殺処分されてしまう犬や猫の存在を知った時に、ほとんどの動物好きのかたは「助けてあげたい」と思うでしょう。
「自分が直接犬や猫を引き取りたい」「保護活動のボランティアをしたい」と思っている方もいるかもしれませんが、仕事や家庭の事情によりできない方が多いのが実際のところです。
「直接的な行動はできないけれど犬や猫を救うために何かしたい」と考える方には、実際に犬や猫を保護している動物愛護団体へ寄付する選択肢があります。
しかし、どこへ寄付すればよいのか、信用できる動物愛護団体がわからないかたも多いと思います。
これまで3つの動物愛護団体と啓発団体に所属し、保護活動歴14年の筆者が、動物愛護団体の内情についても踏まえながら、寄付をする際の注意事項を解説します。
信用できる動物愛護団体を探すのがなぜ重要なのか
近年テレビやSNSの影響で、保護犬や保護猫の存在が世間に知られるようになってきました。
全国には数多くの動物愛護団体が存在し、殺処分対象や飼育放棄などにより飼い主のいない犬猫を保護し、里親探しをしています。
多くの動物愛護団体が命を助けている反面、保護している犬猫の扱いに問題があったり、寄付金を適切に運用していなかったりする団体もあります。
こういった問題のある動物愛護団体が、内部告発により世間に知られるケースも増えてきました。
近年では保護犬猫と偽って、ペットショップの売れ残りや、繁殖引退犬猫をショップより安い値段で「譲渡という名の販売」をする業者まがいの団体もあります。
このような動物愛護団体はペット業界の「下請け保護団体」と呼ばれ、ペット業界とは持ちつ持たれつの関係にあります。
動物愛護団体についてよく調べずに寄付をしてしまうと、せっかくの善意が犬猫のために正しく使われない事態になりかねません。
信用できる動物愛護団体の見分け方
信用できる動物愛護団体か見分けるには、いくつかのポイントがあります。
確認すべきポイントと、注意したほうがよいケースについて見ていきましょう。
1. 活動についての報告が頻繁に行われているかどうか
日頃の活動について、定期的に発信をしているかどうかを確認しましょう。
定期的に発信していれば内容は何でもいいわけではなく、収支報告と活動報告の両方を発信しているかが重要です。
収支報告
収支報告書が毎年出ているか、最新のものはいつのものかをチェックしましょう。
報告書はあるが数年前から更新されていない団体もあるので、いつのものかもあわせて確認することが大切です。
中身については、医療費やフード・消耗品購入費などの項目が詳細に書かれているか、寄付金の収入が明記されているかもチェックしましょう。
人件費が計上されている場合は、ボランティアなのにお金をもらっているのかと思う方もいるかもしれません。
ですが規模が大きな団体ほど適切な運営をするには人材が必要で、おかしなことではありません。
活動報告
活動報告については、HPのほか、インスタグラムやFacebook、ブログ、X(旧Twitter)などのSNSで行っている動物愛護団体が多いようです。
確認すべきポイントは、更新の頻度の高さや、さまざまな犬猫を紹介しているかどうか。
特定の犬猫だけでなくさまざまな子が紹介されているか、飼育環境がわかる写真もアップされているかを見ましょう。
犬猫だけが写っている写真だと、どのような飼育環境かがわかりません。
シェルター内の様子や普段の飼育環境を部屋全体で撮影しているものがあると、飼育環境を確認できます。
シェルター内のライブ配信を行っている団体なら、犬猫の飼育環境の確認がしやすいでしょう。
しかし過去には、ライブ配信で映す部屋のみ環境が良く、他の犬猫は劣悪な環境におかれていたケースもあったので、絶対的な判断基準にはなりません。
2. 口コミをチェックする
寄付をしようと考えている動物愛護団体が、他者の目から見てどのように評価されているかを知ることも判断材料になります。
X(旧Twitter)、インスタグラム、FacebookなどのSNSで検索して、投稿されている内容を見てみましょう。
批判的なコメントがあってもそれを削除するのではなく、冷静に返信している団体は好感が持てます。
口コミを判断する際の注意点
様々な動物愛護団体に関わり、人間どうしのトラブルも見てきた筆者から、口コミを判断する際に注意していただきたい点をお伝えします。
問題行為が内部告発される動物愛護団体も少なくないですが、全てにおいて完璧な団体はほとんどないと考えておくことをおすすめします。
保護活動をしている人は、犬猫を助けたい気持ちは強くても、聖人君主ではありません。
筆者の経験から、動物愛護団体の代表は子どもの頃から動物が大好きだが人付き合いは苦手なタイプが多い傾向にあると思います。
もちろんコミュニケーション能力の高い代表もいますが、人付き合いが苦手だからこそ動物に対しての感性に秀でているタイプの代表もいます。
動物愛護団体の代表は、個性的な人が多いと思っておいたほうが、後々がっかりせずにすむでしょう。
代表の周りの人たちが、それぞれの得意な分野でサポートしているのが良い団体、反対に代表が暴走しがちなのは心配な団体です。
さらに、代表や幹部が、ボランティアや関わる人を大事にするかどうかも、団体が活動を長期的に継続するうえで重要です。
人と人とが関わるので必ず人間トラブルはありますが、人を大事にしている団体は悪い口コミも少ない傾向にあります。
嫌な思いをした人は過剰に悪評を広める傾向があるので、悪評を目にしてもあまり気にせず、自身の価値観で判断するのが大事だと覚えておいてください。
3. 実際に動物愛護団体を訪問して様子を確認する
訪問可能であれば、実際に動物愛護団体のシェルターや譲渡会などを訪れてみるのも一つの方法です。
自分の目で見て、飼育されている犬や猫の様子とスタッフやボランティアさんたちの雰囲気を確認し、納得して寄付できる団体かどうか検討してみてください。
4. 活動に疑問のある動物愛護団体に注意
気軽に寄付ができるものの、実は詐欺まがいの団体や、動物福祉の観点から疑問のある団体が存在します。
以下で、活動に疑問のある動物愛護団体の例を紹介します。
どこの駅にでもいる街頭募金
各地の駅前で「被災地の動物たち、かわいそうな動物たちのために募金お願いします!」と募金活動をしている団体を見たことがある方は多いのではないでしょうか。
中には、募金をした経験のある方もいるかもしれません。
もっともらしい活動報告パネルを掲示していますが、募金活動をしている団体の中には、悪質な詐欺団体がまぎれています。
実際は活動の実態がなく、募金に立っているのはただのアルバイトで、各地の駅前で募金活動をし、1日で数十万円の「募金という名の売上」を稼いでいる団体もあります。
もちろん、この募金は動物たちのために使われることはありません。
見分ける方法は簡単で、街頭に立っている人に活動内容を尋ねてみることです。
保護猫や保護犬のために募金を集めている団体なら、活動内容をスムーズに答えられるでしょう。
「最近保護された〇〇ちゃん、体調はその後どうですか」とでもカマをかければ、すぐにボロを出してくれます。
人の善意につけ込み悪用する人がいるのは、動物愛護といえど世の常です。
寄付という皆さんの善意を悪用しようとする人間もいることを忘れないでください。
犬猫連れ街頭募金
炎天下や凍える寒さの中、犬猫連れで駅前や街頭募金をする団体にも注意が必要です。
過酷な環境下に犬猫を連れ出す団体は、動物福祉を考えているとはいえません。
活動実態はあるものの、過酷な環境下に犬猫連れでわざわざ来る必要があるのか、そういった団体に寄付をするかどうか、判断は別れるでしょう。
筆者は、こういったやり方は、ペットショップで犬猫を買わせるために抱っこをさせて「かわいいでしょー!」と購買欲を煽るのと同じように感じます。
過ごしやすい季節に聴導犬や盲導犬の子を連れて、「こんなに良い子たちが頑張ってくれてますよ」とアピールするのは、啓蒙活動になるので良いと思います。
人間でもつらい猛暑や極寒の中、そこに犬猫たちが一緒に来る必要があるのか、ぜひ一度考えていただければ幸いです。
過剰な「かわいそう」アピール
SNSなどで、虐待を受けたり怪我をしたりした犬猫について、過剰に「かわいそうな子」とアピールする動物愛護団体には注意してください。
たしかにかわいそうなのは間違いないのですが、悲惨な面だけにスポットをあててアピールしている団体は、寄付金を集める狙いが強いケースが多いです。
「かわいそう」な点だけを強調してしまうと、その後の里親さんへの譲渡に繋がりません。
犬猫の長所やかわいい部分をしっかりとアピールしているのが、信用できる動物愛護団体の特徴です。
寄付をする際の心構え
寄付をするのはもちろん良い行為で、動物愛護団体にとってもありがたいものです。
ですが、これまで動物愛護団体での寄付に絡む様々なトラブルを見てきた筆者から、寄付をする際の心構えをお伝えさせてください。
ここからはあくまで、動物愛護団体側から見て困る寄付のケースのお話になりますので、寄付を初めてするかたは、参考程度に読んでいただければと思います。
寄付金の細かい使い道を指定しない
「このお金は〇〇ちゃんだけのために使ってください、必ず〇〇ちゃんのごはん代にしてください」と言って寄付される方がしばしばおられます。
気持ちはOKですが、実際には△△くんのごはん代になることもあります。
特定の子のためだけに使ってくださいという強要はやめましょう。
寄付の代わりに対価を要求をしない
多額の寄付をしたから自分の要望を受け入れてもらうのは当然と思われている支援者さんがたまにおられます。
「どこどこに飼育放棄されている子がいるから助けてほしい」など、要望を強要するのはやめましょう。
助けてほしい犬猫がいて、自分ではできないから動物愛護団体に頼みたい、と考えるのは間違った考え方ではありません。
動物愛護団体にもより、このような要望が無理なわけではないですが、これまでのあなたの貢献度と人望で動いてもらえるかは決まります。
要望するなら団体に任せきりにしないで、自分も何かしらの介入をする姿勢を見せてください。
それが追加で寄付するのであっても問題ありません。
寄付の方法・支援の仕方
寄付の方法と支援の仕方の種類について見ていきましょう。
Amazon欲しいものリストから送る
必要なフードやペットシーツなどの消耗品を、Amazonの欲しいものリストで作成している団体もあります。
寄付金が何に使われるか心配な人、初めて寄付をする人におすすめの方法です。
現物で寄付ができ、少額からの支援も可能で、届いた後に写真付きでSNSで紹介されることもあります。
犬猫のために使ってもらえている、役に立った実感を持ちやすい方法です。
事業に寄付する
動物を保護している団体ではなく、野良猫の不妊去勢手術などの事業を運営する団体に寄付する方法もあります。
不幸な野良猫が1匹でも減るようにという理念で活動されており、筆者も野良猫の不妊去勢手術をする際に利用しました。
保護猫カフェの利用
動物愛護団体の中には、保護猫カフェを運営している団体もあります。
保護猫カフェとは、純血種の猫が在籍する営利目的の猫カフェとは異なり、里親募集中の猫たちと触れ合える場所です。
30分から1時間単位での料金設定になっており、利用代金は動物愛護団体への支援になります。
保護猫を家族に迎える予定の人も、ただ猫と遊びたい人も遊びに行けるので、寄付の中でも気軽にできます。
オリジナルグッズの購入
オリジナルグッズを制作して販売している動物愛護団体もあり、グッズの購入も気軽にできる寄付の1つです。
Tシャツや缶バッジなど一般的なものから、本格的なカバンやアクセサリー、美味しいお菓子など、さまざまなものが販売されています。
ふるさと納税
自治体によっては、ふるさと納税で民間の動物愛護団体や、行政管轄の動物愛護活動に寄付できます。
ふるさと納税を利用すると、寄附金控除が受けられるので、ふるさと納税の使い道を探している方は、希望する自治体で対象のプロジェクトがあるか調べてみましょう。
クラウドファンディング
犬猫に関するクラウドファンディングは近年かなり乱立しており、支援については慎重に検討すべきです。
中には個人の飼い猫の治療費を集めようとする飼い主さんもおり、筆者としては疑問に思います。
また、クラウドファンディングの内容についても、詳細なプランの記載があるものをおすすめします。
ただ漠然と「新しいシェルターを作ります」ではなく、詳細な設計計画がされているか、活動実態がきちんとある団体なのかを確認したうえで支援するかを判断しましょう。
まとめ
信用できる動物愛護団体へ寄付するための注意事項を紹介してきましたが、一番大切なのは寄付をする読者の方が納得したうえで寄付できるかです。
色々と調べたうえで、それでも迷ってしまった時には、自分と保護活動に対しての価値観が一番合う団体を選んでみましょう。
読者の方の善意の寄付が、きちんと犬猫の幸せに繋がる活動をしている動物愛護団体へ届くよう願っております。