「馬を飼うのが長年の夢」という方は、少なくないでしょう。
しかし、馬を飼いたいと思っていながらも、世話の大変さや、馬との生活の流れがわからないなどの理由から、なかなか手を出せずにいる方もいるのではないでしょうか。
確かに、馬は身体が大きな動物であるため、犬や猫を飼うような感覚でのお世話はできません。
エサやりから馬房の清掃、馬の体の手入れまで、どれをとってもなかなかの重労働です。
また、身体が大きな分、しっかり運動させなければならないため、そのための時間や場所の確保も必要です。
今回は、馬の世話について、実際にどのような世話が必要で、1日はどのような流れで進んでいくのかを具体的に解説します。
馬を飼いたいと思っている方は、ぜひ参考になさってください。
また、馬の飼育にはそれなりの費用も必要です。
馬の飼育に必要な費用については、以下の記事でくわしくご説明していますので、あわせてご覧ください。
かかる費用や資格は?馬を飼う方法を解説!広さから小屋作りまで
家で馬を飼うことのメリット・デメリット

馬を飼いたいと思っている方は、メリットやデメリット関係なく、「馬が好きだから」「馬とずっと一緒にいたいから」というのがおもな理由ではないでしょうか。
しかし、実際に馬と生活するにあたり、家で馬を飼うメリットやデメリットを知っておくことは大切です。
家で馬を飼うことのメリット・デメリットをご紹介します。
馬を飼うメリット
馬を飼うメリットは、以下のような点があげられます。
馬の生態を生かす
馬は草食動物です。
放牧することで空き地や農場などで勝手に生えている草を食べてくれます。
しかし、草食動物であっても、ヤギや鹿のような反芻動物ではないため、食べられる植物の種類に限りがあります。
ヤギや鹿であれば食べられる雑草の種類は豊富なのですが、馬の場合、おもにイネ科の雑草以外は身体にとって毒となるのです。
たとえば、とげのある植物やシダ類、タンポポ、ハーブ類などは、馬にとってよくない植物です。
そのため、草を食べてくれるといっても、思ったほどの効果は得られないかもしれません。
また、雑草ばかり食べていては十分な栄養が得られないため、雑草は飼育する馬にとっては「おやつ」くらいに考えておくとよいでしょう。
雑草を食べすぎることで、水分をとりすぎておなかを壊す可能性もあるため、食べ過ぎないよう注意が必要です。
そして、草を食べることで排泄される馬の糞は、牛糞や鶏糞よりもずっと良い肥料になるのをご存じでしょうか。
馬糞には、「植物性有機物」がたくさん含まれています。
これは、土壌中の微生物のエサとなるため、馬糞を肥料に使用することで、土壌改良の高い効果を得ることが可能です。
動物性たい肥の特徴を簡単にご紹介します。
| メリット | デメリット | |
| 鶏糞 | 肥料成分を豊富に含み即効性が期待できる | 肥料の効果は短期的 |
| 豚糞 | でんぷん・たんぱく質を多く含み、肥料の効果が高い | 重金属が含まれる |
| 牛糞 | 肥料よりも土壌改良剤としての効果が高い。排水性や保水性、保肥力の向上に効果あり | 鶏糞・豚糞よりも肥料としての効果は薄い。大量使用で塩害のおそれがある。 |
| 馬糞 | 植物性有機物が多く含まれ、土壌改良剤として上記3つよりも優れている。含まれる栄養素のバランスが良い。 | 窒素飢餓が起こる可能性があるため、窒素不足に注意する |
コミュニケーション

馬は、犬のように表情豊かではありませんが、ホースセラピーにも利用されるように、コミュニケーションがとりやすく、愛情深い動物です。
一緒に暮らすことで、より親密さが深まり、日々の癒しとなるでしょう。
また、馬を通じて、地域の人とコミュニケーションをとることにもつながります。
ただし、中には馬の扱いに関する知識が少ない人もいるため、不特定多数の人に馬を触らせるのは注意が必要です。
人間の行動が原因で、馬にかまれたり蹴られたりといった事故につながる可能性もあります。
世話による健康増進効果
馬の世話は、朝早くから始まる重労働です。
馬房の掃除や馬の身体のケアなど、いずれも体力・筋力が必要な作業ばかりであるため、健康でなければ続けられません。
馬の世話に毎日携わることで、体力・筋力の維持につながります。
また、朝から晩までの世話がルーティンとなることで、規則正しい生活にもつながるでしょう。
馬の特性を生かす
馬は、乗馬用だけでなく、農耕馬として田んぼや畑を耕したり、荷物を運んだりといった利用法も可能です。
もちろん、馬耕には人も馬もトレーニングが必要ですが、トレーニングは絆を深めることにもつながります。
持続可能な生活として、農業に馬を用いることを検討してはいかがでしょうか?
馬耕をはじめとする作業は、脚の細いサラブレッドは不向きです。
これらを目的にするには、農耕馬を迎え入れることが必要です。
また、馬は道路交通法では、軽車両に分類されます。
道路を馬に乗って通行したり、ドライブスルーを利用したりといったことも可能です。
ただし、道路には車をはじめとする危険や、馬が怖がるものが多数あります。
こちらは、乗馬技術をはじめとするトレーニングが必要です。
馬を飼うデメリット
続いて、馬を飼うことによるデメリットをいくつかご紹介します。
飼育の上でハードルになりやすいのが土地の確保や費用です。
また、身体が大きな馬と向き合うためには、体力と、世話にかけられる時間の確保も欠かせません。
毎月数万円の飼育費用
馬は、身体が大きな分、たくさんの飼料が必要です。
毎月数万円の飼料代は欠かせません。
また、2か月に1度程度の装蹄や、定期的なワクチン接種なども必要です。
世話を休めない
これは動物の飼育全般にいえますが、人間側の都合で世話を休むことはできません。
また、宿泊を伴う外出なども難しくなる可能性があります。
馬は、犬や猫のように誰でも簡単に飼育ができる動物ではないため、世話が難しい状況になったときに、あらかじめ依頼先を確保しておくことも大切です。
馬の世話は大変?具体的な内容

毎日の馬の世話について、具体的に何が行われているかご紹介します。
馬の世話は大きく分けて、エサやりと馬房掃除、身体のケア、運動補助・トレーニングの4つにわけられます。
エサやり
馬のエサやりは、1日3回以上にわけて実施するのが一般的です。
馬の胃の構造を考慮すると、6回程度にわけるのが理想的であるとの考えもあります。
馬は自然界では、少しずつ移動しながら1日中草を食べています。
そのため、1日のエサの回数を細かくわけて与えることは、馬本来の生態に近い食事の方法となるのです。
ただし、ご自宅で飼育されている場合は、仕事や用事などの都合から、何度もエサやりを行うことは難しいでしょう。
しかし、最低でも1日3回はエサやりができるようにします。
エサの量は、1日あたり体重の1.5~3%が理想量とされており、馬の大きさにもよりますがポニーでも5kg程度、一般的なサイズの馬の場合は10~15kg程度は必要です。
馬房掃除
馬の寝床となる馬房掃除は、1日1回は必ず掃除します。
馬は1日3~9L程度の量の尿をし、20kg程度の糞をします。
1日でも掃除をさぼると、馬房の床は排せつ物でべちゃべちゃになってしまうため、毎日の掃除は欠かせないのです。
掃除では、馬の排せつ物を汚れた床材とともにスコップなどですくい取り、すくい取った分の床材を補充します。
馬房の床は通常コンクリートであるため、おがくずやもみ殻などの床材は、馬にとってクッションとなる大事な素材です。
また、床材があることで、排せつ物の広がりが抑えられます。
ところで、馬糞が良質な土壌改良剤となるのも、肥料中に床材が含まれるのが理由です。
床材が肥料に含まれることで、肥料中の有機物の量が増え、土壌中の微生物の働きが促進されるのです。
身体のケア

馬は、馬場や馬房ではゴロゴロと背中や身体の側面を擦り付ける動作をします。
この動作は一般的に「砂浴び」と呼ばれ、以下のような理由で行われます。
- 背中の汚れを落とす
- 寄生虫を落とす
- かゆみを取る
- ストレス解消
- リフレッシュ など
砂浴びをしたあとは背中に大量の砂や床材が付着するため、ブラシできれいに落とすケアが必要です。
マッサージブラシで円を描くようにブラッシングしてあげると、馬の至福の顔をみれることもあります。
身体のコリをほぐしたり、不要な毛を除去したりするために、1日1回は行ってあげるとよいでしょう。
意外かもしれませんが、馬も季節によって毛が生え変わります。
冬を越して温かくなると毛がたくさん抜けるため、ブラッシングしてあげると馬も喜んでくれますよ。
たてがみや尻尾も、そのままではもつれてしまうため、専用の櫛でとかします。
長さが気になる場合は切り揃えてあげるとよいでしょう。
そして、馬のケアで欠かせないのが蹄の手入れです。
馬の第二の心臓とも呼ばれる蹄は、手入れをしなければ汚れが付着して病気の原因になったり、伸びすぎてうまく歩けなくなったりします。
裏掘りという、蹄の内側に詰まっている砂や床材、排せつ物などをきれいに落とす作業を1日1回は行い、水で洗ったり、必要に応じて乾燥防止のオイルを塗ったります。
定期的な装蹄も欠かせません。
清潔を保つだけでなく、身体のコンディションを確認するためにも、日々の手入れは重要です。
運動補助・トレーニング
適切な運動やトレーニングは、馬の健康維持や人との信頼関係を築くうえで役に立ちます。
年齢やけがの影響で乗馬ができないといった場合にも、適切な運動補助を行うことで、馬の健康維持や管理につながるのです。
手綱を引いて一緒に歩くだけでも、そのような馬にとっては大切なリハビリの時間となります。
運動補助やトレーニングの方法は、獣医師や専門的な知識を持つ人に相談するとよいでしょう。
また、馬だけでなく人の健康維持・技術向上にもつながり、やりがいも増えるはずです。
馬との生活の1日の流れ

実際に馬を飼育した場合、1日の世話の流れがどのようになるのかをご紹介しましょう。
朝飼い
朝起きたら、まずは馬にエサを与えます。
馬は夜行性ではないため、日が昇ると活動を開始します。
一般的に、朝6時ごろにはエサを与えるケースが多いようです。
日が昇るのが早い夏は、もう少し早くエサを与えるケースもあります。
馬の健康維持のため、食事は毎日一定の時間に与えるようにします。
もしくは、先に馬房掃除を行ったり、馬の体のケアを行ってからエサを与えるケースもあるでしょう。
馬は、おなかがすいていたりエサが見えたりすると、「前かき」といって前足を伸ばして地面をたたくような動きをします。
しつこく前かきをすることで蹄が痛むこともあるため、エサやりまでの動きはてきぱきと行う必要があります。
昼間
朝エサを与えた後は、トレーニングを行ったり、何もない場合は放牧場に出してリラックスした時間を過ごさせたりするのが一般的です。
一日中馬房に入れておくと、馬もストレスが溜まります。
放牧できる時間には、のびのびと過ごさせてあげることが大切です。
放牧中、馬は草を食べたりしますが、これはあくまでおやつ程度と認識しておきましょう。
決められた時間に、お昼のエサを与えます。
夕飼い
夕方には放牧場から引き上げ、簡単に手入れをして馬房へと誘導します。
蹄に泥が詰まっている場合は、裏掘りが必要です。
この時、馬の体調に変化がないかチェックしておくことも忘れてはなりません。
馬房に戻したら、決められた量のエサを与えます。
夕飼いから数時間空けて、夜にもう一度エサを与えるケースもあります。
しっかりと戸締りをして、1日の世話が完了です。
家で馬を飼うときに気を付けること

自宅で馬を飼育する際は、以下のような点に気を付けましょう。
馬の健康管理
馬は繊細な動物です。
食事の仕方によっては疝痛(排便がうまくいかず起こる腹痛)を引き起こすことがあったり、放牧中に脚や蹄をケガすることもあります。
また、蹄の伸びすぎや汚れなどによって、蹄葉炎(蹄の南部組織の炎症)が発症したり、肺炎や関節炎などを発症する可能性もあるのです。
身体は大きいのですが、その特性ゆえになりやすい病気もあるため、飼い主が普段からしっかりと注意してみてあげなければなりません。
獣医師と連携しながら、馬の健康を守ってあげましょう。
エサや放牧地の管理
エサや放牧地の管理も重要です。
毎日大量に消費されるエサは切らさないようにし、また、カビなどの衛生状態にも注意します。
放牧地は、馬が過ごしやすいような環境になっているか、石やゴミなどが紛れ込んでいないか適切に確認して、食べない雑草も抜いてあげましょう。
周囲へのクレームにつながりやすいにおいや音にも配慮が必要です。
自分自身がけがをしない
馬の世話は体力仕事であり、また、馬自身が強い力を持っているため、けがには十分に注意しなければなりません。
エサやりや馬房掃除などで重いものを運搬するため、肩や腰を痛めたり、馬に蹴られてけがをしたり、馬に乗っていて落下するようなリスクは隣り合わせです。
世話は無理せず、自分のペースで行います。
馬の後ろに立たない、嫌がるようなことはしないなど、基本的なルールを守り、馬の様子をしっかりとうかがいながら手入れやトレーニングに努めましょう。
まとめ

今回は馬の飼育について、世話の内容や1日の流れをご紹介しました。
身体が大きな馬の世話は、犬や猫といった動物よりも体力仕事で大変なのは事実です。
しかし、だからこそのやりがいもあります。
また、飼育の仕方によっては、馬は人間と一緒にトレーニングや仕事ができる動物で、飼い主の人生をより充実させてくれることは間違いないでしょう。
イメージとしてはサラブレッドを中心とした引退競走馬の飼育が大きいかもしれませんが、農耕馬や日本在来馬を選ぶことで、日本の伝統や文化を守ることにもつながります。
馬を飼いたいと思われている方は、幅広い選択肢で馬を探してみるとよいでしょう。
馬と関わることで、より人生に深みが出ることは間違いありません。
この記事が「馬を飼育したい!」という夢に近づくための、お役に立てば幸いです。


