猫の特徴の一つともいえるのが、ゴロゴロとのどを鳴らす音です。
目を細めて静かにゴロゴロとのどを鳴らしている様子は、見ている私たちにとっても大きな癒しです。
猫を飼われている方であれば、飽きずにいつまでも見ていたい様子といえるでしょう。
この音は、じつは猫だけではなく、チーターやベンガルヤマネコなども鳴らせます。
しかし、トラやライオンといった大型のネコ科の動物は鳴らすことができません。
ゴロゴロ音は、猫がうれしいときやリラックスしているときに鳴らすといわれています。
しかし、近年はそれ以外にも猫の健康に役立つ効果があることがわかってきているのです。
なぜ、猫はゴロゴロ音を鳴らすのでしょうか?
また、どのような仕組み・構造で鳴らすのでしょうか?
今回は、猫のゴロゴロ音の仕組みや秘密を探っていきましょう。
猫がゴロゴロとのどを鳴らすのはなぜ?

なぜ、猫はゴロゴロとのどを鳴らすのでしょうか?
猫がゴロゴロ音を出すのは、以下のような理由といわれています。
- リラックスしているから
- おねだりしたいから
- 自分を落ち着かせたいから
もっとも一般的でよく目にするケースが、猫が「リラックスしているから」という理由でしょう。
飼い主に撫でられたり、身体を擦り付けたりして甘えているときや、ご飯を食べたあとリラックスしているときなどに、この音を聞くことができます。
飼い主にもっと構ってもらいたいときにも、のどを鳴らします。
これが、2つ目の「おねだりしたいから」です。
撫でてほしいときや遊んでほしいとき、ご飯をねだるときなどに、このゴロゴロ音を聞くことができるでしょう。
そして3つ目の「自分を落ち着かせたいから」は、猫が体調が悪くてじっとしているときや、けがをしているときなどが当てはまります。
また、意外かも知れませんが、リラックスしているときだけでなく、ストレスを感じているときにものどを鳴らすことが確認されています。
ゴロゴロとのどを鳴らしているからといって、必ずしもリラックスしているわけではないのですね。
リラックスしているときにする行動と同じ行動を取ることで、自分を落ち着かせようとしているのです。
これは、言葉を持たない動物にみられる行動の一つで、「カーミングシグナル(calming signals)」といいます。
カーミングシグナルにはたくさんの種類があり、
たとえば
- あくびをする
- 目をそらす
- 手足をなめる
などがあります。
これらは、猫だけでなく犬にもみられる行動です。
言葉を持たない動物の気持ちを察する上で、とても重要なサインといえるでしょう。
子猫もゴロゴロ音を出す

猫がゴロゴロ音を出すのは、子猫のころからです。
なんと、生後2日目にはゴロゴロ音を出すことができるといわれています。
これは、ゴロゴロとのどを鳴らすことで、母猫に自分の居場所を教え、母乳をもらうためだと推察されているのです。
また、子猫のゴロゴロに反応して、母猫もゴロゴロとのどを鳴らし、コミュニケーションを取ることもわかっています。
ゴロゴロ音の高さで猫の気持ちを推察できる!
猫を飼育されている方は、猫の態度によってゴロゴロ音の音程が異なることに気づかれているかもしれません。
じつは、ゴロゴロ音の高さには種類があるのです。
一般的に、甘えたいときや何かをしてほしい時には、ゴロゴロ音が高くなります。
じつはこの高さの音は、人間の赤ちゃんの鳴き声と周波数が近いのです。
そのため、人間が本能的に猫の要求に気づきやすいといわれています。
体調が悪いときや警戒しているときに発せられるゴロゴロ音は、低い音が出ます。
これらは周波数の違いが明らかになっており、それぞれ以下のようにわけることが可能です。
| 甘えたい・何かしてほしい | 220~520㎐ |
| リラックスしている | 20~50Hz |
| 体調が悪い・警戒している | より低い音 |
猫のゴロゴロ音の正式名称は?

「猫のゴロゴロ」「ゴロゴロ音」といえば、猫好きでなくても何を指すか伝わるくらい浸透していますね。
この音は、正しくは「のど鳴らし」と呼ばれています。
ずばりという名称ですね。
また、英語では、「Purr」(パー)といいます。
かわいらしい響きだと思いませんか?
猫のゴロゴロ音の仕組み

猫のゴロゴロ音は「のど鳴らし」といわれるように、のどの振動で発生します。
しかし、正確なメカニズムはいまだに判明しておらず、推察の域を出ていないのが実際です。
ゴロゴロ音の仕組みについてわかっていることや、そうではないかと考えられていることをご紹介します。
のどの筋肉の振動によるもの
これまで考えられてきたのは、のどにある筋肉を収縮させることで振動が起き、ゴロゴロ音が発生しているというものです。
自らの意思で筋肉を収縮させることで、必要に応じて音を発生させていると考えられてきました。
空気の振動によるもの
これは、比較的新しい考え方です。
いわゆる「いびき」と同じメカニズムで猫のゴロゴロ音が発生しているのではないかと推察されています。
筋肉の収縮によるものではなく、筋弾性空気力学論(MEAD)の仕組みによるもので、以下のようなメカニズムです。
- 呼吸により空気が流れ込む
- 声帯の近くにある声門に、流れ込んだ空気による気圧の変化が起きる
- 声門の開き方が左右非対称になりゴロゴロ音が発せられる
研究チームは、それまで考えられてきたのどの筋肉の収縮だけでは説明が不十分であると考え、複数の猫を使用して今回の推察を発表しました。
猫の声帯には、おもりの役割をするパットと呼ばれる組織があります。
パットが空気の流れによって振動することで、猫が音を出そうと力まなくても、まるで呼吸と同じような感覚でゴロゴロ音を発生させることができるというものです。
つまり、無意識に近い状態でゴロゴロ音を発生させることができると考えられます。
この説はまだ検証が必要です。
しかし、猫のゴロゴロ音の仕組みが解明されるのはそう遠くないのかもしれません。
参照:Current Biology|Domestic cat larynges can produce purring frequencies without neural input
猫のゴロゴロ音は骨折に効果あり?

猫がゴロゴロ音を発生させる状況について、先ほど、リラックスしている状況や要求ごとがある状況以外に、恐怖を感じている・けがをしている状況があることをお伝えしました。
なぜ、そのようなよく知られているのとは真逆の状況においてゴロゴロ音を発生させるのでしょうか?
じつは、猫のゴロゴロ音は、猫自身の体調不良や骨折を早く治す効果があることがわかっています。
ゴロゴロ音がなぜ猫の回復に役立つのでしょうか?
その仕組みをみていきましょう。
論文にもある骨折の効果
猫のゴロゴロ音は、25~150Hzの周波数を発します。
これは骨折や傷を治すために使用される振動数や電気周波数と同じなのです。
つまり、猫はゴロゴロ音を発することで、けがの回復に最も役立つ周波数を発生させ、回復を早めることができるのです。
その中でも注目すべきは25Hzと50Hzで、これらは骨の成長や骨折の治癒を促す周波数とされています。
そのほかにも、100Hzの周波数は
- 痛み
- 浮腫
- 創傷
- 呼吸困難
といった治療に用いられます。
猫は、体調が悪いときやけがをしたときなど、回復を余儀なくされる場合において、じっと座ってのどを鳴らすことで、自らの回復力を高めているのです。
これは、猫だけでなくサーバルやオセロット、ピューマといった大型のネコ科の動物でも確認されています。
もし、猫の具合が悪そうにしていてゴロゴロとのどを鳴らしている場合は、獣医師に診察してもらうのはもちろんですが、猫自身が回復しようとセルフケアを頑張っている状況であるため、むやみに動かしたりせず優しく見守ってあげることも大切です。
ゴロゴロが猫を長生きさせる?
ゴロゴロ音が猫の回復に役立つことをお伝えしましたが、これはけがや不調の回復だけにとどまらないともいわれています。
リラックスした状態でゴロゴロとのどを鳴らすことで、何もしなくても筋肉や骨を良い状態に導くことができるのです。
猫にとって、ゴロゴロとのどをたくさん鳴らせる環境にあることは、猫の健康維持に役立つ長生きの秘訣といえるかもしれません。
おうちで猫を飼われている方は、猫にとって快適な状況を進んで整えてあげて、たくさんのどを鳴らさせてあげましょう。
猫のゴロゴロ音が人間にもたらす効果

猫がゴロゴロと幸せそうにのどを鳴らしていると、その様子をみているこちらまで幸せになるような気がしませんか?
じつは、それは気のせいではありません。
なんと、猫のゴロゴロ音は、猫だけでなく近くにいる人間も癒してくれるのです。
猫のゴロゴロ音による癒し効果は海外を中心に「ゴロゴロセラピー」「キャットセラピー」として活用されています。
猫のゴロゴロ音の癒し効果
人間にとって、猫のゴロゴロ音がどのように作用するのかをみていきましょう。
ゴロゴロ音から派生する低周波は、人間にも影響を及ぼします。
ゴロゴロ音を聞くことで、「セロトニン」という脳内の神経伝達物質が分泌されやすくなります。
これは、精神の安定やストレスへの抵抗性を高める、睡眠のリズムを整えるといった働きを持つ、私たちが心身ともに心地よく過ごすために欠かせないホルモンです。
たとえば、うつ病を患っている人の場合だと、セロトニンの活動が弱まっていることがわかっています。
また、セロトニンが不足することで不眠になったり、不安を感じやすくなったりすることもわかっています。
猫のゴロゴロ音を聞くことでセロトニンの分泌が促され、人は気持ちが安定したり、よく眠れるようになるのです。
それだけでなく、自律神経の働きが整ったり、免疫力がアップして病気になりにくくなったりするといった効果も期待できます。
ゴロゴロセラピー
猫のゴロゴロ音の効果を利用した、「ゴロゴロセラピー」は、欧米を中心に広まっています。
先ほど述べたように、猫のゴロゴロ音は聞くだけで私たちによい効果をもたらしてくれ、しかも、副作用はありません。
私たちの健康維持・増進に、猫は欠かせない生き物なのかもしれませんね。
猫の癒し効果は、刑務所でも証明されています。
アメリカにある複数の刑務所で、保護猫プログラムの一環として刑務所で猫を飼育しています。
当初、「刑務所で猫を飼うなんて猫に危険がおよぶのではないか」といった声も聞かれましたが、実際に飼育してみると驚くべき効果があったのです。
受刑者に猫の世話をしてもらうことで社交性がアップし、更生につながります。
また、献身的な受刑者は出所した後に猫を引き取ることができることから、そのために模範的な行動を起こす例もすくなくありません。
猫の世話をすることが受刑者の精神的な安定につながり、よい効果を発揮しているのです。
ゴロゴロの不思議

猫を飼育していると、ゴロゴロ音を鳴らしているのに突然噛みついてきたり、それまでのようにのどを鳴らさなくなったりすることがあるでしょう。
なぜそのようなことが起こるのか、解説します。
ゴロゴロ言っていたのに突然噛むのはなぜ?
撫でている最中などに猫がゴロゴロとのどを鳴らし始めるのは珍しいことではありません。
しかし、そのまま撫で続けていたら急に噛まれたことがある方もいらっしゃるでしょう。
これには、以下のような理由があります。
- 甘えたい、遊びたい
- 撫でてほしい場所が違う
撫でていると、その手をおもちゃにして遊んできたり、ぺろぺろと手をなめてくれたりすることがあります。
これは、猫が遊びたい、甘えたいと思っているゆえに起こる行動です。
そして、その延長として甘噛みをしたり、力を入れて噛んでしまったりすることがあります。
なお、子猫のうちから手をおもちゃにして遊ぶのは、噛み癖がつくことがあるため注意が必要です。
そのような場合、手ではなく、おもちゃを使って遊ぶようにしましょう。
また、気持ちよさそうにしていたのに急に耳を下げてガブッと噛んできたときは、撫でてほしい場所が違ったり、力が強すぎたりする可能性があります。
猫の様子を確認しながら、気持ちいいと感じてくれる場所を撫でてあげましょう。
一般的に、頭やのど、耳の後ろ、尻尾の付け根などが気持ちいい場所として挙げられます(個体差があります)。
ゴロゴロ音を鳴らさなくなった
今までゴロゴロと甘えてくれていたのに、急にのどを鳴らさなくなってしまったというケースもあるでしょう。
じつは、これは珍しいことではありません。
おもに次のような理由から、のどを鳴らさなくなることがあります。
- 体調が悪い
- 気持ちがのらない
- 猫自身の成長
猫の調子が悪いときや気持ちがのらないときはもちろんですが、猫が精神的に大人になったときにも、ゴロゴロ音を鳴らす頻度が減少することがあります。
もともと、ゴロゴロ音は母猫とコミュニケーションをとって生き残るための行動です。
そのため、その必要がなくなれば、頻繁にならす必要もなくなります。
したがって、家で大切に育てられている場合にも、身の危険がおよぶことが少ないため、ゴロゴロ音を鳴らす頻度が少なくなるケースがあるのです。
「うちの子はあまりゴロゴロ言ってくれない」と感じても、それは猫にとって安心できる環境で生活できているからであり、むしろ自信をもって接してあげてよいでしょう。
ゴロゴロ音の特徴は遺伝子レベルで決まっている
京都大学の研究で、猫のゴロゴロ音に関する行動は遺伝子の影響が大きいことがわかりました。
280頭の猫を調べたところ、ゴロゴロ音をよく鳴らす猫や、長く鳴らす・短く鳴らすといった特徴に、特定の遺伝子型が当てはまったのです。
オスやメスでわけた場合にもそれぞれの特徴が現れており、ゴロゴロ音は猫が進化してきた過程で幅広いバリエーションを持つようになったといえます。
まとめ
今回は、猫のゴロゴロ音について調べていきました。
ゴロゴロ音についてはまだわかっていないものが多く、仕組みについてもまだ解明途中です。
しかし、少しずつその仕組みや音が鳴る意味などが解明されつつあります。
ゴロゴロ音が示す意味を理解することは、猫との暮らしをきっとよりよいものにしてくれるでしょう。
家で飼育している猫だけでなく、野良猫、地域猫との共存にも生かすことができます。
猫とのより快適な暮らしのために、ぜひこの記事をお役立てください。


