金魚すくいといえば、屋台の目玉の一つですよね。
子どものころ、お祭りのたびに心を踊らせた方もいるでしょう。
しかし、金魚すくいでとった金魚を飼育しはじめても、すぐに死んでしまった経験はありませんか?
じつは、金魚すくいの金魚は、家に連れ帰られるまでに過酷な環境にさらされているのです。
その結果、強いストレスによって亡くなってしまう個体も少なくありません。
海外では、金魚すくいを含む屋台での生体販売を禁止している国もあります。
今回は、海外における生体販売の状況や金魚すくいの金魚が家にやってくるまでの環境、長生きさせるための方法などをご説明します。
かわいそう?金魚すくいの金魚が売られるまでの過酷な環境

お祭りの日、屋台の水槽にたくさん泳いでいる金魚が、どのように運ばれてくるかご存じですか?
金魚すくいの裏側をのぞいてみましょう。
金魚は、どこでも手に入るものではありません。
金魚はおもに奈良県や和歌山県で生産されており、奈良県はそのうちの半数程度を占めるといわれています。
屋台を出店する人が生産者に発注すると、宅配で送られてきます。
このとき、場合によっては直射日光にさらされて、温度が上昇した水の中で過ごさなければならないケースもあるのです。
金魚は急激な水温の変化に弱いため、体力を削る原因となります。
出店者の元に届いたあと、必ずしも適切な環境で過ごせるとは限りません。
金魚すくいの業者は、ほとんどが専用の飼育スペースを持っていません。
水温が適切でなかったり、水が汚れていたりする可能性もあります。
屋台がはじまると、ポイという道具を使って金魚をすくいます。
ポイは破れやすく、その欠片がうまく回収されずプールに残ってしまうこともあり、水質汚濁の原因となるのです。
また、水の交換・継ぎ足し時に、水道水のカルキがしっかり抜けていないことも、金魚が弱る原因になります。
世界的にみると金魚すくいは禁止されている?海外の反応
ヨーロッパをはじめとする国々では、生体販売自体を禁止している国もあります。
これらの国は動物愛護や動物福祉に力をいれているため、金魚すくいをよい目ではみないでしょう。
アメリカのコネチカット州のように、生き物を景品とすること自体を法律で禁止している場所もあります。
海外では、金魚すくいよりもむしろ、スーパーボールすくいの方が人気があるかもしれません。
はじめて日本で金魚すくいをみたときには、驚いたり、「金魚がかわいそう」と批判されたりする可能性もあるでしょう。
売れ残った金魚はどうなる?
売れ残った金魚は、じつは長くは生きられないケースがほとんどです。
良心的な業者の場合、無料で配布したり学校や施設へ寄付したり、ほかの金魚すくい業者に譲ったりするといったケースがあります。
しかし、なかには熱帯魚のエサにしたり、河川や下水に放流したりするケースもあるのです。
河川に放流されてしまったら、自然界で生きていくために、自分でエサをとらなければなりません。
身体の小さな金魚が生きていくには、過酷な環境です。
また、金魚が元々生活していた生き物のエサを食べてしまうこともあります。
これは、その場所の生態系が崩れてしまう原因になってしまいます。
下水に放流された場合は、金魚は生きていくことができません。
この場合、生態系への影響はありませんが、人間の身勝手によって金魚の命が奪われることになるのです。
屋台の目玉!お祭りの金魚すくいの代替案は?

金魚だけでなく、少し前まではミドリガメも「亀すくい」として屋台となっていました。
子どものころに利用された方もいるかもしれません。
飼育しやすい、または手に入れやすい生き物は、縁日の屋台に利用されてきたのです。
ただし、ミドリガメは条件付特定外来種であり、現在は生体を利用した亀すくいは禁止されています。
金魚すくいも、動物福祉を考えた場合には禁止すべきかもしれません。
実際には、動物福祉の観点からではなく、以下のような理由で金魚すくいは減少しています。
- 昨今の猛暑
- お祭りの減少
- 飼育問題
- 運営者の高齢化 など
金魚すくいは、やはり生き物を扱う屋台であるため、誰でも簡単に行えるものではないのです。
動物福祉の観点から、将来的に金魚すくいの規制が厳しくなったり、金魚すくい自体も亀すくいのように禁止されたりする可能性もないとはいえません。
金魚すくいの代わりに屋台に登場するようになったのが、スーパーボールすくいです。
最近はさまざまな形態のスーパーボールが使われていて、球形だけではなく、金魚の形をしたものや動物をかたどったものなどもあります。
スーパーボールすくいは、金魚すくいと比べると動きが少ないため、物足りなさを感じるかもしれません。
しかし、金魚すくいの金魚はすぐ死んでしまうからかわいそう、世話が大変そう、という方も、気兼ねなく楽しむことができるでしょう。
また、金魚とは異なり、誰でも簡単に設置することができます。
日本のお祭りの伝統ともいえる金魚すくいがなくなってしまうのはさみしいものですが、金魚たちにつらい生活を強いる必要がなくなるのであれば、これも必要な変化なのでしょう。
金魚すくいの金魚がすぐ死ぬ理由

金魚すくいの金魚が、家に連れて帰っても長生きしない理由としては、以下のようなものがあげられます。
- 連れてこられるまでの過酷な環境
- 金魚の年齢
- 連れて帰ってからの急激な環境の変化
金魚すくいに登場するまでの経過については、先ほど述べました。
そのほかの理由について、まずは年齢からみていきましょう。
金魚すくいでよく使用されるのが、「和金」という、フナによく似た形態の赤い金魚です。
金魚すくいで使用されるサイズの和金は、「小赤」とも呼びます。
和金は丈夫で育てやすく、飼育下では10~15年ほど生きることがあります。
大きさも、10cm以上になることも珍しくない品種です。
しかし、金魚すくいでみる金魚はどれも小さなサイズばかりですね。
じつは、金魚すくいに登場するとき、和金は生まれて数ヶ月程度しか経っていません。
そのため、身体は小さく、体力や抵抗力もあまりないのです。
次に、連れて帰ってからの環境です。
金魚すくいから連れて帰って、まずしなければならないと考えるのが、早く広い水槽でのびのび泳がせることではないでしょうか。
しかし、そのときの方法によっては、金魚を逆に弱らせてしまうことがあります。
広い水槽でストレスなく泳げていると思いきや、急に水質が変わってしまったことに金魚が耐えられなくなるのです。
金魚すくいで捕まえられるまでに、金魚はかなり体力を削られています。
その結果、急激な環境の変化に耐えられず、死んでしまうことが多いのです。
金魚を連れて帰ったあとは適切な環境を用意することが、金魚を長生きさせることにつながります。
金魚すくいの金魚を連れて帰ったら準備すること

金魚すくいから連れ帰った金魚を長生きさせるために、最初のアプローチは大切です。
準備物や、長生きさせるためのポイントをお伝えします。
家に帰ったらまずはこれを準備
金魚は、持ち帰り用の袋から出して水槽やバケツに移してあげます。
袋から水槽に移すのは、なるべく早いほうがよく、これは金魚をストレスから解放するのに役立つのです。
ただし、いきなりバケツに移すのは金魚の身体に負担がかかるため、少しずつ時間をかけて行います。
まずは袋のままバケツや水槽に浮かせて水温を合わせ、それから放流していきます。
このとき、以下の点に気をつけながら準備しましょう。
- 水道水のカルキは必ず抜くこと
- エアレーションをすること
- 水温を下げすぎないこと
水道水のカルキの有害性と抜き方
水道水のカルキ(塩素)は、金魚をはじめとする魚には有害です。
水道水のカルキは、雑菌処理をして、人間にとって安全な水を提供するために使用されています。
しかし、魚を水道水にそのままいれると、カルキによって呼吸器に障害を引き起こし、細胞が破壊されて、最悪の場合死に至ります。
また、水槽の水質を保持する役割を持つ目に見えないバクテリアもカルキによって死んでしまうため、金魚にとってよくありません。
カルキは、夏の日差しのもとであれば1〜2時間程度で抜けるとされています。
曇りの日はもっと時間がかかり、冬だと1~2日程度の日数が必要です。
夏場に汲み置きでカルキを抜いた場合には、水が温かくなりすぎることがあるので注意しましょう。
カルキ抜きの薬剤があれば、手軽に抜くことができます。
今後の水替えのことも考えて、用意しておくとよいでしょう。
ミネラルウォーターならばカルキ抜きの手間が省けるのでは?と考えられる方もいらっしゃるかもしれませんが、ミネラルウォーターは魚の飼育に適さないものがあります。
少し手間はかかりますが、カルキを抜いた水道水を使用しましょう。
呼吸に不可欠なエアレーション

人間にとって空気が必要であるように、金魚にとっても呼吸のために空気は不可欠です。
金魚をエアレーション(空気を送り出す装置)のない水槽に入れたままにしていると、やがて酸欠になって死んでしまいます。
水槽には、必ずエアレーションを設置しましょう。
すぐに手に入らないという場合は、以下の方法が応急措置として行えます。
- 金魚がいない状態で水槽の中をかき混ぜる
- ペットボトルに水槽の水を入れてしっかり振る
こうすることで水が空気中の酸素と混ざり、一時的な補給が行えるのです。
ただし、これらはあくまで一時的な措置なので、早めにエアレーションを取り付けましょう。
水温を下げすぎない
金魚は変温動物です。
水温が下がると動けなくなり、身体の免疫力も下がってしまいます。
水槽を用意する際、また、金魚を水槽に入れたあとも、一定の水温を維持することで、金魚の活動を維持することが可能です。
金魚にとってもっとも活発に動けるのは20~26℃で、生活に適する水温は15~28℃といわれています。
水温が高すぎても、松かさ病をはじめとする感染症にかかりやすくなるため、注意が必要です。
金魚を守るために薬浴(トリートメント)を!
体力が落ちていて元気がなかったり、病気の可能性が考えられたりする金魚には、薬浴(トリートメント)が有効です。
トリートメントには塩を用いる塩浴と、専用の薬剤を使用する薬浴があります。
塩浴は金魚の体力回復に、薬浴は病気や寄生虫の克服に役立ちます。
すでに金魚を飼育している場合、新しくやってきた金魚をトリートメントしてから一緒の水槽に入れることで、先住の金魚も病気から守ることが可能です。
塩浴の場合ははじめの1週間程度、薬浴の場合は症状の経過を見ながら、数週間~1ヶ月程度行うことがあります。
塩浴の方法
カルキを抜いた水1Lに対して、塩5gを混ぜたものを用意します。
急激な水温や水質の変化を避けるために、1~2時間程度かけながら、数回にわけて金魚が入っている袋に塩水を入れていきます。
その後、金魚に問題がなさそうであれば、塩水のバケツへと金魚を移しましょう。
塩浴を終えて通常の水に戻すときも、一気に水を入れ替えず、水槽の⅓を目安に、時間をかけて複数回にわけて実施します。
薬浴の方法
薬浴の場合も、塩浴の方法と同じく、カルキを抜いた水に適量の薬剤を混ぜたものを用意して、少しずつ慣らしていきます。
バケツに移したあと、長期間薬浴が必要になる場合は、金魚の身体の負担を軽減するため、緩やかな水流になるよう調整してあげましょう。
症状が改善されたら、やはり少しずつ水を戻していきます。
エサはすぐあげる?
金魚を連れ帰ったあとは、「お腹がすいているのでは?」と、すぐにエサをあげたくなります。
しかし、3日程度はエサをあげないことをおすすめします。
これは、金魚すくいのあとの金魚は、さまざまなストレスにさらされていることから、すぐに食事をすると消化不良を引き起こすためです。
数日間は金魚をしっかりと休ませてあげて、少しずつエサを与えていきましょう。
エサを与える際も、絶食から再開するときはたくさん与えず、ごく少量にします。
人間でも、例えば数日間熱が出て食事が取れなかったのに、いきなりたくさん食べると胃腸に負担がかかりますね。
金魚も同様です。
エサを食べるようになったら、1日2回を目安に、食べ残しがないように与えましょう。
食べ残しが出た場合は水質の汚濁の原因になるため、その都度回収します。
金魚は育て方次第で長生きできる!

金魚を長生きさせるには、日々の世話で以下の点に気をつけるとよいでしょう。
- 水質を維持する
- エサを与えすぎない
水質を維持するには、定期的な水槽の掃除やエアレーション、フィルターの機能を十分に生かすことが大切です。
水替えは1~2週間に1度、水槽の⅓程度の水を交換します。
夏場はこまめに、冬場は少し間隔を開けて交換しましょう。
すべての水を替えてしまうと、それまで金魚が生活していた水質からガラッと変わってしまうため、金魚の免疫力が落ちて病気になる可能性があるのです。
また、水替えの際は必ずカルキを抜きます。
エアレーションが正常に作動しているか、フィルターは汚れていないかなどもあわせてチェックしましょう。
フィルター清掃を行う場合は、水替えとは別の日に行うことで、水槽内のバクテリアを維持できます。
エサを与えるときは、金魚がいくらでも食べるからといって与えすぎてはいけません。
食べすぎは消化不良の原因となります。
金魚がたくさんエサを食べるのは、満腹中枢がないためといわれています。
しかし、金魚は一度にたくさん食べなくても特に問題ありません。
数分以内に食べきれる量を、1日2回程度あげれば十分です。
【親の本音】金魚すくいの金魚はいらない

子どもにとっては楽しい金魚すくいですが、保護者からみると「水槽を用意しないといけない」「世話をしないのに連れて帰ってきた」と、頭を悩ませる方もいらっしゃるかもしれません。
金魚の世話が大変、と負担に感じることが多いのであれば、あらかじめ子どもと金魚すくいをしないよう約束しておきましょう。
「金魚すくいをどうしてもしたい」といった場合には、金魚すくいをしても金魚を連れて帰らないことをお店の人に伝えることもできます。
金魚は、身体は小さくても一匹一匹が大切な命です。
人間の勝手で死なせてしまうことがないように、子どもと話し合った上で納得のいく方法をとりましょう。
まとめ
金魚すくいは、小さな金魚に大きなストレスを与えていることから、必ずしもよいこととはいえません。
しかし、せっかく自宅に迎えた金魚はできる限りのケアをして、健康に長生きできるようにしてあげましょう。
小さな金魚に愛情をかけて育てることは、子どもたちにとって命の教育になります。
また、万が一死なせてしまった場合には、命の儚さを伝えることもできるでしょう。
水槽のなかを優雅に泳ぐ美しい金魚は、私たちの癒しとなるだけでなく、精一杯生きることの大切さも教えてくれているのです。
金魚すくいで連れ帰った金魚は、最後までしっかりと責任をもって育ててあげましょう。


