効果がかなり減少してしまうのです。

これは、動物園にいる多くの動物が熱中症になりやすい理由の一つです。

肉球から汗をかく

肉球を持っている動物は、肉球から汗をかくことができます。

これは、肉球に汗腺があるためです。

しかし、肉球からかく汗の量はごくわずかであるため、大きな効果はありません。

むしろ、ほぼゼロに近いともいわれています。

木に抱きつくコアラ

木に抱きついて動かないコアラ

汗腺を持たないコアラは、汗をかくことができません

彼らは、周りよりも冷たい木の幹に抱きついてじっとすることで、体温の上昇を防いでいることが知られています。

これは、水場の少ないオーストラリアの気候に適して進化した行動といえるでしょう。

そのほかにも、オオコウモリやネコ科のジャガーなどでも、同じように気を利用して熱を逃がす行動が確認されます。

動物たちの熱中症のサイン

横になるライオンたち

多くの動物に共通して、以下のような症状がみられたら、熱中症のサインです。

  • パンティングが続く、呼吸が荒い
  • 落ち着きなくうろうろする
  • 食欲不振
  • 身体が熱い
  • 舌や粘膜(歯ぐきなど)が赤い
  • よだれが多い など

さらに症状が進むと、次のような状態がみられます。

  • ふらつく、まっすぐ歩けない、立ち上がれない
  • 嘔吐
  • 心拍数が多い など

そして、次のような状態になると、命の危険があります。

  • 意識がもうろうとしている、意識がない
  • 痙攣
  • 呼吸困難
  • 吐血や血便 など

ペットにも共通する症状であるため、飼育されている方は、特に夏場は気をつけてあげるとよいでしょう。

動物園では、動物たちにこれらの症状が起きないよう、飼育員の方々が日々最善を尽くしています。

しかし、スタッフの目の届かないところで、体調を崩してしまう動物がいるかもしれません。

観察中に明らかにぐったりしている動物がいたら、こちらから刺激せず、すみやかにスタッフに知らせましょう

参考:公益財団法人日本動物愛護協会|犬や猫の熱中症について

夏だからこそ気をつけたい来園者の熱中症対策

水浴びする像を眺める子供たち

夏は、子どもたちは夏休みに入り、親子で動物園を訪れる方も少なくありません。

来園する私たちも、猛暑に注意しながら楽しみたいものです。

日本の動物園は屋外施設が多く、猛暑の影響を受けやすい場所です。

来園の際は、以下のような点に気をつけましょう。

  • 水分補給を怠らない
  • 日傘や帽子を活用して、直射日光が当たらないようにする
  • 屋内施設を利用する
  • 体調がすぐれない場合は無理をしない

動物園ではたくさんの動物たちを前に、ついテンションが上がってしまいがちですが、園内は敷地が広く、歩き回るだけでも体力を使います。

くれぐれも無理をせず、適度に休憩をとりながら楽しみましょう。

身体が熱いと感じたら、フードコートでアイスクリームやかき氷などを食べて、身体の中から冷やすのも熱中症予防に効果が期待できます。

まとめ

動物園には、世界中から多くの動物が集められています。

そこにいる多くの動物たちにとって、もともと住んでいた場所で身体に備わった体温調節機能を生かせる生育環境とは異なるものばかりです。

しかし、日本の酷暑を乗り越えられるようにそれぞれの動物たちにあわせて対策をするには、膨大な費用と時間がかかります。

死亡報告があがり歯がゆい思いはありますが、できる対策を少しずつ進めるしかないのです。

私たちにできるのは寄付をはじめとするお金の支援ですが、積極的に動物園に足を運ぶことも支援につながり、また、問題提起にもつながります

私たち自身もしっかりと熱中症対策をして、動物園に足を運びましょう。

【免責事項】Animal Compassionではできるだけ正確な情報提供を心がけていますがご利用者様による正当性の確認をお願いいたします。また医療に関する助言を提供することはございませんので、最終的な判断は適切な医療従事者に個別の状況を確認してもらった上で行うようにお願いいたします。

メスライオンの横顔

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この記事を書いた人

子どもの頃から動物がそばにいるのが当たり前の環境で育ちました。
大学では家畜の機能形態学・病理学を専攻し、また馬術部に入部し、長年夢だった乗馬を始めることができました。
社会人になった現在も乗馬は継続中です。
大型犬と小鳥と一緒に生活しています。

ペット医療を中心としたジャンルでライティング活動をしています。
こちらのWEBサイトでの活動を通じ、動物と人間がよりよい関係を築くためのお手伝いができれば幸いです。

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