犬の飼育といえば、切っても切り離せないのが散歩です。
散歩で尻尾をブンブン振りながら楽しそうに歩く犬を見ていると、こちらまで楽しくなりますね。
しかし、すべての犬が散歩が好きで上手なわけではありません。
中には散歩が苦手だったり、引っ張りが強くて飼い主を困らせてしまう犬もいます。
せっかくの散歩は、犬も飼い主も楽しみたいものです。
犬が散歩を苦手としたり引っ張ってしまう原因や理由を突き止め、適切に対応・トレーニングすることで改善が見込めます。
今回は、犬の引っ張りに注目して、その対策を探っていきましょう。
なぜ犬が散歩でぐいぐい引っ張る?

散歩中の引っ張りを直すために、まずは原因をしっかり把握することが大切です。
犬が散歩でぐいぐい引っ張るのは、大きく「散歩が好きだから」という理由と、「散歩が苦手だから・怖いから」という真逆の理由の2つに分けられます。
「散歩が好きだから」という理由の中には、早く先に進みたい、気になるものがたくさんある、エネルギーが有り余っているといった理由が含まれます。
散歩が楽しくて仕方ないゆえに、ぐいぐい引っ張ってしまうのですね。
それに対して「散歩が苦手だから・怖いから」という理由の中には、ストレスや恐怖を感じる対象があってその場から逃げたい、環境の刺激に耐えられないといった理由が考えられます。
また、散歩に慣れていない、距離感がうまくつかめていないがゆえに引っ張ってしまう可能性も考えられます。
引っ張りを改善するには、普段の愛犬の様子をしっかり観察して、何がその引き金になっているのかを把握して、適切な対策をとっていきましょう。
犬が引っ張るのは苦しくない?

ぐいぐいと引っ張る犬は、苦しさを感じないのかと不思議に思いませんか?
犬は、苦しさを感じていないわけではありません。
しかし、それ以上に興奮やその場から逃げ出したいという気持ちが強く、苦しさをものともしていないこともあるのです。
特に、首輪は気管を圧迫するため、引っ張り続けることで呼吸がしにくくなったり、しつけで使用するスリップリードやチョークチェーンなどは、失神やチアノーゼにつながったりする恐れがあります。
激しく咳き込んだり、散歩の途中で吐いてしまうこともあるのです。
また、首に負荷がかかることで、将来的に
- 呼吸器疾患
- 頸椎損傷
- ヘルニア
といった病気になりやすいと考えられています。
犬の健康のために、強い引っ張りは改善した方がよいでしょう。
犬が引っ張る力はどれくらい?
国民生活センターから、犬が引っ張る力がどれくらいなのかの調査結果が報告されています。
各メーカーのリードが破損したときにかかった力の大きさから、犬がどれくらいの力で引っ張るのかを調べたものです。
計20頭を対象にした結果は、以下の通りとなりました。
| 体重10kgの犬 | 最大25.3kgf |
| 体重20kgの犬 | 最大27.9kgf |
| 引っ張る力の幅 | 体重の0.5~2.7倍 |
犬種や年齢などによって個体差はありますが、最大で体重の3倍近い力で引っ張ることがわかったのです。
この結果から、大型犬はもちろん、場合によっては小型犬でも子どもや女性の力ではコントロールできない可能性が考えられますね。
しつけによって犬の引っ張りをコントロールすることは、さまざまなトラブルを防ぐ上で欠かせないことがわかります。
犬が引っ張るのはよくないこと?

散歩中に犬がぐいぐいと引っ張り、飼い主がコントロールできない状態は、以下の点からよいことではありません。
- 飼い主や犬の怪我につながる
- 通行人や散歩中の他の犬の怪我、自転車や車などにぶつかることがある
それぞれ、どのような状況となるのかご説明します。
飼い主や犬の怪我につながる
たとえば、散歩中に犬がパニックに陥り必死で逃げようと引っ張ることで、飼い主にぶつかったり、場合によっては噛みついたりする可能性があります。
犬自身も引っ張ることで脚や爪先を怪我したり、側溝にはまったりする可能性があるでしょう。
また、首輪が抜けたりリードを噛み切ったりして、脱走につながるケースも考えられます。
すれ違う人や犬への危険
犬が好奇心ですれ違う人や他の犬に寄っていくことで、人の転倒や犬同士の喧嘩、一方的な咬傷につながる恐れがあります。
また、犬やバランスを崩した飼い主がそばにある自転車や車、植木などにぶつかり、怪我をするだけでなくそれらに傷がついて破損する可能性もあるでしょう。
散歩中、犬が他の人や犬に過剰に反応せず静かにやり過ごすことができるのは、お互いの安全のために必要なことだといえるのです。
犬の引っ張りでしてはいけない対処

散歩中、犬が思うように歩いてくれなかったり、ぐいぐい引っ張ったりすることが多いと、飼い主のストレスになりがちです。
中には、イライラしたり、散歩が楽しくなくなったりする方もいらっしゃるでしょう。
しかし、引っ張りを改善するには、飼い主の寛大な気持ちも大切です。
特に、以下のような対処は引っ張りや犬の散歩嫌いを助長してしまう可能性があります。
引っ張られたまま歩くこと
この行動は、散歩のリーダーが飼い主ではなく犬になってしまい、余計にコントロールしづらくなってしまいます。
犬に引っ張られて走ってしまうのも、犬に間違った成功体験を与えてしまうため、よいことではありません。
リードを張りっぱなしの状態にすること
ピンとリードを張ったまま歩いていると、犬はなかなか落ち着くことができません。
興奮やパニックが収まりにくくなってしまいます。
散歩中は、犬の様子をよく観察して、リードは少し弛みをもたせた状態にしましょう。
興奮・パニックをそのままにすること
犬の気持ちを落ち着かせないまま散歩に出たり継続したりすると、さらに興奮・パニックの原因になります。
出発する際や興奮・パニックになったときには、一度落ち着かせ、その後歩き出しましょう。
頭ごなしに叱ること
散歩中に叱られることで、犬は恐怖を覚え、散歩自体が怖いものと認識してしまう可能性が高くなります。
イライラしてしまう気持ちはあっても表に出さず、淡々と対処することが大切です。
飼い主が落ち着いて対処することで、コントロールのコツや興奮・パニックの引き金となる原因の分析にもつながるでしょう。
散歩の引っ張りでイライラしないためにしつけよう

散歩中の強い引っ張りは、根気強くトレーニングすることで改善が見込めます。
引っ張りを改善するためのトレーニングをいくつかご紹介します。
引っ張りの原因や犬の特性にあわせて、適切なトレーニングを取り入れてみてください。
もしトレーニングの効果がすぐにみられなくても、しばらく継続することも大切です。
継続することで犬が学習して、少しずつ効果があらわれることもあります。
引っ張りが改善されたら、よく褒めてあげましょう。
1.飼い主のすぐ横を歩かせる
リーダーウォークやヒールウォークと呼ばれる基本のトレーニングで、犬と信頼関係を築き、これができることで他のしつけもしやすくなるといわれるトレーニングです。
まずは、飼い主が犬の隣に立つことから始めます。
基本は人間が右側になるように行動します。
散歩の主導権を犬ではなく飼い主が握っていることを、自然に意識させるのです。
最初のうちは、トレーニングは室内や庭先など、他の刺激が入りにくいところで行いましょう。
犬の様子を確認しながら、人間より先を歩かないようトレーニングします。
犬に追い越されそうになったらわざと曲がって犬にぶつかったり、飼い主が停止したのにそのまま進む場合は爪先を出したりして、先を歩かせないようにしましょう。
また、急に方向転換をして、犬を先に歩かせないようにするのも有効です。
無理に引っ張ったり、強く叱ったりせず、根気強くトレーニングします。
慣れてくれば自然と横を歩けるようになり、我先にとグイグイ引っ張る習慣が改善されていくでしょう。
横を歩けるようになれば、散歩中のおすわりやふせ、待てといった指示が伝わりやすくなり、突然の興奮やパニックにも対処しやすくなります。
2.アイコンタクトを取る
散歩中、犬と目が合うことはありますか?
散歩を楽しみ、飼い主を信頼している犬は、頻繁にアイコンタクトを取ることができます。
そうでない犬は、自分の興味の対象やパニックの対象となるものばかりに目を奪われ、なかなかアイコンタクトを取れません。
この状態が改善されないと、飼い主の指示にも従いにくいままとなってしまいます。
そのような場合は、おやつで気を引いたり、名前を呼んだりして、飼い主に注意を向けさせます。
また、立ち止まって、アイコンタクトを取れるまで待ち、できたらよく褒めてあげる方法も効果的です。
ただし、じっと直視するのは犬にとって威嚇や敵対の意味をもつため避けましょう。
3.おすわりや待てのトレーニング
おすわりや待てが室内だけでなく屋外でもできると、興奮やパニックへの対処がしやすくなる可能性が高くなります。
犬が落ち着くまで座らせることで、少しずつ刺激に対して慣れさせることができるでしょう。
まずは、室内でスムーズにおすわりや待てができるよう、ご飯やおやつなども利用してトレーニングします。
それができるようになったら、屋外の刺激が少ない落ち着いた環境で、少しずつトレーニングしていきましょう。
はじめのうちはできなくて当然です。
決して強く叱ったり、あまりしつこくトレーニングしたりするのは避けましょう。
できたらしっかり褒めてあげます。
犬の集中力が保てる範囲で、根気強く取り組みます。
4. 引っ張り改善の道具を使う
引っ張りの改善は、指示によるトレーニングはもちろん大切ですが、そこに道具を用いることで、よりスムーズに行える場合もあるのです。
引っ張り改善に役立つ道具をいくつかご紹介します。
注意すべき点は、これらの道具は、すべての犬に効果が現れるとは言い切れないことです。
犬によって合う・合わないがあり、また、すぐに効果が現れる場合もあれば、そうでない場合もあります。
飼い主の使い方によっても効果の現れ方は変わってくるでしょう。
しかし、合わないからといってすぐに使用をやめるのはおすすめできません。
指示のトレーニングと同様、しばらくの間、根気強く取り組むことも大切です。
ただし、飼い主や犬に危険がおよぶ場合は、使用を中止すべきこともあります。
チョークチェーン

おもに金属でできた首輪で、犬が飼い主の動きに反して引っ張ると首がしまり、止まると緩みます。
大型犬を中心に利用されてきたしつけの道具です。
犬の動きによって首がしまるため、飼い主の力に頼らなくてもしつけができ、即効性も高いことから長く使われてきました。
しかし、使い方を誤ると首に負担がかかったり、かえって犬との信頼関係を損なったりするため、扱いには注意が必要です。
チョークチェーンについては、こちらの記事もご覧ください。
スリップリード

こちらも、原理はチョークチェーンと同様です。
犬が引っ張ると首がしまり、止まると緩みます。
チョークチェーンが首輪なのに対して、スリップリードは首にリードの先を巻き付けて操作します。
チョークチェーンよりも操作性がよく、着脱しやすいのが特徴です。
伸縮性があり、チョークチェーンよりも犬への負担は少ないでしょう。
しかし、刺激が緩やかであることから首がしまっていることに気づかず、窒息につながる恐れもあります。
極度に興奮やパニックを引き起こしやすい犬や、コントロールしにくい力の強い犬などへの使用は避けた方がよいでしょう。
使用の際は、しまりすぎのリスクを避けるため、ストッパーを必ず活用します。
ジェントルリーダー

チョークチェーンが首に刺激を与えてコントロールするのに対して、ジェントルリーダーはマズルに刺激を与えてコントロールする道具です。
犬が引っ張ると、それに反して頭が飼い主の方に引き寄せられ、犬の注意を引きやすくなります。
首がしまるわけではないため、犬が引っ張っても苦しくなりません。
また、見た目は口輪に似ていますが、おもちゃをくわえることや飲食が可能です。
うまく活用することで、犬にとって最小限の負担で引っ張りの改善がはかれます。
トレーニングで気をつけること

引っ張り改善のトレーニングでは、以下のような点に気をつけます。
無理に刺激に近づけない
犬が興奮する・パニックになる原因の刺激に慣らすことは大切です。
しかし、焦って近づけすぎると、かえって行動を助長してしまう恐れがあります。
まずは距離をとって様子をみながら、少しずつ犬がスルー出来る間隔を詰めていきましょう。
また、犬の様子をしっかり観察することで、興奮やパニックの前兆がわかるようになります。
その前に合図を出すことで引っ張りを抑えることも可能です。
トレーニングの道具に頼りすぎない
引っ張り改善の道具は、使い方や力の加減を間違えると犬の首や気管に負担を与えるものが多くあります。
道具に頼りすぎず、行動のトレーニングもしっかりと行いましょう。
道具の使用方法が正しいかどうか、適宜チェックすることも大切です。
また、トレーニングの際はハーネスも装着すると、犬の身体にかかる負担を減らすことができるでしょう。
このとき、背中ではなく胸の部分にリードをつなぐタイプの「フロントクリップハーネス」がおすすめです。
効果がないからといってすぐにやめない
どのトレーニングも、効果がすぐに出るとは限りません。
ある程度の期間は継続して行いましょう。
それまでできなかったことが、ある日突然、パズルのピースがはまったようにできるようになることもあります。
まずは、飼い主が落ち着いて対処して、根気強く取り組みましょう。
困ったらトレーナーに相談

引っ張り改善トレーニングがうまくいかなかったり、やり方が合っているかわからなかったりするときは、ドッグトレーナーに相談するのも一つの手段です。
もし適切でない方法でトレーニングをしていた場合、行動が改善されないばかりか、悪化させてしまうことがあるかもしれません。
一人で抱え込まず、専門家に相談して、飼い主も犬もなるべく苦労せず行動を改善していきましょう。
まとめ

今回は、犬の引っ張りの原因や改善に向けたトレーニングについてご紹介しました。
街は、子どもや自転車、車など、犬にとってストレスとなるものがたくさんあります。
また、散歩中にすれ違う犬や見かける猫や鳥などは、犬にとって興奮の材料です。
引っ張りの原因に合った対応で、少しずつ改善することは、犬にとっても飼い主にとってもいいことです。
お互いストレスが減ることで、今よりもっと散歩を楽しめるようになるでしょう。
どんな犬でも必ず改善の余地はあります。
焦らず、広い心で丁寧に接しながら、より快適な散歩を目指してトレーニングを重ねましょう。


