犬の幼稚園という言葉を聞いたことがある。なんとなく話題になっているのは知っている。でも踏みとどまって今一歩踏み出せない。そんな方のために、今回は今注目の犬の幼稚園を利用者目線で徹底的に調べてみました。
利用者がどう思っているか、あなたにどんなメリットや注意点があるのかといった観点から解説します。数々の取材や調査を重ねましたのできっとお役に立てるはずです。
犬の幼稚園とはどんなところ?

皆さんは「犬の幼稚園」を知っていますか?
実際に利用したことがない方からすると、なにをするところなのか、どこにあるのか、費用はどのくらいか、謎な部分も多いと思います。また初めて知ったという方もいるでしょう。
ということで、今回は「犬の幼稚園」がどのようなものかを調査してみました。
犬の幼稚園とは、いわゆるしつけ教室です。しかし従来からあるアジリティートレーニングを目的とするような本格的な訓練所とは違い、もっと気軽に楽しく利用できる犬のしつけ教室です。
知れば知るほど、人間の幼稚園がそのまま犬バージョンになったみたいで、すごく楽しそう〜といった印象を受けます。
この章では犬の幼稚園が主にどのようなサービスなのか、メリット、ネックなこと、費用など順に説明します。
犬の幼稚園は全国各地にあるようです。もしこの記事を読んで興味をもってもらえましたら、通える範囲に幼稚園があるか、送迎サービスがあるかなど、ぜひチェックしてみてください。
幼稚園に通うメリット

・基本的なしつけが身につく
・社会性、ルールやマナーが身につく
・さまざまな刺激を経験できる
・トイレトレーニングや無駄吠えなど悩みの改善
・健康維持、運動不足解消
・ドッグラン、ドッグカフェ、旅行など公共の場所に安心して行けるようになる
・災害時に役立つクレートトレーニングをマスターできる
・飼育上のさまざまな悩みを相談できる
・他のサービス(ホテルやサロン)料金の割り引きが利用できる
飼い主以外の人や、他の犬と接する機会が増えることで、社会性が身につきます。また自宅と普段の散歩コースだけでは味わえない刺激をたくさん経験しておくことで、環境の変化やさまざまな刺激に適応する能力が養えます。
そのような適応能力は災害時やいざというときに大変役立つので、身につけておきたい能力です。
幼稚園に通う際の心配ごと・ネックになること
・費用
・送迎が可能か
・犬の性格
・問題行動が改善するかわからない
犬の幼稚園を検討する際、費用の心配は大変大きいです。
またワンちゃんによって極度に怖がりな子、攻撃的な子、環境の変化に弱い子など、ワンちゃんの性格がネックになることもありそうです。そのようなワンちゃんにこそ必要といえますが、改善する以前にあまりにもワンちゃんに負荷がかかりすぎては元も子もありません。
また教室ではできても、自宅に帰ると以前のままなのでは?という心配もあります。
どのような人がサービスを利用するの?

・ひとり(一匹)で留守番させておくのが心配
・トイレトレーニングや社会性を身につけたい
・諸事情(仕事、家事育児、出産、介護、飼い主の病気)により、かまってあげられないことの心配
・問題行動、悩みを改善したい
しつけ教室に通うのは問題行動の改善というイメージがありますが、それ以外にもフルタイムで働いていて留守番が多いといった理由や、社会性を養いたいといった理由も。
人間の子どもが幼稚園や保育園に入園する理由と同じですね。
犬の幼稚園はどんなサービス?
ドッグトレーナーが担当し、基本的なしつけはもちろん、遊びを通してルールやマナーなどが学べるようカリキュラムが組まれているようです。室内外のドッグラン・知育玩具を取り入れた遊びとお勉強の時間、お散歩の時間やお昼寝の時間、それからお手入れの時間などもあるようです。
連絡帳またはメールやSNSツールを通して、日々の出来事や様子を伝え合えて、中には動画を送ってくれるところもあるようです。動画で様子が見られるのは飼い主としては安心できますし、普段と違う表情が見られるのはとても嬉しいのではないでしょうか。
通い始める際、まずはじめに飼育の悩みを元に、その子その子に合わせた学習プラン(目標)をたてるようです。送迎がついているところもあって、思った以上にサービスが充実している印象を受けました。もしも送迎のサービスがあったならば、少しくらい離れていても大丈夫そうですね。
有料ですが個別指導として、自宅に出向いて教えてくれるサービスもあるようで、個性に合わせてそこからスタートすることも可能です。
犬の幼稚園はいくらくらいかかるの?
気になる費用ですが、単発1日というものや、コースとしてまとめて購入する方式、月謝またはチケット制など、園によってかなり支払方法や値段に違いがあるようです。
また保育料とは別に、入園料がかかります。
園によって値段は違いますが、だいたいこれくらいという目安にしていただければと思います。
*入園料 5,000円~25,000円
*お試し 3,000円〜5,000円
お試し(トライアル)はコース購入のためのお試しなので安めの金額設定ですが、一回限りです。
*一回・単発 7,000円〜10,000円
一回あたりの値段は、コース購入や月謝などまとめての利用より割高です。
回数が多ければ1日あたりの単価はお得ですが、費用が決して安くはないため悩ましいですね。
いきなりコースは不安という方や未経験の飼い主さんやワンちゃんは、単発を何回か試してみるのも良さそうです。
中には一時保育やショートステイ(合宿)を取り入れているところもあります。
*月謝、コースのお値段
Aの幼稚園 入園料22,000
小型犬 月4回 28,600円 月8回 56,320円 フリーパス 83,160円
中型犬 月4回 30,800円 月8回 60,720円 フリーパス 89,760円
大型犬 月4回 35,200円 月8回 69,520円 フリーパス 102,960円
Bの幼稚園 入園料 5,500円 登録料 5,500円
小型犬 月4回 15,400円 月8回 35,200円
中型犬 月4回 17,600円 月8回 35,200円
大型犬 月4回 19,800円 月8回 39,200円
(定期的に通えない方向けに、チケット制(回数券)も有り)
月または週◯回コースのように月謝のようなところもあれば、何十回コースというふうに何ヶ月分をまとめて購入するところもあるようです。
A園のように入園料のみのところと、B園のように入園料と登録料が別になっているところがあるので、検討する際はそのあたりもしっかり調べておきましょう。
また小型犬、中型犬、大型犬と大きさによって違いがあり、小型犬の方が安く、中型犬、大型犬と大きくなるほど値段がアップします。
犬の幼稚園の認知度は?散歩している人に町で聞いてみた!

犬のこんなお悩みはありますか?
犬の幼稚園に通わせるかどうかを考える前に、そもそもどんなことが悩みかを考えることが重要です。みなさんは、実際どんなところで悩んでいるのでしょうか。実際町へ飛び出し、ワンちゃんと散歩中の方々に取材をしてみました。
犬を飼っている13名の飼い主と16匹のワンちゃんを対象に「過去、または現在ワンちゃんの飼育で困ったこと」を取材しました。するとこのような悩みが挙がりました。
⚪︎吠える 4
⚪︎攻撃的 1
⚪︎人見知り・犬見知り 1
⚪︎噛み癖・破壊癖 1
⚪︎成犬になってからケージを嫌がり夜鳴き 1
⚪︎老犬による介護の悩み 1
⚪︎物をくわえて離さない 1
⚪︎神経質で怖がりなこと 1
⚪︎悩みは特になし 5
吠えるという回答が多くありました。それから保護犬でお迎えした当時は攻撃的だったけど、現在は落ち着いているので問題ないという回答もありました。
災害による避難時と、動物病院またはペットホテルの利用など、いざというときのためにどれも改善しておきたいお悩みばかりですね。特に普通に吠えるのではなく噛みつくように吠えたり、噛み癖・破壊癖などの問題行動は、日々生活を送る上で直ちに改善したい悩みだと感じます。
それから悩みは特にないという回答も多く見受けられました。ただこれは普段の生活では表面化していないだけで、環境が変わると問題が現れてくることもあります。
いつ来てもおかしくない南海トラフ地震や火山の噴火、洪水などに備え、災害時に受け入れがされやすいように、また他の避難者に配慮する意味でも、特に問題行動がないと思われるワンちゃんは、1段階上を目指してはいかがでしょうか。
幼稚園を利用するしないの問題は別として、知らない人がいても待機できるしつけや、狭い場所でも静かに落ち着いていられるクレートトレーニングなどは災害時には必要な能力ですので、ぜひとも身につけることをオススメします。
災害時の対策の記事もありますのでまだの方はどうぞご一読ください。

犬の幼稚園について皆は知ってる?
犬の幼稚園について、みなさんどれくらい知っているのでしょうか?どれだけ意識が浸透しているのか聞いてみました。
犬を飼っている13名の飼い主に犬の幼稚園の認知度を尋ねたところ、「知っている」は10名、「知らない」が3名でした。
犬の幼稚園の認知度は意外にも高いことがわかりました。
また興味があると答えた人は13名中5名、興味なしが8名でした。認知度が高いわりには興味がない人が多いですね。普段生活する中で困りごとがなく、わざわざ幼稚園に通う必要はないと思っている人が多いようでした。また過去幼稚園を利用して、今は必要がないという意見も。
実際利用した経験のある人は短期も含め13人中4名という結果になりました。幼稚園というとパピーの時期のものと思いそうですが、中には保護犬としてのお迎えにより成犬になってから通った子や、悩んでいる間にパピー期を過ぎてしまい成犬になってから通ったという方もいました。中には実際通ってみたけれど、元気がなかったり吐いたり、ストレスを感じているようなので辞めてしまったという回答もありました。幼稚園が合うか合わないかは、年齢よりもワンちゃんの性格によるものの方が強いかもしれません。
懸念する点としては、費用や送り迎えなどの問題が多く挙げられました。
やはりそこですね。たとえ興味があっても費用がかかりすぎたり、遠方まで送迎しなければならないとしたら、ためらってしまいますね。
あとは園によって教育方針もそれぞれ違うので、費用や送迎の問題に続いて大切な要素の一つだと思います。
犬の幼稚園に通わせて何が変わるのか

実際に犬の幼稚園に通わせたことのある方にくわしい取材を行いました。取材に応じてくださったのは福田さんです。通わせることに迷いはなかったのか、通わせてよかったのか、後悔はないかなど、詳しく伺いましたのでご紹介します。
以下「●」が質問で、灰色で囲った部分が福田さんの回答になります。
● 実際に通ったワンちゃんについてお聞きします。
- お名前と犬種、それからどんなワンちゃんか教えてください。
名前は上の子がアレックスで、下の子がルナです。犬種はどちらもダックスフントです。アレックスは内弁慶で、ルナは裏表がない性格で、大きいワンちゃんが特に苦手でした。
● 通わせたのは何歳のころでしょう。
3年前、2021年前の夏から通わせました。当時アレックスは4歳で、下の子(ルナちゃん)が2歳の時です。
- 犬の幼稚園に通おうと思った背景はなんでしたか?
- 何か気になることがあった?
- 何か問題を解決したかった?
もともと普段の散歩で犬と触れ合うタイプではなかったので、犬慣れがなく、人と会う機会が減ったのが理由のひとつとしてあります。夫婦ふたりともに完全在宅で仕事をしている状態だったので、平日に預けたり、土日にあずけたりできるのがよかったです。2021年7月、真夏で特に外にもいけないからというのもあり通わせはじめました。
(真夏で外につれていったりするのも大変な時期ではある)
- 犬の幼稚園にワンちゃんを通わせるきっかけはなんでしたか?
- 何かの話に出ましたか?
- 以前から知っていましたか?
- またはネットで情報を調べましたか?(その際の流れをお聞かせください)
もともとペットホテルとして帰省の時など年1-2回利用していたので、幼稚園があるのは前から知っていました。人と触れ合う時間がなくなったのをきっかけに、何か楽しみがあればいいなと思ったのがきっかけです。主人も私も完全に在宅で話をする時間があって、「そういえば幼稚園があるけどどうか」という話になり、ドッグランにはそれまで2才になるまであまりいっていなかったので、幼稚園を検討しました。ドッグランにいっても私たちのまわりにくっついていることが多かったので、逆に「犬のストレスになってしまうのでは」と心配に思っていたのもあり、決心しました。
【通園について】
・自宅から10分の場所にあり、9時ごろに送っていき、16時から19時の間に迎えにいっていた
【スケジュールについて】
・コロナで真っ最中の時には週3回くらい
(その後は週に2回、2週間に1回というように頻度を減らした)
・基本的には予定をたてて、あとから変えることもできるスタイル
【宿題がある!】
・家での宿題(迎えにいったタイミングで教えてもらう)→復習することで家での改善につなげることができた
【連絡帳について】
・連絡帳があり、写真などがあったので、何をしたのかどんな様子だったかわかる(たとえば「他の子と遊んでいた」「1人でぽつんとしていた」など)
・お家で「このようなチャレンジをしてみてください」など宿題・復習の伝達
・「先週の〇〇はどうでしたか」という経過の確認のお話もある
・送る時(朝)には→どんなことをしてほしいかの要望なども伝えることも可能
・健康状態の伝達
【犬の幼稚園はどんなところ?】
・遊びとトレーニング半々というイメージ(かたくるしいトレーニングではない)
その環境の中で先生に教えてもらう(トレーニングという要素もある)
・飼い主とのコミュニケーションの改善が期待できる
【その他】
・飼い主は仕事に専念でき犬たちはトレーニングして運動不足の解消ができた
・トレーニングをしても自分たちではできないかと疑問があった
・報告にある他の子の写真をきっかけに、他の飼い主さんと話をすることがある
・通わせている曜日の同じでなんとなく顔見知りになることも
- 犬の幼稚園のお値段はどうでしたか?
- 料金はいくらでしたか?
- どれくらいの期間通いましたか。
コロナ禍の終わり直前までは回数券タイプでした。月に4回ほど自由にいけて3万弱くらいの値段設定でした。途中で価格が変わり→1回でいくらというかたちに。たしか 8000円/1回くらいに値上がりしました。通わせたのは今年の3月までで、最終的には2年半くらい通わせました(スパンは間をあけながら)。最初は週3回 -> 週一回 -> 二週間に1回という風に徐々に減らしていきました。頻度を変えたのは、発散(遊び目的)の方にシフトするためで、最後の方は遊ばせるだけ+散歩してもらうというコースを利用するようになったからです。
- 子犬の段階では検討していなかったですか?
子犬の頃というか、前の段階では気になりつつも積極的には調べていなくて、実際に通わせる前の相談の段階では「効果がどんなものか」など尋ねて、他の犬と一緒にその空間にいるだけでもなにかの効果があるのではと期待したので決めました。ドッグランになかなか連れていけないこともあって必要性を感じていました。
- 犬の幼稚園に通わせた結果どんな変化がありましたか?
- 態度の変化
- 他のわんちゃんとの関わりの変化
- 吠えることに関する変化
上の子(アレックス)は 1才の時はお座りをなんとかする程度で、あまり芸を得意としている子ではなかったのが、通い出してできるようになって、さらに散歩のときにはひっぱりぐせがあったけどそれもなくなりました。以前は呼び止めても振り向きもしなかったのが、振り向いて待ってくれるようになりました。それから一番大きい変化 はドッグランに連れていけるようになったことですね。今は放すと他の犬とおいかけっこなどして遊んだりするようになって。前は「ガウッ!」としそうな勢いだったのが、人や他のワンちゃんにも寄って行くようになりました。下の子(ルナ)は芸のたぐいは上の子よりももともとできたし集中力もあって、上の子よりも呼んだ時に素早く反応していました。それなりには人馴れもできてきたので、上の子の方が変化は大きかったですが、吠えるのは二匹ともすごかったので、前とは比べ物にならないくらい変わったと感じます。特に初対面のわんこにかなり吠えていたので。今はドックランに安心して連れて行けるようになったのでよかったです。
- 犬の幼稚園に通わせる前の印象はどうでしたか?
最初は、大型犬が通うようなトレーニングの場所とどう違うのかなと思っていました。幼稚園っていうくらいだから警察犬の訓練みたいなのとは違うだろうな、という印象はなんとなくあったんですけど。
- 犬の幼稚園に実際に通わせての印象の変化はどうですか?
イメージどおりで、とっつきにくさはない印象でした。やんわりしてて。イベントみたいなのがあって、通い出してすぐのころ参加しました。
- 幼稚園を決める際のポイントについて(アドバイスなど)
他のサイトも見たりとか、トライアルや短い時間でお試しもできるので、そういうので様子をみてみたらいいと思います。帰って来た時の様子をみてどうか、精神的にどうなのかを確認してみて、その後フルでいれてみて様子をみてどうかというふうに段階的に進めていくとよいと思います。また「報告」がされているのかどうかチェックするのも重要です。LINEで動画を送ってくれたりすることもあるのでそれがあると安心できるかなと思います。
- 実際に通わせる前に調べましたか?
通わせる前の段階では特に調べていなかったんですけど、あとからそういえば他はどんな感じなのかな…と思い調べたりはしました。
- また幼稚園に通いたいと思いますか?
遊びだけのもあるので、梅雨の時期など散歩にいけない時にはいいかもしれないです。外にはすぐ大きな公園があり、中も広めになっているので、ストレス解消になると思います。
- その後幼稚園で出会った犬の友だちや先生との関わりなどは現在もありますか?
リアルでのつながりではないものの、オンラインでのつながりがあります。インスタで写真の投稿を見たりとかですね。
- いいイメージがあったのであれば1番よかった点はなんですか?
ドッグランにいけるようになったこと!人間の都合で連れていってしまうのは嫌だなというのがありましたが、今ではうちの子たちも楽しんでくれているのでよかったです。
- 犬の幼稚園についての要望や求めるものなどはありますか?
- こうなったらいいのにな
- こうしてくれたらありがたい
- こんなアイデアならどうだろうか
- この点が心配、疑問、不安などなど
預ける時間は短くてもいいので、もっと安かったらいいのにと思います。変更後は、8000円なので少し高く感じます。
実際に通った方インタビューでわかったこと

仕事の時間に預けることができるのが便利
本格的な「トレーニング」に気が引ける人に
散歩代わりの遊びの場としても使える
授業料の形式が途中で変更した
月謝は高め
先生との相性は大事
連絡や情報共有の度合いに注目
ワンちゃんとドッグランに気兼ねなしにいけるという目標を達成できた
「他の子」と交流する場として
通う前に体験レッスンを活用するべし
さいごに
犬の幼稚園というものを私は知りませんでした。初めて耳にしたとき、正直なところ違和感がありました。
その違和感の正体がなんなのか。
つき詰めるとそれは「古い概念」にとどめようとする現状維持機能によるものだと気づきました。現状維持機能とは、新しい概念に出会ったときや決断を迫られたときに起こる脳の働きです。
そして本記事を書くにあたり人と話したり調べたりする中でわかりました。
「犬の幼稚園」とは「犬のために」を考える意識の一つのかたちだということを。
私たちが抱くペットの存在は、可愛いとか癒しとかを越えたもっと尊い存在で、どの飼い主さんも家族の一員として、人と変わらない絆で結ばれた愛そのものを抱く対象です。
ところが古い概念が、新しい概念に向かおうとする意識を無意識下で引き戻そうとします。
そんなもの必要ない。お金もかかるし送り迎えの手間もかかる。今まで問題なく普通に生活できているのだからこの子に幼稚園など必要ない。そのようにさまざまな理由をつけて現状にとどまろうとします。
愛犬のためにかけるお金や手間を無駄だと思う飼い主さんはいないはずですが、それでも新しいものになるとどういうわけか拒否反応を示してためらってしまうこともあるかもしれません。
今と昔の飼育のあり方を比べてみるとわかるように、昭和のころは美容院に行ったり服を着たりしているわんちゃんはほとんどいませんでしたし、小型犬以外は家の中で飼われていることさえ珍しく、外に犬小屋があるのが普通でした。犬種も今ほど多くはなかったです。
病院も今ほど充実していなくて犬用の保険などもちろんなく、エサも残り物で済ませている家庭が多数という時代背景でした。そのころは飼い主だけでなく犬にとってもそれが普通のことでした。
しかし今はどうでしょう。犬の清潔さやオシャレなどに気を配り、家の中で共に生活をするのが当たり前になりました。病気になったらもちろんのこと、そうでなくても健康診断や予防薬をもらうために定期的に病院に足を運びます。エサも健康に気を配り専用のペットフードを与えます。それらは今では普通のこととして普及しています。
先に挙げたものはどれも、犬を家族の一員として、人と同等に扱おうとする意識の表れだと思います。犬にとってより良い環境を考えようとする姿勢は、今後ますます高まっていくことが予想されます。
先にも述べましたが、初めて犬の幼稚園という言葉を知ったとき「本当に必要なのか」という気持ちが一瞬よぎりました。
しつけやお世話を他人に任せるのは怠慢ではないかとさえ思いました。
ところがこの記事を書くにあたって調べたり人と対話したりする中で、犬を幼稚園に通わせることは、ともすると人間の子どもが幼稚園に通うこと似たようなもので、普段の生活では育めないものが実はたくさんあることに気づかされました。
「犬の幼稚園」とは「犬を思い探求する」人間の新しい試みです。
最初はそんなもの必要ないものととらえられていたとしても、大多数が良いと思えばそれはどんどん広がっていき、普通のこととして普及していくでしょう。それは犬の幼稚園に限ったことではなく、新しいものが誕生したとき多くの場合そのような経過をたどるのだと思います。
筆者は以前、犬に服を着させる行為をなにか「オモチャにしているようだ」と受け止めていたころがありました。犬自身が突然服を着たがるはずはないからです。しかし今では素直にかわいいなと感じられるように意識が変わりました。私の中で、それが普通のことになったからです。
それと同じように、個人による「犬の幼稚園」のとらえ方も、時代の経過とともに変わっていくでしょう。今と昔がまるで違うように、犬を飼育するには、「まず幼稚園に通う」のが当たり前という未来が訪れるような気すらします。その飼い主の意識が少しずつ社会全体に広がり、迷子になった際や災害時の対応、虐待が行われた場合の罰則なども同様に、よい方向に変化していくのだと思います。
その意識の変化の表れが食べ物であり、生活の場所の共有であり、さらには病院や美容院または幼稚園を利用することなのではないでしょうか。
あくまでワンちゃんにとってなにがよいことなのかを「決めているのは飼い主」です。犬は与えられた世界で精一杯生きる、ただそれだけです。犬がいきなり可愛い服を着たがったり、お留守番するならホテルがいいとか、幼稚園に通いたいとか表現したりはしません。ケージの中しか知らない犬はその世界がすべてであり、子犬のころからずっと外で飼われている子はその世界がすべてです。こうしてあげたいと思うのは人間側のとらえ方であり考えです。車に乗ってドライブすることも、ドッグランに行くこともすべて、飼い主が与えて初めてその子の新しい世界が広がるのです。飼い主のしてあげたいことと犬の個性が一致してはじめてより良いものとなります。「犬の幼稚園」はその探求方法のひとつにすぎません。
この記事は犬の幼稚園の宣伝ではありませんので、通う通わないが重要ではありません。犬の幼稚園に通うかどうかに関わらず、犬との接し方は時代と共に変化しており、この記事がそれらについて考えるきっかけになればと願っています。
最後になりましたが、今回記事を書くにあたってアンケートやインタビューなどが必要で、たくさんの方々にご協力をいただきました。街頭インタビューではなかなか答えてもらえなくて想像以上に苦労しましたが、写真提供および散歩中足をとめてアンケートにご協力くださった飼い主の皆さま、そしてインタビューにご協力くださった福田さん、貴重な時間を費やしたくさんの経験談を聞かせてくださり、心より御礼申し上げます。
