馬好きの方であれば、一度は馬を飼ってみたいと思われたことがあるのではないでしょうか?
かわいさとかっこよさの両方を併せ持つ馬との生活は、とても魅力的ですよね。
すでに飼育されているケースとして、乗馬用だけではなく引退馬の飼育や、中には農耕馬として飼育されている方もいるようです。
しかし、実際には飼育にかかる費用や広さ、日常の世話の大変さなどのハードルから、なかなか踏み切れていない、断念したという方も少なくないでしょう。
そこで今回は、馬の飼育にあたり、どれくらいの費用がかかるのか、広さはどれくらい必要なのかなど、細かくみていきます。
また、馬を飼育するにあたって欠かせないケアの内容や、資格や許可などが必要になるのかもお伝えします。
「馬の飼育にはどれくらい費用がかかるの?」「馬を飼うにはどれくらいの広さが必要なの?」といった疑問をお持ちの方は、ぜひ参考になさってください。
馬を飼うのに一番気になる費用!維持費はどれくらい?

どんな動物でも、飼育するには費用がかかります。
特に、身体の大きな動物になるほど、受け入れにかかる初期費用はもちろん、飼育するための維持費も大きくなりがちです。
実際に馬を受け入れる場合、費用がネックになっている方も多いのではないでしょうか。
馬の受け入れから飼育までにかかる費用を、項目ごとにみていきましょう。
馬の受け入れまでにかかる費用
馬を受け入れるまでには、最低限、以下のような費用が必要です。
- 馬の生活スペースを確保するための費用
- 馬自体の費用
- 馬の生活用品の費用
それぞれ細かく確認していきましょう。
馬の生活スペースを確保するための費用

馬と暮らすには、まず、馬が生活するための馬房(厩舎)と放牧スペースが必要です。
馬房は、馬が餌を食べたり休息をとったりするためのスペースで、雨風をしのぎ、暑さ・寒さから馬を守ります。
馬房の素材と費用
馬房は、鋼材や木材で作る方もいれば、単管パイプや木材などを組み立てて作る方もいます。
馬房の製作費用は、具体的な金額はお示しできませんが、単管パイプや木材などを利用してご自身で製作される場合は、1頭当たりの馬房を10万円程度で製作することが可能です。
業者に依頼して製作する場合は、使用する材料にもよりますが、少なく見積もっても3倍以上は必要でしょう。
馬房の製作費用以外にも、餌桶や水桶(水道を設置する場合も含む)も必要になるため、プラス数万円程度はみておくべきです。
馬は、身体の大きさゆえに、運動するスペース(放牧地)も広く確保する必要があります。
放牧地は馬が脱走しないように、頑丈な柵で囲む必要があります。
柵は、単管パイプや木材などを使用して作ることが可能です。
電気柵は、馬にとって刺激が強く、事故につながる可能性があるためお勧めできません。
柵を設置する費用のほかに、場所によっては整地も必要になる可能性もあることを覚えておきましょう。
専用の放牧柵
馬の放牧地専用の柵も販売されており、こちらは1本(幅1970mm高さ1200mm)あたり約12~18万円程度です。
1haの敷地を専用の放牧柵で囲む場合、200本必要になるため、2,400~3,600万円程度の費用がかかります。
初期費用は高額ですが、専用の放牧柵であれば、一度設置すればその後のメンテナンスが楽になるでしょう。
馬自体の費用
馬を購入するには、いくつかの方法があります。
- 生産牧場から直接購入する
- 引退競走馬を引き取る
- セリで購入する
- 海外から輸入する など
購入費用を抑えたい場合は、引退競走馬を引き取る方法がよいでしょう。
特に、現役時代の成績が芳しくなかった場合には、比較的安価で馬を迎えることができます。
ただし、競走馬として走っていた馬を乗馬用にするには、改めてトレーニングが必要です。
引退競走馬を引き取る場合、10万円程度からお迎えできる場合もあるようです。
生産牧場から直接購入する場合も、比較的安価で馬を迎えることができるでしょう。
ポニーをはじめとする小型の品種で50万円程度から、品種によって500万円を超えるものまで、さまざまな種類の馬がいます。
セリで購入する場合や、海外から輸入する場合は、購入費用は高めです。
品種や血統にこだわりたい方に向いている購入手段といえます。
馬の生活用品の費用

馬を飼育するうえで、移動させるときに使用する無口や曳手、身だしなみを整えるためのグッズなどは必須のアイテムです。
身だしなみを整えるためのグッズの例(最低限必要なもの)
- てっぴ(蹄の清掃用具)
- ゴムブラシ(マッサージなどに使用)
- ダンディブラシ(身体に付着したほこりなどを落とすために使用)
- 仕上げブラシ
- 汗こき(水洗いしたあと水滴を落とす)
- たてがみブラシ
- 蹄油(乾燥防止に蹄に塗る油) など
安価なものであれば、それぞれ数千円程度から購入できます。
ほかにも、フェイスタオルやバスタオルは、身体が大きな馬にとって、洗った際や悪天候時の手入れなどに、一度にたくさん使用する消耗品として必要です。
維持費としてかかる年間費用

馬を飼育するために必要なのは、餌代・排せつ物の処理代がまず挙げられます。
それ以外に、以下のような費用も、定期的にかかってきます。
- 装蹄代
- 定期ワクチン接種代・病気の際の費用
- 冷暖房費
餌は、複数の材料を混ぜて与えることが一般的です。
主食となる牧草(粗飼料)を中心に、たんぱく質を補給する濃厚飼料(圧ぺんトウモロコシやふすまなど)、ビタミンやミネラル補給のためのサプリメントなどを混ぜて与えます。
飼料代は、25,000~30,000円程度が平均的な金額です。
ただし、より栄養管理が必要な場合には、高額になる可能性があります。
また、毎年、飼料代は少しずつ価格が上昇しており、このことも念頭に置いておくべきでしょう。
もう一つ問題となるのが、排せつ物の処理です。
身体の大きな馬は、食事の量はもちろん、排せつ物の量もかなりのものです。
平均して、1日あたり15~25kg、単純計算で年間では5.5~10t程度の糞をします。
においもするため、しっかりと処分の方法を取り決めておかねば、周囲からの苦情に繋がりかねません。
ご自身で処理が難しい場合は、専門の処分業者や堆肥化専門業者にお願いすることになります。
産業廃棄物として処分される場合は、30~80円/kg程度が目安ですが、処分業者や自治体などによりことなりますので、確認が必要です。
なお、馬糞は良質な堆肥であるため、必要な農家に無料で引き取ってもらうのも1つの手段として挙げられます。
装蹄代と定期接種するワクチンの費用の平均は、以下の通りです。
- 装蹄代 15,000円程度/1~1.5ヶ月ごと
- ワクチン 8,000~9,000円/半年ごと※別途獣医師の出張費用
冷暖房費用は、施設の広さや設備によって大きく差が出ます。
いずれにしても、冷暖房の対策が必要な夏や冬は、月に数万円程度はかかると思っておきましょう。
馬を飼うのに資格や許可は必要?

馬を自宅で飼育するにあたり、資格は必要ありません。
しかし、「化製場等に関する法律(化製場法)」第9条によって、馬や牛、ヒツジ、多数の犬などを飼育する場合は、都道府県が定める条例に従って、許可を得る必要があります。
馬や牛の場合は1頭から、ヒツジやヤギは4頭以上、犬は10頭以上飼育する場合には飼育に関する一定の要件を満たしたうえで、許可が必要です。
飼育許可を得るには、以下の流れを踏みます。
- 事前相談
- 申請
- 書類審査
- 現地での立会検査
- 手数料納付
- 許可書の発行
詳しい手続きについては、所属する市町村役場で確認してください。
また、馬をはじめとする大型の動物は、鳴き声や足音、においなどが問題となることもあります。
飼育を始める前に、近隣住民の理解を得ることも大切です。
参考:大野城市|牛や馬などを飼うときは許可が必要です(化製場法による動物の飼養・収容の許可)
また、資格は必要ないといっても、馬に関する基本的な知識やお世話の経験がなければ、飼育することは難しいでしょう。
知識や経験がないまま飼育をはじめると、人間のケガや馬の病気などにつながってしまいます。
力の強い馬とむやみに関わることで、ケガだけでなく死亡する恐れもあるのです。
たとえば、
- 馬がいやがる場所に触れてしまい蹴られたり噛まれたりする
- 誘導がうまくできず、踏まれたり馬と壁の間で圧迫されたりする
- 蹄のケアが不十分で蹄の病気を発症する
などが考えられます。
馬の飼育をはじめる前には、乗馬クラブやすでに飼育をされている方に指導を請うことが大切です。
自宅の庭で飼える?馬の飼育に必要な土地の広さ

馬を飼うには、それなりの広さが必要です。
馬を飼ううえで必要となる馬房と放牧地は、必ずしも同じ敷地内に用意しなければならないわけではありません。
たとえば、馬房のみを庭に設置して、放牧地はすぐに移動できる場所に別で用意してあげることもできます。
実際に、馬房や放牧地に、どれくらいの広さが必要になるかご説明します。
馬房に必要な広さ
馬房には、馬房の中を馬が回れるくらいの、ある程度の広さが必要です。
馬は犬や猫と違い、小回りが利きにくい動物です。
馬がゆとりをもって馬房内を回ることを考慮して、一般的に馬房の広さは、3m×3mの広さが最低基準とされています。
馬が睡眠をとるときは、立って寝るだけではありません。
ほかの動物のように、身体を横にして寝ることもあります。
身体を横にしても壁に当たらず、立ち上がるときに安全を確保できるようなスペースが必要です。
また、馬房では当然排せつも行われますが、中にはきれい好きな馬もいて、決まった場所に排せつしたり、排せつ場所を避けて生活する馬もいます。
そのような場合にもストレスを与えず生活できるよう、ある程度の広さは必要なのです。
放牧地に必要な広さ
馬房は、基本的に食事や夜間の睡眠時、悪天候時に使用して、それ以外は放牧スペースに出して、のびのびさせてあげます。
そのため、広めの放牧スペースが必要です。
放牧には、1頭当たり20m×20mの40㎡~1ha程度の広さが必要とされています。
小型の馬の場合でも、10㎡程度は必要です。
活発に走り回る仔馬の場合は、もう少し広くても良いかもしれません。
GPSをつけて検証した結果、馬は2ha以上は移動しない(利用しない)ことがわかっており、そこまでの広さは不要とされています。
小屋だけじゃない!馬に必要な飼育施設や設備

馬を飼育するには、施設は馬房や放牧地だけでなく、一時的に係留する場所(洗い場)も必要です。
ここは、身体の手入れをしたり、装蹄をしたり、乗馬をするときに馬装や解除をする場所になります。
また、馬房を掃除する際につないでおくことも可能です。
係留する場所には屋根を付け、下はコンクリートの土間を打ちます。
馬を顔の左右からつなげるように、両側に頑丈な柱を立てます。
身体の手入れをする場所ですので、水道は必須です(お湯が出るとよりよいでしょう)。
そのほかには、飼料や床材を保管する倉庫も必要です。
倉庫があれば、清掃用具や馬具、季節外には冷暖房の装備をしまっておくこともできますね。
飼料や床材は、毎日使用・交換するもので、たとえば一週間分だけでもかなりの量になるため、それなりの量を保管できるスペースが必要です。
万が一のときのことも頭に入れておきましょう

馬も生き物なので、必ず死ぬときがやってきます。
そのときのことも考えておきましょう。
まず、馬の体重は、人間の何倍もの重さです。
たとえばサラブレッドであれば、軽くても400kg、重ければ600kgを超える個体もいます。
亡くなった場合には、まず人間の力では動かせません。
移動させるには、クレーンやトラックを手配する必要があります。
次に、馬の火葬は基本的に、都道府県の許可が下りた火葬場でしか行えません。
火葬の方法(合同で行うか個別に行うか)は、火葬場によって異なります。
合同で火葬を行った場合、収骨はできません。
個別に火葬を行う場合も、立ち合いは原則できず、収骨されたあと、手元に帰ってきます。
火葬はおよそ半日程度かかり、火葬費用は10~20万円程度です(重機の費用は別途必要です)。
万が一の時はいつ来るかわかりません。
そのため、飼育許可を得る際にある程度の流れを市役所・役場で確認しておくとよいでしょう。
まとめ
身体が大きく力の強い馬を飼育するには、知識や経験だけでなく、土地も必要です。
また、馬は寿命が25~30年と、ほかのペットに比べると長寿であるため、寿命を全うするまで、継続的に飼育にかかる費用を維持するのが、ほかのペットよりも負担となることがあります。
どの動物でも同じですが、飼育する以上は、責任をもって、不自由のない暮らしをさせてあげるのが飼い主の務めといえます。
特に、馬をはじめとする、人間が力ではかなわない動物は、適切な飼育ができなければ、場合によっては第三者を巻き込んだ事故につながりかねません。
しっかりと飼育の準備・シミュレーションをして、馬がいつまでも健康に安全に過ごせるよう、努めていきましょう。
そのためには、自分一人で対処するのではなく、乗馬に従事している方や獣医師、装蹄師といったプロに助けを求められるよう、日ごろから関係性を築いておくことも大切です。
馬の飼育は重労働であり大変な部分が多いですが、馬がもたらしてくれる癒しや日々の楽しみは、かけがえのないものです。
いつか馬を飼いたいと思っている方は、ぜひ今回の記事を参考に、具体的なイメージを膨らませてみてください。


