暖かい季節になると、屋外で猫が大きな声で鳴いているのを耳にしたことがあるでしょう。
春から秋にかけては、猫の発情期です。
中には、近所で一晩中鳴くせいで、眠れなかった経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
猫の発情期の声は、じつはとても大きいのです。
おうちで飼育されている場合などは、ご近所への対策も必要かもしれません。
また、複数頭で飼育されている場合も、発情期を迎えた猫によってほかの猫が反応してしまうため、発情中は引き離すなどの対策が必要です。
今回は、猫の発情期の特徴や、飼育されている場合の発情期を乗り越えるための対策をご紹介します。
ねむれない!発情期の猫の声量はどれくらい?

発情期になると、猫は交尾をする相手を求めて大きな声で鳴き続けます。
相手は、近くにいるとは限りません。
遠くにいるかもしれない相手を呼ばなければならないため、発情中の猫の鳴き声はかなりの声量です。
では、その声量はどれくらいの大きさなのでしょうか?
ある調査によると、猫の声量は75dB程度とのことです。
70dBが電話の呼び出しベルや騒々しい街中程度、80dBが地下鉄の車内程度の音量とのことなので、なかなかのボリュームですね。
ただし、この調査では、猫の状態について記載がありません。
発情期になっていない状態での声量がおよそ75dBだとすると、発情期中の声量はもっと大きな結果が得られるでしょう。
物音が少なくなる夜間などは、猫の声が屋外に響き渡るのも納得です。
防音設備が整っていないおうちの場合は、窓を閉め切っていても外に声が漏れてしまいます。
もちろん、猫の声量には個体差があります。
しかし、「うちの猫は普段あまり鳴かないから大丈夫だろう」「鳴き声の小さな猫だし、大したことないだろう」と思っていると、あまりの声の大きさにびっくりされるかもしれません。
もしも、マンションやアパートなど、お隣に誰かが住んでいる環境で猫を飼育されている場合は、発情期中は鳴き声対策が必要でしょう。
発情期のオス猫とメス猫の鳴き声の違い
メス猫には発情期がありますが、オス猫には決まった発情期のサイクルはありません。
メス猫が発情期を迎えることによって、フェロモンや鳴き声に反応し、大きな声を出します。
オス猫は発情に反応する独特の低い鳴き方で、「ぐぉーん」などと表現されることが多いようです。
メス猫は、いつもより甲高い声で鳴くことが多く、その鳴き声は人間の赤ちゃんに近い声と
いわれます。
「おーん」「あおーん」といった鳴き声です。
室内飼いは必須!鳴き声を抑える方法は?

発情期の鳴き声を抑える方法はいくつかあります。
1.避妊・去勢手術をする
避妊手術をすると、メス猫は発情が起こらなくなります。
また、去勢手術をするとオス猫は発情期のメス猫に反応することがなくなるため、発情期によって起こるトラブルを根本的に改善することが可能です。
ただし、避妊・去勢手術をすると、その後、子どもを望むことはできなくなりますので、慎重に進めましょう。
2.猫にストレスを与えない
鳴き声がうるさいからといって、狭い場所に閉じ込めるのは逆効果です。
猫にストレスがかかり、かえって鳴き声を上げる原因となる可能性があります。
日中はしっかり遊んで運動させることで、猫の睡眠時間が増え、鳴き声の解消につながるでしょう。
3.防音効果のある部屋で過ごさせる・防音対策をする

鳴き声が外に漏れないような環境であれば、発情期間中はそこで過ごさせるとよいでしょう。
すぐにできる防音対策としては、
- 防音効果の高いカーテンを使用する
- ドアや窓のすき間を埋める
- ドアや窓の前などに毛布などをつるす
- 防音シートを壁に貼る
- 吸音パネルを設置する
- 家具の配置を変える
などがあります。
身近な毛布、段ボールなどを利用することも可能ですので、試してみる価値はありそうです。
また、外部から音が入りにくい静かな環境も、発情中の猫を過ごさせるのに適していて、ストレスの軽減にも役立ちます。
4.耳栓をする
猫と同居している人がもっとも簡単にできる鳴き声対策です。
近隣に迷惑がかからず、ご自身だけが我慢する場合に活用できます。
5.ほかの音でごまかす
自然音のBGMなどを流すことで、発情の鳴き声をかき消す方法です。
ただし、人が寝静まる夜間は、かえって近隣トラブルに発展する可能性があるため、注意しなければなりません。
6.発情を抑えるスプレーを利用する
市販されている商品の中には、発情期の重度の症状を改善するスプレーもあります。
これは、発情しているメス猫に働きかけることでリラックスさせ、鳴き声やスプレー行為の程度を抑えるものです。
猫の発情期はいつからいつまで?

メス猫の発情期の訪れは、日照時間によって決まります。
一日の日照時間が14時間を超えると発情が起こりやすくなり、一般的には春~秋にかけて発情が確認されます。
また、室内飼いの場合は、おうちの中の照明が刺激となって発情を引き起こすため、春~秋だけでなく、年間を通じて発情期となる可能性もあるようです。
室内であれば室温もほぼ一定に保たれているため、猫にとって出産・育児をしやすい環境も整っています。
メス猫の発情サイクル
メス猫は、生後6~12ヶ月の間に最初の発情期を迎えることが一般的です。
ただし、猫の生育状況や体調、品種などによって違いがみられます。
一度発情期を迎えると、4~10日前後継続します。
妊娠しなかった場合には5日~2週間程度の休止期間をはさみ、その後また発情を繰り返すのです。
猫の発情期は人間とは異なり、避妊手術をしない限り生涯にわたって繰り返されます。
ただし、生殖機能は低下していきますので、高齢になればなるほど妊娠の可能性は低くなります。
高齢で妊娠できた場合でも、安全に出産できるリスクは低くなるため、注意が必要です。
オス猫の発情の誘発
オス猫の場合は、早い場合には生後5~6ヶ月で性成熟を迎えます。
発情に伴う問題行動がみられ始めるのもこのころです。
オス猫は、メス猫によって発情が誘発されるため、決まった発情期のサイクルはありません。
猫の発情期にみられる行動

発情中、メス猫・オス猫ともに、特徴的な行動が確認されます。
それぞれが出す鳴き声については先ほどご説明しましたが、それ以外にどのような行動がみられるのかご紹介しましょう。
メス猫の場合
まずは、性格の一時的な変化が認められます。
いつもより甘えたがって飼い主に身体を摺り寄せてきたり、足や腕にしがみついてこようとしたりする行動がみられます。
しかし、そうかと思えば急に怒り始める、物にあたるなど、神経質さが目立つこともあるのです。
また、相手を探し回るかのように、部屋中を落ち着きなく動き回るようになります。
次に、床に身体をこすりつける行動がたびたびみられるのも、発情期の特徴です。
身体を何度もすりつけて、においをつけるかのような行動がみられます。
そして、ロードシス体勢という、頭を低くしてお尻を高く上げるポーズも、発情期にはよく確認されます。
オス猫の場合
オス猫の発情期にみられるおもな行動は、以下のとおりです。
スプレー行為
スプレー行為とは、いわゆる「マーキング」です。
いつもは決まった場所にできるおしっこを、室内飼いであれば部屋の中のさまざまな場所にするようになります。
壁や家具など、気が向いた場所にところかまわずおしっこをしてしまうので、清掃をしっかりと行わなければなりません。
発情期中は、おしっこのにおいがきつくなるため、放置しているとにおいで悩まされる方も多いでしょう。
庭に自由に出入りできる状態にしている場合も、さまざまな場所でおしっこをします。
屋外の場合もそのままにしているとにおいが発生するため、しっかりと水をかける、消臭剤を使用するなどして、においが残らないようにしましょう。
おしっこのにおいのもとはアンモニアです。
そのため、アンモニアを分解してくれる重曹を水で溶かしたスプレーなどもにおいの解消に効果が期待できるでしょう。
また、スプレー行為はメス猫でもみられることがあります。
攻撃性が高まる
ほかの猫と一緒に飼育している場合は、発情期間中、攻撃性の高まりから激しいけんかをする恐れがあるため注意が必要です。
また、ほかの猫を追い回すこともあります。
メス猫・オス猫とも発情期には脱走に注意

発情期になると、メス猫・オス猫とも交尾相手を求めて外に出たがります。
脱走しやすい時期であるため、ドアや窓はすき間なく閉め、わずかな時間の外出であってもしっかり施錠しておきましょう。
外出から帰ってくる際も、ドアを開けたすき間から脱走しないように注意が必要です。
猫にとって発情期はストレス?

発情中は、ホルモンの影響によって猫にとっては無自覚のうちに行動を誘導させられている状態といえます。
その影響は大きく、繁殖相手を求めて一日中大きな声を出したり動き回ったりする行動は、まさに衝動そのものです。
懸命に相手を探して声を出す姿を一日みていると、飼い主側もその必死さに辛さを覚えるかもしれません。
人間側が猫の鳴き声によるストレスだけでなく、猫の行動そのものに影響されて、疲れを感じることもあるでしょう。
発情期中のストレスを少しでも緩和するため、日中はしっかり運動させ、猫にとって刺激となるものは避けるよう心がけましょう。
本来発情期は妊娠するために訪れるものであり、妊娠の可能性がないまま何度も発情期を繰り返すのは、猫にとって身体にも精神的にも大きな負担になります。
避妊・去勢手術は、これらのストレスの解消にもつながるため、繁殖の予定がない場合は早めに受けさせる方がよいといえます。
子どもを望まない場合は避妊や去勢で根本的な対策を

避妊や去勢は、先に述べたように発情によるさまざまな問題を解消してくれることから、妊娠を望まない場合は猫にとっても、人間にとってもメリットが大きい手術です。
また、それだけでなく、ホルモンなどの影響によって将来起こりえる病気の予防にもつながります。
避妊・去勢手術のメリット
避妊手術をしたメス猫の場合、以下のような病気を予防することが可能です。
- 乳腺腫瘍
- 膣腫瘍
- 子宮蓄膿症
- 膣過形成
- 膣脱
- 子宮水症 など
オス猫で予防できる病気は、
- 精巣腫瘍
- 潜在精巣
- 前立腺肥大症
- 会陰ヘルニア
- 肛門周囲腺腫
などがあります。
参照:J-STAGE|動物臨床医学|避妊・去勢手術の温故知新 ~日常化している手術を再考する~
ただし、手術をすれば必ず回避できるという訳でもなく、場合によっては病気が発生する可能性も否定できません。
卵巣や子宮などを摘出してしまえばそれらの病気は起こりませんが、乳腺などは残ります。
手術を受ける年齢が遅いと、たとえ手術を受けたとしても、病気が発生する可能性はあるのです。
これらの病気のリスクを下げるには、適切な時期に手術を受ける必要があります。
たとえば乳腺腫瘍の場合、生後6ヶ月目までに避妊手術を受けることができれば、発生リスクはおよそ91%も減少させることが可能です。
また、手術をすることで異性への興味が少なくなり、問題行動が減少します。
オス猫の場合、問題行動の一つであるスプレー行為を、去勢手術をすることでおよそ9割改善できるとの報告があります。
参照:J-STAGE|動物臨床医学|避妊・去勢手術の温故知新 ~日常化している手術を再考する~
手術をしたあとは、性格にも変化がみられることが多く、精神的にも安定した状態が続くでしょう。
一般的に、「穏やかな性格になった」「甘えん坊になった」という声が多く聞かれます。
ただし、手術直後はストレスから攻撃的になったり、うつのような状態になることもあるため、しっかりと観察して、獣医師と相談しながら適切な対応を取りましょう。
うつ状態になった場合は、食欲不振や遊びへの興味の衰退など、無気力な状態が続きます。
手術によるデメリット
避妊・去勢手術は、メリットだけでなくデメリットも抑えた上で受けることが大切です。
子どもを望めなくなること以外には、以下のようなデメリットがあります。
麻酔によるリスク
避妊・去勢手術は、全身麻酔を使用します。
中には、麻酔に耐えられない猫がおり、手術によって命を落とす可能性もあるのです。
麻酔アレルギーによって、わずかではありますが死亡例があることを覚えておきましょう。
ホルモンバランスの変化
性ホルモンが分泌されなくなることで、代謝が落ちて太りやすくなります。
食生活の見直しや、手術後の状態が安定したらしっかりと運動させて、適切な体重管理を行いましょう。
一時的に発情期を抑える薬もある
猫の体調や病気などが原因となって、避妊・去勢手術を受けられないこともあります。
その場合は、薬を服用させることで、発情を抑制することが可能です。
ホルモン分泌を支配する脳の視床下部~下垂体に影響をおよぼす成分を使用したり、、発情を誘発しないホルモン剤を含んだりすることで、発情を抑えます。
服用の仕方によっては、発情を抑えるだけでなく、スプレー行為やマウンティングなどを抑える効果も期待できるのです。。
ただし、副作用もあります。
- 食欲増加
- 多飲・多尿
- 性格の変化
- 乳腺肥大
- 甲状腺機能低下症
- 糖尿病 など
これらの薬を使用する際は、獣医師による指示に従います。
基本的には手術によって対応するのが、特に日本ではスタンダードとなっている考えです。
薬の場合、長期的に服用しなければなりません。
しかし、手術であればほとんどが短期間で治療を終えることができます。
避妊・去勢手術を受けるメリットと受けない場合のデメリットを比較したときに、メリットの方が大きいのが主要な理由です。
まとめ

特に室内で猫を飼育される方にとっては、猫の発情は、生涯向き合っていかなければならない問題です。
発情を根本的になくすには手術がもっとも効率のよい方法といえます。
しかし、安易に受けさせるのではなく、メリット・デメリットをよく考慮した上で実施することが大切です。
また、将来的に子どもを望む場合には、発情とうまく付き合っていく必要があります。
部屋の中を工夫したりグッズを利用したり、適度にストレスを発散させたりして、猫と人間がお互いに過ごしやすい環境を作っていきましょう。


