今回はインタビュー記事の第一弾としてらみえるさんをお招きしています。
生まれてすぐ大きな困難に直面されながらも、動物への愛情を胸に歩み続け、現在は動物に特化したライティングや各地に足を運んだ取材までこなす、らみえるさん。
記事執筆にとどまらず、サイト管理から視覚的なデザインまで幅広くこなされています。動物が好きで動物に関係した働き方がしたいという思いを抱える人はたくさんいます。しかし、それを実現するのは簡単ではありません。
独自のアプローチでライフスタイルを構築されているらみえるさんから、どう生きものと関わりながら、どんな生き方ができるのか、学びを探求したいと思います。
Q1. 現在、動物に関連してどのような活動をされていますか?
【質問】ライティング、アート、ホテル&シッターなど、オンライン、オフライン両方でマルチに活動されているようですが、是非とも現在の活動についてお聞かせください。
━以下、らみえるさんの回答━
現在、WEBライター&デザイナーとして、動物たちに特化した記事を書いています。
ペットの最新ニュースや商品、楽しいイベント情報から、興味深い雑学や調査結果、実際に足を運んで書き上げる取材記事まで、幅広く手がけています。
特に心がけているのは、動物愛護活動や災害時の支援に関する情報を積極的に取り上げること。イラストや図解、きれいな写真をたくさん使って、わかりやすく、視覚的にも魅力ある記事を作りたいです。
記事を書くだけでなく、Googleのサーチコンソールやアナリティクスを駆使して、サイトの訪問者数を増やす努力をしており、担当分野の訪問者数は1年で10倍に増えました。
WordPressを利用していくつかのブログサイトも制作・運営しています。サーバーの契約からドメインの取得、サイトの設定まで行っています。
一方で猫専門ホテルを開業もしました。もともとは友人や知人の猫をボランティアで預かっていたのがきっかけで、正式に動物取扱業の資格を取得しました。自宅の空き部屋をホテルとして、猫たちを一家族限定でお預かりしています。
お預かりした猫がいつも過ごしている自分の家庭のような温かい環境で過ごしてもらおうと、ていねいにお世話をしています。
身の回りの動物たちへの愛を注ぎお世話をすること、周囲に動物愛護の意識を高めるよう活動することが自分のやるべきことだと思っています。収益の一部を毎月動物愛護団体に寄付をすることで、直接的な支援も行っています。
Q2. 何がきっかけで今があるのでしょうか?
【質問】子供の頃の動物との関わり、今につながる原点などについてお聞かせください。何が転機で、どのような理由で現在のライフスタイルにシフトされたのでしょうか?
━以下、らみえるさんの回答━
わたしが保護活動に関心を持ったのは、学生時代に保健所で猫を引き取りに行ったときに始まったのかもしれません。ドアを開けたとき、ステンレスの冷たい無機質な部屋で殺処分を待つ猫たちが、一斉にわたしを見て鳴き叫びます。かろうじて1匹だけひきとってきましたが、猫たちの必死にすがってくる情景を思い出すと、今でも胸が潰れそうです。いつか何かをしたい、しなくてはならないと、そのときからずっと心に残っていました。
生まれて間もなく大病を患い、重度の聴覚障害を持つわたしは、なんとか大学まで卒業し、大手企業に就職します。わたしにとっては通学も会社勤めも常に困難の連続。
結婚と夫の転勤を機に退職し、念願だった保護猫との生活を始めると、改めて動物たちを取り巻く厳しい現実を知ることになります。
保護猫の情報を発信するために自費でブログを立ち上げ、記事をコツコツ書きはじめると、それがご縁で、法人運営の動物専門サイトでも執筆することになりました。
また、愛護団体や友人知人からときどき、ボランティアで猫を預かっていました。お金をいただいたときは全額保護団体に寄付していたので出費の一方でしたが、経験を積むことで、猫専門ホテルを開業するに至ります。
私の場合はありがたいことに、必死で取り組んでいたボランティア活動の流れで、今はお金をいただくようになりました。猫のホテルもライター&デザイン業も、在宅でできるお仕事なので、長時間固定で働くことが難しい自分でも、自宅で自分で仕事の時間や量を調整できることがありがたいです。
Q3. 現在にいたるまでの困難はありましたか?
【質問】今日にいたるまで様々な決断や挑戦があったと思いますが、その中で特に大変だったことはありますか?それをどう乗り越えられたでしょうか?
━以下、らみえるさんの回答━
わたしは生まれて間もなく大病をして、重度の聴覚障害を持っています。
ろう学校に行かせるかと親は悩んだようですが、一旦普通学級に進学。常に座席は一番前の教卓正面に固定されているのに、授業が聞こえません。退屈で、ノートに落書きをしていて先生に怒られ、クラスメートとの会話にも入れず、無視していると誤解されたりしていました。当時は気持ちも荒れてすさんでいました。
聞こえているという経験がないために、聞こえないことで、どう困っているか、どう助けてほしいかを、子供の自分は説明もできなかったし、自分でも理解できていなかったのです。自分でもわからないことを、人が理解してくれるわけもないですね。
補聴器が改良されてきたことと、経験値を踏むことで、少しずつ拾える音と会話が増えてきます。
今まで聞こえなかった音が聞こえるようになると、ヘレン・ケラーが「Water=水」と認識した瞬間があるように、新しい世界が開く瞬間が多々あります。同時に聞こえていなかったことで自分がいかに危険な状況にいたのか、できないことが多かったのかと気づいていくのは辛くもありました。
聴覚障害があって体が弱かったのですが、親兄弟や友人など周囲の人の助けがあって生きてこられたことを、今は感謝しています。ありがたいことに優しい主人と出会いました。
聞こえなかったので、本をよんできたおかげか、文章を書くのが得意です。孤独だったので、性格は優しくなりました。そんなこんなで困難な日常に、家には常に犬や猫やうさぎ、シマリス、鳥、金魚などさまざまな動物がいて、動物のほうが心が通じやすかったのでしょう。
何かしら恩返ししたい、動物と、動物に関わる人の役に立つことをしたいです。人の役に立つこと、喜んでもらえること、何か社会に貢献したいと常に考えていると、神様が味方をしてくれて、運が開けるように思います。
Q4. 今の生活のやりがいはどのようなものですか?
【質問】精力的にご活動され、お忙しい印象を受けますが、ご自身のライフスタイルに喜びを感じることなどはございますか?何かエピソードや「こんな時が好き」という瞬間があれば、お聞かせください。
━以下、らみえるさんの回答━
生活全体が動物一色に染まっています。
プライベートで行くところも、動物園やら動物関連の場所を選んでしまいます。体調不良で温泉療養に行ったはずが、現地で気になる動物施設を見つけて取材に行ってしまい、ゆっくりできませんでした。
本もテレビも動物関連。気になる話題をみかけると、すぐに検索を始め、新しい発見や興味深い事実がわかるとそのまま勢いで記事を書いていることもあります。読んだ人からの反応があると喜びはひとしおです。
もともと耳が遠いので人と話すのは苦手なのですが、取材に出かける道中「耳が遠いのに、なぜ取材なんてやってるんだろう、今日は聞こえるかな、ちゃんと聞き取れるかな」という緊張の時間です。新型コロナウイルスのときはマスクで相手の口元が隠れてなにをいっているのかわからないし、近くに寄れず苦労しました。
なるべく事前に情報を調べ、事後にも調べることで、聞こえない部分をカバーしています。最近は優秀なボイスレコーダーも出てきました。
でも取材から得る情報や体験は貴重で、それを伝えられることは幸せです。
猫専用ホテルについては、猫をお預かりした最初のうちはフードも口にしなかったのに、時間とともに慣れて心を開いて、遊んでくれる瞬間がとてもうれしいです。
猫を通じて人間関係が広がり、猫のためになると思えば、人とのつながりに努力できるのが不思議です。
最近の交友関係はほとんど猫や動物つながりばかりになってしまいました。仕事先も動物関係だし、遊びに行くのも猫友たち。個人的に猫の飼育相談を受けて、飼い主さんが抱える問題を解決できるのも嬉しいです。
わが家の猫には体調が悪くて目を離せない状態の子もいますが、家でお世話をできることがとてもありがたいです。
Q5. 今後の展望はありますか?
【質問】これからやってみたいこと、成し遂げたいこと、楽しみにしていることなど、今後について是非ともお聞かせください。
━以下、らみえるさんの回答━
外で生きる猫たちの寿命は、3年から5年といわれています。家猫の平均寿命は15年ということからも、野良猫や外で生きる動物たちがどれほど厳しい環境にあるか…日常的に飢え、病気、事故と隣り合わせで生きています。
このことを知れば、わたしたちは外にいる猫を見る目が変わります。ただ「かわいい」だけではなくて、ちゃんと食べてるかな、と心を痛めて、何か行動を起こすきっかけになるかもしれません。猫が好きではなかったとしても、野良猫を見て温かく見守ることができるようになるかもしれません。
現在、日本では年間約1万5千匹の犬猫が殺処分されています
でも、8,000人に1人が1匹を救うことができれば、この悲しい現実はなくなるのです。
犬や猫に比べて関心が薄れがちな家畜、野生動物についても、知ることで関心が高まります。
わたしの目標は、楽しくて理解を深める記事を今まで以上に書くことです。
ただ「かわいい」で終わらせず、動物たちが置かれている状況や生態についての正しい理解を深め、それを広めることが自身の役割だとおもっています。
ライティング、デザイン、SEO、AIなどのスキルを磨き、効果的な情報発信を行うことを目指しています。
まずは我が家に家族として迎えた4匹の猫との幸せな生活を心がけます。自分が健康で長生きしようと思っています。それぞれの人が、自分と家族、その周りの生命を大切にする人が増えていけば、社会全体が命を大切にしていくように変わっていくのではないでしょうか。
人生で実際に出会う人の数は限られていますが、わたしの記事や活動を通して、一匹でも一人でも、幸せになる命が増えるように願っています。
Q6. 読者の方に一言
【質問】動物との関わり方は様々ですが、仕事にするのは簡単なことではないと思います。どうやってバランスを取ろうか、どうやって動物への愛情を自分の強みにしようかと悩んでいる方がいたら、どのようなアドバイスを提供されますか?
━以下、らみえるさんの回答━
動物に関する仕事は、一般的に獣医師や飼育係といった直接動物の世話をする職業が思い浮かぶかもしれませんが、実はいろいろあります。ペット関連企業やNPO法人での仕事、ペットと一緒に出勤可能な職場、犬の洋服デザインやグッズ開発、動物用医薬品の開発や生態研究、サファリパークでの案内兼ドライバーとして働くことなど…。
動物との関わりを仕事にする道はかんたんではありません。
獣医師は動物を救いたい一心でその職に就いたのに、安楽死の決断を迫られることもあります。保護活動をする中で、虐待の残酷な現実に直面したり、シェルターでの資金難や収容過多に悩まされるかもしれません。
動物と関わるのは職業だけでなく、日常生活でできることもたくさんあります。保護犬猫を家庭に迎えることは、素晴らしい動物との関わり方の一つ。資格を取って猫専用や犬専用のホテルを自宅にはじめるのも一つの方法だし、猫を人に慣れさせる訓練や子猫のミルクボランティアもやりがいのある活動です。
特技を活かしてイラストや写真を販売するのも良いでしょう。動物支援のために特定の商品を購入したり、ふるさと納税を通じて動物愛護の寄付をすること。SNSで里親募集中の犬猫をシェアする、保護猫カフェを支援するために遊びに行ったりグッズを購入することなど、できることはたくさんあります。
その人ができることを、できる形で、コツコツと続けていきたいですね。
さいごに
今回は、動物との関わり方、お仕事のつくり方に無限の可能性を見出しているらみえるさんにお話を伺いました。
同大学(さらに同キャンパス)の出身だということがわかり(誠に勝手ながら)親近感を抱き、いろいろと質問させていただきました。 これに対し、快くこれまでの経緯や動物への思いなどを語っていただけ嬉しい限りです。
動物というキーワードを出発点とし、らみえるさんのように文字やアートなどへ展開することは、多くの人にとっての気づきになるのではないでしょうか。今発展の目覚ましいAIに着目されている(以下作品集)のも興味深いものです。
そしてもちろん、お仕事にしなくとも、寄付やふるさと納税から動物愛護に関わることもできます。
ライフスタイルのあらゆる箇所に動物好きが詰め込まれている、そんな印象を受けました。人と生きものの関わり方に決まりきった型というものはありません。今回のお話がみなさんの生き方の参考になりましたら幸いです。